AGAを予防するために学ぼう　薄毛治療薬の中心的存在であるフィナステリドとは

フィナステリドは、AGA治療の中心的な薬剤です。育毛剤には塗り薬、飲み薬、シャンプーなどさまざまな商品がありますが、フィナステリドは内服のみで使用できる成分です。

2005年にプロペシア®という医薬品が発売されて以降、多くのAGA患者さんに使われています。

2015年以降、各社からジェネリック製品の販売も開始され、さらに必要としている方が使いやすい状況になりました。

ただし、プロペシア®もジェネリック薬も、フィナステリドはクリニックで医師の診断と処方が必要です。また、女性や小児には使えないなどの制限や、いくつか副作用もあります。

フィナステリドの使用上の注意点をよく知っていただき、上手に薬を使うことで、より効果的なAGA治療をおこなっていきましょう。

前立腺治療薬のフィナステリドが、脱毛治療薬に使われることになった理由

AGAの発症、進行には男性ホルモンが関与しています。男性ホルモンであるテストステロンは、それ自体では頭皮に影響は及ぼしません。

テストステロンは、頭皮などにある5α-リダクターゼという酵素の働きにより、より効果の高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます¹⁾ 。DHTは頭皮の毛に作用すると、毛髪が柔らかくなり、毛周期の成長期が短く。

軟毛化した毛は、短くなった成長期で十分に成長できないため、薄毛から最終的には抜け落ちて禿げてしまいます。

フィナステリドは、5α-リダクターゼの働きを阻害することで、DHTの濃度を下げることが。DHTを作らせないことで、異常になった毛周期を正常化させ、成長期の長さを戻すことで、強く硬い毛を育てる効果があります。

5α-リダクターゼには、全身の皮膚や皮脂腺にあるI型、前頭部などの頭皮の毛、前立腺、ヒゲにあるII型の2種類があり、フィナステリドは主にII型の酵素を特異的に阻害²⁾ 。

フィナステリドは、当初、前立腺肥大症の治療薬として承認されていました。その後、男性型脱毛症にも効果があるとしてアメリカで承認され、プロペシア®という医薬品は2005年から日本で使えるように。

現在では、フィナステリド錠®など、いくつかの会社からジェネリック薬が製造販売され、病院やAGAクリニックで広く処方することができるようになりました。

フィナステリドの内服は、日本皮膚科学会から出されている最新のAGA治療ガイドラインで推奨度Aと、行うように強く進められている治療の一つです³⁾ 。

ガイドラインは、日本を含めた世界中で発表されたさまざまな研究を元に推奨度が決められていますが、その中でも最も科学的根拠の高いといわれている研究に、システマティックレビューというものがあります。

その研究では、3927人のAGA患者さんにフィナステリドを投与したところ、投与6ヶ月後、24ヶ月後両方の時点で、脱毛部分の柔らかくなってしまった毛が硬毛化したという結果が。

日本人が対象の研究もあり、その研究でも5年間フィナステリドを内服したところ、脱毛の改善効果が99.4%と高確率で得られることがわかりました。このように、AGAにおけるフィナステリドは科学的根拠もしっかりとした治療薬です。

フィナステリドの内服方法：周産期の女性と子どもが触れないように気をつけましょう

フィナステリドは、0.2mg製剤と1mg製剤があり、いずれも1日1回の内服です。食事などの影響を受けないため、1日のうちどのタイミングで摂取しても問題はありません⁴⁾ 。最大量は1mg/日と決まっており、自己判断で増やしたりすることはやめましょう。

AGAの治療ガイドラインで、フィナステリド推奨の根拠となっている過去の研究では、414人の日本人男性に対してフィナステリドを投与したところ、0.2mg/日で54%、1mg/日では58%のAGA症状改善効果を認めました。

副作用はどちらも1.5〜2.9%程度で、差はないという結果³⁾ 。0.2mg、1mgどちらから開始するかは医師の判断によります。量については、主治医と相談しましょう。

フィナステリドは、肝臓で代謝されて体の外に排泄されるため、頻度はまれですが、肝機能障害がでることがあります。既往歴などで服薬前から肝障害がある場合には、フィナステリドを避ける必要があります。

