薄毛対策にグリチルリチン酸の濃度は重要?効果を引き出す【判断基準】

「グリチルリチン酸が入った育毛剤を使っているのに、効果がいまいち感じられない」そう悩んでいませんか。グリチルリチン酸は頭皮の炎症を鎮め、髪が育ちやすい環境を整える成分です。

ただし、配合濃度や製品の種類によって期待できる効果は変わります。濃度が高ければ良いというわけでもありません。

この記事では、男性の薄毛治療に20年以上携わってきた経験をもとに、グリチルリチン酸の濃度を見極めるための判断基準をわかりやすくお伝えします。

目次[

グリチルリチン酸が薄毛に効くと言われる理由は頭皮の炎症を鎮める力にある

グリチルリチン酸は、頭皮に発生する慢性的な炎症を抑えることで髪の成長をサポートします。AGA(男性型脱毛症)の進行には頭皮の炎症が深く関わっており、炎症を放置すると毛包のミニチュア化(毛包が縮小して細い毛しか生えなくなる現象)が加速するからです。

甘草(カンゾウ)から抽出されるグリチルリチン酸とは何か

グリチルリチン酸は、マメ科の植物である甘草(カンゾウ)の根から抽出される成分です。甘草は漢方薬として数千年にわたって使われてきた歴史があり、抗炎症作用や抗アレルギー作用が広く知られています。

甘草の根に含まれるグリチルリチン酸は、体内で代謝されると18β-グリチルレチン酸に変換されます。この代謝産物が、炎症を引き起こすサイトカイン(免疫細胞が放出する情報伝達物質)の産生を抑え、頭皮の炎症を鎮める働きを担っています。

頭皮で起こる毛包周囲の炎症がAGAを加速させる

AGAの頭皮では、毛包の周囲に慢性的な微小炎症が生じていることが組織検査で確認されています。この炎症は皮脂の酸化や常在菌の異常増殖、紫外線ダメージなどが引き金になります。

毛包の周囲に炎症が続くと、毛母細胞の活動が低下して髪の成長期(アナゲン期)が短縮されます。その結果、太く長い髪が育つ前に抜け落ちてしまい、薄毛が目立つようになるのです。

グリチルリチン酸と頭皮炎症の関係

項目炎症がある頭皮炎症を抑えた頭皮
毛包の状態縮小が進行しやすい健全な大きさを維持
成長期の長さ短縮される正常に近い期間を保つ
髪の太さ細く軟毛化するハリのある髪を維持

5αリダクターゼを阻害してDHT産生を抑える働きもある

グリチルリチン酸の代謝産物である18β-グリチルレチン酸には、5αリダクターゼ(テストステロンをDHTに変換する酵素)を阻害する作用が報告されています。DHT(ジヒドロテストステロン)はAGAの直接的な原因物質であり、毛乳頭細胞のアンドロゲン受容体に結合して毛の成長を抑制します。

研究では、18β-グリチルレチン酸が5αリダクターゼを阻害するIC50値は137.1μMと報告されています。医薬品であるフィナステリドと比べると穏やかな阻害力ですが、頭皮環境を整えながら補助的にDHT産生を抑えられるのは大きなメリットでしょう。

育毛剤やシャンプーに含まれるグリチルリチン酸の配合濃度はどれくらいが一般的か?

市販の育毛製品に含まれるグリチルリチン酸ジカリウムの一般的な配合濃度は0.1%~0.5%前後です。医薬部外品として承認を受けた製品であれば有効成分として一定の効果が期待できますが、化粧品扱いの製品では配合量の規制基準が異なります。

市販の育毛剤では0.1%~0.5%前後が多い

日本国内で販売されている育毛剤の多くは、グリチルリチン酸ジカリウムを0.1%~0.5%の範囲で配合しています。この濃度帯であれば、頭皮に対する刺激を抑えながら抗炎症効果を発揮できるとされています。

一方、シャンプーの場合はすすぎで洗い流すため、育毛剤に比べて成分の頭皮滞留時間が短くなります。そのため、シャンプーに含まれるグリチルリチン酸だけで薄毛対策を完結させるのは難しいかもしれません。

医薬部外品と化粧品では有効成分の扱いがまったく異なる

医薬部外品として厚生労働省の承認を受けた育毛剤では、グリチルリチン酸ジカリウムが「有効成分」として明記されています。有効成分として認められるには、一定の効果と安全性を示すデータが求められます。

化粧品に分類されるヘアケア製品にもグリチルリチン酸ジカリウムが配合されることはありますが、あくまで保湿や整肌目的の「その他の成分」として扱われるため、薬理的な効能を表示できません。この違いを把握しておくと、製品選びで迷わなくなるでしょう。

