更年期に女性の抜け毛が増える原因とは?エストロゲン減少と髪の寿命の関係

40代後半から50代にかけて急増する抜け毛の悩みは、女性ホルモンであるエストロゲンの減少がヘアサイクルを乱し、髪の成長期を短縮させることが最大の原因です。

この記事では、加齢に伴うホルモンバランスの変化が頭皮環境や髪の寿命に与える影響を詳しく解説します。

また、FPHL(女性型脱毛症)の特徴や、食事・睡眠などの生活習慣の見直しによる対策、さらには医療的な視点も含めたケア方法を網羅しました。

目次[

エストロゲンが減ると髪はどうなる?ホルモンバランスとヘアサイクルが乱れる仕組み

更年期に差し掛かると多くの女性が直面する髪のボリュームダウンは、単なる年齢のせいだけではありません。体内で起こる女性ホルモンの劇的な変化が直接的に関与しています。

特に「髪の守り神」とも言えるエストロゲンの分泌量が低下するために、これまでは維持できていた髪の成長リズムが崩れ始めます。

髪の成長期を維持するエストロゲンの働きとは

エストロゲンは、女性らしい丸みのある体つきを作るだけでなく、髪の毛の健康を維持するために極めて重要な働きを担っています。具体的には、髪の毛が太く長く成長する期間である「成長期」を持続させる命令を出す役割があります。

通常、女性の髪のヘアサイクルは男性よりも長く、4年から6年ほど成長し続けます。これはエストロゲンが毛根にある毛母細胞の活動を活発にし、細胞死(アポトーシス)を防いでいるためです。

また、エストロゲンにはコラーゲンの生成を助ける働きもあります。頭皮の厚みや弾力を保って、髪が根元からしっかりと立ち上がる土台を作っています。

若い頃に髪にハリやコシがあるのは、このホルモンが十分に分泌され、頭皮の血流や栄養供給がスムーズに行われている証拠でもあります。

年代・時期エストロゲンの状態髪に現れる主な変化
20代〜30代前半分泌量がピークで安定ハリ・コシがあり、成長期が長く続く。
30代後半〜40代徐々に減少を開始髪のうねりや乾燥が気になり始め、白髪が増える。
45代〜55歳(更年期)急激に低下し乱高下する抜け毛が急増し、全体的にボリュームが減る。
閉経後欠乏状態で低空飛行頭頂部の地肌が目立ち、髪質が細く弱くなる。

成長期が短くなり休止期が長くなる負の連鎖

閉経に向けて卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減ると、これまでブレーキがかけられていた脱毛のスイッチが入りやすくなります。

その結果、本来であればまだ成長を続けるはずだった髪が早期に成長を止めます。

そして、「退行期」から「休止期」へと移行してしまいます。成長期が短縮されるということは、髪が太く育つ前に抜けてしまうことを意味し、全体的なボリュームダウンに直結します。

コラーゲン不足による頭皮の菲薄化

エストロゲンが減少すると、頭皮内のコラーゲン量も減少し、頭皮自体が薄く硬くなる「菲薄化(ひはくか)」が進行します。

土壌が痩せると作物が育ちにくくなるのと同様に、薄くなった頭皮では血管が圧迫され、毛根への栄養供給が滞ります。

これが、更年期における抜け毛や髪の細り毛を加速させる大きな要因の一つとなってしまうのです。

ヘアサイクルの短期化が招く未熟な髪

正常なヘアサイクルでは、全体の約85%から90%が成長期にあります。しかし、更年期の影響でホルモンバランスが乱れると、成長期の割合が減り、休止期の毛穴が増えていきます。

