円形脱毛症

自然に治るのは数%!?驚きの円形脱毛症の特徴とは

円形脱毛症
藤井 麻美

漫画やドラマで、ストレスの描写の一つして描かれる円形脱毛症。

確かにストレスは発症要因の一つと言われていますが、ストレスは発症のほんの一要因。ほとんどはストレス以外の原因で発症します。

人によってはなんの心当たりもなく、急に脱毛症状が起こってしまうことも。

今回は円形脱毛とはどういった疾患で、どういう症状を伴うのかを詳しく説明したいと思います。

急に抜け毛が増える円形脱毛は不安が大きいと思いますが、一度落ち着いてこの記事を読んで症状を確認してみてくださいね。

円形脱毛症とは?

「円形脱毛症」とは、頭皮に脱毛斑(部分的に毛が抜ける)が現れる疾患です。その多くは10円玉程度のサイズであることが多く「10円ハゲ」と言われることもあります。

しかし、眉毛やまつげ、体毛に発症することもある他、頭髪全体に広がる種類の円形脱毛症も。どういった症状があるか円形脱毛症の種類を確認しましょう。

円形脱毛症タイプ

単発型円形脱毛症

脱毛が1箇所だけの円形脱毛症を単発型円形脱毛症といいます。

円形脱毛症の多くはこの単発型円形脱毛症から始まりますが、放っておいて治る場合もあれば、脱毛班が広がったり、部位が増えることによって次に紹介する「多発型円形脱毛症」に移行することも。

多発型円形脱毛症

多発型円形脱毛症はその名の通り、円形脱毛症が多発(複数個所)に起こる症状です。

単発型から移行することが多いのですが、多発型を発症するとその後も円形脱毛症を再発しやすくなるのが特徴です。

症状が進行すると、複数の脱毛箇所が繋がり大きな脱毛班となり、さらに進行すると次の「全頭型円形脱毛症」につながることがあります。

全頭型円形脱毛症

全頭型円形脱毛症も言葉からわかるように頭全体の髪の毛が抜け落ちる脱毛症。前述したように、多発型が進行して発症する場合が多いです。

汎発型(全身型)円形脱毛症

円形脱毛症のなかで最も症状が重いのがこの汎発(はんぱつ)型円形脱毛症。頭髪に限らず、眉毛・まつ毛といった頭部の毛の他、症状が進行すると脇毛や腕毛など全身の体毛が全て抜け落ちる脱毛症です。

症状が重いだけでなく、治療が難しい脱毛症と言われています。

蛇行型円形脱毛症

蛇行型円形脱毛症は、円形ではなく帯状に髪の毛が抜ける脱毛症です。その他の円形脱毛症と違い、頭髪の生え際から抜ける特徴を持ちます。

円形脱毛症の特徴

円形脱毛症には、特徴的な症状があります。

その特徴的な症状のために、「自分は何か悪い病気なんじゃないか」と思われる方もいらっしゃいますが、症状を理解して過度に不安を持たないようにしてください。

理由不明で急に発症する

一般的な薄毛(AGA・FAGA)などは徐々に抜け毛が増え、ゆっくりと症状が進行していきますが、円形脱毛症は気がついた時には脱毛班が現れています。

さらに、円形脱毛症はなぜ発症するのか完全に解明されていない疾患の一つ。なぜ発症するのか心当たりがなく気がついたら発症しているため、予防をすることが難しい疾患です。

