夏の紫外線が原因に 髪のパサつきと薄毛

皆さんは、紫外線と聞くとどのようなイメージを持たれますか?一般的には、夏が最も紫外線の強い時期で、紫外線は日焼けやシミなど肌へ影響を及ぼすもの、と認識されているかたが多いのではないでしょうか。
紫外線は、肌への影響だけでなく、頭皮や髪の毛にも影響を及ぼすことがあることをご存じでしょうか。紫外線と髪の毛の関連は、何となくイメージがつくようなつかないような、漠然とした感じがすると思います。
紫外線は、髪の毛に対して直接脱毛を促すといった作用はありませんが、頭皮環境の悪化を招き、結果として髪のパサつきや薄毛が進行するといった原因に。髪のパサつきは、髪のダメージ状態を反映しています。
今回は、紫外線が頭皮や髪の毛に与える影響やその対策、髪のパサつきについてご紹介。
薄毛を気にする人にとって、紫外線対策などのヘアケアを行い、パサつきをおさえるなど頭皮環境を整えることは非常に重要です。ぜひこの記事を参考にしていただければと思います。
髪のパサつきが気になりませんか?
髪の毛の状態を表す言葉の一つに、「髪のパサつき」があります。よく聞かれる言葉ですが、髪がパサつくとはどういう意味なのでしょうか。
簡単に言うと、「髪のパサつき=髪の水分や油分が減少している」となります。特に、髪の毛の水分とパサつき具合は大きく関係。
まとめると、髪のパサつきは髪に含まれる水分が不足して乾燥することによって生じます。では、髪の水分が減ると髪の毛にどのような変化が起こっているのかについて考えていきましょう。
まず、髪の毛の構造について図を示します。
髪の毛には、3つの組織があり、外側からそれぞれキューティクル、コルテックス、メデュラと呼ばれます。髪の毛の状態を保つ上で大切な成分は、水分とタンパク質です。髪の毛の水分保持に関わっているのは、一番外側にあるキューティクルで、髪の内側を守る働きが。
髪の毛が紫外線などでダメージを受けると、外側にあるキューティクルが損傷されてしまい、水分が失われてしまいます。
また、髪の内側のコルテックスなどもダメージを受けてしまうため、結果として水分だけでなくタンパク質も失われ、髪が乾燥して細く。その結果、頭皮が透けてしまうため薄毛にみえてしまいます。
このように、髪のパサつきは髪の毛にダメージがあることを示唆し、見た目も薄毛にみえてしまうため、予防していくことが重要だということがわかるでしょう。
頭皮の環境と薄毛
頭皮の環境は、髪の毛の状態に大きく影響を与えます。具体的には頭皮が乾燥することで、かゆみが生じて、フケや抜け毛を発生させる要因にも。さらに頭皮が乾燥すると、潤いが減少してしまうため、保湿作用がなくなってしまいます。
頭皮の保湿はバリア機能を保つためにも重要で、頭皮が乾燥するとバリア機能が低下し、炎症が起こりやすく。フケの原因となるような脂漏性皮膚炎が発生しやすくなります。
脂漏性皮膚炎によって頭皮の環境が悪化すると、髪の毛への血流が減少し、抜け毛が増えてしまうおそれが。抜け毛が増えると頭皮が透けて見え、皮膚炎の部分の髪が薄くなることがあります。
また、頭皮が乾燥して炎症になると、血流低下だけでなく、かゆくてかいてしまう行為による頭皮への物理的ダメージも。
健康的な髪を作り出すためには、頭皮を乾燥から守ることがとても大切です。
髪がパサつく原因|生活習慣を見直してみませんか。

髪がパサつく、つまりキューティクルが傷つけられている状態はどうして起こってしまうのでしょうか。髪がパサつく原因として以下のことが言われています。
- 紫外線による髪へのダメージ
- ドライヤーやヘアアイロンによる熱ダメージ
- パーマやカラーによるダメージ
- ホルモンバランスの乱れ
- 栄養不足
- 血行不良
- 喫煙
このように、髪がパサつく原因には非常に多くの要因があることがわかります。それぞれ解説していきましょう。
夏の紫外線
夏の晴れた日に外にでていると、日焼けを起こすことは誰しもが経験があると思います。
これは紫外線によって皮膚がダメージを受けた影響によるものです。日焼けとは、紫外線によって皮膚が赤くなり、炎症を起こしているサイン。
実はあまり意識されていないことですが、頭皮も皮膚で覆われています。ですから、頭皮も紫外線の影響を受けるということに注意が必要です。
●紫外線とは?