さらに、新しく生えてくる髪も成長期間が十分に確保されないため、細くて短い「産毛」のような状態で成長が止まってしまうケースが多くなります。

これが、本数自体は大きく減っていなくても、地肌が透けて見えてしまう原因です。

男性ホルモンの影響力が相対的に強まるリスク

女性の体内にも微量ながら男性ホルモン(テストステロン)が存在しています。若い頃はエストロゲンの分泌量が圧倒的に多いため、男性ホルモンの働きは抑え込まれています。

しかし、更年期になりエストロゲンが激減すると、男性ホルモンの量は変わらなくても、相対的にその影響力が強まってしまうときがあります。

男性ホルモンが優位になると、皮脂の分泌量が増えたり、毛根が攻撃されたりするリスクが高まります。

これは男性型脱毛症(AGA)と似た仕組みですが、女性の場合は生え際が後退するのではなく、頭頂部を中心に全体的に薄くなる傾向があります。

ホルモンバランスの変化は、単に「減る」だけでなく、こうした「バランスの逆転」による影響も無視できません。

更年期特有の薄毛「FPHL」の特徴とは?分け目や頭頂部が目立ってしまう原因

更年期の女性に見られる薄毛は、男性の薄毛とは明確に異なる特徴を持っています。

医学的には「女性型脱毛症(FPHL:Female Pattern Hair Loss)」と呼ばれ、特定の部位が完全に剥げるのではなく、全体的に密度が低下していくのが特徴です。

びまん性脱毛症とFPHLの違いと特徴

以前は「びまん性脱毛症」という言葉が多く使われていましたが、最近ではより広い概念としてFPHLという診断名が用いられることが増えています。

「びまん」とは「広範囲に広がる」という意味で、その名の通り、頭髪全体が均一に薄くなっていく状態を指します。

FPHLは、ホルモンバランスの変化だけでなく、加齢、遺伝、生活習慣などが複雑に絡み合って発症する症候群として捉えられています。

FPHLの最大の特徴は、生え際のラインは保たれたまま、頭頂部から分け目にかけての範囲がクリスマスツリーのように広がって見える点です。

髪一本一本が細くなる「軟毛化」が進むため、髪を結んだ時の束が以前より細くなったり、地肌の白さが目立ったりして気づくケースが多くあります。

なぜ頭頂部や分け目から薄くなるのか

頭頂部は、重力の影響で血流が滞りやすい場所であると同時に、紫外線などの外的ダメージを最も受けやすい部位です。

さらに、女性ホルモンの減少による頭皮の菲薄化が重なると、毛根を支える力が弱まり、髪がペタンと寝てしまうようになります。

分け目は常に同じ方向で力がかかっているため、牽引性(けんいんせい)の負荷も加わりやすく、他よりも早く薄毛が進行してしまいます。

ヘアスタイルの固定化が招くリスク

長年同じ分け目にしていたり、毎日きつく髪を結んでいたりすると、その部分の毛根に負担が蓄積します。更年期の弱った頭皮にとって、この物理的な負担は大きなダメージとなります。

定期的に分け目を変えたり、ふんわりとしたヘアスタイルを選んだりすることが、頭皮への負担を分散させるために必要です。

初期段階で見逃しやすいサインとは

FPHLは進行が緩やかであるため、初期段階では「今日はセットが決まらないな」「湿気のせいかな」といった程度の違和感として見過ごされがちです。

しかし、排水溝に溜まる抜け毛の中に、短くて細い毛が混ざり始めたら注意が必要です。

これは成長しきれずに抜けた毛であり、ヘアサイクルが短縮している明確な証拠です。また、頭皮が以前より脂っぽく感じたり、逆に乾燥してフケが出やすくなったりするのも、頭皮環境が悪化しているサインです。

早期にケアを始めることで、進行を食い止め、現状を維持できる可能性は十分にあります。鏡で正面だけでなく、合わせ鏡を使って頭頂部やつむじの状態を定期的にチェックすることが大切です。

進行レベル自覚症状・見た目の特徴推奨される対策
初期(軽度)分け目が少し目立つ、スタイリングが持続しない。抜け毛の中に短い毛が混じる。シャンプーの見直し、頭皮マッサージ、生活習慣の改善。
中期(中度)頭頂部の地肌が透けて見える。髪のハリ・コシがなくなり、全体的にボリューム不足。育毛剤の使用開始、専門医への相談、サプリメントの活用。
後期(重度)頭頂部から後頭部にかけて広範囲で地肌が見える。ウィッグが必要と感じる。医療機関での治療(外用薬・内服薬)、ウィッグの検討。