ほっといたら治ってしまうことがある

あまり良くない話なのですが、円形脱毛症は発症する原因がわからない一方で、確実に結果が出る治療方法も確立されていません。

医療機関に行くことを推奨しますが「気がついたら治ってた」という方もいらっしゃいます。治る期間は人それぞれですが、1ヶ月ほどで髪が生え始める方も

ですが、「ほっといても大丈夫か」とは思わないでください。

生涯にわたり続く場合もある

残念なことに円形脱毛症の脱毛部位は、一生治らない場合もあります。

一概に治らないといっても、全く変わらないというわけではなく、大きくなったり、小さくなったり、一度治ったように見えても再発したりと症状はさまざまです。

思春期(若年)にも発症することがある

円形脱毛症とAGAの違いは、年齢はあまり関係ないということ。AGAは10代で発症する人もいますが、その割合は非常に小さいです。

しかし、円形脱毛症は思春期・小学生でも発症することがあります。よく耳にするのは学生時代のストレスで発症する方が多いように思われますが、その原因は不明です。

円形脱毛症とAGAの違い

「結局AGAとどう違うの?同じ髪の毛が抜ける病気なんでしょう?」と思う方が多いかもしれませんが、プロセスや発症原因、対象が全く異なります。

AGAと比較する形で説明していきましょう。

症状の進行プロセスの違い

AGAは、ヘアサイクルの乱れにより発毛と脱毛のスピードが崩れ、少しづつ毛量が減っていくためなかなか初期段階では症状に気がつくことができません。

一方の円形脱毛症では、自覚なく一気に髪が抜けるため、気がついたら脱毛班ができているという状態になります。

全体がじわじわと薄くなっていくのがAGA、局所的に一気に髪が抜けるのが円形脱毛症ということです。

発症原因の違い

AGAは男性ホルモンにより発症します。そのため基本的に男性のみ発症する疾患で、加齢とともに発症リスクが増し、30代以降で発症する方が大半です。

一方の円形脱毛症は主な原因が自己免疫疾患と言われており、性別年齢を問わず発症し、患者の25%が15歳以下と言われています。

円形脱毛症はどんな年齢でもなりますが、患者さんの1/4は15歳以下で始まり、(図9)、全頭型や汎発型などのひどい脱毛も小児に多くみられます。男女差はありません。

脱毛症 Q7 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/q07.html

またほとんど男性しか発症しないAGAと違い、円形脱毛症の発症率は女性の方が多いという論文もあります。

発症年齢別{小児期群(0~15歳),思春期群(16~19歳),成人前期群(20~39歳),成人後期群(40歳以降)}に検討を行った.男性69例,女性136例で構成され,男女比は1:1.9だった.

円形脱毛症の動向:205例の解析:https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680713343488

円形脱毛症の治療方法の治し方

円形脱毛症の治療方法は、脱毛の症状と医療機関の方針によって大きく異なります。

今回は日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版にて治療の推奨度を参考に確認しましょう。

<円形脱毛症 治療ガイドライン>

治療の推奨度はAが最も高く

A:行うよう強く勧める
B:行うよう勧める
C1:行ってもよい
C2:行わないほうがよい
D:行うべきではない
*:小児には原則行わない

と規定されています。C2以降は効果が認められておらず、推奨されていません。

円形脱毛症においては推奨レベルAの治療方法はなくBが最も効果の高い治療方法となります。そして推奨度Bの治療方法は「ステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法、かつらの使用」の4つのみです。

基本的な治療方法から説明していきたいと思います。

ステロイド外用療法+α

ステロイドを使った塗り薬による治療です。大抵の医療機関ではまずこの治療を行いますが、加えてグリチルリチン・グリシン・メチオニンなどの内服薬での治療も同時に行います。

「グリチルリチン・グリシン・メチオニンなどの内服薬療法」はC1:行っても良いという推奨度。これらは免疫異常の抑制を目的とし、初期の円形脱毛症で行われる治療です。

局所免疫療法

ステロイド外用療法で改善が見られない方、重度の方には「局所免疫療法」を行います。

これは脱毛班に化学物質を塗ることによって、頭皮をあえてかぶれさせ本来の免疫細胞の動きを円形脱毛症を起こすTリンパ球の働きを抑える治療方法です。

局所免疫療法は意図的に炎症を引き起こすので、アトピーをお持ちの患者さんは頭皮の症状が悪化することもあります。また使用する薬剤は保険が適用されず、自費診療です。

ステロイド局所注射

頭皮に注射

この「ステロイド局所注射」も免疫機能を抑制する働きに期待できるのですが、1回の注射で1㎠しか効果がないので、脱毛班のサイズによっては複数回の注射を行う必要があります。

しかも、注射の際に強い痛みを伴ううえ、血管拡張のリスクなどがあるため、成人していない子供にはステロイド局所注射を行うことができません

かつら(ウィッグ)の使用

最後の推奨されている治療方法は「かつらの使用」です。

「かつらの使用」に関しては紫外線や刺激を防ぐ目的で推奨されていますが、それ以外にも

AA 患者における使用前後での QOL の改善についての報告は少ない.田中式職業検査 DE-H 法を用いた症例集積研究では,行動の未熟性,情緒の不安定性,不適応感,器官劣等感がかつらの使用によりかなり改善された

日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf

と、精神的な側面での治療方法ともいえます。

精神的なものってどれくらい効果があるの?と思うかもしれませんが、「治療せずに経過観察のみ行う」という治療なのかという対処に関してもC1:行ってもよいの推奨度が認められています。

そして、1年間治療をしなかった際の脱毛班の消失(完治)率は7割超。

積極的な治療介入をせず,患者の心理面に配慮しつつ経過観察することも AA の「治療」の選択肢のひとつとなり得る.

AA を無治療で経過観察した症例集積研究(コホート研究)によれば,アトピー性疾患や自己免疫性内分泌疾患などの併存症がない単発型あるいは少数多発型AA1,716 例のうち,1,263 例は 1 年以内に脱毛斑が消失した

日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf

脱毛班消失 1263例 ÷ 単発・多発型 1716例 = 1 年以内治癒率73.6%

ですので医療機関に行っても経過観察を推奨されることは多いかもしれませんが、症状・治療方針の確認は不安を取り除いてくれる効果もあるため、医療機関での診察をおすすめします。

円形脱毛症は自分で治せない

「治療は怖いし、ほおっておいたら治ることもあるなら自分で様子を見たい」と思った方もいるかもしれませんが、すぐに医療機関に行くことをおすすめします。

他のサイトを見ていると「マッサージしましょう」「ストレスを改善しましょう」というエビデンスのない改善方法を提案するサイトも。あまりにも無責任だと感じます。

円形脱毛症は発症する明確な理由がわかっていない疾患です。それを自分で自宅でなんとかできるはずがありません。

円形脱毛症は治療をすれば必ず改善する疾患ではありませんが、だからこそ、できるだけ早い段階でクリニックに行き、正確な診断を受けるべきだと考えます。

ウイッグによる対策は意外とおすすめ

ウィッグ かつら

治療方法とは異なりますが、見た目の対策としてはウィッグ(カツラ)がおすすめ。

特に人毛のウィッグは少し価格が高いですが、パーマ、カラー、ドライヤーなど地毛と同じようにアレンジが可能です。

円形脱毛症は急激に髪の毛が抜け、なかなか改善が見られないという症状から不安が大きくなりやすい疾患ですので、気持ちを落ち着かせるためにウィッグをつけてみるのも一つの方法です。

症状が大きい場合はまず見た目を整えて、長期的に取り組みましょう。

まとめ

円形脱毛症は気がついたら脱毛班ができていたり、ある日大量の毛が抜け落ちるため、非常に不安が大きくなる疾患です。

必ず治るとは言えませんが、治療方法はありますので、一人で抱え込むのではなく症状が大きくなる前に医療機関に行き、しっかりとした治療を受けましょう。

円形脱毛症はストレスにより症状が悪化することもありますので、ストレスをこれ以上抱えずに、信頼できるクリニック・医療機関で相談してください。

参考文献

1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2010
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_2.pdf

2) 円形脱毛症の動向:205例の解析
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680713343488

3) 脱毛症 Q7 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/q07.html

4) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf

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