そもそも紫外線とはどのようなものかご存じでしょうか。紫外線は英語でUltra Violetといい、UVと略されるもので太陽光線の一つです。太陽光線は、可視光線(目でみえる光)と目に見えない赤外線、紫外線とがあり、紫外線は太陽光線の中で波長が短く、UVA、UVB、UVCの3つに分けられています。
この3つの紫外線のうち、UVCはオゾン層で吸収され、人体にはほとんど影響がありません。ここでは、UVAとUVBについて少し触れていきます。
UVA:UVBと比較すると人へのダメージは少ないと言われていますが、太陽から人体へと届く紫外線のほとんど(9割)を占めています。また、UVAは肌の表皮だけでなく、その奥にある真皮まで届きます。
そのため、ダメージは少ないのですが、長期間UVAにさらされると肌の色がくすんだり、しわやたるみができる光老化と呼ばれる現象が(年齢による皮膚の変化とは異なります)。メラニン色素に作用し、肌が黒くなる日焼けも主にUVAによる影響です。
UVB:UVBはUVAよりも人体へ届く量は少ないですが、ダメージが強いことが特徴です。いわゆる日焼けで皮膚が真っ赤になる(サンバーン)現象やしみは、UVBの作用によるもの。また、これらの症状以外に皮膚癌の原因になることもあります1)。
ここまで紫外線が皮膚に与える影響について述べてきましたが、髪の毛にはどのような作用が起こるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
①髪の毛が細くなったり、抜け毛が増える
紫外線を浴びる量が増加すると、髪の毛のタンパク質が外に漏れてしまうという研究結果があります2)。
つまり、紫外線を浴びる時間が長ければ長いほどそれだけ髪の毛のタンパク質が失われていくということに。髪の毛の主成分は、ケラチンと呼ばれるタンパク質です。そのため、髪の毛のたんぱく質が不足していると髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えるといったことが生じてきます。
②髪がパサつき、枝毛、切れ毛が増加する
前章でも触れましたが、紫外線は外側にあるキューティクルにダメージを与えます。キューティクルは、髪の毛の3つの組織(キューティクル、コルテックス、メデュラ)のうち、紫外線によるダメージを最も受けやすいです。
キューティクルは、髪の毛の水分を保持する働きがあるので、ダメージを受けると髪の毛の水分が減少してしまいます。また、キューティクルは髪の毛の一番外側にあり、髪の毛を保護する役割が。そのため、キューティクルが損傷すると、髪の毛がパサついたり、枝毛や切れ毛が生じてしまいます。
③髪の色が脱色する
日本人の髪の毛は黒色ですが、これは髪の毛を黒くする色素のもとであるメラニンによる影響です。紫外線はメラニンを分解する働きがあります。紫外線を長時間浴びていると、メラニンを産生する細胞がダメージを受け、髪の毛に白髪がみられる(黒髪が脱色してしまう)可能性が。
まとめると、紫外線を長時間大量に浴び続けると、髪の毛がダメージを受けて細くなったり、抜け毛、枝毛、切れ、白髪が増加します。つまり、髪質が劣化してしまうので、見た目にもボリュームダウンして、薄毛になってしまうことに。
紫外線は夏だけ気をつければいい・・・というわけではない