配合濃度が高ければ良いわけではない

「濃度が高い製品ほど効果があるのでは」と考える方は多いのですが、グリチルリチン酸は一定以上の濃度で頭皮への刺激リスクが高まります。過剰な濃度は頭皮のバリア機能を乱し、かえって炎症を招く恐れがあるため注意が必要です。

また、成分の浸透率は製品の基剤(溶剤やキャリア成分)によっても左右されます。低濃度であっても浸透技術に優れた製品なら、十分な効果を得られるケースは少なくありません。

育毛製品の種類とグリチルリチン酸の特徴比較

製品タイプ一般的な濃度帯頭皮への滞留時間
医薬部外品育毛剤0.1%~0.5%長い(塗布後も残る)
薬用シャンプー0.05%~0.3%短い(洗い流す)
頭皮用美容液0.1%~0.3%中程度

薄毛対策でグリチルリチン酸の濃度を選ぶなら押さえたい3つの判断基準

グリチルリチン酸の配合製品を選ぶ際は、「有効成分表示」「他成分との組み合わせ」「頭皮タイプとの相性」の3つを基準にすると、自分に合った製品を見つけやすくなります。

「有効成分」として表示されているかをまず確認する

製品パッケージの成分表示欄で、グリチルリチン酸ジカリウムが「有効成分」に記載されているかどうかを確認してください。有効成分として記載されている製品は、厚生労働省が定める基準を満たした医薬部外品です。

有効成分の欄に記載がなく「その他の成分」にのみ含まれている場合、薬理効果としての抗炎症作用は公的に認められていません。効果を重視するなら、有効成分として配合された製品を選ぶのが賢明です。

他の有効成分との組み合わせで相乗効果を狙えるか

グリチルリチン酸単体ではなく、他の有効成分と組み合わせた製品のほうが総合的なケア効果を期待できます。たとえば、センブリエキス(血行促進作用)やパントテニルエチルエーテル(毛母細胞の活性化)と併用されることが多いでしょう。

  • センブリエキス:血行促進による毛根への栄養供給をサポート
  • 酢酸DL-α-トコフェロール:抗酸化作用で頭皮の酸化ストレスを軽減
  • パントテニルエチルエーテル:毛母細胞に働きかけて髪の成長を助ける

複数の有効成分がバランスよく配合されている製品は、グリチルリチン酸の抗炎症作用と相まって、頭皮環境を多角的に整えてくれます。

自分の頭皮タイプとの相性で判断する

脂性肌の方は皮脂分泌が活発で頭皮の炎症が起こりやすいため、グリチルリチン酸の抗炎症作用を活かしやすいタイプといえます。反対に、乾燥肌の方はグリチルリチン酸だけでは保湿が不十分になりがちなので、保湿成分も合わせて配合された製品を選ぶとよいでしょう。

敏感肌の方はまず低濃度の製品から試し、頭皮にかゆみや赤みが出ないか数日間様子を見てから本格的に使い始めることをおすすめします。

グリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸は「別の成分」だと覚えておこう

育毛製品の成分表示で「グリチルリチン酸ジカリウム」と「グリチルレチン酸」を見かけますが、この2つは化学的に別の物質です。水溶性と脂溶性という大きな違いがあり、それぞれ適した製品タイプや頭皮への届き方が変わります。

グリチルリチン酸ジカリウムは水溶性で化粧水やトニックに向いている

グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸をカリウム塩にした水溶性の成分です。水に溶けやすいため、化粧水タイプの育毛トニックやシャンプーに配合しやすいという利点があります。

頭皮表面の炎症を素早く鎮めたいときに適しており、医薬部外品の育毛剤で採用されることが多い成分です。ただし、水溶性であるがゆえに皮脂膜のバリアを超えて深部まで浸透する力はやや限られます。

グリチルレチン酸は脂溶性で頭皮への浸透力が高い

グリチルレチン酸はグリチルリチン酸の代謝産物であり、脂溶性の性質を持っています。脂溶性であるため、皮脂となじみやすく、毛包の深い部分まで到達しやすいのが特徴です。

クリーム剤や油性の頭皮美容液との相性がよく、毛包周囲に直接働きかけたい場合に適しています。5αリダクターゼの阻害作用を持つのもこのグリチルレチン酸のほうです。

頭皮の皮脂量や乾燥度でどちらを選ぶか変わる

皮脂が多くベタつきやすい方には、さっぱりとした使用感の水溶性タイプ(グリチルリチン酸ジカリウム配合製品)が合うでしょう。皮脂量が少なく乾燥しがちな方には、保湿力があり浸透性の高い脂溶性タイプ(グリチルレチン酸配合製品)のほうが向いています。

