医療レーザー脱毛やエステ脱毛で起きるやけどの症状と対処法

医療レーザー脱毛やエステ脱毛は、ムダ毛のお手入れがラクになったりコンプレックスが解消したりとメリットがたくさんありますが、照射後にやけどが起きる可能性があります。
2017年3月に国民生活センターが行った脱毛の調査で「過去3年間に脱毛を受けた後、身体に何らかの症状が生じた」と答えた255人のうち、やけどの症状があった人は12.9%の33人でした(アンケートに答えた1000人中の3.3%がやけどの症状を経験)。※1
少しくらいのやけどなら・・と放っておくと最悪の場合、跡が残ってしまう危険性もあります。脱毛後は肌の状態をしっかり観察しつつ、やけどの症状が見られたら正しい対処をしていきましょう。
脱毛後に起こるやけどの症状とは
やけど(熱傷)の程度は、Ⅰ度(赤く腫れる)、浅達性Ⅱ度(水ぶくれができて痛い)、深達性Ⅱ度(水ぶくれができて痛くない)、Ⅲ度(無痛で皮膚が乾燥)で深度分類されます。
そのうち、脱毛の照射後に起こるやけどは、Ⅰ度と浅達性Ⅱ度がほとんどです。
脱毛当日は肌に熱がこもっているくらいの感覚でも、数日経ってからやけどの症状が現れるケースも少なくありません。

赤みやヒリヒリ(Ⅰ度熱傷)
脱毛後に皮膚の赤み、むくみ、ヒリヒリとした痛みを感じるケースでは、皮膚の浅い部分である表皮のやけどで、Ⅰ度熱傷に該当します。
ヒリヒリとした痛みや熱感があるうちは気になってしまうかと思いますが、数日すると治ります。
水ぶくれや鋭い痛み(浅達性Ⅱ度熱傷)
脱毛後のやけどには、皮膚の赤みに加えて水ぶくれができて鋭い痛みや灼熱感を伴う症状もあります。
これは表皮下の真皮まで及んだやけどで、浅達性Ⅱ度熱傷に該当。
鋭い痛みや水ぶくれがあるので精神的にもショックを受けてしまわれるかと思いますが、1~2週間ほどで治癒します。
やけどの治りかけはかゆい場合も
脱毛によるやけどを負ってしまった場合、治りかけに「かゆい」と感じるケースがあります。
このときに無意識であっても掻いてしまうと、さらにかゆみが増したり傷が悪化したりする可能性があるので要注意です。
患部を冷やすとかゆみが少し軽減しますが、我慢できないほどかゆい場合は外用薬を塗布するなどの対処が望ましいです。
医療レーザー脱毛や脱毛エステでやけどが起こる原因
脱毛の照射を行うと、黒い色素(メラニン)に反応して皮膚の下で熱が発生。
脱毛機によって最高温度は異なるものの、熱で発毛に関わる毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域といった組織にダメージを与えたり破壊したりします。
このような脱毛の仕組みは、医療レーザー脱毛でもエステ脱毛(光脱毛)でも同じです。
レーザー・光はメラニンにのみ反応するので、本来であれば肌には反応しませんが、一定の条件がそろうと肌にも熱が伝わってやけどが起こることもあります。