最後に、紫外線について気をつけていただきたいことがあります。
紫外線は、夏の季節だけのもの、そして、昼間だけ気をつけていればいいと思っていませんか?
日焼けをイメージすると、夏の昼間に外にでていると生じることから、紫外線は夏の昼間に多く、その期間だけ気をつけていれば問題ないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、紫外線に対する誤解について少し触れていきます。
①夏以外にも紫外線量は意外と多い
紫外線は夏に多く、冬に少ないということは間違いないのですが、夏以外にも紫外線は存在するということに気をつけてください。1年の紫外線量の傾向として3-4月頃から紫外線量が増え始め、7月(夏至)頃がピークです。
そして、9-10月頃に減少。紫外線量が少ない時期は、秋の終わりから冬のみと短いことがわかります。
また、紫外線の種類によっても季節による変化は異なり、冬のUVBの紫外線量は夏と比べて20%まで低下しますが、UVAは50%までしか低下しません。冬も意外と紫外線にさらされていることがわかります。
②昼間以外にも紫外線量は少なくない
1日のうち午前10時から午後2時頃が一番紫外線量が多くなります。しかし、季節に関係なく7-15時までは一定量の紫外線量があるので注意が必要です。特に、UVAは7時から紫外線量は急激に増加します。
③晴れの日以外にも紫外線は多い
曇りや雨の日は、人体へ到達する紫外線量が減少します。しかし、紫外線量が0になるわけではありません。大まかな目安として薄曇りの日は快晴時の8-9割、曇りの日は6割、雨の日は3割くらいとなります。UVAはUVBと比較して雲による影響が小さいといわれているので注意が必要です。
このように、紫外線は夏や昼間・晴れの日以外にも意外と多いことがわかります。ですから、1年を通して紫外線のケアを行うことが大切です。
ドライヤーやヘアアイロンの熱
ドライヤーやヘアアイロンは、スタイリングに必要なもので、皆さんも使用されているかと思います。どちらも熱エネルギーを利用したスタイリング方法で、大変便利なものですよね。
しかし、髪の毛は熱に長時間さらされるとダメージを。ドライヤーは当てる距離にもよりますが、100-140℃、ヘアアイロンに至ってはそれより温度が高く設定できます。髪の毛は、ドライヤーやヘアアイロンによる熱が加わると水分量が低下し、ハリが失われるのです3)。
髪の毛が高温にさらされると髪の毛が乾燥し、パサつきや切れ毛が目立つようになります。後で述べますが、ドライヤーやヘアアイロンを使用するときは極力距離を離す、あるいは、設定温度を低めにするといいでしょう。
パーマやカラーのダメージ
パーマやカラーリングはおしゃれのために行う人もいれば、薄毛が気になって目立たなくしようとする目的に行う人もいらっしゃるかと思います。パーマやカラーリングを行う人は経験したこともあるでしょうが、髪がパサつくことや、切れ毛が見られることが。
パーマやカラーリングは化学反応により、髪の毛の構造を変化させることで髪の形を変えたり変色させたりします。それぞれのメカニズムについて軽くお話ししましょう(文献4を参考に作成)。
パーマ
髪の毛は、重量のほとんど(人にもよりますが65-95%)がタンパク質でできています。髪の毛の主成分はケラチンと呼ばれるタンパク質で、ケラチンにはシスチンというアミノ酸が多いことが特徴5)。
シスチンは、シスチン結合と呼ばれる強固な結合により、タンパク質とタンパク質がしっかりつながっていることで髪の毛に適度な硬さと柔軟さがあるわけです。
パーマは2種類の薬剤(第1剤と第2剤)があり、以下の原理で髪の毛を変形させます。
①第1剤に含まれるアルカリ剤でシスチン結合を切断し、髪の毛を自由に変形できるようにします。
②髪の毛を変形した状態(ヘアスタイルを整えた状態)にして第2剤に含まれる酸化剤で再度髪の毛をシスチン結合。
ストレートパーマにしたい場合はまっすぐの状態で、ウェーブパーマは髪の毛にウェーブがかかった状態で再結合させるということであり、原理は同じです。
パーマを使う時に第1剤でシスチン結合を切断する際にキューティクルが開いてしまいます。また第2剤で再度シスチン結合を再結合させるときはその内側のコルテックスもダメージを。その結果水分とタンパク質が失われて髪が乾燥して細くなってしまいます。
カラーリング

カラーリングに用いられる薬剤も、第1剤と第2剤の2種類の薬剤を使用して髪の色を変更します。
①第1剤に含まれる酸化染料とアルカリ剤で髪の毛のキューティクルを開くことで髪の毛の内部に薬剤が浸透しやすい環境に。
②第2剤に含まれる酸化剤との反応で髪の毛の中にあるメラニンを脱色させ、第1剤の酸化染料が発色することで髪の色が変化。
このようにヘアカラーは薬剤を内部に浸透させるため、キューティクルを開いたり、その内部にも薬剤を浸透させるので髪の毛にダメージを与えてしまいます。
ホルモンバランスの乱れ

