男性型脱毛症

育毛剤は発毛剤と何が違うの?AGA対策としてのヘアケア

薄毛
藤井 麻美

AGAの治療は、育毛剤、発毛剤、飲み薬や塗り薬など、さまざまな選択肢があります。

さまざまな宣伝が身近にありますが、どれが自分に合った治療なのか、少し複雑で迷ってしまいますよね。

今回はAGA治療のうち、特に育毛剤と発毛剤について詳しくお話しします。成分の違いをわかった上で使い分けを行い、AGAの予防、改善を目指しましょう。

育毛剤と発毛剤の違いは、ミノキシジルの配合の有無

育毛剤と発毛剤の違いは、育毛効果があるか、発毛効果があるかですが、簡単にいうと発毛成分があるミノキシジルが含まれるかどうかによって分類されます。薬局などで買える医薬品以外の商品を規制した法律に、「医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」というものが。

厚生労働省により、ミノキシジルは第一類医薬品という分類がなされていますが、ミノキシジルを含まない育毛剤は、薬機法で医薬部外品という分類がされています。医薬部外品ではミノキシジルを含まないため、商品の効果として発毛効果があると記載することはできません

ルール上、こういった違いはありますが、実はミノキシジルは発毛効果に加え育毛効果もあり、医学的には、明確に発毛、育毛を明確に分けて定義したものはありません。

発毛、育毛はAGA治療ではどちらも重要な要素になります。ここでは、育毛剤、発毛剤の分類にかかわらずAGA治療に使われている成分全般について解説。

まずは、毛の生える仕組みについて少しみていきましょう。毛には毛周期という、毛の生え変わりの期間が1) 。毛が作られ成長する成長期、毛の成長がとまる退行期、抜け落ちる休止期の3つの周期をぐるぐる回っています。

毛周期はそれぞれの毛包単位で営まれており、頭皮では1日100本ほど毛が抜け、新たに100本ほど毛が再生することで全体の毛の数が保たれているのです。

AGA 周期

割合としては、全体の約85-90%が成長期、10%が休止期にいるといわれています。AGAではこの毛周期を繰り返す中で、成長期が短く休止期の毛が多くなることで、毛が十分に成長せずに柔らかく細く短くなってしまい、薄毛に。

毛のサイクルが通常の毛周期よりも不十分な状態で進むことを、毛のミニチュア化といいます。毛根がミニチュア化することで、頭皮には弱々しい毛しか生えてこず、最終的には細く弱い毛も抜けて、禿げてしまいます。

この脱毛の過程は、日本男性の30%ほどにみられるもので、遺伝や男性ホルモンなどが発症に関係し、加齢とともに増加2)

男性ホルモンは、髭や胸毛など、一般的には毛を濃くする方向に働きますが、頭皮においては逆に毛の成長期が短縮し、毛は柔らかくなってしまいます。

毛のミニチュア化を防いで毛が育ちやすい頭皮環境を整えるのが、育毛剤です。育毛剤にはいくつか種類がありますが、まずは、医薬品として科学的根拠があるものから紹介します。

フィナステリド 構造式

フィナステリド(プロペシア®)と、2015年に日本で承認された新しい薬であるデュタステリド(サガーロ®)は、飲み薬の医薬品になりますが、AGA治療の中心的な薬剤治療です。

フィナステリド、デュタステリドはどちらも男性ホルモンであるテストステロンの活性化を防ぐことで、AGAの治療効果を発揮します。男性ホルモンに作用するため女性型の脱毛症には使用できませんが、男性型のAGAの場合には治療ガイドラインでも使用することを強く推奨。

副作用には、肝障害や前立腺癌のマーカーの血清PSA濃度が低下することなどがあり、前立腺癌の発見が遅れる可能性があります。

また、これらの薬を飲む場合には、必ず病院で処方してもらいましょう。海外から個人輸入などもできる場合がありますが、副作用や成分の保証ができない点などから、おすすめできません。

その他の育毛成分としては、アデノシン配合ローション、t-フラバノン、サイトプリン、ペンタデカンなどの成分に育毛効果があることがわかっています3) 。その中でも、アデノシンローションの効果は科学的にも証明されており、ガイドラインでも推奨。

円形性脱毛症の治療で用いられる塩化カプロニウムと、カシュウチンキ、チクセツニンジンチンキ、ヒノキチオールなどの生薬も一部効果があるとされています。

市販の育毛剤や育毛シャンプーでも、これらの育毛成分が含まれているものが販売。逆に、これらの成分以外に、現時点では育毛効果がはっきりわかっておらず、医学的にも推奨されていない成分というものもあります。

育毛効果をうたっていても、どのような成分を含有しているものなのかは、必ず確認しましょう。

特に飲み薬として効果があるものは、フィナステリド、デュタステリドのみになります。よくサプリメントや漢方が脱毛に効果があると売られている場合がありますが、残念ながら現時点では科学的に効果は保証されていません。

ミノキシジル 構造式

育毛剤は毛がミニチュア化する過程を阻害したり、毛の育つ環境を改善したり整えたりする効果があるものです。すでに軟毛化し、減少した毛を増やす効果はありません。

一方、AGAが進行した状態でも毛を生やす効果のあるものが発毛剤です。発毛効果が証明されている成分の代表はミノキシジルです。ミノキシジルは、毛周期の成長期の期間を延長してミニチュア化した毛包を改善させることが4)

