男性型脱毛症

薄毛は遺伝する?効果的なヘアケアを行うために、AGAになりやすい人の特徴を確認しよう

薄毛
藤井 麻美

AGA(エージーエー)は、androgenetic alopeciaの略称で、日本語では男性型脱毛症と呼ばれます。AGAは中高年に起こる薄毛の病気、と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、AGAは若いうちから発症して、徐々に進行することが特徴です。自分は若いからまだ大丈夫、と思って放置しておくと、髪の毛が減り続けてしまいます。

AGAには、なりやすい人となりにくい人がいて、遺伝の要素が大きく、遺伝以外にも、生活習慣やヘアケアの方法も薄毛に影響を。

今回は、AGAと遺伝の関係について、発症しやすい年齢や原因、気をつけるべき生活習慣についてご説明したいと思います。

AGAは若くても発症し、年齢と共にどんどん増えます

AGAの発症時期や進行具合には個人差がありますが、日本人男性の発症頻度は、20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降で約40%と、加齢とともに割合が増加していくのが特徴です1)

このようにお伝えすると、比較的高齢になってからAGAになるというイメージをもつ方もいらっしゃるかもしれません。実際に、薄毛を気にする年代は30代以降でしょう。しかし、AGAの半数以上が30 歳未満に発症し、特に25 歳から29 歳の間に新規発症することが多いのです2)

AGAは、「20 代後半から 30 代にかけて発症し、その後徐々に進行していき、 AGAが目立つようになって40 以降に完成される」と捉えていただくといいかと思います。

ところで、日本人男性でどれくらいAGAの方がいるのかというと、全年齢を平均すると30%です3) 。つまり、だいたい3人に1人。かなり多いと思いませんか?

現在、日本の20歳以上の男性人口はおよそ5000万人です。その30%の、およそ1500万人がAGAに悩んでいると推定されます。平成29年に行われた厚生労働省の患者調査では、頻度が多い疾患として高血圧性疾患が993万人、歯周炎および歯周疾患が398万人、糖尿病が328万人でした4)

日本人に多いとされるほかの身近な疾患の人数と比較しても、AGAの推定患者人数は非常に多いといえます。つまり、AGAという病気は男性の方にとって非常に身近な病気なのです。

AGAの原因・メカニズムは男性ホルモンと遺伝

AGAは日本人男性に比較的多くみられる病態ですが、どのようにして発症するのでしょうか。AGAの発症には、男性ホルモンと遺伝が関与しています。

AGAのメカニズムを簡単にまとめると、AGAは男性ホルモンによって髪の毛の成長サイクルが短くなり、髪の毛が十分成長しないまま抜け落ちてしまう病気です。髪の毛の男性ホルモンの影響の受けやすさは人によって異なり、遺伝がかかわっています。

男性ホルモンと遺伝について、もう少し詳しく見ていきましょう。

男性ホルモンのせいで髪がすぐに抜けてしまう

男性 筋肉

男性ホルモンは、文字通り男性に多く存在するホルモンです。筋肉や骨の成長を促進し、ひげや胸毛などの体毛を増やし、濃くする方向に働きます。しかし、髪の毛に対しては体毛とは逆の働きが。つまり、男性ホルモンは髪の毛を少なく、薄くする方向へ作用してしまうのです。

なぜ、男性ホルモンは髪の毛に対して悪影響を与えてしまうのでしょうか。

男性ホルモンの影響を理解していただくため、髪の毛はどのように生えて抜けていくのか、ということについて説明しましょう。ヘアサイクルを知っていただくと、AGAへの理解が深まると思います。

ヘアサイクル イラスト

髪の毛には寿命があり、髪の毛が伸びる→抜ける→また新しく生えることを繰り返しています。これをヘアサイクルといいます。

髪の毛のヘアサイクルは成長期→退行期→休止期と呼ばれ、通常成長期が一番長く、2-6年。

正常なヘアサイクルは、上図の通りです。

AGAでは、ヘアサイクルが変化し、成長期が短くなってしまうことが特徴です。成長期が短くなるため、髪の毛が十分に太く伸びる前に抜け落ちてしまいます。イメージとしては、以下のようです。

