皮膚の病気

しもやけを早く治す方法|かゆい・痛い・腫れるなど症状別の原因や改善方法を紹介

つらいしもやけ
藤井 麻美

『指がじんじん、赤みもあって少し腫れている。あー、また今年も冬がやってきたのかしら。』

しもやけを毎年繰り返す患者さんにとって、冬はつらい季節ですね。でもしもやけの原因をしっかり学んで、対策を上手に行えば、そのしもやけ、治るかもしれませんよ。これから、しもやけについて詳しく説明していきましょう。

「しもやけ」とは

しもやけとは、くりかえす寒冷刺激により発生する皮膚障害です。主に指先、つま先といった四肢の先端や、耳、頬、鼻などに、鮮紅色~紫藍色の腫れぼったい発疹ほっしんがみられ、痛みやかゆみを伴います。

寒冷刺激によって、末梢の血管が収縮してうっ血し、炎症が起こることで発症。1日中気温の低い厳冬よりも、1日のうちの温度差の大きい初冬や初春に起こりやすく、通常は1~3週間で治ります

  • しもやけ:しもやけは医学的には凍瘡とうそうといいます。手の指先やつま先、耳などが赤色~赤紫色に腫れ、かゆみや軽い痛みが出たりすることも。寒冷刺激によって、血管が収縮して炎症を起こしている状態です。
  • 凍傷:凍傷は強い寒冷刺激(通常は-12℃以下)によって、急速に皮膚の細胞が凍結したり、血管が収縮して血流が低下し血栓ができ、皮膚の細胞が障害、破壊されて起こります。一般的にしもやけより重篤な状態です。
  • あかぎれ:あかぎれは寒さに加えて、空気の乾燥や水仕事などにより、皮脂が失われることで皮膚にひび割れが生じる症状のこと。皮脂腺の少ない指先にできることが多いです。

しもやけの原因

しもやけは、寒冷刺激が繰り返され、血液の循環が悪くなることが原因です。

私たちの体には、寒い環境にいるときは末梢(手足など体の先端)の血管を収縮させ、体温を保持する仕組みがあり、逆に暖かい環境下では、末梢の血管を拡張させて、熱を逃がして体温が上がりすぎるのを防ぐ仕組みがあります。

この「寒さ」と「暖かさ」の刺激を繰り返し受けることで、末梢の血管の収縮・拡張が何度も起こり、血液が正常に流れなくなり、手足の指先などの皮膚に炎症が引き起こされ、しもやけを発症。

しもやけが、初冬や初春に多いのはこのためです。一日をとおして気温がずっと低い冬の真っただ中よりも、冬のはじめや春先など、寒暖差の激しい季節に起こりやすく、特に気温が4~5℃で、日中の気温差が10℃以上になる時期にみられます。

しもやけは、体質的に末梢の循環が悪くなりやすい人や、汗をかきやすい人、また、水仕事をよくする主婦の方にもみられます。

手や指がぬれたまま過ごしていると、水分の蒸発に伴い皮膚が急に冷やされ、しもやけを誘発すると考えられているのです。同じ理由で、濡れた靴下や手袋などをそのままにしていると、しもやけが起こりやすくなります。

しもやけの主な症状

しもやけは、繰り返し寒冷刺激をうけた部位が赤色~赤紫色になって腫れます。かゆみや痛み(じんじんする痛み)を伴い、温まると症状が強くなることも。

症状が重い場合は、水疱(水ぶくれ)ができたり、潰瘍かいようといって傷になったりし、治ったあとにも黒いしもやけ跡が残ることがあります。

しもやけになりやすいのは、末梢部位と言って、具体的には手指やつま先、頬や耳、などの毛細血管が多く、外気にさらされて冷えやすい部分です。

しもやけの症状の出方には主に2つのタイプがありますが、この中間型もあります。,

①「樽柿型たるがきがた
指や手全体が熟した柿のように赤く腫れ、子供のしもやけに多いとされています。

②「多型滲出性紅斑型たけいしんしゅつせいこうはんがた
指や手が部分的に赤~ピンク色に丸く腫れ、水ぶくれなどができることもあり、大人のしもやけに多いとされています。

しもやけの治し方

しもやけは寒冷刺激によって起こるため、何よりもまずそれを避けることが大切です。温かくして、冷やさないことが肝心。外出するときには手袋や厚手の靴下、耳当てなどを着用し、冷たい風に当たらないように気をつけましょう。

指先が冷えやすい人は、使い捨てのカイロなどを携帯するのもよいでしょう。昔から、「子供は風の子」といいますが、外で元気に遊んでいる子供にもきちんと防寒具を着用させ、ぬれた靴下や手袋はそのままにせず、はやめに取り換えてあげてください。

