虫刺され対策と治療 | 子どもはとびひに注意
虫刺されとは、虫(今回は主に昆虫について)によっておこる皮膚炎です。症状は、虫の種類によってさまざまですが多くの場合は皮膚が部分的に赤くなり、かゆみがあります。痛みが出ることも。
そして、子どもではかなり大きく腫れることもあります。特にまぶたは腫れやすく、びっくりして病院に駆け込んでこられることが多いようです。
虫刺されはほとんどの場合、市販薬を使用すれば短期間でよくなりますが、皮膚科を受診したほうがよい場合もあります。
この記事では、どのような症状に注意するべきなのかについてご説明。また、刺されたときの応急処置のやり方や皮膚科での治療、虫刺され予防と対策についてもご紹介していきます。
虫刺されの症状とは?
虫刺されの症状は、虫の種類によってさまざまであり、また個人差も大きいです。一般的な症状としては、赤み、腫れ、かゆみ、水ぶくれなどがあります。
子どもは大人よりも症状が重くなることが多いです。
赤み: 虫の唾液(だえき)や毒に対して炎症が起こり、患部の皮膚が赤くなります。この反応には個人差が大きいです。
腫れ: 虫に刺されると、刺された部位を中心に周囲が腫れることがあります。まぶたなどでは強く腫れることも。まぶたが腫れた場合、眼科に行くか皮膚科に行くか迷うこともあるかもしれません。
一般的に赤みやかゆみが強い場合には虫刺されである可能性が高いので皮膚科、痛みがある場合は麦粒腫などの感染症による可能性が高いので眼科を受診するのがよいでしょう。
かゆみ:かゆみは虫刺されで一番よくみられる症状です。ただし、その程度は人ぞれぞれ。かゆみで夜も眠れないような場合は、かゆみを鎮める抗ヒスタミン薬の内服も併用するとよいでしょう。
患部を掻くと、さらにかゆみがひろがり、掻き傷から細菌感染を起こすこともあります。かゆみをがまんするのはつらいことですが、なるべく掻かないようにしましょう。
水ぶくれ: 虫に刺されると、水ぶくれができることもあります。特に、ヒアリやヒメマルカツオブシムシなど、特定の種類の昆虫でよく見られることがあります。
虫刺され症状のまとめ
人の血を吸うカ、ノミ、ナンキンムシ、ブユ(ブヨ)などは刺されるとかゆみがでて、赤くなることが多いです。よく見ると刺し口が確認できます。
ハチ類やムカデ類は刺された瞬間に強い痛みあり、大きく赤い腫れが。毒ガや毛虫の毛針に触ると、翌日くらいにかゆい小さなぶつぶつが沢山できます。
毛虫の場合は、直接触れていなくても、衣服についた毛針が皮膚について皮膚炎を起こすことも。
なお、症状は個人差が大きく、年齢、健康状態、アレルギーの有無に影響されることがあります。
また、ハチに刺された場合、アナフィラキシーなどの重篤な症状を引き起こすことがあり、その場合は直ちに医師の診察が必要です。
皮膚炎を起こす虫
皮膚炎を起こす虫は多種多様で、引き起こされる皮膚炎もかゆいものから痛いものまでさまざまです。わたしたちの身近にいる『皮膚炎を起こす虫』の代表的なものについてご紹介します。
蚊(カ):春から秋にかけて、発生します。蚊に刺されたことがない人は、日本では珍しいのではないでしょうか。蚊は人間の血液を吸い、その部位の皮膚にかゆみや腫れ、時に水ぶくれをつくることも。
マラリア、デング熱、ウエストナイルウイルスなどの病気の媒介者としても知られています1)。
ブユ:春~秋の夕暮れにあらわれます。吸血し、その際に軽い痛みを感じることがあります。その後激しいかゆみが。刺された部位がしこりとなり、何年もかゆみが残ることがあります2)。