加齢だけではありません。抜け毛を加速させてしまう生活習慣と血行不良

ホルモンバランスの変化は避けられない身体の変化ですが、抜け毛を加速させる要因の多くは、日々の生活習慣の中に潜んでいます。

特に更年期世代は、仕事や家庭での責任が重なり、自分の体を後回しにしがちな時期でもあります。

慢性的な運動不足が招く頭皮の血行不良

髪の毛は、血液が運んでくる酸素と栄養をエネルギー源として成長しています。

しかし、頭皮は心臓から一番高い位置にあり、重力に逆らって血液を送らなければならないため、もともと血流が悪くなりやすい場所です。

慢性的な運動不足は、全身の代謝を低下させるだけでなく、末梢血管の血流を滞らせ、毛根を「栄養失調」の状態にしてしまいます。

特にデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、首や肩の筋肉が凝り固まり、頭部への血流が物理的に阻害されます。首こりや肩こりがひどい女性に薄毛の悩みが多いのはこのためです。

激しい運動は必要ありませんが、ウォーキングやストレッチなどで日常的に体を動かし、ポンプ機能を高めることが髪のためには大切です。

習慣カテゴリー具体的なNG行動髪への悪影響
姿勢・身体スマホを長時間うつむいて見る、猫背。首や肩の筋肉が緊張し、頭皮への血流が遮断される。
食事・嗜好冷たい飲み物を好む、湯船に浸からない。内臓が冷え、全身の代謝機能が低下する。
頭皮環境朝シャン、生乾きで寝る。頭皮のバリア機能が低下し、雑菌が繁殖しやすくなる。

過度なダイエットや偏った食生活の代償

更年期太りを気にして食事制限を行う方もいますが、極端なカロリー制限や糖質制限は髪にとって致命的です。生命維持の優先順位において、髪や爪などの末端組織は最も低く設定されています。

栄養が不足すると、体はまず内臓や脳を守ろうとし、髪への栄養供給を真っ先にカットします。

タンパク質不足の深刻な影響

髪の主成分は「ケラチン」というタンパク質です。食事から摂取するタンパク質が不足すれば、当然ながら髪を作る材料が枯渇します。

朝食をパンとコーヒーだけで済ませたり、昼食を麺類だけで終わらせたりする食生活は、髪の原料不足を招きます。肉、魚、卵、大豆製品など、良質なタンパク質を毎食意識して摂取することが求められます。

喫煙や過度の飲酒が髪に与えるダメージ

喫煙は血管を収縮させ、血流を劇的に悪化させます。また、タバコに含まれる有害物質を分解するために大量のビタミンCが消費されますが、ビタミンCはコラーゲンの生成や血管の強化に必要な栄養素でもあります。

喫煙習慣は、髪への栄養ルートを細くし、さらに頭皮の老化を早める行為と言えます。

また、適度な飲酒はリラックス効果がありますが、飲みすぎると肝臓に負担がかかります。

髪の主成分であるタンパク質は肝臓で作られますが、アルコールの分解に肝臓が忙殺されると、髪を作るための働きがおろそかになります。

さらに、アルコールの分解過程で生成されるアセトアルデヒドは、睡眠の質を低下させ、成長ホルモンの分泌を妨げる原因にもなります。

食事で補うエストロゲン様作用。大豆イソフラボンとエクオールを積極的に摂りましょう

減少していくエストロゲンを体内で増やすことはできませんが、食事を通じて「似た働き」をする成分を補うことは可能です。その代表格が、大豆製品に含まれる「大豆イソフラボン」です。

大豆イソフラボンが髪に良い理由

大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンと非常によく似ています。体内に入るとエストロゲンの受容体に結合し、不足しているホルモンの働きを穏やかにサポートしてくれます。

これにより、ヘアサイクルの乱れを整え、髪の成長期を維持する手助けをしてくれることが期待できます。

納豆、豆腐、豆乳、味噌などの大豆製品は、日本の食卓に馴染み深く、手軽に取り入れられるのが魅力です。

毎日の食事にこれらをプラスすると、髪だけでなく、更年期特有のほてりやイライラなどの不調緩和にも役立ちます。

腸内で作られるスーパーイソフラボン「エクオール」

近年、大豆イソフラボンの健康効果には個人差があることが分かってきました。その鍵を握るのが「エクオール」という物質です。

大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されて生まれるエクオールは、イソフラボンそのものよりも強いエストロゲン様作用を持つとされています。

日本人の2人に1人は作れない?