どちらか判断に迷う場合は、皮膚科やAGA専門クリニックでマイクロスコープによる頭皮診断を受けると、自分の頭皮状態を客観的に把握できます。

グリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸の違い

特性グリチルリチン酸ジカリウムグリチルレチン酸
溶解性水溶性脂溶性
浸透性表面〜浅層深部まで到達しやすい
5αリダクターゼ阻害弱い報告あり(IC50: 137.1μM)

グリチルリチン酸だけでは薄毛は止められない

グリチルリチン酸は頭皮環境を整える優れた成分ですが、AGAの進行を根本から食い止める力はありません。AGAの治療にはDHTの産生や作用を直接ブロックする医薬品が必要であり、グリチルリチン酸はあくまで補助的なサポート役です。

AGAの根本原因にはフィナステリドやデュタステリドが必要になる

AGAの発症にはDHTが深く関与しており、その産生を抑えるにはフィナステリドやデュタステリドといった5αリダクターゼ阻害薬が効果的です。これらは医師の処方が必要な医薬品であり、臨床試験で薄毛の進行抑制効果が確認されています。

フィナステリドは5αリダクターゼII型を選択的に阻害し、デュタステリドはI型とII型の両方を阻害します。どちらを選ぶかは薄毛の進行度や体質によって異なるため、専門医と相談して決めることが大切です。

ミノキシジルとの併用で発毛を後押しする

ミノキシジルは頭皮の血流を改善し、毛母細胞を活性化させて発毛を促す成分です。外用薬は薬局でも購入でき、AGA治療の標準的な選択肢のひとつとなっています。

  • フィナステリド/デュタステリド:DHTの産生を抑えて脱毛の進行を止める
  • ミノキシジル外用:血流改善と毛母細胞の活性化で発毛を促す
  • グリチルリチン酸:頭皮の炎症を鎮めて髪が育ちやすい環境をつくる

これら3つを組み合わせることで、AGAの治療効果を多面的に高めることが期待できます。

グリチルリチン酸は「頭皮環境を整えるサポート役」と割り切る

グリチルリチン酸に過度な期待を寄せるよりも、「頭皮のコンディションを良好に保つためのサポート成分」として位置づけるのが現実的です。炎症のない健やかな頭皮は、医薬品による治療効果を引き出しやすい土台になります。

薄毛が気になりはじめたら、まず専門医の診察を受けて治療方針を立て、そのうえでグリチルリチン酸配合のケア製品を日常のヘアケアに組み込む、という順序がおすすめです。

グリチルリチン酸を安全に使うなら副作用リスクも把握しておきたい

グリチルリチン酸は安全性の高い成分ですが、使用方法によっては副作用が生じるリスクもあります。外用と内服では注意すべきポイントが異なるため、それぞれ分けて確認しましょう。

外用で起こりうるトラブルは極めてまれ

頭皮に塗布する外用タイプのグリチルリチン酸で重篤な副作用が報告された例はほとんどありません。皮膚への刺激が非常に少なく、アレルギー性接触皮膚炎の報告も極めてまれです。

ただし、どんな成分にも相性はあります。初めて使う製品は、まず腕の内側など目立たない場所でパッチテストを行い、異常がないことを確認してから頭皮に使用するのが安全です。

内服する場合は偽アルドステロン症に注意が必要

グリチルリチン酸を含む内服薬や漢方薬を長期間服用すると、偽アルドステロン症(血圧上昇、低カリウム血症、むくみなどを引き起こす状態)が生じる可能性があります。これはグリチルリチン酸が体内で代謝された18β-グリチルレチン酸が、ミネラルコルチコイド様の作用を持つために起こります。

内服で使用する場合は、医師の指導のもとで適切な用量と期間を守ることが大切です。自己判断で大量に摂取したり、甘草含有の漢方薬を複数服用したりすることは避けてください。

長期使用で気をつけたい血圧と電解質バランス

外用に限れば長期使用による全身的な副作用は報告されていません。しかし内服の場合は、定期的な血圧測定と血液検査でカリウム値を確認しておくと安心です。

持病で降圧薬や利尿薬を服用中の方は、グリチルリチン酸との相互作用が生じる場合もあるため、必ず主治医に相談してから使用を始めてください。

外用と内服の副作用リスク比較

使用方法主な副作用リスク頻度
外用(頭皮塗布)接触性皮膚炎極めてまれ
内服(錠剤・漢方)偽アルドステロン症長期大量摂取で報告あり
内服(錠剤・漢方)低カリウム血症長期大量摂取で報告あり

グリチルリチン酸配合の育毛製品で後悔しないための成分表示の読み方

グリチルリチン酸配合の育毛製品は数多く販売されており、どれを選べばよいか迷いやすいものです。成分表示の読み方を身につけ、自分の頭皮状態に合った製品を冷静に選びましょう。