手や足をマッサージして血流をよくするのも効果的です。しもやけは一度できても、通常であれば、1~3週間で症状は治まり、暖かい季節になると自然によくなることがほとんどです。ただし、症状が重い場合は医療機関(皮膚科)を受診しましょう。

皮膚科では炎症が強い部位には炎症をおさえるステロイドの外用剤(塗り薬)、さらに血流を改善するビタミンEを含有した外用剤や内服を行うこともあります。水疱(水ぶくれ)や潰瘍かいようになるほど重症で、毎年冬になると繰り返すような場合は、血管拡張薬を内服や注射をすることも。

自宅でのケア方法

しもやけに対して、自宅でできるケア方法についてお話ししましょう。まずは家の中でも、適度に暖房などを使用し、体を冷やさないようにしてください。外から帰ってきたときは、冷えた部位を40℃くらいまでのぬるめのお湯にゆっくりつけることも効果的です。

ぬれた部分はしっかり水分をふき取り、靴は乾燥させ、手袋や靴下がぬれた時はすぐに取り換えるようにしましょう。血流をよくするために、指や足先をマッサージするのも効果的。

市販されている外用剤(塗り薬)でのおすすめは、ユースキン(旧ユースキンAザーネクリーム®です。血流をよくするビタミンEが含まれており、クリームを塗りながらマッサージをするとよいでしょう。

ユースキン
画像引用元: ユースキン

ザーネクリーム
画像引用元: エーザイ

ただし、水疱(水ぶくれ)ができているときにマッサージはしないでください。その場合は医療機関を受診して、きちんと処置をうけましょう。自分で水疱を針でついたりすると、二次感染を起こすことがあります。

病院での治療方法

自宅でケアをしていてもよくならないときや、赤みや痛み、かゆみが強いとき、水疱(水ぶくれ)ができた場合は、医療機関(皮膚科を受診しましょう。

赤みなど炎症が強い部位には、即効性のあるステロイドの外用剤(塗り薬)を使用すると同時に、血流を改善するビタミンEを含有した外用剤の処方も行います。

水疱や潰瘍かいようがある場合は処置後、抗潰瘍薬などの外用剤を使用。血流を改善するビタミンEや、漢方薬の内服を行うこともあります。

しもやけには血液の循環をよくして、体を温める作用のある「当帰四逆加呉茱萸生姜湯とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう」が最もよく使われ、他には、しもやけに効果のあるとされる当帰が含まれる「温経湯うんけいとう」「当帰芍薬散とうきしゃくやくさん」「四物湯しもつとう」などが処方されることも。

ツムラ漢方しもやけの薬
画像引用元: ツムラ

膠原病こうげんびょうなどの基礎疾患があり、末梢循環障害が重度で、毎年冬になると潰瘍ができるようなしもやけを繰り返す場合には、プロスタグランジン製剤などの血管拡張薬の内服や、注射をすることもあります。

しもやけの予防方法

『しもやけの治し方』のところでお話しましたが、しもやけは寒冷刺激によって起こるため、何よりもまずそれを避けることが大切です。特に手足に症状が出やすいため、手足を温かくして、冷やさないようにしましょう。

手袋や厚い靴下、使い捨てカイロなども有効です。水仕事などで手がぬれた時はそのままにせず、しっかり水分をふき取りましょう。靴は乾燥させ、手袋や靴下がぬれた時はすぐに取り換えてください。

市販されているユースキン®やザーネクリーム®には血流をよくするビタミンEが含まれており、これらのクリームを塗りながらマッサージをするのもよいでしょう。

漢方の考え方では、体を温める効果があるとされる黒い食材。黒豆や玄米、ひじき、くるみ、黒ゴマなどが冷えを改善し、血流を促進してくれます。また、ニラやシナモン、玉ねぎ、サバ、イワシなどにも血流をよくする成分が含まれており、冬には積極的に摂取することがお勧めです。

しもやけとは違う病気が隠れていることも

しもやけは、通常は春になり暖かくなると自然に治ります。春になっても、しもやけが治らないときは要注意です。皮膚科の教科書にも、春になっても軽快しない‘しもやけ’様の紅斑こうはんを見たら、膠原病こうげんびょうなどを疑い精査をすること、と記載されています。

しもやけに似た症状を起こす病気には、どのようなものがあるのでしょうか?詳しく解説していきます。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス( systemic lupus erythematosus; SLE )は皮膚、腎臓、心臓、肺、脳などに臓器障害をきたす全身性自己免疫疾患です。この病気の背景にはさまざまな免疫異常があることがわかっており、日本では指定難病に含まれています。本来、細菌やウイルスなどの有害なものから、身を守るためにある免疫系が、誤って自分自身を攻撃。

男女比は1:9と女性に圧倒的に多く、発症のピークは20~30歳代にあります。皮膚症状はSLE患者の75%程度にみられるため、皮膚科で見つかることが多い病気です。SLEの診断の際に皮膚科医は、特に顔と手に着目。