残念ながら、すべての人が体内でエクオールを作れるわけではありません。

腸内に「エクオール産生菌」を持っている日本人は約50%と言われており、半数の人は大豆製品を一生懸命食べても、その恩恵を十分に受けられていない可能性があります。

自分がエクオールを作れる体質かどうかは、市販の検査キットで簡単に調べられます。

もし作れない体質であったとしても、エクオールを含有したサプリメントを活用すると、直接体内に取り入れることが可能です。

食事からの摂取が難しい場合や、効率的に補いたい場合には、サプリメントも有効な選択肢となります。

髪の成長を助けるその他の必須栄養素

ホルモンバランスへの対策と同時に、髪を作る「材料」と、細胞の働きを助ける「補酵素」を摂取するのも大切です。特に更年期女性はミネラルが不足しがちです。

亜鉛はケラチンの合成に必須であり、鉄分は血液中の酸素運搬を担います。これらの栄養素をバランスよく組み合わせると、育毛効果を底上げできます。

栄養素主な働き多く含まれる食材
亜鉛アミノ酸をケラチンに再合成するのを助ける。牡蠣、レバー、ナッツ類、牛肉(赤身)。
ビタミンB群頭皮の皮脂分泌を調整し、代謝を促進する。豚肉、うなぎ、玄米、マグロ。
ビタミンE血管を拡張し、血行を促進する抗酸化作用。アーモンド、アボカド、オリーブオイル、かぼちゃ。

頭皮環境を整えるには?正しいシャンプーの選び方とマッサージ習慣

髪が育つ土壌である頭皮が荒れていては、いくら栄養を摂っても健康な髪は生えてきません。更年期の頭皮は、乾燥しやすくデリケートな状態になっています。

若い頃と同じケアを続けていると、逆に頭皮を痛めつけているかもしれません。

洗浄力が強すぎるシャンプーからの卒業

更年期の頭皮ケアで最も見直すべきなのが、シャンプーの洗浄力です。

市販の安価なシャンプーに多く含まれる「高級アルコール系(ラウレス硫酸Naなど)」の洗浄成分は、汚れだけでなく、頭皮に必要な皮脂や保湿因子まで洗い流してしまいます。

乾燥が進んだ頭皮は、バリア機能が低下し、炎症や痒みを引き起こしやすくなり、結果として抜け毛を誘発します。

アミノ酸系シャンプーへの切り替え

更年期世代におすすめなのは、洗浄力がマイルドで頭皮に優しい「アミノ酸系」のシャンプーです。パッケージの成分表を見て、「ココイル〜」「ラウロイル〜」といった表記があるものを選びましょう。

泡立ちは控えめかもしれませんが、頭皮の潤いを残しながら洗えて、乾燥によるトラブルを防げます。

アイテム選ぶ際のポイント注意点
シャンプー「アミノ酸系」「ベタイン系」の洗浄成分を選ぶ。保湿成分(セラミド等)配合なら尚良し。「スカルプ」とあっても洗浄力が強いものがあるため成分確認が必要。
トリートメント髪の内部補修成分(ケラチン、ヘマチン)が含まれているもの。頭皮につけると毛穴詰まりの原因になるため、毛先中心につける。
育毛剤血行促進成分(センブリエキス等)や女性ホルモン様成分が含まれているもの。アルコール含有量が高いと刺激になる場合がある。パッチテストを推奨。

