皮膚の病気

乾癬とは? ただの乾燥肌だと見逃さず、乾癬を見分けるためのポイント

乾癬
藤井 麻美

赤い発疹が出て、上にフケのようなものがついていて気になる。最近、全身に広がってきた・・・

それは、乾癬(かんせん)かもしれません。

最近増えている病気、乾癬について知っていますか?

乾癬は、きちんと治療することで、症状がほとんどない、または日常生活に支障を来さない程度に落ち着かせることができる病気です。

乾癬の原因、症状や治療法について、みなさんにもわかりやすく解説していきたいと思います。

乾癬とは

乾癬は、皮膚に炎症がおきることで表皮の細胞が増殖し、表皮の細胞の入れ替わり(ターンオーバー)が異常に早くなってしまう病気です。

発疹は全身の皮膚にできる可能性がありますが、腕や足に発生することが多いので、見た目を気にされる患者さんも少なくありません。

乾癬

乾癬は、男性にやや多いとされ、患者さんの65%が男性1)。10代から70代まで、いろいろな年齢の患者さんがいますが、男女ともに50歳代が最も多いです1)

従来、欧米人と比較して日本人には少ない病気だとされてきましたが、近年患者さんの数は増えてきており、人口の約0.1%程度の割合だと推定されています2)

乾癬では発疹やフケ状の鱗屑が出現し、5種類に分類

乾癬の最も典型的な発疹では、赤く盛り上がった発疹の上に、銀色のフケ状の部分である鱗屑(りんせつ)がくっついています。この鱗屑は、掻いたり何かにこすれたりといった、軽い刺激で容易にはがれて落ちるのです。

発疹は全身にできますが、頭、肘、膝、お尻など、よくこすれる場所にできやすいことで知られています。発疹自体には症状がないこともありますが、かゆみを伴うことも。

特徴的な症状の一つとして、一見乾癬の症状がない正常な皮膚にみえる部分でも、掻いたりこすれたりといった刺激を加えると、そこに新しく乾癬の発疹ができてしまうことがあります。これはケブネル現象と呼ばれ、患者さんを悩ませる症状の一つです。

例えば、乾癬の発疹がかゆいのに治療せず放置していると、寝ている間や無意識の間にかいてしまい、乾癬の発疹の範囲が広がってしまうこともあります。

また、皮膚以外にも、爪の変形や関節の痛み(関節炎)が出てくることが。

乾癬は発疹の大きさや分布、合併症によって、5つの型に分けられています。

  • 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
  • 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
  • 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
  • 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
  • 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
乾癬
引用元:yorktest

約90%の患者さんが「尋常性乾癬」です。

https://asami.clinic/psoriasis-symptoms/

乾癬の原因は免疫や遺伝?

乾癬になる原因は、現在もまだ完全には解明されていません。しかし、これまでの研究から、何らかの免疫機能の異常が原因となって皮膚が炎症を起こし、表皮の細胞が異常に増殖して発疹が生じることがわかっています。

https://asami.clinic/psoriasis-cause/

乾癬の原因となる免疫機能の異常は、体質や遺伝の影響もあるとされています。しかし、日本においては親や兄弟、あるいは祖父母が乾癬だった場合、こどもが乾癬を発症する割合は5%程度で3)、生まれ持った要素だけでは乾癬になるかどうかは決まりません。

体質に加えて、ストレスや感染症、皮膚への刺激、肥満など、さまざまな環境的要因に関連して発症するものと考えられています。

乾癬は人にうつる病気ではありません

乾癬は「かんせん」と読むので、「感染」と間違えられ、「人にうつる病気である」と勘違いされる患者さんやご家族の方もいらっしゃいます。

しかし、乾癬は免疫機能の異常による病気なので、患者さんの発疹に触れても、握手しても、お風呂やプールに一緒に入っても、絶対に他の人にうつることはありません

見た目がひどい状態の時でも、うつらない病気であるという知識は、ぜひ一般の方々にも広めて知っていただきたい事実です。

乾癬との区別が必要な病気

乾癬、特に尋常性乾癬は、発疹の見た目と発疹が発生する場所に特徴があり、皮膚科の専門医であれば診断がつきます。乾癬でみられるような銀白色の鱗屑が乗った境界明瞭な赤い皮疹は、乾癬以外の病気ではあまりみられないためです。

区別が必要な病気を挙げるとすると、長い期間を経過した慢性湿疹や、毛孔性紅色粃糠疹(ひこうしん)が挙げられます。この2つの病気についても説明します。

慢性湿疹

慢性湿疹は、皮膚の炎症が長い期間続いたものです。かぶれや乾燥、皮脂の減少、アトピー性など、さまざまな原因があります。

湿疹と乾癬
引用元:everydayhealth

湿疹というと、赤くてグジュグジュした皮膚というイメージがありますが、慢性湿疹の多くは、皮膚が厚くなり、色素沈着して赤黒い見た目になることが多いです。

皮膚が厚くなると、当然皮膚の表面にある角質も厚くなるので、尋常性乾癬で観察される鱗屑との鑑別が問題になります。慢性湿疹は尋常性乾癬と治療方法がやや異なるので、両者の鑑別は重要。

