急に髪が抜ける円形脱毛症の原因はストレスじゃない!本当の発症理由は
「気がついたら脱毛班(部分的な脱毛)ができていた、、、」
「急に髪の毛が抜けた、これって病気、、、?」
これらの症状は円形脱毛症に当てはまります。円形脱毛症は自覚症状なく急に髪の毛が抜け落ちるため、不安になりやすい疾患です。
円形脱毛症の理由はストレスだと考える方が多いように感じますが、実はストレスはほんの一要因。大半の場合はストレスは関係ありません。
今回は円形脱毛症を引き起こす本当の理由と円形脱毛症の簡単な対処方法をお伝えします。
円形に髪の毛が抜けるメカニズム
円形脱毛症は「自己免疫疾患」によって引き起こる疾患です。
本来、免疫とは体の外から入ってきたウイルスや細菌を異物として認識し攻撃して、体を健康(正常)に保つという役割を果たしてくれるもの。
しかし「自己免疫疾患」はこの免疫機能に異常が生じ、必要な細胞や本来ある部位を異物とみなして攻撃し排除してしまいます。
円形脱毛症はTリンパ球が毛根を異物として認識し排除しようと攻撃するため、急激に髪の毛が抜け落ち脱毛班が。
円形脱毛症は症状ごとに分類されており、以下の5つの種類があります。
- 単発型:頭部に1つだけ脱毛班ができた状態。比較的症状が軽く治癒率も高い。
- 多発型:脱毛班が複数できたり、脱毛班がくっつき大きな脱毛班となってしまっている状態。
- 蛇行型:生え際から帯状に広がった脱毛斑ができる状態。
- 全頭型:症状が進行し、頭皮のほぼ全てが抜け落ちた状態。
- 汎発型:頭皮以外の脱毛が広がり、眉・まつげ・体毛にまで脱毛が起こっている状態。
円形脱毛症の発症原因
では次に、なぜこのような自己免疫疾患を起こしてしまうのか?を説明します。
実は、なぜ自己免疫疾患が起こるかは完全には解明されていませんが、大きな要因はいくつかあるとされているので、そちらを紹介します。
強いストレス
円形脱毛症の理由として、一番一般的なのが「ストレス」ではないでしょうか。
ストレスを受けると、それに体が抵抗して心臓を早く動かし、体温をあげるなど自分で確認できるような反応が起こります。「ストレスが心臓に悪い」という表現は医学的にも正しいということですね。
このようなストレスが強すぎると、交感神経が活発になり「自己免疫疾患」を引き起こし、その結果円形脱毛症を引き起こすことがあります。
交感神経が活発になると、血の巡りが悪くなり毛細血管の隅々まで血液が行き届かなくなるのです。
髪の毛の成長を司る毛母細胞は頭皮の毛細血管から栄養を受け取りますので、円形脱毛症を引き起こさなかったとしても「ストレスは髪の毛の成長に悪影響を与える可能性が」あります。
そもそも、ストレス自体が体に良くないのであまり溜め込まないでください。
アトピー素因
アトピー素因とは、
1. 気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかの疾患を自分や家族が持っている。
2. IgE 抗体を産生しやすい体質であること(アトピー性皮膚炎の定義ではアレルギーの存在は必須ではない)。
このどちらか、または両方に当てはまることです。
実は円形脱毛症患者の4割はこのアトピー素因を持つと言われ、家族にアトピー素因がある方を含めると5割を超えるというデータも。
そのため、円形脱毛症とアトピー素因は強い関係性があると考えられています。
遺伝
円形脱毛症は必ず遺伝するものではありませんが、比較的遺伝しやすい症状だとされています。
血縁者の中に円形脱毛症を発症した方がいる場合は、8%ほどの確率で発症。
さらに、親等が近い(血縁関係が強い)ほど発症確率が強く、親が円形脱毛の発症を経験している場合は30%もの確率で子供も円形脱毛を発症するリスクがあるとされています。
ホルモンバランスの変化
主に女性に多いですが、ホルモンバランスの変化も円形脱毛の発症要因の一つです。
特に多いタイミングが「出産」と「更年期」です。
1.出産後の脱毛
女性は妊娠中は女性ホルモンが通常の100倍近くに増加。しかし、出産を終えるとそのホルモンは通常時に戻ります。
女性ホルモンには発毛効果がある(そのため女性には薄毛の方が少ない)のですが、出産を終え一気に女性ホルモンが減る際に抜け毛が増えるのです。
この症状は分娩後脱毛・産後脱毛といい、一般的には頭髪全体のボリュームが減り、この時に円形脱毛症を引き起こすことも。また、育児は大きなストレスもありますのでそのような側面からも円形脱毛症のリスクが増します。
2.更年期の脱毛
女性は40~50代を迎えると、心身に不調を感じる方が多くなります。これは閉経を迎えることによって女性ホルモンの分泌量が急激に低下するためです。
この女性ホルモンによる心身の変化・不調を更年期障害と言いますが、この更年期障害の一つとして脱毛が起こる方も少なくありません。
ただし、先ほどの産後脱毛と同じく円形脱毛だけではなく、頭髪全体のボリューム感が減る方が一般的です。
思春期
実は、円形脱毛症になる方の4人に1人が15歳以下の子供です。
なぜ子供が発症しやすいかの理由は解明されていませんが、思春期の体の変化や環境によるストレスが原因だと考えられています。
そのため病院での治療だけでなく、ストレスの原因をしっかりと解決してあげる必要が。お子さんが円形脱毛症になった場合はそれがストレスによるものかどうかしっかり話し合いして悩みを聞いてあげましょう。
ただし、難しいのはストレス以外の可能性も大きいということ。お父さんお母さんも「子供が学校で悩んでいる」「子育てに何か問題があった」と思い込んで悩まないようにしてください。
男女に関わらず思春期の脱毛班は、クラスメイトにからかわれたりと新しいストレスを抱える原因になりかねません。
病院で診察・治療をするのは当然ですが、子供用のウィッグなどを使って脱毛班が目立たないようにするのもおすすめです。
円形脱毛症はどんな人が発症する?
