髪の毛が生える薬?「ミノキシジル」の効果、副作用、費用を解説


AGA(男性型脱毛症)の治療を始める場合、処方される薬には主に「ミノキシジル」「フィナステリド」「デュタステリド」の3種類。
今回はその中から「ミノキシジル」について詳しく説明します。
馴染みのない薬を口にするのは怖いですよね。
この記事でミノキシジルの成分・効果・副作用をお伝えしますので、不安を解消してから治療にあたっていただければ幸いです。
ミノキシジルとは
ミノキシジルは成分の名称です。
1979年にジョンソン&ジョンソンが高血圧治療の薬として「ロテニン」という薬が元となっています。
この薬を服用した患者から多毛症状が認められたため、改めて発毛剤としての研究が始まり、1988年に発毛の有用性が確認され医薬品として発表。現在は世界中で薄毛治療の薬として使われています。
ミノキシジルを使用したAGA治療の推奨度
ミノキシジルを使った治療の安全性・有用性を日本皮膚科学会ガイドラインの推奨度を確認すると、

外用か内服かによってその推奨度が大きく異なっています。
ミノキシジルの外用は推奨度は最も高いA[行うよう強く勧める]。
一方でミノキシジルの内服は推奨度が最も低いD[行うべきではない](無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)とあります。
ミノキシジル外用薬の効果
簡単にいうと、ミノキシジルは毛母細胞を活性化させ、ヘアサイクルを正常に戻し、発毛と髪の毛の成長を促す薬です。
もう少し詳しく理解するために、抜け毛が増える理由とミノキシジルを飲むと薄毛が改善される理由を詳しく説明いたします。
AGAに対するミノキシジルのアプローチ
そもそもAGAはヘアサイクルが乱れることによって起こる脱毛症状で、「毎日抜け毛が多いな〜」と思うことがあるかもしれません。
しかし髪の毛の成長サイクルには初めから抜けるタイミングもあり、ある程度の抜け毛は自然なことで、「抜ける毛の本数」と「生える毛の本数」が同量あれば薄毛が進行することはありません。

逆に抜ける毛が多かったり、生える毛が多い場合は、
「抜け毛の本数」>「発毛の本数」→薄毛が進行
「抜け毛の本数」<「発毛の本数」→髪の毛が増加
となります。
髪の毛を増やすためには「抜け毛を減らす」か「発毛を増やす」もしくは両方行うというアプローチがありますが、ミノキシジルは「発毛を増やす」というアプローチで薄毛を改善します。
効果が出るまでの期間
個人差はありますが、ミノキシジルは効果が現れるまで3~4ヶ月ほど。しかし効果が現れてもそこで薄毛治療が完了するわけではなく、満足の得られる効果を得るためにはさらに時間が必要です。
AGAの治療は髪の毛が生えて成長して抜けるというヘアサイクルを正常にする必要がありますが、このヘアサイクルは1回転が3~6年という単位ですから、AGAの治療に関しても年単位で望む必要があるでしょう。
ミノキシジル外用薬の副作用・注意点
ミノキシジル外用薬の主な副作用はかぶれ・かゆみ・頭痛・めまい・動悸・毛包炎など。
これらの発症率は約8%と低くありませんが、重大な副作用の報告は非常に低いため安全な治療薬として世界中で利用されています。
初期脱毛のリスク
副作用とは異なりますが、最も注意しなければならないのがミノキシジル利用による初期脱毛です。
髪の毛を増やしたいのになんで抜けるの?と疑問に思う方も多いかもしれません。
AGAになると今生えている毛は成長力が弱く、いわば弱い毛が生えている状態になります。ミノキシジルを使うと弱った毛包に活性化を促しますが、既に生えている髪の毛の成長期を改善するわけではなく改善できるのはこれから生えてくる髪の毛。
そのため新しい強い髪の毛が以前の弱った毛を押し出すように生えてくるため、抜け毛が増えます。弱った毛と強い毛を入れ替えているので髪の毛が抜けるとイメージするとわかりやすいかもしれません。
この初期脱毛はミノキシジルの治療を始めると1~2ヶ月ほどで起こります。
ミノキシジルで治療を行い抜け毛が増えると「自分に合わなかったんじゃないか」「副作用が出ている」と不安になり治療をやめる方もいらっしゃいますが、この初期脱毛は薬が効いている証拠ですのでしっかり治療を続けてください。
この初期脱毛に関する注意は日本皮膚科学会ガイドラインでも説明されています。
男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり,これが外用中止につながる恐れがあるため,患者への説明が必要である
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
ミノキシジル内服薬が使われない理由
実は内服薬も毛母細毛を活性化させヘアサイクルを正常にするなど、発毛効果があると考えられています。
ではなぜ日本皮膚科学会が薄毛治療に対して推奨度Dとしているのでしょうか?それはもともとが高血圧症治療のための薬であったからです。
ミノキシジルは血管を広げて血圧を下げる薬ですので、心臓や血管に負担がかかるため、胸痛・心拍数増加・動悸・呼吸困難・むくみ・体重増加など重大な副作用が生じることがあります。
そのため発毛効果は認められていても、発毛を目的とした内服薬として認めている国がないのが現状です。
ただし医師の判断次第で処方することができますので治療に使用するクリニックも増えています。ミノキシジルの内服薬を使用する場合は必ず医師の診察を受けてから正しく服用してください。
その他の治療薬との違い
冒頭で紹介したようにAGAの治療につかう主な薬には「ミノキシジル」以外にも「フィナステリド」「デュタステリド」というものが。
「ミノキシジルは攻めの薬」「フィナステリド・デュタステリドは守りの薬」と言われることがあります。
これらは薬の効果によるものですのでそれぞれ詳しく説明していきましょう。
フィナステリドとの違い
フィナステリドを簡単にいうと抜け毛を予防することによって薄毛を改善する服用薬。
先ほどAGAというのは、抜け毛が生える毛より多くなるため進行すると言いましたが、薄毛の進行を食い止めるためには抜け毛を減らすというアプローチも有効です。
AGAは特定の男性ホルモンと5αリダクターゼが結びつくことによって発症するジヒドロテストステロンが原因で、フィナステリドは5αリダクターゼを妨げることによりAGAを抑制。
その結果、髪の毛の成長を正常なサイクルに戻し薄毛を改善する効果があります。
デュタステリドとの違い
デュタステリドもフィナステリドと同様に抜け毛を予防することによって薄毛を改善する服用薬。
異なるのはAGAを防ぐことができる割合がデュタステリドの方が高いということ。
先ほどAGAには5αリダクターゼが関係していると説明しましたが、5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型が存在しています。
フィナステリドはⅡ型のみを阻害しますが、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方を阻害。そのため抜け毛を防ぐ効果はデュタステリドの方が高くなっています。
しかし副作用が起こる確率はデュタステリドの方が高くなるので、フィナステリドとデュタステリドのどちらを使って治療を行うかは医師の判断に従ってください。
ミノキシジルは併用によってより効果的に
ミノキシジルはフィナステリドやデュタステリドと併用して使われることを推奨されています。
その理由は薄毛治療へのアプローチが異なる点、内服薬と外用薬という使用方法が異なるという点に。
フィナステリドやデュタステリドでAGAの発症原因となる5αリダクターゼを抑制し抜け毛を防ぎ、ミノキシジルで発毛を促すという、既にある髪の毛を守りつつ、新しい髪の毛を生やす攻めの治療を同時に行うことによって、より効果を実感することが可能です。
ただし薬の数が増えれば治療の費用も副作用の可能性も増えるため、医師に診察をしてもらった上で治療方法を選択してください。
市販のミノキシジル配合育毛剤と処方の薬との違い
ミノキシジル配合の外用薬は医師の処方なしでドラックストアで購入することができます。リアップ・スカルプDなどは耳にしたことがある人も多いでしょう。
これら市販の薬と処方される薬の違いはミノキシジル配合の濃度にあります。
ミノキシジル配合濃度が5%以下までなら1類医薬品に分類されているため薬剤師指導のもとにて販売が可能ですが、ミノキシジル配合濃度が5%を超える薬に関しては医師の診察が必要。
これは含有量が多ければ多いほど大きな改善効果を見込める一方で副作用のリスクも高まるため、5%以上のものは医師の診察が必要となっています。
治療にかかる費用
AGA治療は自由診療ですので価格に決まりはなく、クリニックによってバラつきがありますが、ミノキシジルを使った治療費用は1ヶ月5,000~15,000円が相場です。
実際の治療にはフィナステリドやデュタステリドを服用することが一般的ですので、総合的な費用はもう少し上で予想しておくと良いでしょう。
ミノキシジルは5%以下の濃度であればドラックストアで購入することもできますので、その場合はもう少し安く治療が可能です。
リアップには通常のリアップ(濃度1%)と濃度高いリアップX5(濃度5%)があり、これらの薬は1ヶ月で使い切るペースで使用することを推奨されていますので一本の値段がそのまま1ヶ月の費用と考えられます。
具体的な金額は
- リアップ…6,050円
- リアップX5…7,753円
となっていますので、市販の薬を使う場合は月6,000~8,000円程度ということになります。
安く薬が手に入るサイトがある?
安く治療を行えないか探していると、ネットで安く薬を販売している「個人輸入サイト」というものが見つかります。
これはネットを使って薬を海外から仕入れるなどして個人輸入した薬を個人的に販売しているのですが、こういったサイトからは購入を控えましょう。
主なリスクとしては
- 偽造品の可能性がある
- 成分が異なる可能性がある
- 健康被害が起こった場合に保証がない
というものがあげられます。
国内で処方・販売される薬は厚生労働省の認可がおりているため、安全性も信頼できますし重大な健康被害が生じた場合にも救済措置が行われる公的制度が。
しかしながら、個人輸入医薬品にはこのような保証がありません。
万が一、大きな健康被害が起こっても誰も助けてくれない、そもそも日本で認可されていない薬が買えてしまうサイトである、というリスクを受け入れてまで薬を買うメリットがあるのかよく考えてみてください。
ミノキシジルに関するよくある質問
ミノキシジルを使って薄毛が改善されても、AGAが完治してするわけではありません。
ミノキシジルによる発毛効果は使用している間だけですので、使用をやめれば再び薄毛が進行します。髪の毛のボリュームを保ちたい間は治療を続けてください。
治療を終了する方の中には、
- 異性に対して魅力的な見た目を維持する必要がなくなった
- 子供が大きくなり、子供のイベントが終わった
というタイミングで使用を中断する方もいらっしゃいます。
ミノキシジルに含まれる発毛成分は、AGAに対するものではなく女性の薄毛にも効果があります。
ただし推奨される濃度が異なり、男性の場合は5%ですが女性の場合は1%。
ミノキシジルは発毛を促しますが、その発毛にはもちろん個人差があり、さらにさまざまな要因によって発毛効果が異なります。
まず第一に考えられるのはミノキシジルの含有量が低い可能性です。
ミノキシジル濃度が高い方が発毛を実感しやすいですが、ドラックストアで購入できるものは5%以下のため、ドラックストアで購入したものを利用している方はクリニックで処方してもらったものを試してみてください。
食生活も重要です。髪の毛を作るタンパク質・細胞分裂を促すビタミンなどが不足している場合にも髪の毛の成長を見込めません。
これら以外にも多くの理由が考えられますが、それをご自身で判断することは不可能ですので、クリニックの先生に相談してください。
毛根が完全に死滅してしまっている場合、ミノキシジルの発毛効果を得ることができません。その場合には薬による治療ではなく、植毛を検討してみてください。
まとめ
ミノキシジルは用法容量を守れば、薄毛治療に対して安全で効果の高い薬です。
その使い方としては外用薬が推奨される一方、内服薬は認可を受けていません。
外用薬に関しては濃度の薄いものであればドラックストアで購入できますので、まず市販のリアップなどを試してみるのも良いと思います。
ただし、本気で薄毛を治療したいのであればミノキシジルにこだわらず、フィナステリド・デュタステリドを含めて治療方法を検討するという意味でも、信頼できるクリニックで診察を受けることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省 ミノキシジルのリスク区分について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000023431_1.pdf
日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
毛の発育制御機構解明における最近の進歩と育毛剤https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj1979/33/3/33_3_220/_pdf/-char/ja