皮膚の病気

乾癬の四大治療 新しい薬もどんどん登場

シクロスポリン
藤井 麻美

乾癬と診断されると、「治るのかな」「どんな治療があるのかな」「副作用が心配」など、不安なことがたくさんある方もいるでしょう。

でも、乾癬には本当にさまざまな種類の治療法があり、最近も新しい薬がどんどん登場。

主治医の先生ともよく相談しながら、皮膚や関節の症状に合わせて選択していく必要があります。乾癬の最新治療法の情報を含めて、わかりやすくお話ししていきましょう。

乾癬の4大治療を正しく使い分けましょう

乾癬の治療には、大きく分けて「外用療法(塗り薬)」「内服療法(飲み薬)」「光線療法」「生物学的製剤(注射薬)」の4種類があります。

それぞれの治療法に長所と短所があるので、患者さんの状態に合わせて一つの治療法を選択する場合があれば、複数の治療法を組み合わせる場合も。適切なタイミングで適切な治療を選択できるように、主治医の先生とよく相談をしましょう。

乾癬は、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気で、治療の目的は症状をコントロールしてなるべく良い状態を保ち、患者さんの生活の質を向上させることです。

いったん症状がよくなったからといって受診をやめてしまうと、再発したり悪化したりすることがよくあるので、根気強く治療を続けていくことが重要。一緒に頑張っていきましょう。

外用療法

皮膚の症状に対する治療法で、皮膚に塗り薬をぬることです。最もよく行われ、また基本となる治療法となります。

塗る薬の種類は、副腎皮質ステロイド剤や活性型ビタミンD3製剤です。副腎皮質ステロイド剤には、乾癬の原因となる表皮の炎症や活性化した免疫細胞を落ち着かせる作用があり、効果は早く現れますが持続時間は短いものとなります。

一方、活性型ビタミンD3製剤には表皮の細胞の異常な増殖を抑える作用があり、効果はゆっくり現れ比較的長続き1)

両方の薬剤を併用することで欠点を補い合うことができ、最近では両者を混ぜ合わせた「配合剤」というタイプの塗り薬もあります。

過剰に使用すると、副腎皮質ステロイド剤は皮膚が薄くなったり赤みが出たりする副作用があり、活性型ビタミンD3製剤には高カルシウム血症の副作用がありますので、医師の指導のもと、適切な量を使用することが重要です。

光線療法

こちらも、皮膚の症状に対する治療法で、皮膚に定期的に紫外線を当てる方法です。外用療法だけではよくならない場合に併用されることも。

紫外線には皮膚の免疫反応を抑える効果があるので、乾癬の原因となっている皮膚の炎症を抑える効果が期待できます1)

使用する紫外線には、UVA(長波長紫外線)とUVB(中波長紫外線)が。最近では、ナローバンドUVBと呼ばれる311-312nmの波長の紫外線が、副作用も少なく効果も高いためよく用いられています。

副作用は、回数を重ねてくると、日焼けと同じように当てている部分が茶色くなるということです。これは、光線療法が終了すると、多くの場合は少しずつ改善していきます。

また、光線の強さを上げたときに、光を当てた部分がひりひりしたり赤くなったりすることが。

このような症状がみられた場合は、当てる光の強さを下げたり、症状が落ち着くまで光を当てるのを少しお休みする必要がある場合も。

多くの場合は通院で治療を行いますが、特に治療し始めは週に1-3回の通院。このため、頻回に病院を受診することが難しい方は、当てる頻度や他の治療選択肢がないかについて、主治医との相談が必要となります。

乾癬治療

内服療法

レチノイド

ビタミンAに似た構造を持つ飲み薬で、日本ではエトレチナートというお薬が使われています。表皮の細胞が増えるのを抑え、皮膚が分厚くならないようにして、乾癬の皮膚症状が出るのを落ち着かせます1)

副作用で最も重大なものは、催奇形性(さいきけいせい)です。胎児に奇形を起こす薬剤であることが知られています。

具体的には、エトレチナートを飲んでいる間と、女性は飲むのをやめて2年間経過するまで、男性は飲むのをやめてから6ヶ月経過するまで、避妊が必要です2)。このため、近いうちに子供が欲しいと考える方には処方できない薬剤となります。

その他、体の皮膚だけでなく粘膜も薄くなるため、唇が荒れやすくなったり、口内炎ができやすくなることが。肝臓の数値が高くなることもあるので、特に飲み始めは血液検査で肝臓の値が悪くなっていないかの確認を行います。

唇の荒れや口内炎、肝臓の数値の悪化は、薬を減らしたりやめたりすれば基本的に良くなるため、近いうちに子供を希望しない方であれば、良い治療選択肢の一つとなります。

PDE4阻害薬

アプレミラストという飲み薬(新薬)が上記に当たります。PDE4(ピーディーイーフォー)は、乾癬の方の免疫細胞などにおいて、過剰に存在することが知られているタンパク質で、多すぎると炎症を悪化させることが1, 3)