慢性湿疹では、外用の副腎皮質ステロイド薬や保湿、かゆみ止めなどの使用が主体となり、尋常性乾癬で使用される活性型ビタミンD3製剤の外用剤や、かゆみ止め以外の内服薬を使わないことが多いです。

慢性湿疹と尋常性乾癬を区別する上では、発疹の見た目を注意深く観察することに加えて、慢性湿疹は長い期間発疹が続いていること、尋常性乾癬は頭、肘、膝、お尻など擦れる場所に発生しやすいことといった情報が重要。

生検といって、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察し、尋常性乾癬に特徴的な所見がないかどうか探す検査も有用です。

毛孔性紅色粃糠疹

毛孔性紅色粃糠疹(ひこうしん)は、毛穴(毛孔)に一致して赤い発疹が出現し、悪化すると全身に発疹が広がるとともに、全身の皮膚の角質が厚くなる病気です。特に、手のひらと足の裏に症状が目立ちます。

毛孔性紅色粃糠疹
引用元:MedlinePlus

毛孔性紅色粃糠疹にはいくつかの病型があり、小児期に発生するものの一部には、遺伝性があることが知られていますが、成人期に発生するものは原因が不明なことが多いです。日光やHIVなどの感染症、軽微な外傷などを契機に悪化する例も報告されています。

皮膚の角質の肥厚が島状にみられることがあり、乾癬の鱗屑との鑑別が問題に。毛孔性紅色粃糠疹の治療は尋常性乾癬と似ている部分が多く、外用の副腎皮質ステロイド剤や内服のビタミンA製剤などを使います。

毛孔性紅色粃糠疹と尋常性乾癬を区別する上では、発疹の見た目の注意深い観察に加えて、発疹の分布を観察することが重要です。

毛孔性紅色粃糠疹の発疹は毛穴から始まりますが、乾癬の皮疹はよく擦れる場所から始まるという違いがあります。慢性湿疹と同様に生検検査による情報も有用です。

乾癬を発症したら、適切な治療で悪化が防げる

皮膚に発疹ができて、乾癬かな?と思ったら、まずは皮膚科を受診し専門的な診察を受けましょう。もし発疹が本当に乾癬によるものであったとしても、乾癬の型や重症度により、適切な治療方法は異なります。

残念ながら、乾癬は現在の医学では完治は難しく、長くつきあっていくことになる病気です。しかし、乾癬の治療は日々進歩しており、適切な治療を受けることで症状のコントロールが可能になってきました。

治療によって30-70%の患者さんが一時的に皮膚の症状が消失した、という報告もあります。治療を自己中断してしまうと悪化してしまう可能性があるので、通院の継続が重要です。

https://asami.clinic/psoriasis-treatments/

生活面では、皮膚への刺激を避けることが重要です。乾癬の発疹はかゆいこともありますが、掻いてしまうと発疹が広がってしまうことがありますので、かゆくても掻かないように気を付けましょう。

入浴の際にも、ナイロンなどでできた硬いタオルでゴシゴシ洗ってしまうと悪化しやすいので、やさしく泡で洗うように。保湿も重要です。

ストレスをきっかけにして悪化することも多いので、睡眠時間を確保して規則正しい生活を送る、魚や野菜中心のバランスが取れた食事に気を付けるなど、良い生活習慣を身に着けましょう。

また、喫煙も乾癬の症状を悪化させるといわれており、禁煙することも勧められます。

乾癬は、手足や頭など、人に見えるところに発疹がでるので、患者さんは見た目を気にされることが多く、「人にうつる病気だ」との誤解も含めて、乾癬は極めて社会的な病気です。

患者さんのみならず、家族の方や周囲の方、社会全体の理解と支援が重要です。10月29日は世界乾癬デーとされ、世界規模で乾癬への理解を啓発する日となっています。

まとめ

最近増えている皮膚の病気、乾癬についてお話ししました。

乾癬は全身に赤い発疹が出現します。特に急激に発症された場合は驚かれるかもしれませんが、治療によりコントロール可能な病気です。もし乾癬かなと思ったら、早めに皮膚科を受診しましょう。

参考文献

1) Takahashi H, et al.: Analysis of psoriasis patients registered with the Japanese Society for Psoriasis Research from 2002-2008. J Dermatol. 38(12):1125-1129, 2011. doi: 10.1111/j.1346-8138.2010.01145.x. Epub 2011 Sep 27.

2) 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬より 
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/index.html

3) 佐野栄紀. 乾癬の免疫学的病態. 日本臨床 76(1):22-27, 2018.

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