蜂(ハチ): 日本では春~秋に見られます。ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチなどが代表的です。ミツバチによる被害がもっとも多く、巣に近づくと集団で攻撃してくることもあります。
ただし、ミツバチに刺されるのは養蜂家の方々がほとんどで、一般の方が刺されることは稀です。
アシナガバチやスズメバチは、庭木の手入れや農作業、林業、ハイキングなどの際に刺されることが多く、特に秋の野外活動での被害が多いので注意が必要。
また、スズメバチは大型で毒性が強いのが特徴です。くり返し蜂に刺されると、アレルギーを起こすことがあります。
ハチ毒にアレルギーがある場合、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応を引き起こす可能性があります 3) 。
ムカデ:ムカデに咬まれると、咬まれた場所に痛み、赤み、腫れがみられます。場合によっては、発熱や倦怠感などの全身症状が現れることも4)。
毛虫:毛虫による皮膚炎は夏によくみられます。チャドクガ、イラガ、マツカレハ、ドクガなどが代表的です。
毒針毛に直接触れる以外に、着替えるときに衣服についた毛針が皮膚に刺さり、皮膚炎を起こすことがあります。毛虫の毒針毛は非常に小さく軽いため、風に乗って衣服に付着することも。
ぽつぽつした赤い発疹、かゆみが一般的な症状です。上半身に広い範囲で見られることもあります5)。
虫刺されの治療について
刺されたときの応急処置
虫に刺されたら、まずは傷口を清潔にするようにしましょう。すぐに流水で洗うのが理想的。せっけんで洗うとよりよいです。傷口を汚れた手で引っ掻いたり、こすったりしないようにしましょう。
赤く腫れてきたら水やアイスノンなどで冷すのもよいでしょう。ハチに刺されたときは要注意です。
ハチに刺されて、気分が悪くなる、吐き気がする、息苦しい、眼が見えない、声が出せないなどの症状がある場合はハチよるアナフィラキシーの可能性あるため、すぐに医療期間を受診しましょう。
もともとハチアレルギーの既往がある人はエピペンを持ち歩いていることも多いでしょう。症状が出たときは迷わずエピペンを使用し、医療機関を受診しましょう。
なお、ハチに刺されたときにアンモニアが効くというのは間違いです。
治療はどうしたらいい?
虫刺されは皮膚炎の一種なので、安静(掻かない)、冷却、清潔保持が大切です。軽症の場合は、特に何もしなくても数日で自然に治っていきます。
かゆみがひどい場合は、ステロイド軟膏や抗ヒスタミン軟膏を塗りましょう。
市販薬では、
フルコート®軟膏リンデロン®Vs軟膏(ステロイド)
リンデロン®Vs軟膏(ステロイド)
新レスタミンコーワ軟膏(抗ヒスタミン)
などがお勧めです。
赤みや腫れがひどい場合は皮膚科で診察を受けましょう。お子さんの場合はリンパ管炎を併発して大きく腫れることも。
また、皮膚科ではアレルギー反応やかゆみを抑える飲み薬が出ることもあります。
体温が高くなるとかゆみが強くなるので、熱いお風呂や長風呂は避けたほうがよいでしょう。
塗り薬を自己判断で使うときの注意点(デメリット)
虫刺されで起こる赤みやかゆみ、痛みには通常は炎症を抑えるステロイドの塗り薬を使います。
ただし、引っ掻いて傷になって表面がじゅくじゅくになった場合にステロイドを塗るとかえって悪化することがあるので、判断に迷う場合は皮膚科を受診するようにしましょう。
虫刺されから起こる合併症、病院にいくべきであるのはどんなとき?