この薬は、PDE4の働きを適度に抑えることで、免疫のバランスを整え、乾癬の症状を改善させると考えられています3)

乾癬の皮膚の症状だけでなく、関節の痛みにも効果があるといわれていますが、免疫のバランスを整える、というお薬であることから、効果が出てくるまでに少し時間がかかる方も。

主治医の先生と相談しながら、毎日飲み続けながら効果が出てくるかを確認しましょう。

副作用で最も多くみられるのは、下痢です。他には頭痛などが知られていますが、通常飲み始めて2-4週間で徐々に落ち着きます。また、副作用が起きにくいように、飲み始めは数日間かけて少しずつ飲む量を増加。

新薬なので高価ですが、外用療法、光線療法などでも効果が乏しく、注射薬の導入も難しい患者さんには選択肢となります。

なお、B型肝炎や結核の既往がある患者さんには感染症を悪化させる可能性がある、妊娠している患者さんには使用できないなどの注意点があるため、使用については主治医に確認しましょう。

免疫抑制剤

シクロスポリン、メトトレキサートといったお薬は、免疫の過剰なはたらきを抑えることで、乾癬の症状を落ち着かせます。元々は関節リウマチなど、関節炎が主な症状である病気に使われてきたお薬でした。

このことから、乾癬性関節炎の関節破壊(関節炎が長く続くことで、軟骨や骨が傷つき、関節が壊されてしまうこと)を抑えることを期待して使われることもあります1)

どちらのお薬も、免疫を抑えるものであるため、細菌、ウイルスなどによる感染症に対しては弱い状態に。手洗い・うがいといった、基本的な感染予防策を心がけることが必要になります4)

シクロスポリン
引用元:沢井製薬
メトトレキサート
引用元:沢井製薬

シクロスポリンの主な副作用は、腎機能の低下や高血圧メトトレキサートの主な副作用は、肺炎や血球減少(血液中にいる、白血球、赤血球、血小板などの成分が減ってしまうこと)などです4)

いずれも、定期的な血液検査等が必要となるお薬ですので、主治医の先生とよく相談しながら内服を続けていきましょう。

注射製剤

生物学的製剤

化学的に合成した医薬品ではなく、生物が作り出す物質(タンパク質)を応用して作られたお薬です5)。外用療法、光線療法や内服療法で、十分な効果が得られなかった方に対し、注射や点滴として投与します。

炎症の信号を伝える「サイトカイン」という物質のはたらきを抑えることで、乾癬の皮膚の症状や関節炎の症状を抑制。抑えるサイトカインの種類によって、数種類に分類されています1)

A) TNF-αを抑える:アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ ペゴル

B) IL-17を抑える:セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ

C) IL-12とIL-23を抑える:ウステキヌマブ

D) IL-23を抑える:グゼルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ

 ※TNF:腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)の略

 ※IL:インターロイキン(interleukin)の略

どのタイプの生物学的製剤が患者さんに合っているかは、投与する回数や間隔、自分自身で自宅で注射することが可能かどうかなど、薬によって異なるため、主治医の先生と相談して決めていくことになります。

注射を打つ頻度は最長3ヶ月と、IL−23を抑える薬で長くなります。IL−17やTNF-αを抑える薬は、1週間から1ヶ月程度と比較的頻繁に注射しないといけません。

しかし、IL−17やTNF-αを抑える薬は自宅での注射が可能なものもあるというメリットもあり、自宅での注射ができるようになれば、IL−23を抑える薬と来院回数は大きく変わらなくなることもあります。

比較的新しい薬であることもあって、どの薬がどのような患者さんに適しているかどうかということや、薬の効き始めの速さや効果の持続時間についても世界的に一定の見解が得られておらず、費用も高くなります。

その意味で専門性のある施設で経験のある主治医と綿密な相談を行ったうえで、使用していくことが必要です。

日本皮膚科学会が乾癬に対する生物学的製剤を使用できる施設を認定しており、認定施設での治療が基本

これまでの治療法と比べて免疫を抑える力が強いため、この治療を始める前には、結核やB型肝炎などの「免疫を抑えてしまうと大きく悪化する恐れがある」病気を持っていないかの事前検査が必要になります。

また、治療を開始した後も、肺炎や腎臓・肝臓等に新たな異常が起こっていないかを、定期的な検査(血液検査、尿検査、胸のX線検査など)で確認する必要が。感染症に対しては弱くなってしまうため、手洗いやうがいといった日頃の感染予防策も重要になってきます。

この治療法は医療費が高額になることもあり、その場合は高額療養費制度や医療費控除などの対象になることがあります。

自分の負担額がどの程度になるかは、患者さんによって異なるため、この治療法を主治医から勧められた/希望する場合は、受診した医療機関や加入している公的医療保険の窓口に確認してみましょう。