ヘアサイクル AGA

では、どうしてAGAでは成長期が短くなってしまうのでしょうか。ここに、男性ホルモンの働きが影響してきます。

男性ホルモンが髪へ悪影響を与えるメカニズムは、以下です。

  1. 男性ホルモンの1つである「テストステロン」と、II 型 5α-還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素がくっつきます。
  2. テストステロンと5αリダクターゼがくっつくと、より強力な男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン(DHT)」が作られます。
  3. 髪の毛にある男性ホルモン受容体(受容体は物質の受け取り手という意味です)と呼ばれるものが、DHTを受け取ります。
  4. DHTを受け取った男性ホルモン受容体から、TGF-βという脱毛因子が作られます。
  5. TGF-βが、髪の毛の細胞を退行期になるよう促します。
ジヒドロテストステロン イラスト
(イメージ)

男性ホルモンが髪の毛に作用すると、上で述べた流れでヘアサイクルが通常よりも短縮されて、およそ数か月〜1年で髪の成長が止まってしまい、結果として、脱毛や薄毛になってしまいます。

ちなみに、AGAの治療で用いられる治療法の一つに、フィナステリドやデュタステリドと呼ばれる内服薬が。これらの薬は5αリダクターゼの働きをブロックし、ジヒドロテストステロンを作るのを減らすことで脱毛を防ぐ作用があります。

ハゲは母方家系から遺伝します

AGAのお話をするとき、よく話題になるのが、

「お父さんが薄毛だから自分もなるかもしれない」

「うちは薄毛の一族だから自分もにハゲになるかもしれない」

という遺伝についての発言です。

薄毛は本当に遺伝するのでしょうか?

結論を申し上げると、遺伝はAGAの発症に大きくかかわっているといえます。

「遺伝するって、そもそもどういうことなの?」

こんな素朴な疑問を持った方もいるかもしれませんので、話を進める前に少し解説しておきます。

例えば、親子で並んで歩いているのをみて、顔がそっくりだなと思ったことはありませんか?また、兄弟でお兄ちゃんは父親似で、弟は母親似だね、といった会話を見聞きしたことがあるかと思います。

子どもは、いろいろな特徴を親から受け継ぐことによって親に似てくるのですが、このように特徴が親から子に伝えられることが「遺伝」です。

遺伝にかかわっているのは、身体の細胞の中にある遺伝子。遺伝子は人間の身体をつくる設計図に相当し、遺伝子を形成しているのはDNAという物質です。

遺伝子は、両親から半分ずつ受け継がれます。身体の細胞が、遺伝子にある設計図に基づいて、さまざまなタンパク質を作り、タンパク質によって身体の組織が形作られたり、生命活動が営まれるのです。

AGAにかかわる遺伝は主に以下の2つ。

  • 5αリダクターゼの活動度(活性度)
  • 男性ホルモン受容体の感受性

<5αリダクターゼの活動度(活性度)>

    5αリダクターゼが、男性ホルモンの一つであるテストステロンとくっつくと、より強力な男性ホルモンである「ジヒドロテストステロン(DHT)」が作られます。このジヒドロテストステロン(DHT )が、髪の毛を脱毛へ導くことでAGAを発症。

    5αリダクターゼの活性度は、遺伝情報によって異なり、活性度が高いほどAGAを発症しやすいのです。5αリダクターゼ活性度の遺伝情報は、親から子へ遺伝しやすい特徴があります(優性遺伝)。つまり、父・母の家族どちらかに薄毛の方がいると、その体質を受け継ぎやすいということです。

    <男性ホルモン受容体の感受性>

      髪の毛にある男性ホルモン受容体は、強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT )を受け取る働きがあります。ホルモンを受け取ると、脱毛因子を放出し、髪の毛を脱毛へ導くことでAGAを発症し。