ホルモンバランスの乱れも髪の毛に影響を与えます。髪の毛の状態に関わる主なホルモンは、性ホルモンと呼ばれる男性ホルモンと女性ホルモンです。
男性ホルモンは男性のみ、女性ホルモンは女性のみに分泌されるというイメージをお持ちかもしれません。
しかし、実は男性、女性とも両方の性ホルモンを分泌しており、それぞれバランスをとっていくことで体を整えています。このバランスが乱れることで、髪の毛にも影響がでてくるわけです。
男性ホルモンは、主に薄毛・脱毛や頭皮の皮脂の分泌に関わっています。男性ホルモンの1種であるジヒドロテストステロンは、男性型脱毛症であるAGAと深く関わっているのです。男性ホルモンが過剰になると、頭皮の皮脂が増えて脂漏性皮膚炎などを引き起こし、頭皮環境も悪化します。
女性ホルモンは、コラーゲンやヒアルロン酸といった、皮膚のハリや潤いに関わる成分の産生を促す働きが。
そのため、女性ホルモンが減少すると、肌のたるみやしわができるだけでなく、髪の毛もハリがなくなってパサついていくのです。また、最近は男性ホルモンだけでなく、女性ホルモンも薄毛に関与することが指摘されています6)。
ホルモンバランスは年齢や生活習慣、ストレスなどさまざまな要因によって影響を受けることが知られているため、睡眠時間をしっかり確保し、ストレス改善、バランスの良い食生活を心がけていくといいでしょう。
栄養不足
髪の毛の主な成分は、20種類のアミノ酸で構成され、ミネラルを含んでいるケラチン繊維と呼ばれるものです。栄養が足りない場合は、ケラチンが不足します。そうなると髪の毛が乾燥したりパサついたり、痛みやすく、髪の成長が遅れてしまいます。
それでは、髪の毛に影響があるとされる栄養素についてみていきましょう。
タンパク質
繰り返しになりますが、髪の毛の主な成分はケラチン繊維です。ケラチンはそのほとんどがタンパク質で占められています。
そのため、たんぱく質が不足しているとケラチンが不足し、髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えることに。適切なたんぱく質の補給は髪の毛にとって重要といえます。
鉄
鉄は血液の中の酸素を全身に運ぶ赤血球の材料です。鉄が不足すると全身へ運ばれる酸素の量が減ってしまい、髪の毛にも十分な酸素が行き渡らず、髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えることがあります。
鉄を多く含む食品は、赤身肉や鶏肉、魚などの動物性食品やほうれん草や豆類などの植物性食品が。動物性食品の方が吸収率はいいとされています。
注意点は、お茶やコーヒーに含まれるポリフェノールやタンニンという物質が鉄の吸収を悪くするため、食事と同時に摂取するときは飲みものや量に気をつけることです。
ビタミンB群、亜鉛

ビタミンBや亜鉛などの必須栄養素が欠乏すると、髪が細くなったり、脱毛を引き起こすといわれています。
それぞれの栄養素について髪への働きと多く含まれている食品について説明。
- ビタミンB2
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髪の発育を促し、皮脂の分泌を抑え、頭皮の新陳代謝を促進する働きがあります。 レバー、納豆、牛乳、青魚に多く含まれます。
- ビタミンB6
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頭皮からの過剰な皮脂の分泌を抑える働きがあります。カツオ、マグロ、サケ、バナナ、ささみに多く含まれます。
- ビタミンB12
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頭皮の血行を良くする働きがあります。チーズ、卵、豆類に多く含まれます。
- 亜鉛
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毛を含む細胞や組織の新陳代謝を活発にする働きがあり、不足すると抜け毛が増えます。牡蠣、牛肉、チーズ、カシューナッツ、レバー、卵に多く含まれます。
血行不良
頭皮の血行不良も、髪の毛にとって深刻な問題です。夏よりも冬に注意が必要と言われています。その理由として、冬は気温が低く、全身の血行が不良になりやすい季節だからです。
髪の毛は血管を通じて血液から栄養が送り届けられています。血行が悪くなると、血液から届く栄養が充分ではなくなりその結果、髪の毛が乾燥してパサついたり、細くなってしまうのです。
喫煙
喫煙は、さまざまな健康被害のリスクがあるといわれていますが、髪の毛に対しても悪影響があるのでしょうか。
結論から言うと、喫煙は髪の毛にも影響を及ぼします。喫煙は髪の毛の血流を減少させたり、毛包(毛根を保護して脱毛しないようにする重要な働きがある)へ毒性作用があることが示唆されているからです。
また、喫煙は抜け毛が増えるだけでなく、白髪が増えることも指摘されており、喫煙による髪の毛への悪影響は、喫煙量や喫煙期間と比例することが知られています7)。
喫煙は髪の毛へ悪影響を与えることが明らかです。髪の毛以外にも健康に影響があるので喫煙は控えたほうがいいでしょう。
パサつく髪は基本的に戻らない
ここまで髪の毛がパサつく原因についてお話してきましたが、すでに髪がパサついてしまった場合はどのようにすればいいのでしょうか。痛んだ髪をケアする時に皆さんがイメージするのはコンディショナーやトリートメントを使用することでしょう。
しかし、一度痛んでしまった髪はどんなにケアしても元に戻ることはありません。髪の毛も生き物。一度ダメージを受けて剥がれてしまったキューティクルは、時間が経っても自然に修復することはないのです。
そのため、髪がパサついてからケアを行おうと考えるのではなく、普段から髪のケアを行っていくことが大切となります。そして、すでに髪の毛が痛んでいる方はこれから生えてくる髪の毛を痛ませないようケアをしていきましょう。
パサつきの改善方法