脱毛でやけどが起こりやすい条件
- 日焼けをしている
- ほくろや肝斑(シミ)への照射
- 毛が太い・密集して生えている
- 肌が極端に乾燥している
- 日焼け止めが肌に残った状態での照射
- レーザー脱毛機の冷却装置によって凍傷になる可能性も
日焼け肌への照射
脱毛の際に禁忌といわれているのが、色が変わるほど日焼けした肌(メラニンが多く含まれる肌)への照射です。
脱毛機は年々進化していて多少の日焼け肌なら照射できる機種もありますが、日焼けの程度を見極めながら適切な出力で照射しなければ、やけどのリスクが高くなります。
ほくろや肝斑(シミ)部分
日焼け肌と同じようにメラニンが多く含まれるので照射できない部分として、ほくろや肝斑(シミ)があります。
光によく反応してしまうので、熱が発生してその部分でやけどが起きる危険性が高いです。
基本的にはほくろや肝斑を避けて脱毛していきますが、照射した場合には、ほくろ部分にカサブタができたり肝斑が濃くなったりといった症状が起こり得ます。
毛が太い・密集して生えている
毛が太い部位や密集して生えている部位ではレーザー・光の反応が良いので、肌にまで熱が伝わり、やけどが起こるケースも。
クリニックやエステサロンでは毛質や肌質によって出力を調整して照射していきますが、産毛や細い毛の部分よりもやけどリスクは高めです。
肌が極端に乾燥している
寒い時期は空気が乾燥するため肌もカサカサになりやすいかと思いますが、肌が乾燥するとバリア機能も低下します。
肌バリア機能が低下しているとレーザーや光の刺激に敏感になるので、いつもであれば問題ない出力であっても、やけどを起こしてしまうことがあります。
日焼け止めが肌に残った状態での照射
脱毛前のカウンセリングでは、照射前に日焼け止めを使用しない、または日焼け止めをしっかり落とすように案内がありますが、これはやけどのリスクを回避するためです。
日焼け止めには紫外線を吸収する成分が含まれ、レーザーや光を吸収して発熱する恐れがあります。
レーザー脱毛機の冷却装置によって凍傷になる可能性も
医療レーザー脱毛機のなかには、肌の温度が上がり過ぎないように照射と同時に冷却ガスを噴射する機種があります。
肌を守る、肌ダメージを和らげるための機能ではありますが、脱毛機の不調などで冷却ガスが当たり過ぎると、ごくまれにやけどのような症状の「凍傷」になることも考えられます。
脱毛後にやけどが起きたときの対処法
万が一脱毛後にやけどが起きた場合は、正しい対処を行うようにします。
ご自身でできる対処法もありますが、医療機関を受診するのが最善の方法です。
脱毛クリニックでコース契約をすると、施術後の肌トラブル対応までカバーされているのが一般的です。まずは施術を受けたクリニックに相談してみましょう。

タオルを巻いた保冷剤などで冷やす
帰宅後の肌に熱感、赤み、腫れなどの異常を感じたら、患部を冷却しましょう。
患部を冷やすと、皮膚への損傷が深くなるのを防ぐ、痛みを和らげる、といった2つの効果があります。
このときに、より冷たくしたほうが効果があるのでは?と思ってしまいがちですが、冷やしすぎは凍傷の原因になるので厳禁です。
患部を冷やす際は保冷剤を清潔なタオルなどで巻き、肌を冷やし過ぎないようにします。
なるべく早く医療機関に相談する
脱毛後にやけどが起きてしまったときは、なるべく早く医療機関に相談しましょう。
脱毛によるやけどは数日後に症状が現れるケースも少なくないので、やけどをそのまま放置する状態になってしまう方もいらっしゃいます。
実際にはⅠ度とⅡ度の中間のようなやけどもあり、皮膚の下のどの部分までやけどが及んでいるかはパッと見ただけでは分かりづらいので、深度分類(やけどの程度)を自分で判断することは困難です。
また、時間が経つと深度が進行するのもやけどの特徴となります(そのため脱毛当日では正確な分類が難しいです)。
誤った情報での治療や自己判断で軟膏を塗るなどの治療はせずに、必ず医療機関に相談するようにしましょう。
医療レーザー脱毛直後の皮膚が赤くなっている、少し腫れている程度であれば、やけどではなく「レーザーによる刺激への反応」の可能性があります。
その際は、クリニックで渡された抗炎症・抗菌作用のあるクリームを塗って様子をみると良いでしょう。
なかなか症状が治まらない、赤みが強い、といった時にはクリニックに連絡するようにします。
水ぶくれを潰さない
やけどによって水ぶくれができた場合は、故意に潰さないようにしてください。
水ぶくれを潰すと、その部分から細菌感染するリスクが高まり、Ⅱ度のやけどであってもⅢ度へと進行してしまう可能性があります。
(簡単にいうと、水ぶくれを潰すとやけどの傷がひどくなるということです。)
水ぶくれを潰さないように注意していても日常生活のなかで自然に潰れてしまう場合もあるかと思いますが、その場合も無理に皮膚(水ぶくれのフタの部分)をはがさず、ガーゼなどで保護して医療機関を受診しましょう。
脱毛で起きたやけどは治るの?
赤みや腫れ、ヒリヒリ感があるⅠ度のやけどは、ほとんどのケースで跡が残らずに数日で通常の肌に戻ります。
一方、水ぶくれを伴うような浅達性Ⅱ度のやけどではもう少し時間がかかり、治るまでに1~2週間ほど。
治りが比較的遅い深達性Ⅱ度のやけどであっても、3~4週間くらいで治ります。
適切に対処できていれば脱毛によるやけどは数日~1カ月ほどで治りますので、過度に心配せず、早めに医療機関を受診してくださいね。