とびひ(伝染性膿痂疹)
伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)は、細菌による皮膚の感染症で、小児の間で流行することが多く6)、とびひとも。
湿疹や虫刺されの部位を引っ掻いた傷に細菌が繁殖し、それが体の他の部位に広がっていき、他の子どもに移ることもあります 7)。
伝染性膿痂疹は、化膿レンサ球菌または黄色ブドウ球菌によって引き起こされるものです。外遊びが好きな子供では、虫刺されがきっかけとなることが多く、春から夏にかけてとびひがよくみられます7)。
ただし、すべての虫刺されがとびひになるわけではなく、掻き壊すことで皮膚が破れ、細菌が繁殖して発症することがほとんどです9)。
虫刺されのところが、じゅくじゅくしてきたら皮膚科を受診するようにしましょう。とびひと診断されると、感染の程度に応じて、抗生物質の塗り薬、または飲み薬が出されます10)。
抗生物質の不適切な使用は耐性菌の発生を招き、薬の効果を低下させるため、自己判断で抗生物質の内服を中断したりしないようにしましょう11)。
予防と対策
虫の多くなる春~夏(秋も油断できませんが)に山や畑などに出るときは長袖の洋服を着用するようにしましょう。
特にハチを避けるには黒い洋服やフリルなどのひらひらしたもの、ビジューなどキラキラ光るものを着ないようにしましょう。香水も場合によっては虫をひきつけてしまいます。
蚊などには市販の防虫スプレーが効果的です。DEETやピカリジンを含む虫除け剤を皮膚や衣服に塗ることで、蚊やその他の刺す虫の侵入を防ぐことができます。
ガーデニングを行うときは、毛虫などの刺激性のある虫に触らないように手袋も着用しましょう。
まとめ
虫刺されは春から秋にかけて、よく見られるものです。虫の種類により痛みやかゆみを引き起こすことがあります。
反応の出方には個人差が。蚊、ハチ、ムカデ、毛虫などによる皮膚炎が日本では多くみられます。刺された場合は、咬まれた箇所を洗浄し、冷やし、なるべく掻かないようにしましょう。
赤みや腫れが強い、痛みがあるなどの場合は皮膚科を受診してください。予防策として、虫よけ剤の使用や適切な服装が重要です。
参考文献
1)Smith, D. L., Battle, K. E., Hay, S. I., Barker, C. M., Scott, T. W., McKenzie, F. E., & Reiner Jr, R. C. (2012).
2)Ross, Macdonald, and a theory for the dynamics and control of mosquito-transmitted pathogens. PLoS pathogens, 8(4), e1002588.
3)Larson, S. R., Jones, C. J., & Ha, Y. (2021). Management of biting midges in the United States. Insects, 12(2), 120.
4)Golden, D. B. K. (2016). Insect sting allergy and venom immunotherapy: a model and a mystery. Journal of allergy and clinical immunology, 137(2), 351-353.
5)Benbow, M. E., & Cushing, P. E. (2006). Predator–prey role reversal, plasticity, and trophic cascades in a complex Appalachian food web. Ecology, 87(11), 2832-2840.
6)Jones, E. A., & Harper, J. I. (2002). The epidemiology of impetigo. British Journal of Dermatology.
7)Schwartz, R. A., & Kapila, R. (2021). Impetigo: Current perspectives on management. Pediatrics and Neonatology.
8)Cole, C., & Gazewood, J. (2007). Diagnosis and treatment of impetigo. American Family Physician.
9)Koning, S., van der Sande, R., Verhagen, A. P., et al. (2012). Interventions for impetigo. Cochrane Database of Systematic Reviews.
10)Paranthaman, K., Bentley, A., Milne, L. M., et al. (2010). Clinical assessment of skin lesion differentiation in schoolchildren. Clinical Pediatrics.
11)Hay, R. J. (2005). Skin infections and infestations in community dermatology. Clinics in Dermatology.
QandA(質疑応答)
虫刺されには痛み、かゆみ、腫れ、発赤などの症状が現れることがあります。
低刺激の石鹸と水を使用して、洗浄しましょう。
アイスノンや濡れタオルなどを患部に当てることで、腫れやかゆみを和らげることができます。
適切に使用すれば、虫よけ剤は効果があります。
抗ヒスタミン薬を含むかゆみ止めのクリームやローションを使用すると、かゆみを和らげることができます。
感染の兆候として、強い痛み、赤み、熱感、膿が出るなどが見られることがあります。
症状の改善までの期間は個人によって異なりますが、通常は数日から1週間程度でよくなります。
蚊は感染症を媒介することがあります。特にマラリアやデング熱などの病気に注意が必要です。日本での流行はないとされていますが、海外では報告されています。
ハチではアレルギー反応を引き起こす可能性が。まれにアナフィラキシーを起こすこともあります。
長袖の衣服や長ズボン、明るい色の服装が虫よけ対策によいです。
きれいに洗って、かゆみ止めのクリームを使用し、掻き壊さないようにしましょう。
ムカデに刺されには強い痛み、腫れ、炎症が見られること多いです。
刺された箇所を掻くことは、炎症や感染のリスクを高めるため、やめましょう。
室内の掃除や壁の隙間を埋める修理などをしてムカデが入り込む経路を塞ぐことが重要です。
虫よけ剤は子供にも使用することができますが、年齢に応じた製品を選ぶ必要があります。
痛みがひどい場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。
刺された箇所には抗ヒスタミン薬を含むかゆみ止めのクリームやローションを塗ることが効果的です。アロエやアンモニアは効果がありません。