すでに説明したように、髪がパサつく原因として以下が挙げられます。
- 紫外線による髪へのダメージ
- ドライヤーやヘアアイロンによる熱ダメージ
- パーマやカラーによるダメージ
- ホルモンバランスの乱れ
- 栄養不足
- 血行不良
- 喫煙
髪がある程度パサついてしまった状態では元に戻すことは難しいですが、これ以上髪にダメージを負わせない、そしてこれから生えてくる髪の毛に対して必要な対処方法があります。それぞれお話していきましょう。
正しいヘアケアを行う
以下の髪の毛を傷めるような行為は控えましょう。
- 頭を強くごしごしとこするような誤った頭皮マッサージなど。
- ブラッシングのしすぎ(濡れたままブラッシングすることも毛を傷める原因となります)。
- ワックスやヘアスプレーなどの整髪料を頭皮に直接つけたり、つけたまま寝てしまう。
- 頻回のパーマ、ブリーチ、縮毛矯正。
- 髪の毛を結んで持続的に髪の毛をひっぱる、ヘアピンやクリップを使用する。(頭皮へ慢性的な機械的な刺激を与えることで脱毛を引き起こす原因になります。)
- 過度の紫外線や次亜塩素酸(プールの消毒などで用いられる)。
具体的に行うとよい洗髪方法についても紹介します。
- 髪を洗う前に頭髪を軽くブラッシングしてときほぐす。
- シャンプーは泡立てて指の腹を使って頭皮を優しく洗う。
- リンスやトリートメントを使用し、髪の表面摩擦を抑えて栄養を補給し、保護。
- 洗髪後はしっかり洗い流す。
- ドライヤーは髪から20cm以上離して使用し、しっかり乾かす(濡れたままにしない)。
髪の毛を優しくいたわってあげることが、ダメージを少なくしてパサつきを減らすことにつながります。
紫外線ダメージを予防する

紫外線が頭皮へダメージを与えてしまうことはすでにお話しました。頭皮を紫外線から守るためには、直射日光が頭皮へ当たるのを避けることが重要です。
以下の対策をしていただくとよいでしょう。
日傘や帽子を使用する
日傘や帽子で直射日光をブロックすることが簡単で有効な方法です。日傘や帽子を使用することで20-50%紫外線をブロックすることが可能と言われています。最近は女性だけでなく、男性も日傘をさすようになってきました。
日焼け止めを塗る
日焼け止めというと、体に塗るタイプのものを想像する方が多いと思います。しかし、最近では頭皮にも使用できる日焼け止めが販売。スプレータイプやミストタイプ、バームタイプなどがあります。
場所を問わず使いたい時は、スプレータイプ、顔などにも使用したいときはミストタイプ、髪のセットと同時に日焼け止め対策をしたい場合はバームタイプなど用途によって使い分けるといいでしょう。
日焼けをしてしまったら保湿をする
もし、紫外線により、頭皮が日焼けをしてしまった場合は、保湿をしましょう。紫外線によって頭皮の皮脂の機能が弱まり、水分が失われているからです。ローションタイプの保湿剤などを使用し、適宜保湿していくといいでしょう。
生活習慣の改善