頭皮を傷つけない「予洗い」と「泡パック」

シャンプーの効果を最大化し、摩擦ダメージを減らすためには、お湯だけで髪の汚れを落とす「予洗い」が重要です。

38度前後のぬるま湯で1分〜2分程度、頭皮を揉みほぐすようにしっかり洗うと、汚れの7割から8割は落ちると言われています。

これによりシャンプーの量を減らせて、頭皮への負担も軽減されます。

洗う際は、爪を立てず、指の腹を使って頭皮を動かすようにマッサージします。

また、アミノ酸系シャンプーなどの良質な成分が含まれている場合、すぐに流さずに1分ほど泡を乗せたままにする「泡パック」を行うと、保湿成分が浸透しやすくなります。

血流を呼び覚ます頭皮マッサージのポイント

硬くなった頭皮を柔らかくするには、毎日のマッサージが効果的です。タイミングとしては、体が温まって血行が良くなっている入浴中や、育毛剤を塗布した後が適しています。

耳の上にある側頭筋や、首の後ろの後頭筋をほぐすと、頭頂部への血流がスムーズになり、顔のリフトアップ効果も期待できます。

セルフケアで改善しない場合はどうする?医療機関や専門家を頼る判断基準

食事やシャンプーの見直しといったセルフケアを数ヶ月続けても抜け毛が減らない、あるいは薄毛の進行が早いと感じる場合は、専門家の力を借りることも検討すべきです。

現代医学では、女性の薄毛に対する治療法も確立されつつあります。

皮膚科と薄毛専門クリニックの違い

一般の皮膚科でも脱毛症の相談は可能ですが、基本的には「病気」としての治療が中心となります。

円形脱毛症や脂漏性皮膚炎などが原因であれば保険診療の対象となりますが、加齢に伴うFPHLなどは「美容目的」とみなされ、治療の選択肢が限られる場合が多いです。

一方、薄毛治療専門のクリニック(FAGAクリニックなど)では、詳細な血液検査やマイクロスコープによる頭皮診断を行い、個々のホルモンバランスや進行度に合わせたオーダーメイドの治療を提案してくれます。

自由診療となるため費用はかかりますが、内服薬、外用薬、注入療法(メソセラピー)など、積極的な発毛治療を受けられます。

発毛効果が認められている成分「ミノキシジル」

現在、日本で女性の薄毛治療薬として医学的に推奨度が高いのが「ミノキシジル」の外用薬です。頭皮に直接塗布し、毛包に直接作用して細胞分裂を活性化させ、発毛を促します。

ドラッグストアで購入できる製品もありますが、濃度や配合成分によって効果が異なるため、薬剤師や医師に相談して選びましょう。

ホルモン補充療法(HRT)と髪の関係

更年期障害の治療として行われる「ホルモン補充療法(HRT)」は、減少したエストロゲンを薬で補う治療法です。

主な目的はホットフラッシュや発汗などの症状緩和ですが、副次的な効果として、肌のハリや髪の質の改善が見られるケースがあります。

ただし、薄毛治療のみを目的としてHRTが行われるのは一般的ではありません。更年期の全身症状がつらく、薄毛も気になるという場合は、婦人科で相談してみる価値があります。

治療・ケア方法の選択肢と期待できる効果

  • 一般用医薬品(リアップなど)
    手軽に始められるが、効果を実感するには最低でも4ヶ月〜6ヶ月の継続が必要。初期脱毛が起こる場合もある。
  • 専門クリニックでの内服薬・外用薬
    ミノキシジルやパントガール(サプリメントに近い薬)などを処方。医師の管理下で副作用リスクをコントロールしながら治療できる。
  • 注入療法(メソセラピー・PRP療法)
    成長因子を頭皮に直接注入する。即効性を期待する人向けだが、費用は高額になりやすい。
  • ウィッグ・増毛エクステ
    根本治療ではないが、見た目のストレスを即座に解消できる。治療と並行して活用すると、精神的な安定を得られる。

ストレスは髪の大敵です。自律神経を整えて髪の寿命を延ばす方法

「ストレスでハゲる」というのは迷信ではなく、科学的な根拠があります。特に更年期は、ホルモンバランスの乱れ自体が自律神経を不安定にさせ、イライラや不安を感じやすくさせます。

この精神的なストレスが身体的なダメージとなり、髪の寿命を縮めてしまうのです。

コルチゾールが髪の成長を阻害する

強いストレスを感じると、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールは血管を収縮させる作用があり、慢性化すると頭皮への血流が常に悪い状態になります。