      男性ホルモン受容体の遺伝情報は、X染色体に存在することがわかっています(ちなみに5αリダクターゼの活性度に関連する遺伝情報は、別の染色体に存在)5)


      ここで、さらに理解を深めるために、染色体について少し勉強していきましょう。

      染色体とは、細胞の核の中に存在し、遺伝情報がつまったDNAがたくさん納められた構造体のことです。

      染色体 遺伝子

      男性ホルモン受容体の遺伝情報は、X染色体に存在するとお伝えしましたが、X染色体とは性染色体の1つです。性染色体とは性別の決定に関わる染色体のことで、XとYの2種類存在します。XとYの組み合わせで男性、女性が決定。

      中学の理科の復習のようになってきましたね。男性はX染色体とY染色体がそれぞれ1つずつある「XY」、女性だと両方X染色体の「XX」。

      人は父親と母親から半分ずつ染色体を受け継ぎます。

      男性はXYとなりますが、必ずXは母由来でYは父由来の染色体(女性は父、母それぞれから1本ずつX染色体を受け継ぎます)。そのため、男性のX染色体は母親譲りのものです。

      AGAは隔世遺伝(かくせいいでん)するとよくいわれます

      例えば、

      「母方のおじいちゃんは薄毛だけど、両親は薄毛ではないから自分はハゲないと思っていたけど薄毛になっている」

      といった状況です。

      つまり、祖父母の遺伝情報を孫が受け継ぐことをいいます。 

      隔世遺伝は性染色体の遺伝情報にかかわるものに起こりやすく、男性ホルモン受容体の感受性の遺伝子はX染色体という性染色体に存在するため、AGAは隔世遺伝しうるのです。文章だと少しわかりにくいので図でお示しします。

      下の図だと、母方のおじいちゃんのAGA染色体の影響を受けて、将来的に薄毛になる可能性が。

      遺伝 家系図
      隔世遺伝するパターン

      男女で脱毛様式が違うため、お母さんは薄毛にならないこともあります

      ここで、疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

      「上の図で、祖父からAGA要素を受け継いでいるお母さんも薄毛になるのでは?」

      鋭い質問です。しかし、結論からいいますと、女性はAGAリスクのある遺伝子をもっていても、AGAのリスクにはなりません。女性にも薄毛になる方はいらっしゃいますが、男性と女性では脱毛の理由が大きく異なります。

      女性にも男性と同じように、FAGA(FはFemale:女性)と呼ばれる女性型脱毛症を発症することもありますが、男性ほど多くはありません。その理由として、女性はそもそも男性と比べて男性ホルモンの産生量が少ないということがあります。

      女性の薄毛では、毛の長さや量は変わらないことが多く、髪の毛が細くなり、ハリやコシ、ボリュームがなくなってしまうことで髪全体が薄くなり、頭皮が透けて見えるように。AGAのように成長期が短くなることで髪の毛が細くなったり、薄毛の部位が前頭部または頭頂部に多くみられるのとは異なります。

      また、薄毛のみられる時期も異なり、AGAは30代からみられますが、女性の薄毛は更年期に多いです。これは、更年期にホルモンのバランスが乱れやすいため。

      遺伝のまとめ

      ここまでAGAには遺伝が関係しているというお話をしましたが、注意点があります。家族に薄毛の人がいると必ずAGAを発症するというわけではなく、逆に家族に薄毛の人がいなくてもAGAを発症することもある、ということは覚えておいてください。