また、妊娠または妊娠している可能性がある女性や、授乳中の女性に使うことはできません。妊娠女性の赤ちゃんが男児であった場合、生殖器の奇形を起こす可能性があることが理由です。

フィナステリドの錠剤が分割や破損している場合にも、有効成分に触れる可能性があるため、妊娠中、授乳中の女性は触らないほうがよいでしょう。自宅などで破損してしまった場合には、取扱いに注意が必要です。

妊娠可能性がない女性への投与に関しても、女性型AGAにフィナステリドの効果は乏しいとされています。基本的には女性にはフィナステリドは適応外と考えてよいでしょう。

フィナステリドを飲むことで、前立腺癌の腫瘍マーカーである血清前立腺特異抗原（PSA）の値が約50%低下することがわかっています。

AGAでフィナステリドを投与中の場合、前立腺癌の診断の目的でPSAを測定した際には、値を2倍して評価する必要があります。検査を受ける病院や主治医の先生に必ずフィナステリド内服中であることを伝えましょう。

フィナステリドの副作用では、男性機能の低下症状の出現があり得る

フィナステリドの副作用としては1〜5%未満の頻度で性欲が減ることがあります。

1%未満とまれなものには、勃起不全や射精障害、性液量の減少、頻度は不明ですが睾丸痛、精液中に血液が混ざる、男性不妊の原因や精液の質の低下（濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常など）などが。

勃起機能不全と射精障害は、フィナステリドの投与を中止しても症状が持続したという報告もあり、注意が必要です。頻度不明の乳房の痛みや肥大、抑うつ症状やめまいの症状がでることもあります。

いずれもメカニズムは不明です。フィナステリドは肝臓で代謝され排泄される薬剤のため、頻度が不明ながら肝機能障害がでることもあります。

フィナステリドの費用相場は、おおよそ月々4000〜8000円前後

AGAの治療は、保険適応外の自由診療。フィナステリドの先発品であるプロペシア®、ジェネリック薬であるフィナステリド錠®はファイザー、大興製薬、沢井製薬、東和薬品、シオノケミカル、辰巳化学、武田テバファーマ、富士化学工業、リョートーファイン、小林化工など各社から出されています⁵⁾ 。

これらの薬剤は、すべて自由診療ではありますが、厚労省の認可された薬剤ですので、病院・クリニックで処方可能です。

海外のものなどを個人輸入して購入できるサイトもありますが、無認可であり薬の成分などの確認義務がないため、安全性は保証されません。フィナステリドは病院やAGA専門のクリニックで処方をしてもらいましょう。

価格に関しては、どの薬剤も厚労省の薬価収載がないため、クリニックごとに多少のばらつきはあります。目安としては1ヶ月分の1箱28錠入りでプロペシア®は8000円前後、ジェネリック薬は4000円前後が相場のようです。

多くは、病院のホームページなどで処方可能な薬剤や価格の目安などの情報が記載してあります。事前にチェックしておくとよいでしょう。

Q:内服して1カ月経過しますが効果がみられません。

フィナステリドは、毛周期を改善させることで育毛効果を発揮します。

頭皮の毛周期のうち、正常の成長期は4〜6年と長いので、すぐに効果が出てくることはなく、毛の毛包レベルで徐々に毛周期が改善。育毛効果を実感するためには少なくとも6ヶ月は治療を継続して評価するべきでしょう。

早い方だと3ヶ月程度で軟毛化した毛が硬くなってくるのを感じる方もいますが、個人差があります。気長に治療をしましょう。効果が見られないからといって、6ヶ月未満で治療を自己中断してしまうと薬の効果は消失し、AGAは進行してしまいます。

Q:フィナステリドとデュタステリドを同時に内服すると効果が倍になりますか？

デュタステリドも、テストステロンをより強い効果のあるDHTに変換する際に作用する5-α還元酵素を阻害します。フィナステリドとの違いは、フィナステリドがII型のみ阻害するのに対し、デュタステリドはI型、II型ともに阻害。

どちらを選択するかは、AGAの部分やタイプにもよります。基本的には効果がでるメカニズムは同じなので、フィナステリドとデュタステリドを同時に服薬することは無意味であり、推奨されません。

