「最近、頭皮のかゆみやフケが気になる」「抜け毛が増えてきた気がする」――そんな悩みを抱えていませんか。頭皮トラブルの原因は炎症であることが多く、放置すると髪の成長にも影響を及ぼします。
グリチルリチン酸は甘草(カンゾウ)由来の天然成分で、抗炎症作用をもち、頭皮環境を整える働きが期待されています。育毛シャンプーや育毛剤にも広く配合されている、身近な成分です。
この記事では、グリチルリチン酸がどのように頭皮に働きかけるのか、日常のケアに取り入れるポイントを医学的な根拠にもとづいて解説します。
グリチルリチン酸とは?甘草から生まれた頭皮ケア成分の特徴
グリチルリチン酸は、マメ科の植物である甘草(Glycyrrhiza glabra)の根から抽出されるトリテルペン系の天然化合物です。漢方薬の原料として数千年の歴史があり、現在では医薬品や化粧品の分野でも幅広く活用されています。
甘草の有効成分としてのグリチルリチン酸
甘草にはさまざまな薬理活性をもつ成分が含まれていますが、その代表格がグリチルリチン酸です。甘草の根には2%〜25%のグリチルリチン酸が含まれており、砂糖のおよそ50倍の甘さをもっています。
体内に入ると腸内細菌によって加水分解され、18β-グリチルレチン酸という活性代謝物に変換されます。この代謝物が、抗炎症作用や抗酸化作用の本体として働くと考えられています。
頭皮ケア製品にグリチルリチン酸が選ばれる理由
| 特性 | 頭皮への期待される作用 |
|---|---|
| 抗炎症作用 | かゆみ・赤みの緩和 |
| 抗菌作用 | 頭皮の常在菌バランスを整える |
| 抗酸化作用 | 皮脂の酸化を抑え頭皮環境を守る |
| 抗アレルギー作用 | 敏感な頭皮の刺激を和らげる |
グリチルリチン酸ジカリウムとの違い
育毛シャンプーの成分表示で「グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)」を見かけることも多いでしょう。グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸にカリウム塩を結合させた水溶性の誘導体です。
水に溶けやすい性質をもつため、シャンプーやローションなどの水性製品に配合しやすいというメリットがあります。薬理作用の基本はグリチルリチン酸と同じで、頭皮に対して穏やかに働きかけます。
頭皮の炎症を放置すると抜け毛が増える|グリチルリチン酸の抗炎症作用に注目
頭皮に慢性的な炎症が続くと、毛根を取り囲む組織がダメージを受け、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が増加するおそれがあります。グリチルリチン酸の抗炎症作用は、こうした悪循環を断ち切るための有力な手段の1つです。
頭皮の炎症が髪の成長を妨げるしくみ
毛髪は毛包(もうほう)という小さな器官の中で成長します。毛包の奥には「毛乳頭細胞」と呼ばれる細胞があり、髪の成長に必要なシグナルを送る司令塔のような存在です。
頭皮に炎症が起きると、TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす体内物質)が産生されます。こうした物質が毛乳頭細胞の働きを妨害し、結果として髪が細くなったり、成長期が短縮されたりするのです。
グリチルリチン酸はどのように炎症を鎮めるのか
グリチルリチン酸は、炎症を促進するHMGB1(High Mobility Group Box 1)というタンパク質のシグナル伝達を阻害することで、炎症反応を抑えると報告されています。また、NF-κBという炎症の引き金となる転写因子の活性化も抑えるため、複数の経路から炎症にアプローチできる点が特徴です。
副腎皮質ホルモン(ステロイド)と類似した構造をもつことから、穏やかながらステロイド様の抗炎症効果を発揮するとも考えられています。ステロイド外用剤のような強い副作用が起きにくい点は、長期的な頭皮ケアにおいて見逃せない利点でしょう。
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)の頭皮にもグリチルリチン酸は使える
フケやかゆみがひどい場合、脂漏性皮膚炎が原因になっていることがあります。脂漏性皮膚炎は、皮脂の過剰分泌とマラセチア菌の増殖によって起こる慢性的な炎症性の皮膚疾患です。
台湾で実施された臨床研究では、6%グリチルレチン酸配合のシャンプーを5週間使用した患者群において、頭皮のフケスコアと生活の質スコアがともに改善したと報告されています。頭皮の細菌・真菌バランスにも良い変化がみられました。
| 評価項目 | 使用前 | 5週間後 |
|---|---|---|
| フケスコア(ASFS) | 高い | 有意に低下 |
| 生活の質(DLQI) | 影響あり | 改善傾向 |
| マラセチア菌 | 多い | バランス改善 |
グリチルリチン酸は薄毛対策に効くのか|毛乳頭細胞への研究データ
グリチルリチン酸(およびその代謝物である18β-グリチルレチン酸)には、毛乳頭細胞や外毛根鞘細胞の増殖を促す働きがあることが基礎研究で示されています。薄毛対策への応用が期待できるデータが蓄積されつつある段階です。
毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞を活性化させるデータ
2024年に発表された研究では、18β-グリチルレチン酸がヒトの毛包から単離した毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞の両方で増殖を促進したと報告されています。毛乳頭細胞は髪の太さや成長速度を左右する細胞であり、この細胞が活性化すれば髪のボリュームアップにつながる可能性があります。
さらに同研究では、TGF-β1(トランスフォーミング増殖因子β1)という、成長期から休止期へのサイクル移行を促す因子の発現を抑制することも確認されました。つまり、髪が長く太く育つ「成長期」を延長させる可能性を示唆しています。
5αリダクターゼ阻害作用とAGA(男性型脱毛症)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 5αリダクターゼとは | 男性ホルモン(テストステロン)をDHT(ジヒドロテストステロン)に変換する酵素 |
| DHTの影響 | 毛乳頭に作用して髪の成長期を短縮させ、薄毛の進行を招く |
| グリチルレチン酸のIC50 | 137.1 µMで5αリダクターゼ活性を阻害 |
臨床応用はこれからの課題
基礎研究で有望な結果が得られていますが、ヒトの頭皮に塗布した場合の発毛効果を直接示した大規模臨床試験はまだ多くありません。グリチルリチン酸単独で薄毛が劇的に改善すると断言するのは時期尚早といえるでしょう。
ただし、円形脱毛症に対しては複合グリチルリチン製剤とミノキシジル外用の併用が有効だったとするメタアナリシス(複数の臨床試験をまとめて分析した研究)が複数報告されており、医療現場での活用は着実に広がっています。
頭皮環境を整える抗菌・抗酸化パワー|グリチルリチン酸がフケ・かゆみを防ぐ
グリチルリチン酸は抗炎症作用だけでなく、抗菌・抗酸化作用を併せもつ成分です。これらの複合的な効果が頭皮のバリア機能をサポートし、フケやかゆみの根本原因にアプローチします。
皮脂の酸化を防いで頭皮の「酸化ストレス」を軽減
頭皮は体のなかでも皮脂分泌が盛んな部位です。分泌された皮脂が紫外線や空気中の酸素によって酸化すると、過酸化脂質と呼ばれる刺激物質に変わり、炎症やかゆみの引き金になります。
グリチルリチン酸の抗酸化作用は、こうした皮脂の酸化連鎖を抑制すると考えられています。酸化ストレスが軽減されれば、毛包周囲の細胞環境も健全に保たれやすくなるでしょう。
常在菌のバランスを乱さない穏やかな抗菌力
頭皮には数百種もの常在菌が棲んでおり、そのバランスが健康な頭皮を維持しています。殺菌力の強すぎる成分を使うと、善玉菌まで減らしてしまい、かえって頭皮トラブルを招くことがあります。
グリチルリチン酸は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの特定の菌に対して穏やかな抗菌活性を示す一方、常在菌叢(じょうざいきんそう)全体のバランスを大きく崩しにくいのが利点です。
敏感肌の男性にも使いやすい安全性
化粧品成分としての安全性評価では、グリチルリチン酸およびその誘導体は、化粧品に使用される濃度範囲(グリチルリチン酸で最大0.1%、アンモニウムグリチルリチネートで最大5%など)で安全と結論づけられています。アレルギー性の接触性皮膚炎の報告もきわめてまれです。
- 化粧品配合濃度の範囲内で皮膚刺激性が低い
- アレルギー性接触皮膚炎の報告は極めて少ない
- ステロイド外用剤のような皮膚萎縮のリスクが低い
- 長期使用に適した穏やかな作用
グリチルリチン酸配合シャンプーの正しい選び方と使い方
成分の力を引き出すには、製品選びと使い方が大切です。グリチルリチン酸配合シャンプーを使ったケアで効果を実感するための具体的なコツを紹介します。
成分表示でチェックすべきポイント
シャンプーの成分表示には「グリチルリチン酸ジカリウム」「グリチルリチン酸2K」と記載されるのが一般的です。医薬部外品(薬用シャンプー)の場合は「有効成分」の欄に記載されているか確認しましょう。
洗浄成分(界面活性剤)の種類にも注意が必要です。ラウリル硫酸ナトリウムなどの強い洗浄剤は頭皮への刺激が大きいため、アミノ酸系やベタイン系の穏やかな洗浄成分を選ぶと、グリチルリチン酸の効果を損ないにくくなります。
頭皮に届くシャンプーの正しい手順
| 手順 | ポイント |
|---|---|
| 予洗い | 38℃前後のぬるま湯で1〜2分間髪と頭皮を流す |
| 泡立て | 手のひらで十分に泡立ててから頭皮にのせる |
| 洗い方 | 指の腹で頭皮を優しくマッサージするように洗う |
| すすぎ | 泡が残らないよう2〜3分かけてしっかり洗い流す |
シャンプーだけに頼らない|育毛剤やローションとの併用
シャンプーは洗い流すものなので、有効成分が頭皮に留まる時間は限られています。グリチルリチン酸をより効果的に活用したい場合は、洗い流さないタイプの育毛剤やスカルプローションとの併用を検討してみてください。