      まとめると、遺伝によってAGAになりやすいかどうかという要素があり、家系で薄毛の方がいる場合はAGAになりやすい可能性があるといえます。

      そのため、薄毛の家族の方がいて、ご自身の髪の毛が薄くなってきたかなと感じた場合は、AGAかどうか一度病院に相談してみるといいでしょう。

      他に薄毛と関連するのは生活習慣、ストレス、頭皮

      生活習慣 男性

      AGAの直接的な原因とはなりませんが、以下の要因が薄毛と関連すると指摘されています。

      • 生活習慣
      • ストレス
      • 頭皮環境の乱れ

      生活習慣

      生活習慣は髪の毛の環境に大きく影響します。摂取カロリーや脂肪の多い食事をとると、頭皮の皮脂が過剰に分泌されます。その結果、頭皮に皮脂が貯留し、髪の毛の血流が減ったり、炎症の原因に。

      また、睡眠不足が続くことでも頭皮環境の悪化を招きます。

      ストレス

      ストレスで抜け毛が増えるといわれています。その理由は、自律神経の乱れによる髪の毛の血流不良が原因です。

      人はストレスをうけると、自律神経のうち交感神経がはたらきます。交感神経は血管を収縮させ、血管が収縮すると、血流量が減少します。その結果、髪の毛への栄養が届きにくくなってしまい、抜け毛につながるのです。

      頭皮環境の乱れ

      生活習慣以外にも、皮膚炎や不適切なヘアケアによって頭皮環境が乱れることでも脱毛のリスクが上がります。ヘアケアや皮膚炎については後ほど詳しく触れましょう。

      AGAが気になり出したら知っておきたい知識

      若い 男性

      昔から、皮膚は全身状態を反映すると言われており、髪の毛についても同様です。近年、ヘアケアは女性だけでなく男性にも非常に高い関心をもたれています。

      健康的な髪の毛を保つためには、頭皮を清潔にすること、睡眠を含めた規則正しい生活、栄養バランスの良い食生活を心がけることが重要です。

      では、具体的にどのようなことに気をつけていけばいいのでしょうか。ここでは、ポイントをいくつかの項目にまとめそれぞれ解説。

      ※これからお話する内容は、AGAを治癒させる方法というよりは、AGAの治療と併用することで、より健康的な髪の毛を得るために行うものと認識していただければと思います。

      髪の毛にダメージを与えてしまう要因は何か

      薄々気づいているとは思いますが、一般的に髪の毛に手を加える行為のほとんどは、ダメージになってしまいます。

      • 頭をかきむしる → 頭皮をやたら強くごしごしとこするような誤った頭皮マッサージに注意
      • ブラッシングのしすぎ → 濡れたままブラッシングすることも毛を傷める原因となります。
      • ドライヤー→熱の加すぎに注意。
      • ワックスやヘアスプレー → 整髪料を頭皮に直接つけたり、つけたまま寝てしまうと頭皮へダメージを与えます。
      • パーマ、ブリーチ、縮毛矯正→薬剤による頭皮へのダメージが脱毛の原因となることがあります。
      • 髪の毛を結んで持続的に髪の毛をひっぱる、ヘアピンやクリップを使用する → 頭皮へ慢性的な機械的な刺激を与えることで脱毛を引き起こす原因になります。
      • 過度の紫外線や次亜塩素酸(プールの消毒などで用いられる)→ 頭皮の日焼けや髪の毛の色が薄くなる原因となります。

      日頃から行っておくと良いヘアケアは?

      シャンプー 写真

      以下の流れで髪をケアすると、髪の毛を傷めずに洗髪できます。

      1. 髪を洗う前に、頭髪を軽くブラッシングしてときほぐします。
      2. シャンプーは泡立てて指の腹を使って頭皮を優しく洗います。
      3. リンスやトリートメントを使用し、髪の表面摩擦を抑えて栄養を補給し、保護します。
      4. 洗髪後はしっかり洗い流します。
      5. ドライヤーは髪から20cm以上離して使用し、しっかり乾かしましょう(濡れたままにしない)。

      脂漏性皮膚炎(フケ)はケアしましょう

      男性 ふけ

      よく聞く頭皮のトラブルの一つにフケがあります。フケとは、頭皮から白色のかさかさした皮膚がはがれ落ちたものです。フケが増える主な原因は、脂漏性皮膚炎と考えられます。

