皮膚の病気

バザン硬結性紅斑をみたら結核の検査を

バザン硬結性紅斑
藤井 麻美

バザン硬結性紅斑、なかなか聞き慣れない病名かもしれません。しかし、ただの足の傷かなと思っていたら実は結核菌が原因の病気であった、ということがありますので、ご一読ください。

まず、「結核」という病名を聞いて、「昔流行した過去の病気」というイメージのかたも多いかもしれません。

確かに、昔と比べると患者さんの数は減少していますが、今でも年間10000人以上の新しい患者さんが発生し、約2000人が命を落としている日本の主要な感染症の一つでもあります。

今回取り上げるバザン硬結性紅斑は、皮膚に症状が現れる病気です。

結核と聞くと「肺の病気」の印象が強いと思いますが、その思い込みが発覚の遅れにつながる可能性があります。

傷を作った記憶がないのにもかかわらず、両足のしこりや潰瘍を見つけたらバザン硬結性紅斑の可能性が。おや?と思ったら、皮膚科専門医を受診しましょう。

今回は、このバザン硬結性紅斑について解説いたします。

症状は足の盛り上がった結節

主に、中年女性の下腿に左右対称性にみられます。時に大腿(太もも)や前腕に生じることも。

皮疹の特徴としては、やや盛り上がりのある暗褐色のしこり(硬結性の紅斑あるいは皮下結節)で、進行すると徐々に潰瘍を形成するようになります。通常は、1個〜10数個です。

痛みは基本的にないことが多いと報告されていますが、まれに押すと痛みを呈することもあります。

原因は循環障害か結核菌か?

バザン硬結性紅斑は、結核菌あるいは結核菌に関連した抗原が血行性に播種(血管を伝って全身にひろがること)することで、皮膚に免疫反応を生じたもの(結核疹)と考えられています。

バザン硬結性紅斑
引用元: cyberderm

しかし、結核を伴わず(結核の治療ではなく)ステロイド治療が有効な症例も相次いで報告があることから、循環障害が基盤として発症する血管炎として考えられるようにも。これが、血流障害が起きやすい下肢に病変ができやすい原因です。

病変の皮膚をPCR法で調べると、約80%の確率で結核菌のD N Aが検出されるという報告があり、結核菌との関連性はいまだはっきりしていません。

検査は多彩

結核に感染しているのかどうかを、ツベルクリン反応、胸部レントゲン検査、インターフェロンγ遊離検査などで確認する必要があります。その他に検査として、採血検査、皮膚生検などが。

ツベルクリン反応については、バザン硬結性紅斑が結核菌に対する強い細胞性免疫を持つ個人に発症するため、著しく強い反応を示します。

レントゲン検査では、肺結核病変がないかどうか、また肺門リンパ節の腫脹がないか確認。

また、採血検査では赤血球沈降速度の亢進、C R Pの上昇(いずれも「炎症反応」と呼ばれる体内の炎症を反映する項目)を調べます。

病変部の皮膚生検検査を行い、病理所見を確認することも診断に重要です。皮下脂肪組織の小葉を侵す炎症と結核性の変化、並びに多彩な血管変化が。

初期には、リンパ球性の血管炎を生じ、時間経過とともにリンパ球、類上皮細胞,線維芽細胞、Langhans型巨細胞などを混じた結核性類上皮細胞肉芽種が確認されます。

通常、皮膚病変部における結核菌の培養やZiehl-Neelsen染色では結核菌は陰性ですが、P C R法にて病変部皮膚より結核菌の遺伝子が証明される例も多いです。

これらの検査を経て、バザン硬結性紅斑と診断していきます。

治療は安静と薬物療法

安静(全身、また局所)と、循環の改善のため下肢の挙上などが重要です。

また、抗結核薬の多剤併用療法を6〜12ヶ月程度行います。もし結核の内臓病変があれば、それに準じた治療を行います。抗生剤の治療が長期に及ぶため、耐性菌の出現(抗生剤が効かなくなってしまうこと)や、抗生剤による副作用に注意をする必要が。

また、抗結核薬の治療が無効であった場合で、かつ病理所見で血管炎の所見が強い場合は、短期間の副腎皮質ステロイド薬の内服が有効といわれています。

非ステロイド系抗炎症薬や血行改善目的でプロスタグランジン製剤を使用することも。

経過、予後

安静が重要であるため、長時間の立ち仕事は控えてください。結核感染がある場合は、予後は一般的に良いといわれており、1〜2ヶ月で瘢痕を残して傷は消退しますが、それ以外の場合は難治です。

また長年にわたり繰り返すことも多いといわれています。

まとめ

今回はバザン硬結性紅斑についてご紹介いたしました。

結核性のものでは、内臓病変が隠れている可能性があるため、この病気が疑われたら全身の検査が必要となります。

そして、どこから感染したのか、家族や職場などで結核の患者さんがいないかどうか、結核の症状である寝汗、咳、微熱などの有無も確認する必要も。

感染者を増やさないためにも、そして早めに治すためにも、なるべく早く医療機関を受診してください。

参考文献

1. 最新皮膚科学大系.第4巻.玉起邦彦.中山書店.2003年

2. 皮膚科学.第10版.大塚藤男.金芳堂.2016年

3. あたらしい皮膚科学.第3版.清水宏.中山書店.2018年

4. 今日の皮膚疾患治療指針.第4版.塩原哲夫ら.医学書院.2012年

5. 厚生労働省. 結核(BCGワクチン). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index.html

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