入浴後にタオルドライした清潔な頭皮に育毛剤を塗布し、指で軽くなじませるのがおすすめの使い方です。頭皮マッサージを1〜2分加えると、血行促進も期待できます。
グリチルリチン酸を使う際に知っておきたい注意点と副作用
天然由来とはいえ、どんな成分にも適切な使い方があります。グリチルリチン酸を安心して活用するために押さえておくべき注意点をまとめました。
外用で使う場合の安全性は高い
頭皮に塗布する外用剤やシャンプーとして使う場合、グリチルリチン酸は一般的に安全性が高いとされています。化粧品で使用される濃度では、重大な副作用が報告されることはほとんどありません。
ただし、体質によってはまれに頭皮の赤みやかゆみが出る場合もあるため、初めて使うときはパッチテスト(腕の内側に少量を塗って様子をみる)を行うと安心です。
経口摂取(内服)による注意点は外用とは別に考える
複合グリチルリチン製剤が円形脱毛症の治療に使われるケースがありますが、これは医師の管理下で行う内服治療です。グリチルリチン酸を大量に経口摂取すると、偽性アルドステロン症という状態を引き起こす可能性があると報告されています。
偽性アルドステロン症とは、体内のカリウムが減少し、血圧上昇やむくみ、筋力低下などの症状が出る状態です。外用と内服では体内への吸収量がまったく異なるため、混同しないようにしましょう。日常的なシャンプーや育毛剤の外用であれば過度に心配する必要はありません。
他の薬との飲み合わせに注意が必要なケース
内服の複合グリチルリチン製剤を使っている方は、利尿剤やカリウムを低下させる薬と併用すると低カリウム血症のリスクが高まる可能性があります。処方薬との飲み合わせについては、必ず担当の医師や薬剤師に相談してください。
- 外用(シャンプー・育毛剤)は一般的に安全性が高い
- 初回使用時はパッチテストを推奨
- 内服治療は必ず医師の指示のもとで行う
- 利尿剤との飲み合わせに注意が必要
二度と頭皮トラブルで悩まない!グリチルリチン酸と組み合わせたい日常習慣
グリチルリチン酸を使ったケアの効果を引き上げるには、日常生活のなかで頭皮環境を総合的に整える工夫が大切です。ケア成分に頼るだけでなく、体の内側からもアプローチしましょう。
頭皮の血行を促す生活習慣
毛乳頭細胞に十分な栄養と酸素を届けるためには、頭皮の血流が重要です。適度な有酸素運動は全身の血行を促進し、頭皮への血流改善にも寄与します。ウォーキングやジョギングなど、週に3〜4回・1回30分程度の運動習慣を目指してみてください。
| 習慣 | 頭皮への影響 |
|---|---|
| 有酸素運動 | 頭皮の血流を促し、毛包への栄養供給を助ける |
| 十分な睡眠 | 成長ホルモンの分泌を促し、毛髪の修復を支える |
| バランスのよい食事 | タンパク質・亜鉛・ビタミンB群など髪の材料を補う |
| ストレス管理 | 自律神経のバランスを保ち、血管収縮を防ぐ |
食事で意識したい栄養素
髪の主成分はケラチンというタンパク質です。肉・魚・卵・大豆製品から良質なタンパク質を摂取することが、健やかな髪づくりの土台となります。
亜鉛はケラチンの合成に関わるミネラルで、牡蠣やレバー、ナッツ類に豊富に含まれています。ビタミンB群は細胞の代謝を助けるため、頭皮のターンオーバーを正常に保つうえでも欠かせません。
紫外線対策で頭皮の酸化ダメージを防ぐ
頭頂部は紫外線を直接受ける部位であり、皮脂の酸化が進みやすい場所でもあります。外出時には帽子をかぶる、日傘を使うといった対策が効果的です。UVカット機能のあるヘアスプレーを活用するのもよいでしょう。
紫外線ダメージを受けた頭皮に対して、グリチルリチン酸配合のケア製品を使えば、酸化ストレスと炎症の両方にアプローチできるため、日中の紫外線対策と夜のケアの組み合わせが理想的です。
よくある質問
現時点では、AGAの直接的な治療薬としてではなく、頭皮環境を整えるサポート成分として位置づけるのが妥当です。AGA治療を希望される場合は、医師に相談のうえ、医学的根拠のある治療法と併用する形が望ましいでしょう。
ただし、洗浄成分の強さによっては頭皮の乾燥を招くこともあるため、シャンプー全体の処方バランスにも注意を払ってください。万が一かゆみや赤みが出た場合は使用を中止し、皮膚科を受診しましょう。
実際に、円形脱毛症の治療では複合グリチルリチン製剤とミノキシジルの併用が臨床研究で検討されており、併用群のほうが効果が高かったとする報告もあります。ただし個人差がありますので、医師にご相談のうえお試しください。
一方、髪のボリュームや抜け毛の減少といったヘアサイクルに関わる変化には、少なくとも3〜6か月程度の継続が必要と考えるのが現実的です。焦らずコツコツと使い続けることが、頭皮ケアの基本といえます。
もちろん、用法・用量を守ることは大切ですが、日常的なスカルプケア製品に含まれる濃度で偽性アルドステロン症を心配する必要はないとお考えいただいて差し支えありません。
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