さらに、活性酸素を発生させ、毛母細胞を酸化(老化)させてしまうため、白髪や抜け毛の直接的な原因となります。

ストレスをゼロにするのは不可能ですが、「溜め込まない」「発散する術を持つ」と、髪を守ることにつながります。

睡眠は最高の育毛タイム

髪の成長ホルモンが最も多く分泌されるのは、深い眠り(ノンレム睡眠)に入った直後です。更年期は中途覚醒や不眠に悩まされがちですが、睡眠の質を上げる工夫が必要です。

寝室の温度や湿度を快適に保つ、自分に合った枕を選ぶ、アロマを焚くなど、リラックスして入眠できる環境を整えましょう。

「寝ることも育毛ケアの一つ」と捉え、睡眠時間の確保を優先してください。

今日からできる自律神経ケア

  • 「1/fゆらぎ」を取り入れる
    川のせせらぎや焚き火の音など、自然界のリズムに触れる時間を1日5分でも作る。
  • 寝る前のデジタルデトックス
    就寝1時間前はスマホを手放し、脳への光刺激を遮断して睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を促す。
  • 深呼吸を意識する
    ストレスを感じたら、4秒吸って8秒吐く呼吸法を行い、強制的に副交感神経を優位にする。

「完璧を目指さない」心の持ちよう

更年期は、これまでできていたことができなくなったり、体調が優れなかったりと、自分を責めてしまいがちな時期です。

しかし、ストレスを抱えて悩み続けること自体が、さらに薄毛を悪化させる悪循環を生みます。

「今は体が変わる時期だから仕方ない」「できることから少しずつ」と、今の自分を受け入れる心の余裕を持ちましょう。

髪の悩みも一人で抱え込まず、同じ悩みを持つ人と話したり、専門家に頼ったりすると心が軽くなり、それが結果として良い頭皮環境を作ることにつながります。

よくある質問

Q
更年期の抜け毛はいつまで続きますか?
A
更年期の抜け毛が落ち着く時期には個人差がありますが、ホルモンバランスが安定する閉経後数年で抜け毛の量自体は落ち着く傾向にあります。
ただし、何もしなければ髪のボリュームは戻らないケースが多く、適切なケアを継続すると、髪の質を維持・改善することは可能です。

Q
豆乳を毎日飲むと更年期の薄毛は治りますか?
A
豆乳に含まれる大豆イソフラボンは髪のサポートにはなりますが、それだけで更年期の薄毛が完治するわけではありません。
あくまで食事療法の一環として捉え、頭皮ケアや睡眠など、他の対策と組み合わせると効果を発揮します。過剰摂取はホルモンバランスを崩す可能性もあるため、適量を守りましょう。

Q
白髪染めやカラーリングは更年期の薄毛を悪化させますか?
A
カラーリング剤の薬剤が頭皮に付着すると、刺激となって炎症を起こし、更年期の薄毛を悪化させる要因になり得ます。
美容室で「頭皮につけないように塗ってください」とオーダーしたり、頭皮に優しいヘナやヘアマニキュアを選んだりすると、ダメージを最小限に抑えられます。
Q
更年期の抜け毛に育毛剤は本当に効果がありますか?
A
更年期の抜け毛に対して、女性専用の育毛剤は頭皮の血行促進や保湿に役立ち、ある程度の効果が期待できます。
特に有効成分としてミノキシジルが配合されている医薬品であれば、発毛効果が医学的に認められています。
ただし、即効性はないため、少なくとも半年以上の継続使用が必要です。
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CAMACHO-MARTINEZ, Francisco M. Hair loss in women. In: Seminars in cutaneous medicine and surgery. No longer published by Elsevier, 2009. p. 19-32.

執筆・監修医師

藤井麻美
藤井麻美
あさ美皮フ科亀戸駅前 院長

あさ美皮フ科亀戸駅前 院長
皮膚科専門医/医学博士
略歴:愛媛大学医学部を卒業後に大阪大学医学部皮膚科へ入局。退役軍人病院(米国ロサンゼルス州)皮膚科、岐阜大学医学部付属病院皮膚科を経て当院を開業。

所属:日本皮膚科学会/日本レーザー医学会/日本乾癬学会/日本アレルギー学会/江東区医師会