皮膚の病気

円板状エリテマトーデスとはどんな病気? 症状が当てはまらないか確認しよう

円板状エリテマトーデス
藤井 麻美

皆さんは、皮疹や発疹ができたらどうしますか?

もしかゆみが出たら塗り薬を使ったり、保湿液で保護したり、人によって対応はさまざまかもしれません。しかし、中には専門の医師に相談したほうが良い病気のサインであることがあります。

今回は、怖い病気の原因となりうる皮疹である「円板状エリテマトーデス」について解説しましょう。

円板状エリテマトーデスとは、皮疹の名称であって、病気の名前ではありません。免疫の異常で発症しますが、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の症状として出現することもあり、場合によっては専門的な治療が必要となります。

また、皮疹だけでも、適切に対応し瘢痕(はんこん)を残して治癒したり、脱毛の症状を起こすこともあります。 この皮疹の特徴や情報について理解し、必要な場合に病院を受診する判断ができるようになりましょう。

円板状エリテマトーデスとは

エリテマトーデスとは、皮膚の赤い斑点(紅斑)のことです。別名では、紅斑性狼瘡(ろうそう)とも呼ばれます。狼瘡とは、皮膚に出現する狼に噛まれた痕のような赤い斑のことです。円板状エリテマトーデスとは、これが円板状・円形に出現する状態です。

次に、円板状エリテマトーデスの特徴について説明します。エリテマトーデスは、すべての年齢層で発症しますが、円板状エリテマトーデスは40代から50代の女性に多く発症

また、円板状エリテマトーデスの患者のうち、1〜5%がSLEを発症する可能性が。SLE患者からみると、SLE患者のうち25%が闘病中に、典型的な円板状エリテマトーデスを発症すると言われています。

つまり、先にSLEと診断がついている場合と違い、最初に円板状エリテマトーデスが症状としてでた場合に、SLEを見逃さないように注意することが必要です。

最近の研究では、発症に人種が関係していると言われており、日本人については不明ですが、海外の報告では、エリテマトーデスの発症には民族種が危険因子として報告されています。

SLEに限ると、アフリカ系アメリカ人女性は、白人のアメリカ人女性の4倍。さらに、アフリカ系アメリカ人は発症年齢が早く、死亡率も高い傾向にあるといわれています1, 2)

原因は自己免疫と遺伝、環境要因と考えられている

エリテマトーデス全般は、全身性におきる自己免疫異常が関係しています3, 4)。SLEを伴わない円板状エリテマトーデスでは、はっきりとはしていないものの、自己免疫と関連している可能性が。

原因はいろいろな要因(遺伝的要因と環境要因)の相互作用によります。

環境要因には、紫外線、薬剤、喫煙、そしてウイルスなどが。これらの相互作用により、サイトカイン、ケモカイン、炎症性細胞の反応によって組織の炎症が引き起こされると考えれています。中でも、特に紫外線と喫煙は重要です。

円板状エリテマトーデスの病変は、しばしば紫外線に反応し、二次的な萎縮または瘢痕化を伴う傾向があるので、過度に紫外線を浴びないように対策を取る必要が。

また、海外の報告では、喫煙が円板状エリテマトーデスと高い相関があることがわかっています。

喫煙がアポトーシスという細胞死を誘発することで、免疫細胞を刺激し、円板状エリテマトーデスを引き起こすのです。喫煙がDNA損傷を引き起こし、ある種の自己抗体を産生するという仮説もあります5, 6)

まずは皮疹の症状が重要

円板状エリテマトーデスの皮疹は、顔面、耳、頭皮に病変を有する限局型(80%)と頚部から上下に病変を有する播種型(20%)があります。特に、播種型で体幹にもある場合は、SLEに進行するリスクが28%にまで上昇7)

また、円板状病変は、口唇、鼻粘膜、結膜および生殖器粘膜を含む粘膜面にも出現することがあります(3)。円板状病変の一部の患者では、紫外線に当たった場所に皮疹が。

しかし、必ずしも紫外線の当たる部分にのみ円板状病変がでるというわけではなく、日光曝露とその発生との間には明確な関連性はわかっていません。

皮疹は徐々に拡大し、中心部の萎縮、瘢痕を残します。まれではありますが、長期にわたる円板状病変に、悪性腫瘍が発生することが8)。円板状病変を呈する患者さんは関節炎を伴うことがあります。

