皮膚の病気

乾癬のタイプを見分けるために 種類によって違う症状について知ろう

乾癬
藤井 麻美

乾癬の症状にはどのようなものがあるか知っていますか?

乾癬と診断されると、「今後どんな症状が出てくるんだろう?」「この症状は乾癬によるものなのか?」など、さまざまな疑問が出てくるでしょう。

皮膚に発疹が出てきたことで診断された患者さんが大多数だと思いますが、乾癬は皮膚以外にも症状が出ることで知られています。

乾癬の症状について理解すると、治療の効果について実感できたり、症状が悪化した時に病院の先生に相談して適切な検査、治療を受けたりすることが可能です。

乾癬の症状と検査について、一緒にみていきましょう

乾癬の症状は発疹と爪の変形や関節炎

乾癬の症状は、大きく皮膚の症状と皮膚以外の症状に分けられます。

乾癬の発疹はかなり特徴的であり、多くの場合、頭やひじ、ひざ、お尻など、日常的によくこすれる部位に発症

疥癬

見た目には赤くやや盛り上がった発疹で、表面に銀白色のフケのようなものがついており、このフケのようなものはこするとポロポロと剥がれ落ちます。

発疹の大きさは、最初は2~3cm大のものから始まることが多いのですが、悪化すると個々の皮疹がくっついて、大きな地図状の発疹になることも1)

乾癬の発疹は、約半数の患者さんではかゆみを感じ、残りの半数の患者さんはあまりかゆみを感じないと言われています2)

かゆみはお風呂に入って皮膚が温まったときなどに悪化しやすいといわれていますが、乾癬の発疹は掻くことで悪化してしまうので、掻かないように注意が必要です。

皮膚以外には、爪の変形や関節炎、発熱などの症状があります。

乾癬の患者さんの爪には、小さな凹みができる「点状陥凹(てんじょうかんおう)」、爪に白い斑点ができる「爪甲白斑(そうこうはくはん)」、爪が部分的にはがれてきてしまう「爪甲剥離(そうこうはくり)」といった変化がみられることが。

なかでも点状陥凹と爪甲剥離は、乾癬に特徴的な所見です。まれに、皮膚の発疹がなく、爪の変形の症状しかみられない乾癬の患者さんもいらっしゃいます。

疥癬

関節炎は、乾癬の中でも乾癬性関節炎と呼ばれる型の患者さんにみられる症状で、皮疹に加え、関節の痛みや腫れ、変形などの症状が。発熱は、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症といった、重症の乾癬の患者さんでみられることがあります。

乾癬は5種類

乾癬は、症状によって5つのタイプに分けられ、タイプにより治療が異なります。

尋常性乾癬

最も多いタイプで、全体の9割を占めます3)。一般的に「乾癬」といったときはこのタイプを指します。

皮膚の症状と、人によっては爪の症状が。頭やひじ、ひざ、お尻などに、数cm大の赤く盛り上がった発疹が出現し、表面に銀白色のフケのようなものがつき、ポロポロと剥がれ落ちてきます。

このフケのようなものを「鱗屑(りんせつ)」といいます。悪化すると発疹が徐々に拡大してくっつき、最終的には地図状の大きな発疹に。爪の変形もよくみられます。

滴状乾癬

お子さんや若い患者さんに多く、1cm未満の小さな発疹が多発するタイプです。この発疹はよく観察すると、尋常性乾癬と同じようにやや盛り上がった赤い発疹で、表面に銀白色の鱗屑がついていることがわかります。

特にかぜや扁桃腺炎の後に発症しやすいです1)。症状は一時的なものであることが多く、数か月以内に発疹が消えてしまう患者さんがいる一方で、再発を繰り返し尋常性乾癬に移行する患者さんもいます1)

乾癬性関節炎

尋常性乾癬でみられる皮膚の発疹に加えて、全身の関節に炎症が起きるタイプです。皮膚の発疹が関節炎よりも先にみられる患者さんが全体の約90%を占めており、残りの10%の患者さんは皮膚の症状よりも先に関節炎が出現します。

皮膚の症状は尋常性乾癬と同様です。関節の症状としては、指趾、肩、ひじ、ひざ、手首、足首、腰などの関節に痛みや腫れ、変形などの症状が。

似たような関節炎の症状を示す病気として関節リウマチがあり、発疹がみられないタイプの乾癬性関節炎との区別が問題になることが多いです。

乾癬性関節炎では、指に3個ある関節のうち、一番指先に近い関節(DIP関節)に症状がでることが多く、関節リウマチでは、元の方にある2つの関節(根本側からMP関節、PIP関節)に症状がでることが多いことで知られています1)