やけど跡や色素沈着が残る可能性はある?
赤み、ヒリヒリ感などのやけど(Ⅰ度熱傷)は、数年に渡り消えないような跡が残る可能性はほぼありません。
一方、水ぶくれができる浅達性Ⅱ度・深達性Ⅱ度のやけどは、跡や色素沈着が残る可能性も。
水ぶくれを伴うやけどの場合、患部が細菌に感染してしまうとなかなか治らない、跡が残ってしまう、といった事態も起こり得ます。
やけど状態や不適切な対処によっては色素沈着が残るケースがあるので、適切な治療が必要です。
脱毛後のやけどに関連した副作用※2
炎症後色素沈着 | やけどあとに起こる色素沈着 | 数カ月~半年ほどで良くなる。ハイドロキノンクリームなどを用いた治療が有効。 |
炎症後色素脱失 | やけどあとに起こる色素脱失(白斑) | 数カ月~半年ほどで良くなる。ハイドロキノンクリームなどを用いた治療が有効。 |
色素沈着は数カ月~半年ほどで良くなりますが、少し厄介なのが色素脱失です。
色素沈着とは逆に肌が白くなる症状で、色が回復してくるまでにはかなりの時間がかかります。
やけどの深度や状態は一般の方では判断がつきにくく、適切な治療を行わなければ跡が残ってしまうことも考えられますので、自己判断は避けて医療機関を受診するようにしましょう。

やけどした場合、脱毛料金の返金は受けられる?
やけどした場合の返金は「クリニック・エステサロンごとの契約内容による」が大前提です。
そのため返金の可否を断言できませんが、一般的に返金が受けられる場合とそうでない場合がありますので、下記で解説します。
やけどしたとき・やけどする前の施術料金は返金してもらえない
今まですでに行った脱毛施術料金を返金してもらうのは難しいです。
なぜなら、脱毛の契約前にカウンセリングで説明を受けて、やけどや肌トラブルなどの副作用・リスクについて理解した上で契約しているためです。
医療レーザー脱毛でもエステ脱毛でも、基本的にやけどする前とやけどしたときの脱毛料金は返金不可と考えておきましょう。
残っている回数分の施術料金は返金してもらえる
コース契約の途中でやけどしてしまい、今後の脱毛を中止したいときは「解約」が必要です。
その場合は、契約期間内であれば残っている施術料金を返金してもらえます。
途中解約に関する事項として契約書にも記載があるはずですが、コース解約の返金は「特定商取引に関する法律」で定められています。
解約手数料が発生する場合がありますので、残った回数分の料金がそのまま返金される訳ではありません。
1回分の料金×残りの回数-5万円または残額の20%に相当する額のいずれか低い額
医療脱毛クリニックのなかには解約手数料が無料のところもありますが、個々の契約により解約時の返金額が異なりますので、脱毛を受けたクリニックやエステサロンに確認しましょう。
近年、通い放題のエステ脱毛での途中解約に関するトラブルが増えています。※3
通い放題のエステ脱毛では契約上、有償で照射を受けられる期間や回数、無償で照射を受けられる期間や回数、の2つに分けられている場合が多いです。
たとえば、40万円でエステ脱毛の通い放題プランを契約しても、有償部分が1回であれば1回目の照射に40万かかり、それ以降の照射は無償で行ってもらっているような契約内容です。
その場合は、1回照射したあと途中解約した際の返金額はゼロとなります。返金トラブルが起こらないように、契約内容の細かな確認が重要です。
脱毛クリニックでは、やけどへの治療が受けられる
医療レーザー脱毛を行うクリニックでは、万が一やけどが起きてしまった場合に診察・治療・薬の処方が受けられます。
この際の診療費や薬代は無料のクリニックと有料のクリニックがありますので、事前に確認しておくと確実かと思います。
一方、エステサロンは医療機関ではないため、やけどの診察や薬の処方などは行えません。
そのため、エステ脱毛でやけどをしてしまった場合には、エステサロンが提携しているクリニックに案内される、ご自身で皮膚科などを探して受診する、といった2つのパターンのどちらかになります。
脱毛のやけどで跡が残る、色素沈着が消えない、といった事態を避けるために、早めの受診と正しい対処が大切なポイントです。

参考文献
※1 なくならない脱毛施術による危害/国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170511_1.pdf
※2 第118回日本皮膚科学会総会⑨教育講演24-2 レーザー脱毛の注意点 https://www.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200113.pdf
※3 脱毛エステの通い放題コースなどでの途中解約・清算トラブルに注意!「途中でやめたら返金なし!?」「解約したのに支払いは続く…」/国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20211223_1.html
David Rosmarin, Amit G Pandya, Mark Lebwohl, et al. :Ruxolitinib cream for treatment of vitiligo: a randomised, controlled, phase 2 trial. 2020 Jul 11;396(10244):110-120. doi: 10.1016/S0140-6736(20)30609-7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32653055/
特定継続役務提供/消費者庁 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/