皮膚の病気

Sweet病とはどんな病気?発熱と痛みのある結節には注意

Sweet病
藤井 麻美

Sweet病、なんだか甘そうな名前ですが、別名は急性熱性好中球性皮膚症といいます。急な発熱と痛みを伴う浮腫状の丘疹や斑点結節が全身の皮膚にできるまれな炎症性疾患です。

発熱と皮疹はありますが、原因は細菌感染によるものではありません。好中球の増加と皮疹部位への好中球の浸潤が特徴で、1964年に皮膚科医のSweetが発見したことからその名前になりました。

Sweet病はいまだにはっきりした原因はわかっておらず1) 、基礎疾患として白血病やがんを合併していることがあるため、皮膚の治療だけをすればよいというものではありません。

日本ではSweet病の調査班がなく、どれくらいの患者さんがいるかは不明ですが、まれな病気ながら症状に苦しむ患者さんがいらっしゃいます。

今回は、Sweet病について今わかっていることや、治療法について解説していきましょう。

どうしてSweet 病になるの?

好中球は、白血球全体の40-70%を占める炎症性の細胞です。感染部位や外傷などで組織が損傷を受けた場所に集まり、顆粒状のプロテアーゼという物質で病原体を殺して消化する役割が2)

Sweet病では、特定の原因がないにもかかわらず、好中球が活性化し皮膚などに集まって皮膚症状を起こしてしまいます。どうして好中球が異常な動きをするのか、実はまだはっきりわかっていません。

好中球が刺激を受けると、さまざまな化学物質を出して、さらに好中球や単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ヘルパー T細胞、などの免疫・炎症反応を司る細胞を刺激します。

免疫反応の重要な役割を担っている一方、好中球の放出するプロテアーゼは蛋白分解酵素で、浸潤した先の本来は壊さなくてもよい組織や細胞が破壊。

Sweet病
引用元:OJRD

Sweet病では皮膚に好中球が浸潤し、周囲の組織を破壊することで紅斑や結節ができてしまうのです。

基礎疾患を合併する場合のメカニズムも、はっきりわかっていません。がん細胞やがんのある免疫系で分泌される化学物質により、好中球が異常な活性を受けてしまうのではないかと考えられています。

Sweet病は中年女性に起こりやすい

Sweet病は過去に調査班などがなく、はっきりした罹患率などはわかっていません。2016年に皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班が発足し、Sweet病も対象疾患に3)

合併する疾患がないSweet病は、男女比が男:女=1:4で女性に起こりやすく、30〜60歳で起こりやすいことがわかっています。感染症や自己免疫疾患、妊娠中に発症することが多いようです。

症状は発熱と痛い紅斑

Sweet病は急性発熱性好中球性皮膚病という名前の通り、発熱、全身倦怠感、紅斑などの全身症状が特徴的です。痛みを伴う隆起性の紅斑が顔面、首、上半身、腕などに好発して、紅斑の境界ははっきりわかりやすいとされています。

紅斑以外にも、膿を含む結節様の病変が見られることも。膿は好中球の残骸ですが、細菌感染はしていないことが特徴的です。皮疹は中央がくぼんで環状を呈したり、潰瘍になったりすることもあります。

口腔内の粘膜に病変ができることもあり、その際には似ている皮疹を呈するベーチェット病と鑑別が必要です4)

その他、眼、肺、消化管、腎臓、筋肉などにも好中球浸潤が見られることがあります。多くは皮膚病変を伴いますが、神経Sweet病という髄膜炎、脳炎を起こすものも5)  。神経Sweet病では、頭痛、痙攣、意識障害などの症状がでます。

Sweet病
引用元:medindia

皮膚症状より神経症状が先行する例が2割ほどであり、医療機関を受診するときに皮膚症状がなくても、後々皮膚症状がでてきてSweet病の診断に至ることも。

合併しうる疾患

Sweet病は特に合併症のない特発性Sweet症候群(古典的Sweet syndrome:SS)、がんを合併する悪性腫瘍関連SS、薬剤誘発性SSに分けることができます2)

特発性SS

突発性SSは、感染症、自己免疫性疾患、妊娠が契機に。感染症として最も起こりやすいものとしては、上気道感染や胃腸炎で、COVID-19感染後もSSの報告があります。自己免疫性疾患としては、潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患、関節リウマチが。