生活習慣も頭皮環境に大きな影響を及ぼします。髪の毛に関わる要因はいくつか挙げられますのでここに紹介しましょう。
食事
具体的な栄養については先ほど紹介しました。ここでお伝えしたいのは食事量や内容です。摂取カロリーや脂肪の多い食事をとると、頭皮の皮脂が過剰に分泌されます。その結果、頭皮の皮脂が貯留し、髪の毛の血流が減ったり、炎症の原因となりますので注意が必要です。
睡眠
睡眠も髪の毛には大切な要素です。睡眠中に成長ホルモンが分泌されるということを聞いたことはありませんか。成長ホルモンは、人の組織の成長を促すホルモンですが、髪の毛の発育にも関与。
成長ホルモンは、髪の毛包に作用し、発毛を促進するインスリン様成長因子の分泌を促すことで髪の毛を発育させます8)。
成長ホルモンは、入眠してから数時間で大量に分泌。睡眠時間が短かったり、睡眠自体が浅いと充分な成長ホルモンが分泌されず、髪の毛へ悪影響を及ぼす可能性があります。
規則正しい生活を送ることで睡眠時間をしっかり確保することは大切なことといえます。
ストレス
ストレスも髪の毛にとって良くない影響を及ぼします。なぜストレスが髪の毛によくないかと言うと、ストレスを過度に感じることで自律神経が乱れて、髪の血行不良になってしまうからです。
人はストレスをうけると自律神経のうち、交感神経がはたらきます。交感神経は血管を収縮させます。血管が収縮すると血流量が減少。その結果、髪の毛への栄養が届きにくくなってしまいます。
このように、生活習慣は髪の毛にとってとても大切です。生活習慣を改善することは、髪の毛だけでなく、健康にもつながりますのでぜひ実践してください。
帽子をかぶっていると薄毛になるのか?

よく質問を受ける内容の一つが帽子と薄毛は関係があるのか?についてです。結論から言いますと、帽子をかぶることが薄毛の直接的な原因になることはありません。しかし、注意点がいくつか存在しますので解説します。
①頭皮が蒸れてしまうことによる菌の繁殖
帽子をかぶっていると、頭皮が蒸れてしまうことがあります。蒸れにより頭皮にある皮脂が過剰になってしまい、菌が増殖。この状態を脂漏性皮膚炎といいます。脂漏性皮膚炎によって頭皮の環境が悪化すると、髪の毛への血流が減少し、抜け毛が増えてしまう恐れが。
脂漏性皮膚炎にならないためにも、帽子をかぶるときは汗をかいたらタオルで拭く、長時間帽子をかぶったままにしないように心がけましょう。
②頭皮の血行が悪くなる、髪が引っ張られてしまう
長時間帽子をかぶったり、サイズが小さめできつめの帽子をかぶっていると頭皮が締め付けられて頭皮の血行が悪くなったり、髪が引っ張られてしまうため薄毛を誘発してしまう可能性があります。
サイズに合った帽子を選び、長時間の使用を避けましょう。
まとめ
今回は、紫外線が頭皮や髪の毛に与える影響やその対策、髪のパサつきについてご紹介。紫外線など多くの要素が髪にダメージを与えてしまいます。髪のダメージは髪のパサつきとして現れてくるのです。
普段からケアを行っていき、髪をいたわることで髪のパサつき、ひいては髪の健康を保つことにつながります。髪が傷んでからケアをすればいいかなと思ってしまいがちですが、日頃から痛む前のケアを行うことが大切であるということをご理解いただき、適切なヘアケアを行う参考になれば幸いです。
参考文献
- 大中忠勝. 紫外線とその健康影響. Ann.Physiol.Anthrop 12(1):1-10, 1993.
- 渡辺 智子. 毛髪の紫外線ダメージ —評価指標とダメージケア—. J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn 48(4):271-277, 2014.
- 山下真司ら. 毛髪の熱ダメージとその指標について. J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn 46(3):219-223, 2012.
- 伊藤隆司. 頭髪用製品とその作用. 日本香粧品学会誌 43(3):199-208, 2019.
- 毛髪の科学 第4版. クラーレンス・R・ロビンス.フレグランスジャーナル社. 2006年.
- 遠藤 雄二郎. 女性ホルモンと毛髪 薄毛の治療を目指して. 皮膚と美容 51(1):8-14, 2019.
- Metelisa A, et al. Tobacco and the skin. Clinics in Dermatol 28(4):384-390, 2010. doi: 10.1016/j.clindermatol.2010.03.021.
- Itami S, et al. Androgen induction of follicular epithelial cell growth is mediated via insulin-like growth factor-I from dermal papilla cells. Biochem Biophys Res Commun 212:988-994, 1995. doi: 10.1006/bbrc.1995.2067.