円形脱毛症は発症原因が解明されていない病気ですが、その発症確率は人種を問わずほとんど変わらないと言われています。
女性が多かったり、子供が多いというデータもありますが基本的にはどんな人でも1%程度の確率で発症すると考えてください。
円形脱毛症はどれくらいで治る?
一番軽い症状の単発型の場合、7割の方が1年以内に治っているというデータもありますので不安を抱えすぎず、すぐに医療機関に相談にいきましょう。
たまに治るなら自宅で様子を見たいという方がいらっしゃいますが、自宅でできる治療方法には医学的な根拠はありません。
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版にて治療の推奨度が記載されていますのでそちらを見てみます。
<円形脱毛症 治療ガイドライン>
治療の推奨度はAが最も高く
A:行うよう強く勧める
B:行うよう勧める
C1:行ってもよい
C2:行わないほうがよい
D:行うべきではない
*:小児には原則行わない
と規定されています。C2以降は効果認められておらず、推奨されていませんが、特筆すべきは「かつらの使用」が推奨レベルの一番高いBであるということです。
かつらを使用することは AA の病勢に対して悪影響はないが,紫外線や外傷防御の点で推奨される.
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
AA 患者における使用前後での QOL の改善についての報告は少ない.田中式職業検査 DE-H 法を用いた症例集積研究では,行動の未熟性,情緒の不安定性,不適応感,器官劣等感がかつらの使用によりかなり改善された189).しかしながら,十分な統計学的検討はされておらず,改善が有意であるかどうかは不明である.
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf
つまり家で行える治療は「かつらの使用」以下の効果しかありません。
しかし「治療せずに経過観察のみ行うのは有用か」に関してもC1(行ってもよい)の推奨度があります。
積極的な治療介入をせず,患者の心理面に配慮しつつ経過観察することも AA の「治療」の選択肢のひとつとなり得る.
AA を無治療で経過観察した症例集積研究(コホート研究)によれば,アトピー性疾患や自己免疫性内分泌疾患などの併存症がない単発型あるいは少数多発型AA1,716 例のうち,1,263 例は 1 年以内に脱毛斑が消失した
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf
脱毛班消失 1263例 ÷ 単発・多発型 1716例 = 1 年以内治癒率73.6%
医療機関に行っても経過観察を推奨されることは多いかもしれませんが、症状・治療方針の確認は不安を取り除いてくれる効果もあるため医療機関で相談をおすすめいたします。
予防方法
繰り返しになってしまうのですが、円形脱毛症は発症する理由やタイミングがわからない病気です。
予防としては、頭皮を清潔に保つ洗髪(シャンプー)、規則正しい睡眠、健康的でバランスの良い食事など、健康的な生活をおくりストレスを溜めないように生活することしかありません。
まとめ
円形脱毛症は全てが解明されている病気ではありません。
ただし、初期症状であれば70%以上の方が1年以内に改善される病気でもあります。急に髪が抜けて不安になると思いますが、思い詰めないようにしてください。
また個人で経過観察の判断するのはおすすめできません。もしかしたら今が初期段階でこれから症状が侵攻していく可能性も十分あります。
円形脱毛症ができた際に、は必ず医療機関で相談してもらい適切な治療を受けてください。
参考文献
1) 日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/128/12/128_2431/_pdf
2) キョーリン製薬 円形脱毛症の遺伝子 順天堂大学皮膚科教授 池田志斈
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/210565-1-33.pdf
3) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf