シミや赤みなどの肌の悩みを改善、IPLとして皮膚色素性疾患に対する国内初の承認器Nordlys(ノーリス®)について
IPL、光治療機はレーザーとならぶ機器を用いた美容治療の代表的なものであり、主に皮膚の若返り(リジュビネーション)、具体的にはシミやそばかす、くすみ、毛穴の開き、肌のハリ・ツヤ感アップなどを目的。
1回あたりの施術効果はマイルドですが、施術後の赤み・腫れなどが少ない点が特徴であり、人気のある施術です。
光治療機として、皮膚色素性疾患(シミや赤みなど)に対する国内初の薬事承認を取得しているNordlys(ノーリス)®について詳しく説明します。
IPLとは
IPLやレーザーは、皮膚に強い光を照射することで美肌効果が得られる治療です。
IPLとレーザーは照射する光の発生方法で大きく分けられ、その光の性質がIPLとレーザーでは大きく異なるため、治療効果やダウンタイム、合併症などに違いがあります。
今回ご紹介するIPLはIntense Pulsed Lightを略したものであり、キセノンランプを光源としたフラッシュランプです。強い光(フラッシュランプ)を皮膚にあてることでさまざまな美肌効果が。
光治療やフォトフェイシャル®などと呼ばれることもあります。日本ではルミナス社によるM22がフォトフェイシャル®の名称で広く普及。
実はM22はシミや赤みなどの皮膚色素性疾患に対する厚労省の薬事承認はおりていません。別の病気に対する薬事承認がありますが、それを医師の判断で承認された以外の目的で使用されています。
承認器と未承認器~厚労省のお墨付き~
美容クリニックが使用する医療機器は、
- 厚労省からの承認を受けた器械:承認器
- 厚労省からの承認を受けていない機器:未承認器
の2つにわけられます。医療機器にはその機械の治療により得られる効能・効果があり、承認器というのは厚労省からその効能・効果についてお墨付きをもらったということになります。
逆に言うと、未承認器というのはお墨付きをもらえていないということになりますが、お墨付きをもらえていない機械イコール効果の信頼性が乏しい、というわけでは必ずしもありません。
実際、美容クリニックで使用されている医療機器は、未承認器が非常に多く、承認器だけを使用していたのでは現在の日本の美容医療はほとんど成り立ちません。
未承認の器械だからと言って、それを使用すること自体は違法ではなく、医師個人の裁量に基づいて治療に使用することは許されています。
美容医療で使用するほとんどの機械が海外のメーカーでつくられており、医師の個人輸入により導入。
ただし未承認器を使用する場合は、未承認器であることをきちんと患者さんに説明しなければなりません。
ですが患者さんは承認器と未承認器があること自体を知らないことが多く、違いを理解されないまま治療を受けている方も多いです。
日本の医療は保険診療が中心ですが、保険適応の治療に使える医療機器にするために承認を得なければいけません。
承認器であっても保険診療において使用が認められない機械もあります。
言い換えると保険診療の使用する場合には必ず承認を受けた機械でないといけないが、保険診療の制約を受けない美容医療においては、医師の裁量のもとに未承認器を使用することができるのです。
保険診療での診療を想定しない限り、メーカーが医療機器の承認を得ることが必須というわけではありません。そのため、ハードルの高い厚労省の承認を受けていない機械が多用されている状態にあります。
私は保険診療の皮膚科医としてキャリアを積んできて、自分のクリニックを開くときに医療機器を導入するにあたり、いろいろ悩みました。
美容の世界では未承認器が大半であること、未承認器の多くは数年ごとのブームや流行り廃りがあることを学んだのです。
そのため、自分のクリニックで使う美容の機械、特にIPLは価格が高くてもきちんと承認された機械であることを最重要ポイントとして選びました。
私が選んだのは、IPLとして日本国内で初めて皮膚色素性疾患用光治療器として薬事承認を取得したシネロン・キャンデラ社のNordlys(ノーリス®)です。
そして、ノーリスは2023年4月に、血管病変に対する薬事承認も取得しました。IPLで2つの適応症で薬事承認を取っているのは国内初です。
フォトフェイシャル®(M22)は承認器だけど・・
IPLとして日本で一番普及しているのが、ルミナス社のM22(後継機はステラM22)です。フォトフェイシャル®はルミナス社の商標登録ですが、すでに一般名称に近い形で広く周知されています。
IPLよりもフォトフェイシャル®と言ったほうがピンとくる人も多いでしょう。
IPL(フォトフェイシャル®含む)は美容医療として顔全体のシミや色むらの改善や赤みの改善、毛穴の開きの改善など、肌のハリ感アップや質感改善などの若返り治療として行われます。
ルミナス社のM22は承認器ですが、これにはからくりが。M22のその効果・効能は『光の温熱効果による血流の改善、疼痛又は炎症の緩解を行うことを目的とする』とあります。
シミなどの色素性病変に対する記載は一言もありません。つまり、肌をきれいにする器械としてではなく、温熱治療器として承認を得ています。
日本ではM22以外にも多くのIPLが承認器として紹介されていますが、Nordlys(ノーリス®)以外の機械はこの温熱治療器としての承認器なのです。
IPLとして皮膚色素性疾患用光治療器、つまりシミの改善や肌をきれいにする機械としてとして薬事承認を取得しているのはNordlys(ノーリス®)だけです。
シネロン・キャンデラ社について
シネロン・キャンデラ社はアメリカに拠点を置く、グローバルな大手美容機器会社で、世界86か国で使用されています。
皮膚科や美容皮膚科、形成外科の分野でレーザー治療に携わる人でシネロン・キャンデラ社を知らない人はいません。
1970年にNASAのダイレーザー開発研究者が、米国ボストンにキャンデラレーザー社を設立したのがシネロン・キャンデラ社の始まりです。日本法人設立はなんと30年以上も前。
安心の実績と世界最先端の技術があり、大学病院や基幹病院にはシネロン・キャンデラ社の機器が多く導入されています。大学病院に勤務していたとき、ある日教授からレーザー外来の担当者に指名されました。
レーザー外来でシネロン・キャンデラ社のVbeam とALEXⅡを使いはじめたのが私のレーザー機器との出会いです。私はすぐにレーザー機器のとりこになり、レーザーの機械の仕組みや光の性質など基礎から勉強。
少しオタク気質のある私は、一度はまると熱中しました。教科書を読みあさり、レーザー医学会に入り、講習会に出かけ、実際に自分にレーザーを照射して実験を。
いろいろ設定を考えて、思ったとおりの効果が出せるのがたまらなく面白く、どんどんのめりこんでいきました。そして私は最終的にはレーザー外来の責任者に。
話がそれたので本題に。
シネロン・キャンデラ社の機器は国内でも積極的に承認を取っており、大学医局できちんとキャリアを積んだ皮膚科医や形成外科医が絶大な信頼を寄せています。性能もピカイチですが、機械の値段は高いです。
専門医以上の皮膚科医や形成外科医であれば、みんなシネロン・キャンデラ社の機器がいいのはわかっていますが、私のようなひよっこ開業医には高嶺の花。
再度余談ですが、いつかシネロン・キャンデラ社のレーザー機器をたくさん取りそろえたクリニックに成長させたい、という夢を持っています。
今回、クリニックを開くにあたり悩みに悩んでシネロン・キャンデラ社のIPLを導入することにしました。まずは幅広い肌の悩みにはIPLがいいと考えたからです。
シネロン・キャンデラ社のNordlys(ノーリス®)は、レーザー機器に近いパワーで照射ができることが導入の決め手となりました。
詳しいことはまたページを改めて書きますが、非常に幅広い用途で使用できるのが、Nordlys(ノーリス®)なのです。
Nordlys®について
では、いよいよ私が愛してやまないNordlys(ノーリス®)について説明していきます。
特徴①一度に複数のお悩みを解決
- しみ・そばかす
- 顔の赤み
- 毛穴・ハリ
- にきび・にきび跡
これらの悩みにすべてに効果が期待できるのがNordlys(ノーリス®)です。
Nordlys(ノーリス®)を皮膚に照射すると、照射された光がしみ・そばかすの原因である過剰なメラニン色素や、顔の赤みの原因であるヘモグロビンなどに反応し、それらを穏やかに除去することで症状が改善。
さらに、光が真皮にも到達し、コラーゲンを作り出す線維芽細胞の働きを活性化させ、内側からキメの整ったふっくらハリのある肌に導きます。
ただしIPL全般に言えることですが、レーザーと比較するとIPLも1回あたりの施術効果はマイルドです。その効果は回数を重ねるごとに蓄積されていき、だいたい5~10回の治療でピークを迎えます。
IPLで治療をする場合はだいたい1か月に一回の治療を5〜10回行うことをお勧め。その後は効果を維持していくために3〜4か月に1回程度施術を受けるのがよいでしょう。
特徴②ダウンタイムがほとんどない
Nordlys(ノーリス®)は波長域を広く照射するI2PLと呼ばれる次世代型IPL(Intense Pulsed Light)で、不必要な波長をカットし理想的なエネルギーで切れ味の良い短いパルス幅の照射を行うことができます。
詳しく言うと、Nordlys(ノーリス®)はウォーターフィルターを採用しており、治療に不必要な400 nm以下の波長に加え、950 nm以上の波長もカット。
さらに理想的な長方形に近いパルスのエネルギー照射を実現しているため、治療の際に冷却をする必要がなく、やけどのリスクを減らし、少ないエネルギーであっても十分な治療効果を実現しています。
レーザーのような痛みがなく、麻酔なしで治療が。また、やけどのリスクがないことにより炎症後色素沈着の発症を抑えることも。
Nordlys(ノーリス®)では実質的なダウンタイムはほとんどなく、すぐに普段の生活に戻ることができます。
治療直後からメイクすることも可能ですが、体質や肌質によっては、照射部位が少し赤くなったり、日焼けの後のようなほてり感を伴うことが。
赤みやほてりは通常は数時間でおさまり、しみなどの色素性病変は、治療後に少し黒く浮き上がるように反応し、かさぶたのようになり1週間程度で剥がれ落ちるのです。
特徴③レーザーに近いカスタマイズ治療が可能
そして、私がNordlys(ノーリス®)の最大のメリットと考えるのがこちらです。
IPLは通常ミリ秒単位の機械ですが、Nordlys(ノーリス®)はマイクロ秒のパルス幅の設定が可能で、最短のパルス幅は500マイクロ秒です。
これにより、Nordlys(ノーリス®)レーザーに近いピークパワーの高い照射を実現し、熱緩和時間の短いターゲットにも治療を行うことができます。
パルス幅という専門的な用語がでてきました。光を用いた治療について簡単に説明しましょう。ざっくり言うと、光の強さ(パワー)はパルス幅、つまり光の照射時間に反比例します。
パルス幅が短いほど、すなわち照射時間が短いほど、強いパワーに。通常、しみ取りレーザーして使われているのは、Qスイッチナノ秒レーザーです。
「ナノ」はナノ秒=10臆分の1秒。つまり、Qスイッチレーザーは10臆分の1秒単位のパルス幅で照射時間を調整できるレーザー機器です。
ちなみにQスイッチレーザーの「Qスイッチ」とは、レーザーの威力を強くする技術のことで、Qスイッチレーザーは、正確に言うと”ナノ秒レーザー”にQスイッチ性能を搭載したレーザー機器という意味になります。
Nordlys(ノーリス®)はIPLとしては短いパルス幅での照射が可能で、レーザーに近いピークパワーの高い治療ができる、ということです。
また、Nordlys(ノーリス®)のエキスパート照射モードでは、照射設定をカスタマイズすることで疾患に合わせたきめ細やかな治療を行うことができます。
まとめ
IPLとして、皮膚色素性疾患(シミや赤みなど)に対する国内初の薬事承認を取得しているNordlys(ノーリス)®について詳しく説明しました。
IPLの効果について書かれたページはあまたありますが、承認器と未承認器について詳しく書かれている記事はあまりありません。
私は、美容医療も医療である以上、できるだけきちんと検証され、エビデンスに基づいた治療が普及するべきだと考えています。
試行錯誤をしている先生方も多く、日本皮膚科学会が美容皮膚科学会を立ち上げ美容医療業界も変わってきていますが、まだ十分とは言えず、美容の分野は医療の中でもアヤシイものとして扱われるのが実情です。
美容医療が一般の方に普及するペースに科学的な立証が追い付いていない部分もあります。情報化社会だからこそ、謝った情報が広まってしまうこともよく見られるのです。
そんな中だからこそ、きちんと正確な情報を得て、自分に合った治療を選び、信頼できる医師を見つけてほしいと思います。