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬

現時点(2021年12月時点)では、ウパダシチニブというお薬が、痛み止め等の治療では効果が十分でない乾癬性関節炎の方に使用。

ヤヌスキナーゼ(JAK)は、細胞の外の炎症の信号をキャッチし、細胞の中にその信号を伝える経路にかかわっています。このJAKのはたらきを抑えることで、炎症の信号を細胞の中に伝わらないようにし、乾癬の炎症を抑制 1, 6)

「飲み薬」ではありますが、治療の強さおよび免疫を抑える力としては、生物学的製剤と同程度と考えられています。治療開始前~開始後の検査も、生物学的製剤に準じた内容になっているため、こちらの項目に入れさせてもらいました。

顆粒球単球吸着除去療法

膿疱性乾癬の治療法の一つです。血液を体外に循環させ、白血球をカラムという物質にくっつけて取り除いた後、血液を再び体内に戻します7)。基本的には入院して行う治療法で、専門的な設備が必要に。

この治療は日本ではやっている施設が少ないですが、一部の患者さんには劇的に効果があります。私も大学病院に勤務していた時に、何人か担当しました。顆粒球吸着療法で改善した経症例は全て学会発表し、論文を書いています。8)9)

乾癬のセルフケアは脱刺激と保湿

日常生活で気をつけることは、皮膚への刺激を減らすことです。乾癬の発疹はかゆいこともありますが、掻くと発疹が広がってしまうことも。かゆくても掻かずに、外用剤や保湿剤を塗って、皮膚をなるべく良い状態に保ちます。

保湿剤は使用感や効果の実感が人によってかなり異なるので、市販薬で自分にあったものがあれば、使用について主治医に相談してみましょう。

処方された副腎皮質ステロイド外用剤を塗る厚みは、薬を塗った後の皮膚にやや光沢があるくらいの厚みが望ましいといわれます。一つの目安として、薬を塗った面にティッシュペーパーをくっつけて逆さにした時に、ぎりぎり落ちないぐらいとするというものが。

また、FTU(Finger tip unit:フィンガーティップユニット)といって、大人の人差し指から第一関節までに薬を乗せた量が、大人の手のひら2枚分の面積に塗る適量とする方法もあります。

乾癬の症状がひどい場合、1FTUでは十分な保湿効果が得られない可能性もあるため、なかなか良くならない場合は塗る量についても主治医に相談してみてください。

入浴の際にも、硬いタオルや爪でこすって洗うことは避け、やさしく泡で洗いましょう。乾癬はストレスをきっかけにして悪化することもあるので、睡眠時間を確保して規則正しい生活を送るよう心がけるように。

魚や野菜中心の、バランスが取れた食事をとるようにすることも大切です。喫煙も乾癬の症状を悪化させるといわれていますので、禁煙しましょう。

持病やほかの病気を発症した場合の乾癬への影響

メタボリックシンドローム、肥満は乾癬の発生と関係あることが言われています1)。適正体重を維持できるように努めましょう。

滴状乾癬は、レンサ球菌などにより上気道炎(のど風邪)を起こしたことをきっかけにして、発症することがあります1)。滴状乾癬ではない乾癬の方でも、かぜなどの感染症をきっかけにして、乾癬の症状が悪化することも。

まとめ

乾癬には、症状の重さに応じて、さまざまな治療の選択肢があります。それぞれの治療法にメリット・デメリットがあるため、どのような治療方針でいくのかは、主治医とよく相談して決めていきましょう。

参考文献

1) 病気がみえる vol.14 皮膚科 メディックメディア. P64-68, 86, 143-149

2) 角化症治療剤チガソン®︎適性使用のお願い
https://www.pmda.go.jp/files/000143579.pdf

3) オテズラ錠10mg/20mg/30mg.
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3999042F1025_3_02/

4) メトトレキサートを服用する患者さんへ 一般社団法人 日本リウマチ学会
https://www.ryumachi-jp.com/pdf/mtx_2020.pdf

5) 乾癬ハンドブック 乾癬の種類と治療・暮らしの注意
ヤンセンファーマ株式会社/大鵬薬品工業株式会社 2018年8月作成

6) リンヴォック 添付文書 アッヴィ合同会社
https://a-connect.abbvie.co.jp/-/media/assets/pdf/products/rinvoq/Rinvoq_tmpDocument.pdf

7) 汎発性膿疱性乾癬 Q&A  稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/nouhou_QA_2014.pdf

8) Generalized Pustular Psoriasis With IL-36 Receptor Antagonist Mutation Successfully Treated With Granulocyte and Monocyte Adsorption Apheresis Accompanied by Reduced Serum IL-6 Level  
2018 Feb;22(1):92-93. doi: 10.1111/1744-9987.12596.

9) Sweet’s Syndrome Successfully Treated with Granulocyte and Monocyte Adsorption Apheresis 2017 May 22;9(2):13-18. doi: 10.1159/000475878.

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