毛周期が正常になると、軟毛化した細く柔らかい毛も、硬くもどることが知られています。ミノキシジルが効果を発揮するメカニズムとしては、毛乳頭細胞の増殖作用、毛母細胞のアポトーシス抑制、毛組織血流効果などが考えられていますが、未だ不明な点も多く、研究段階。

また、ミノキシジルの脱毛効果が認められているのは、塗り薬のみです。飲み薬は副作用もあり脱毛治療では推奨されていません。

育毛剤と発毛剤の使用上の注意点 

薬局 育毛剤
  • 進行している場合はミノキシジル
  • 皮膚かぶれは主治医に相談
  • 初期脱毛を知り、数ヶ月は我慢

薬の副作用以外に注意すべき点としては、育毛剤はAGAが進行しすでに毛が軟毛化したり抜けてしまっている場合には、効果は低いということです。

すでにミニチュア化した毛を改善するには、ミノキシジルの塗り薬などの治療が必要になります。また、ミノキシジルを主成分とした発毛剤も、基本的にはAGAの初期での効果が高いです。

育毛剤も発毛剤も、塗り薬の場合には、皮膚のかぶれなどの症状がでることもあります。特にミノキシジルは濃度が濃いものを使用すると、痒み、赤み、落屑、毛包炎、接触性皮膚炎、顔などに誤って付着してしまった場所の多毛などの副作用が。

これらの皮膚症状が起こった場合には、一旦使用をやめて皮膚科でご相談ください。病院で処方されている場合には、主治医に相談しましょう。

育毛剤も発毛剤も、効果がみられるのは数ヶ月してからです。特に治療開始直後の1-2ヶ月は、初期脱毛といって、むしろ治療後に抜け毛が目立つことが2) 。初期脱毛では、治療時に生えている毛が毛周期の休止期に入ってしまうことで、むしろ脱毛が進行しているように感じてしまいます。

ただし、抜けた毛はもともとミニチュア化した毛包でできた弱々しい毛で、本来の毛ではありません。この休止期脱毛を乗り切って治療を継続することで、正常な毛包から太く長い毛が徐々に生えてきます。

初期脱毛のせいで治療を中断してしまわずに、根気強く治療を継続しましょう。

頭皮環境に優しい環境が整うと発毛効果が期待できる

食事 バランス

AGA予防のために絶対やるべきこと、というのは残念ながら確立されていません

喫煙により、男性ホルモンの濃度が上昇し、AGAの発症リスクになるのではないかという研究5) などもありますが、まだまだ多くは不明です。

AGAは男性ホルモンの影響に加え、加齢性変化でもあります。加齢による頭皮環境の悪化を防ぐことができれば、AGA予防のつながる可能性が。そのためのポイントをいくつかご紹介しましょう。

一般的な加齢性変化を防ぐために、適度な睡眠、バランスの取れた健康的な食生活を心がけましょう。ストレス、食品添加物、喫煙、激しい運動、大量の飲酒、紫外線などにより加齢を悪化させる原因となる活性酸素が増えてしまうため、これらを避けることも重要です。

活性酸素を低下させるために、抗酸化物質を意識して取るのもよいでしょう。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQなどの成分は抗酸化物質として比較的取り入れやすい要素です6), 7) 。これらの成分は、食事で摂取することを心がけ、足りない分をサプリメントなどで補充。

シャンプーは基本的には使い慣れた商品がよいでしょう。育毛成分を含むアデノシン配合シャンプー(アデノゲン®など)、塩化カプロニウム(カロヤン®など)、t-フラバノン(サクセス バイタルチャージ®など)、は、AGAのガイドラインでも使うことを推奨されている成分を含むシャンプーです。

ご自身に合ったものを見つけましょう。洗髪時に洗い流しが不十分で成分が残ってしまうと、かぶれやフケの原因になり、頭皮環境は悪化します。どのようなシャンプーを使っても十分に洗い流しましょう。

これらのケアで予防するとともに、AGAの早期から医薬品であるフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルでの治療を開始することが大切です。医薬品としてこれらの処方を受けるためには、医師による診察などが必要になります。症状が進行してしまう前に一度病院でご相談ください。

まとめ

AGAの治療として、育毛剤、発毛剤についてご紹介しました。それぞれの違いやメリット・デメリットをご理解いただけたでしょうか。頭皮のお悩みがある際には、自己判断で市販薬のみに頼るのではなく、AGAの症状が進行してしまう前に病院でご相談いただくのがよいでしょう。

市販薬と医薬品を組み合わせてうまく治療を行っていくことで、症状を改善させたり、進行を予防したりすることが可能です。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会.脱毛症.
    https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/q02.html
  2. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン. 2017. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
  3. 東京医科大学皮膚科学教室.脱毛症外来.
    http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/gairai/gairai_datsumo.html
  4. 小友進. ミノキシジルの発毛作用について. 日薬理誌. 119:167-174, 2002.
  5. A E Field, et al. The relation of smoking, age, relative weight, and dietary intake to serum adrenal steroids, sec hormones, and sex hormone-binging globulin in middle-aged men. J Clin Endcrinol Metab.1994;79(5):1310-6. doi: 10.1210/jcem.79.5.7962322.
  6. 公益財団法人長寿科学振興財団.健康長寿ネット.
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/kousanka-zai.html
  7. 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』
    https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/index.html#c05
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