ワクチン接種や皮膚生検などの刺激で誘発されることもあります。

悪性腫瘍関連SS

悪性腫瘍関連SSとしては、白血病、特に急性骨髄性白血病、大腸がん、泌尿器がん、乳がんがあります。

薬剤誘発性SS

薬剤誘発性SSはG-CSF、免疫抑制薬のアザチオプリン、非ステロイド性抗炎症薬、抗菌薬などが挙げられます。

G-CSFは、Granulocyte Colony Stimulating Factor、顆粒球コロニー形成刺激因子といい、骨髄中の白血球のうち主に好中球の分化・増殖を促す物質で、主に白血球減少した免疫不全状態の際に治療として使用。G-CSFは薬剤誘発性SSを起こす薬剤の中でも最も頻度の高い薬剤です。

Sweet病
引用元:DermNet

検査は好中球に注目

血液検査では、好中球が増加、炎症反応のCRP上昇と赤沈の亢進が特徴的ですが、Sweet病に特徴的なものではありません。

急激に発症する有痛性紅斑性の結節があり、皮膚病変の病理組織検査で白血球破砕性血管炎を伴わない真皮への好中球優位の細胞浸潤があることが診断の必須項目です。

白血球破砕性血管炎とはSweet病と鑑別を要する皮膚症状を呈する病気で、皮膚に限局しておこる血管炎。小さな紫斑が主な症状ですが、潰瘍や皮膚の壊死などを起こすこともあります6) 。この血管炎の所見がSweet病には起こっていないことは重要な診断のポイントです。

また、皮膚に炎症が起こると白血球が集まってくる所見はよく見られますが、白血球の中でも特に好中球が主に炎症部位に浸潤していることがSweet病の特徴的といえます。

がんや薬剤などでSweet病を起こしている場合、原因を検索する必要が。皮膚病から調べてみたらがんが見つかったということもあります。

治療は主にステロイド

軽症の皮膚所見だけのSweet病の場合には、合併している基礎疾患の治療や原因となる薬剤などを中止することで数週間から数ヶ月で痕を残さずに症状が自然に消失することがあります。

それ以上のSweet病の場合には、治療の中心はステロイドです。ステロイドに対して治療効果があるということは、Sweet病の診断時にも役立つ項目になっています。

ステロイドの投与方法は、最初は点滴による全身投与を開始後、徐々に内服のステロイドに移行して外来治療に。ステロイドを長期間使用すると、胃潰瘍などの消化器合併症、骨粗鬆症、易感染性などの副作用があります。

ステロイドの合併症で薬剤が使用できない場合には、代替薬としてヨウ化カリウム、コルヒチン、ダブソンという薬を使うケースも。

治療を行い改善しても、30%で再発し、白血病などの血液疾患が基礎疾患としてある場合は再発率が50%と高いです。症状が改善しても、定期的にフォローアップが必要になります。

まとめ

今回は、Sweet病について解説しました。

まれな病気ですが、単なる皮膚病ではなく、白血病やがんと合併することがあります。Sweet病の治療自体はステロイドが効果的ではありますが、基礎疾患がある場合にはそちらの治療を行う必要が。

単なる皮膚の異常だけではないのがSweet病の難しいところです。記事を読んで少しでも不安なことがある方は皮膚科にご相談ください。

参考文献

1) UpToDate®.
https://www.uptodate.com/contents/sweet-syndrome-acute-febrile-neutrophilic-dermatosis-pathogenesis-clinical-manifestations-and-diagnosis. 

2) Shah N, et al. Neutrophilic Dermatosis and Management Strategies for the Inpatient Dermatologist. Curr Dermatol Rep.2022;11(3):146-157. doi: 10.1007/s13671-022-00364-7.Epub 2022 Jul 16.

3) 皮膚の遺伝性関連性希少難治性疾患群の網羅的研究班.
http://hifu-iden-nanbyou.com

4) 新しい皮膚科学.
https://www.derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/9-03.pdf

5) 久永欣哉.ベーチェット病およびその類縁疾患スウィート病における神経障害の病院・診断・治療

6 )難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究.皮膚白血球破砕性血管炎(1).
https://www.vas-mhlw.org/html/pathology/atlas/14-1.html

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