      脂漏性皮膚炎は、皮膚のマラセチア菌(カビの1種)が皮脂を分解し、不飽和脂肪酸という物質が生じることが原因。さらに、ストレスや疲労、睡眠不足などの生活習慣、紫外線や季節など環境変化も炎症を悪化させる因子といわれています。

      よく脂漏性皮膚炎はAGAの原因であると言われることも。果たして本当なのでしょうか。

      結論から先に申しますと、「脂漏性皮膚炎(フケ)はAGAの直接的な原因にはなりません」。

      では、脂漏性皮膚炎とAGAには関係ないからといって、放置していても問題ないのでしょうか?

      答えはもちろんNoです。

      脂漏性皮膚炎によって頭皮の環境が悪化すると、髪の毛への血流が減少し、抜け毛が増えてしまう恐れがあります。抜け毛が増えると、頭皮が透けて見え、皮膚炎の部分の髪が薄くなったりすることも。

      ですから脂漏性皮膚炎になった場合はきちんと治療し、その後もならないよう予防する必要があります。

      脂漏性皮膚炎を予防するためのケアのポイントは、先ほど挙げたヘアケアと、頭皮を清潔にしてマラセチア菌を増やさようにすることです。頭皮ケアシャンプーの中に、マラセチア菌の増殖を防ぐ成分の入ったものも、医薬部外品として市販されています。

      睡眠や規則正しい生活は、髪の毛にもちろん大切

      古くから言い伝えられていることに、「寝る子は育つ」という言葉があります。その理由は、寝ている時に成長ホルモンが分泌されるからです。成長ホルモンは背を伸ばす以外に、髪の毛の成長にもかかわっていることが知られています。

      成長ホルモンは毛包に働きかけて、発毛促進作用のあるインスリン様成長因子の分泌を促進6)

      成長ホルモンは、入眠してから4時間の間に大量に分泌されます。睡眠時間が短い、睡眠時間はしっかりとっているけど短時間の睡眠を繰り返すような方の場合、成長ホルモンの分泌は。

      規則正しい生活を送り、睡眠時間をしっかり確保することは髪の成長にとても大切なことといえます。

      栄養は髪の毛に大いに関係あります

      髪の毛の主な成分は、20種類のアミノ酸で構成され、ミネラルを含んでいるケラチン繊維です。栄養の偏った食事をすると、髪の毛が乾燥し、痛みやすく、髪の成長が遅れることが考えられます。

      では次に、髪の毛に影響があるとされる栄養素について見ていきましょう。

      赤血球 イメージ

      鉄は、血液の中の酸素を全身に運ぶ赤血球の材料です。鉄が不足すると、全身へ運ばれる酸素の量が減ってしまい、髪の毛にも十分な酸素が行き渡らず、髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えることが。

      鉄を多く含む食品は、赤身肉や鶏肉、魚などの動物性食品や、ほうれん草、豆類などの植物性食品があります。動物性食品の方が吸収率がいいとされています。

      注意点として、お茶やコーヒーに含まれるポリフェノールやタンニンという物質が、鉄の吸収を悪くするので、食事と同時に摂取するときは飲む量に気をつけてください。

      ビタミンB群、亜鉛

      ビタミン サプリ

      ビタミンBや亜鉛などの必須栄養素が欠乏すると、髪が細くなったり、脱毛を引き起こすといわれています。

      それぞれの栄養素について髪への働きと多く含まれている食品については以下の通りです。

      ビタミンB2

      髪の発育を促し、皮脂の分泌を抑え、頭皮の新陳代謝を促進する働きがあります。

      レバー、納豆、牛乳、青魚に多く含まれます。 

      ビタミンB6:

      頭皮からの過剰な皮脂の分泌を抑える働きがあります。
      カツオ、マグロ、サケ、バナナ、ささみに多く含まれます。

      ビタミンB12

      頭皮の血行を良くする働きがあります。チーズ、卵、豆類に多く含まれます。

      亜鉛

      亜鉛:毛を含む細胞や組織の新陳代謝を活発にする働きがあり、不足すると抜け毛が増えます。牡蠣、牛肉、チーズ、カシューナッツ、レバー、卵に多く含まれます。

      喫煙

      喫煙 男性

      タバコも髪の毛に対して悪影響を及ぼすことが知られています。その機序としては、喫煙による髪の毛の血流減少や、毛包への毒性作用。

      また、抜け毛が増えるだけでなく、白髪が増えることも指摘されています。さらに、髪の毛へ悪影響は喫煙量や喫煙期間と比例7)

      ここまでご説明したように、喫煙は髪の毛へ悪影響を与えることがはっきりしています。また、喫煙は髪の毛のトラブル以外にも肺がんなどのリスクも上昇します。はっきり言って控えたほうがいいでしょう。

      わかめを食べると髪の毛が増えるというのは本当?

      昔から、わかめなどの海藻類を食べると髪の毛が増えるとよく言われますが、果たして本当でしょうか。

      たしかに、わかめにはビタミンや亜鉛など髪の環境を整えるのに大切な成分が含まれていますので、摂取することは重要です。

      しかし、わかめを食べれば髪の毛が増えるという明確な根拠はありません。あくまでわかめなどの海藻類は、髪の毛の環境を整えるのをサポートする食品として認識いただければと思います。

      抜け毛が多くなる季節はあるの?

      抜け毛の量は、季節によって異なるということが言われています。ある論文によると、夏と秋が最も抜け毛が多く、春は一番抜け毛が少ないそうです8) 。この時期は、いつも以上に生活習慣やヘアケアに注意が必要かもしれませんね。

      まとめ

      今回、AGAと遺伝についての見解と、食生活など気をつけることについてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。

      たしかに、AGAには遺伝や男性ホルモンが大きくかかわっていますが、生活習慣や普段のヘアケアなども、十分髪の毛に影響を及ぼします。また、薄毛でご自身が悩んでいると、そのストレスにより、頭皮環境が悪化する可能性も。

      AGAは中年になっていきなり発症するのではなく、若いうちから発症し、徐々に薄毛が進行していきます。

      家族に薄毛の人がいて自分も少し薄毛が気になってきたなと思ったり、たとえ家族で薄毛の人がいなくても薄毛が目立ってくるようであれば、早めにAGA専門クリニックなど医療機関へ相談してみてください。

      参考文献

      1. Kawashima M, et al. Finasteride in the treatment of Japanese men with male pattern hair loss. Eur J Dermatol 14(4):247-254, 2004.
      2. Fukuyama M, et al. Current understanding of the pathophysiology and update on therapeutic approaches, featuring the Japanese Dermatological Association guidelines. J Dermatol. 49(1): 19-36, 2022. doi: 10.1111/1346-8138.16207. Epub 2021 Oct 28.
      3. 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
      4. 厚生労働省. 平成29年(2017)患者調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf
      5. Li R, et al. Six novel susceptibility Loci for early-onset androgenetic alopecia and their unexpected association with common diseases. PLoS Genet. 8(5):e1002746, 2012. doi: 10.1371/journal.pgen.1002746.Epub 2012 May 31.
      6. Itami S, et al. Androgen induction of follicular epithelial cell growth is mediated via insulin-like growth factor-I from dermal papilla cells. Biochem Biophys Res Commun 212(3): 988-994, 1995. doi: 10.1006/bbrc.1995.2067.
      7. Metelisa A, et al. Tabacco and the skin. Clinics in Dermatol 28(4): 384-390, 2010. doi: 10.1016/j.clindermatol.2010.03.021.
      8. Hsiang EY, et al. Seasonality of hair loss: a time series analysis of Google Trends data 2004-2016. Br J Dermatol. 178(4):978-979, 2018. doi: 10.1111/bjd.16075. Epub 2018 Feb 7.
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