成分表示の「有効成分」欄を最初にチェックする

育毛剤のパッケージには「有効成分」と「その他の成分」が分けて表示されています。有効成分の欄にグリチルリチン酸ジカリウムが記載されていれば、抗炎症作用が期待できる配合量であることが確認できます。

「その他の成分」にのみ含まれている場合は、配合量がごくわずかである可能性が高いため、炎症を抑える目的には不十分かもしれません。

  • 有効成分欄にグリチルリチン酸ジカリウムの記載があるか
  • 他の有効成分(センブリエキスなど)も併記されているか
  • 医薬部外品の承認番号が表示されているか

価格だけで判断すると失敗しやすい

高額な製品が必ずしも高品質とは限りませんし、安価な製品が効果ゼロということでもありません。成分の種類と配合量、医薬部外品かどうかという分類を確認したうえで、コストパフォーマンスを判断してください。

広告で「独自の高濃度技術」などを謳っている製品もありますが、客観的なエビデンス(根拠となるデータ)が示されていなければ鵜呑みにしないほうが賢明です。

迷ったら医師に相談するのが一番の近道

育毛製品選びに迷ったら、AGA専門クリニックや皮膚科で頭皮の状態を診てもらうのが確実です。マイクロスコープを使った頭皮診断を受ければ、炎症の有無や毛包の状態を客観的に評価してもらえます。

自己流のケアで時間とお金を浪費するよりも、専門家の意見を聞いて治療方針を決めたほうが結果的に近道になるでしょう。早めの相談が、将来の髪を守る第一歩です。

よくある質問

Q
グリチルリチン酸ジカリウム配合の育毛剤はAGAの進行を止められますか?
A
グリチルリチン酸ジカリウムには頭皮の炎症を抑える作用がありますが、AGAの根本原因であるDHTの産生を十分に阻害する力はありません。AGAの進行を止めるには、フィナステリドやデュタステリドなどの医薬品による治療が必要です。
グリチルリチン酸ジカリウムは、医薬品治療と併用して頭皮環境を整えるサポート成分として活用するのが望ましい使い方です。
Q
グリチルリチン酸の配合濃度が高い育毛剤のほうが効果は強いのでしょうか?
A
濃度が高いからといって効果が比例して高まるわけではありません。グリチルリチン酸は一定以上の濃度になると頭皮への刺激リスクが増し、かえって炎症を引き起こす可能性があります。
製品の浸透技術や他の配合成分とのバランスも効果に影響するため、濃度の数値だけで判断しないことが大切です。
Q
グリチルリチン酸を含む育毛シャンプーだけで薄毛対策になりますか?
A
育毛シャンプーは洗い流す製品であるため、グリチルリチン酸が頭皮に留まる時間が短く、十分な抗炎症効果を得にくいといえます。シャンプーは頭皮を清潔に保つための補助として使い、育毛剤や医薬品と組み合わせるのが効果的です。
シャンプーだけで薄毛の進行を食い止めることは難しいため、多角的なアプローチを心がけてください。
Q
グリチルリチン酸ジカリウムとグリチルレチン酸はどちらが薄毛対策に向いていますか?
A
グリチルリチン酸ジカリウムは水溶性で頭皮表面の炎症を素早く鎮めるのに適しており、グリチルレチン酸は脂溶性で毛包深部まで浸透しやすい特徴があります。どちらが優れているかは一概にいえず、頭皮の皮脂量や使用する製品タイプによって選ぶのが合理的です。
皮脂が多い方には水溶性のグリチルリチン酸ジカリウム、乾燥しがちな方には脂溶性のグリチルレチン酸が向いている傾向があります。
Q
グリチルリチン酸を長期間使い続けても副作用の心配はありませんか?
A
頭皮に塗布する外用タイプであれば、長期使用による重篤な副作用はほとんど報告されていません。グリチルリチン酸は皮膚刺激性が低く、安全性の高い成分として広く認められています。
ただし、内服する場合は長期大量摂取で偽アルドステロン症や低カリウム血症が生じるリスクがあります。内服での使用は必ず医師の指導のもとで行ってください。
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執筆・監修医師

藤井麻美
藤井麻美
あさ美皮フ科亀戸駅前 院長

あさ美皮フ科亀戸駅前 院長
皮膚科専門医/医学博士
略歴:愛媛大学医学部を卒業後に大阪大学医学部皮膚科へ入局。退役軍人病院(米国ロサンゼルス州)皮膚科、岐阜大学医学部付属病院皮膚科を経て当院を開業。

所属:日本皮膚科学会/日本レーザー医学会/日本乾癬学会/日本アレルギー学会/江東区医師会