フィナステリドかデュタステリドを服薬しつつ、ミノキシジル外用薬など他の治療と組み合わせることをお勧めいたします。

内服と筋トレに関係はありますか？

有酸素運動などの適度な運動をすることで、男性ホルモンであるテストステロンが上昇することが知られています⁶⁾ 。フィナステリドは5α-還元酵素を阻害することで、テストステロンをDHTに変換することを防ぐのです。

どちらもテストステロンが共通点ではありますが、フィナステリドと筋トレに直接的な関係はないとされています。

Q:1日分飲み忘れたのですが、2日分まとめて内服したらいいですか？

飲み忘れた場合は、1日分をいつもの決まった時間に飲みましょう。フィナステリドは1日最大1mgと決められています、まとめ飲みはしないでください。

Q:ネットで安い商品がありましたが効果はありますか？

医学的に効果があり、国で認可されたフィナステリドは、病院での処方が必要です。対面、オンライン診療どちらも利用でできますが、どちらにせよ、医師の診察と処方は必要。その他の個人輸入品やネットで安く売られている商品は、成分などを調べる方法や保証するものがないため、おすすめできません。

Q:内服を開始したら脱毛が進んだのですが、心配ないですか？ 

フィナステリドは毛周期の異常を改善することで育毛効果がありますが、内服開始後の初期1-2ヶ月はむしろ治療後に抜け毛が目立つことがあります。これが初期脱毛で、治療時に生えている毛が毛周期の休止期に入ることで起こるのです。

内服開始後、あたかも脱毛が進行しているように感じてしまいます。ただ、抜けた毛はもともとミニチュア化した弱々しい毛で、本来の毛ではありません。

この休止期脱毛を乗り切って治療を継続することで、正常な毛包から太く長い毛が徐々に生えてくるので、初期脱毛のせいで治療を中断することなく、根気強く治療を継続しましょう。

Q:内服中は献血できますか？

献血をするには、プロペシア®、ジェネリック薬のフィナステリド錠®は、どちらも服薬中止から1ヶ月間あける必要があります⁷⁾ 。内服継続しながらの献血はできません。

Q:内服中は健康診断に影響はありますか？

健康診断などで前立腺癌の腫瘍マーカーとして測定される血清前立腺特異抗原（PSA）が、フィナステリド内服中は約50%低下します。AGAでフィナステリドを投与中の場合は、PSA値を2倍に換算して評価する必要が。

検査を受ける病院や担当の先生に必ずフィナステリド内服中であることを伝えましょう。

Q:女性や子供も内服できますか？

妊娠中や、妊娠可能性のある女性、授乳中の女性、子供はフィナステリドの内服は禁止されています。妊娠中はフィナステリドの内服や破損したフィナステリドを触ったり取り扱ったりすること自体も避けるべきとされています。

お腹の赤ちゃんが男子であった場合、生殖器の奇形などを起こすことがあるためです。

男性も、20歳未満の場合の安全性は確保されていませんので、使用は控えるべきでしょう。また、女性型GAFAには効果は認められていません。妊娠していなくても女性型AGAの場合には、内服はおすすめできません。

まとめ

今回はAGA治療のうち、フィナステリド内服について詳しく解説しました。

内服できる方の制限や副作用にはいくつか注意すべきことはありますが、フィナステリドはAGA治療の中心的な薬剤で、科学的根拠もしっかりある薬です。ぜひうまく活用していきましょう。

参考文献

1. 坪井良治. 男性型脱毛症治療の現状と今後の展望. 日薬理誌 133(2).78-81, 2009.
2. 乾重樹. 脱毛症に対する新しい治療法. BEAUTY. 2(3):44-45, 2019.
3. 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 2017年. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
4. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. プロペシア. https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/249900XF1021_3_01/
5. KEGG MEDICUS.
   https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=D00321
6. 日本Men’s Health医学会. News Letter vol.10 2012.
   https://mens-health.jp/pdf/News_Letter_Vol10.pdf
7. 日本赤十字社. 採血基準・問診事項.
   https://www.jrc.or.jp/mr/relate/guide/criteria/