頬には蝶形紅斑ちょうけいこうはんというSLEに特徴的な症状(特異疹といいます)があり、その所見だけでも皮膚科医ならこの病気を考えます。

全身性エリテマトーデスの皮膚症状
画像引用元: MSDマニュアル家庭版

ですが、蝶形紅斑より先に、凍瘡様紅斑とうそうようこうはんがSLEやこれから述べるSjSの初発症状として現れることがあります。しもやけが春になっても治らない、という場合は必ず皮膚科を受診してください。

参考文献:三森明夫 全身性エリテマトーデス 日内会誌 2015;104:2118-24
Obermoser G, et al. Overview of common, rare and atypical manifestations of cutaneous lupus erythematosus and histopathological correlates. Lupus 2010 ;19:1050-70. doi:10.1177/0961203310370048

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群(Sjogren syndrome; SjS )は中年女性に多く、涙腺や唾液腺をはじめとする外分泌腺(涙や唾液などの分泌液を作る臓器)がターゲットとなる自己免疫性疾患です。

外分泌腺が自己免疫により破壊され、ドライアイやドライマウスなどの症状が出ます。SjS単独では、命にかかわるようなことは少ないですが、SjSは関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどのほかの重篤な膠原病こうげんびょうを合併する例が多いので、SjSを見つけた際には他の膠原病を合併していないか必ず確認することが大切です。

また、SjSもドライアイやドライマウスだけでなく、多彩な皮膚症状が出ます。その中には全身性エリテマトーデスと同じく凍瘡様紅斑とうそうようこうはんが、初発症状としてみられることも。

参考文献 : Sjögren H Zur Kenntnis der Kerato-conjunctions Sicca. Acta Opthalmol 1933 ; 11:1-15. doi:10.1111/j.1755-3768.1938.tb04739.x

レイノー現象、レイノー病

手や足の指の小さな動脈が痙攣けいれんして収縮し、白→紫→赤と色が変化する現象をレイノー現象といいます。数分から30分くらい痙攣が続き、冷感やしびれ、痛みを伴い、温めると発作が治まるのが特徴です。

膠原病(強皮症やSjS、SLE、関節リウマチなど)や動脈の異常(閉塞性動脈硬化症など)、ピアニストなど指を酷使する職業の人に起こることがあります。

また、こういった病気がなくても、寒冷刺激や精神的ストレスでレイノー現象がみられることも。その場合はレイノー病と呼ばれ、20~40代の女性に多く、症状を繰り返すと指が赤く腫れぼったくなり、しもやけと間違われることがあります。

クリオグロブリン血症

クリオグブリンは免疫グロブリン(タンパク質)の一種であり、4℃で固まり、37℃で溶解する性質をもちます。さまざまな要因により、クリオグブリンが血液中で増加する病気です。

皮膚の寒冷刺激でクリオグブリンが固り、小さい血管の壁に沈着することで血流が低下したり、閉塞したり、血管に炎症を起こし、いろいろな症状がでます。その中にはしもやけに似たような指先の赤み、腫れ、痛みもあるため、しもやけの中にこの病気がかくれている可能性も。

サルコイドーシス

サルコイドーシスは原因不明の全身性類上皮肉芽腫性疾患ぜんしんせいるいじょうひにくげしゅせいしっかんで、体の多くの臓器に炎症細胞の異常な塊(肉芽腫)がみられる病気です。

皮膚に現れる症状はさまざまですが、中でもびまん浸潤型と呼ばれるタイプは、鼻や頬、指趾ししに暗紅色の腫れぼったい皮疹ひしんがでます。昔はこのサルコイドーシスのびまん浸潤型の皮疹を凍瘡様狼瘡とうそうようろうこうと呼んでいました。

サルコイドーシスは、ぶどう膜炎を起こし視力が低下したり、肺の中に肉芽腫を作り、肺胞を破壊し線維化を起こすことがあります。サルコイドーシスで一番やっかいなのは心臓の病変で、不整脈を起こし、突然死の原因になることも。

皮膚科医はサルコイドーシスと診断すると、必ず眼科と呼吸器内科、循環器科に診察してもらうように手配します。

まとめ

しもやけとは、寒冷刺激により、末梢の血管が収縮してうっ血し、炎症が起こることです。指先、つま先といった四肢の先端や、耳、頬、鼻などに、赤色~紫紅色の腫れぼったい発疹がみられ、痛みやかゆみを伴います。

冬のはじめや、春のはじめの日中の温度差が大きいときに起こりやすいですが、通常は春になるとよくなります。しもやけには何よりも冷えから体を守ることが大切です。

できてしまったひどいしもやけは、医療機関を受診し治療をうけるようにしましょう。特に春になっても治らないしもやけがある場合、他の病気のサインかもしれません。必ず医療機関を受診してください。

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