ヒトには自分の細胞を攻撃しないように、自分の細胞のマーカーとなるHLAという遺伝子があって、HLAには非常に沢山のタイプが。

乾癬性関節炎はHLA遺伝子との関連が知られており、乾癬性関節炎の患者さんの約40%はHLA-B27というタイプを持っていることが知られています。

乾癬性紅皮症

乾癬の皮疹が拡大し、全身の80%以上の皮膚が発疹で赤くなってしまったタイプです2)。発疹の表面には、鱗屑の付着もみられます。

全身の皮膚で炎症と角化細胞の増殖が起きるために、タンパク質などの栄養分が大量に消費されてしまい、低タンパク血症を起こすほか、皮膚の水分保持機能の消失によって、脱水や電解質異常を起こすことも1)

疥癬

膿疱性乾癬

乾癬の中でも重症のタイプで、発熱、寒気や体のだるさとともに、全身の皮膚が赤くなり、「膿疱」という膿を含んだ水ぶくれのようなものが全身に出現してきます1)

もともと尋常性乾癬と診断されていた患者さんが発症する場合もあれば、過去に乾癬と一度も診断されたことのない患者さんが発症する場合も。爪の変形のほか、頬の粘膜や舌など、口の中にも膿疱やびらん(皮膚や粘膜のめくれ)が出現することもあります。

しばしば全身のむくみや関節の痛みを伴い、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発し命に関わることが。このため、全身に膿疱があらわれる膿疱性乾癬[汎発型(はんぱつがた)]は厚生労働省の指定難病です4)

最近の研究で、一部の膿疱性乾癬の患者さんには、IL-36RN遺伝子やCARD14遺伝子といった、炎症反応を制御する遺伝子の異常がみられることがわかっています1)

乾癬の検査と診断

多くの場合、乾癬の診断は、症状の経過を聞いたり(問診)、皮膚の発疹の様子を詳しく観察したり(視診)することで診断できますが、そのほかにも重要な検査があります。詳しくみていきましょう。

問診

症状の経過は診断にあたって非常に重要な情報です。初めて症状が出てから、現在までの様子について詳細に聞き取ります。また、ご家族に乾癬と診断された患者さんがいらっしゃるか、今までにかかった病気、服用中の薬剤、酒、たばこの量なども重要な情報です。

視診

乾癬の発疹はよくこすれる部分にできやすいので、頭部(特に髪の毛の生え際の部分や眼鏡のツルが当たる部分)やひじ、ひざ、お尻などを入念に観察。

爪の変形もないか観察しますが、爪の水虫と鑑別が難しいこともあり、その場合は爪の一部をこすって水虫の菌がいないかどうか調べます。

皮膚生検

乾癬の確定診断となりうる重要な検査です。乾癬の病変のある皮膚の一部を、小さなメスでくりぬいて採取し、薄く切って染色し顕微鏡で観察。乾癬の患者さんの皮膚には、軽い皮膚の炎症を認めることが多く、表皮は厚くなっています。

正常では、表皮の表層の細胞は核が脱落して成熟するのですが、乾癬の患者さんでは表皮細胞の増殖スピードが異常に早くなっているために、表層まで核が残った未熟な細胞が見られる(錯角化:さくかくか)という特徴が。

画像検査

乾癬性関節炎を疑う場合は、X線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査などを行って、全身の関節の変化を観察したり、関節リウマチなど他の病気の可能性がないかを検討したりします。

血液検査

皮膚や関節の炎症の程度をみる目的や、乾癬の治療により副作用が出ていないか確認する目的で行います。膿疱性乾癬や紅皮症性乾癬など重症のタイプでは、全身の状態を確認するという意味でも重要な検査です。

また、乾癬の患者さんは糖尿病や脂質異常症を合併することも多いため、血糖値やコレステロール値も併せて調べることがあります。

まとめ

乾癬の症状と検査について説明しました。ひとくちに乾癬といっても、皮膚の症状だけでなく、関節の炎症や爪の変形など、さまざまな症状が出てくることがあります。

症状を理解して、主治医の先生と一緒に治療に取り組んでいきましょう。

参考文献

1) 病気がみえる vol.14 皮膚科 メディックメディア. P143-149

2) Takahashi H, et al.: Analysis of psoriasis patients registered with the Japanese Society for Psoriasis Research from 2002-2008. J Dermatol 38(12):1125-1129, 2011. doi: 10.1111/j.1346-8138.2010.01145.x. Epub 2011 Sep 27. 

3) 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/index.html

4) 膿疱性乾癬(汎発型)(指定難病37) – 難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/313

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