診察では、症状以外にも病歴を詳しく聴取し、全身性の病気の可能性も調べ、診断の確定には、組織検査が必要な場合も9, 10)

治療はステロイドが基本

治療により皮膚病変が完全に治癒することもありますが、瘢痕を残さないためにも早期に対応することが重要です。

瘢痕や色素の変化はなかなか治りません。また、皮膚病変は紫外線によって悪化するため、日光の回避や日焼け止めの十分な塗布などの対策が必要11)

現在喫煙している人は、治療の効果が減少することが研究で証明されていますので、禁煙をしましょう12, 13, 14)

円板状エリテマトーデスの現在の第一選択治療は、局所的なステロイド外用薬と免疫抑制剤を併用した光線防御療法です。外用療法に反応しない円板状エリテマトーデス病変や、病変が広範囲にわたる場合は、飲み薬などで全身的に治療。

これらの治療でもうまくいかない場合は、効果が証明されている他の薬剤が使用されます。症状の急性増悪時には、より強いステロイド外用薬で治療15)

以上のように、ステロイドを中心に治療を進めていきますが、ステロイドにはさまざまな副作用があります。皮膚萎縮もそのうちの一つで、ステロイド外用薬の慢性的な使用によって発生。

ステロイドの副作用が強い場合は、免疫抑制剤を使用します。具体的にはタクロリムス軟膏などです16)

ここまでは塗り薬などのお話をしましたが、これでもどうしてもよくならない時は、飲み薬の治療をし、その際使用されるものは抗マラリア薬です。

意外かもしれませんが、抗マラリア薬は免疫に作用するお薬ですので、円板状エリテマトーデスに効果があるといわれています。

その他の治療法として、抗角化作用および抗炎症作用を有するビタミンAアナログであるレチノイドの使用報告もあります17)

また、抗リウマチ薬のメトトレキサート、免疫抑制剤のシクロスポリン、免疫グロブリン(IVIG)なども円板状エリテマトーデスの治療で試されています18)

まとめ

今回は、円板状エリテマトーデスについて説明しました。頭頸部に出現した発疹には特に注意が必要で、すぐに病院を受診する必要があります。

治療が遅れることにより皮膚に痕が残ったり、またSLEの発見が遅れて命に関わることもあるかもしれません。

今は円板状エリテマトーデスにもさまざまな治療法が出てきていますが、全ての医療機関で行えるわけではないので、必要なら速やかに専門の医師へ紹介することが大切。

今回の文章を読んで、円板状エリテマトーデスが思ったより怖い病気であるということがわかっていただけたなら幸いです。

今学んだことを自分だけではなく、家族や友人など何か皮疹で困っている人が周りにいましたらぜひ教えてあげてください。

参考文献

1) Gaüzère L, et al. Epidemiology of systemic lupus erythematosus in Reunion Island, Indian Ocean: A case-series in adult patients from a University Hospital. Rev Med Interne. 2019 Apr;40(4):214-219. doi: 10.1016/j.revmed.2018.07.004. Epub 2018 Jul 21. 

2) Oh EH, et al. Ten-year retrospective clinicohistological study of cutaneous lupus erythematosus in Korea. J Dermatol. 2018 Apr;45(4):436-443. doi: 10.1111/1346-8138.14233. Epub 2018 Feb 9. 

3) Salah E. Clinical and dermoscopic spectrum of discoid lupus erythematosus: novel observations from lips and oral mucosa. Int J Dermatol. 2018 Jul;57(7):830-836. doi: 10.1111/ijd.14015. Epub 2018 Apr 27.  

4) Drenkard C, et al. Racial Disparities in the Incidence of Primary Chronic Cutaneous Lupus Erythematosus in the Southeastern US: The Georgia Lupus Registry. Arthritis Care Res (Hoboken). 2019 Jan;71(1):95-103. doi: 10.1002/acr.23578.  

5) Kahn JS, et al. JAK-STAT signaling pathway inhibition: a role for treatment of discoid lupus erythematosus and dermatomyositis. Int J Dermatol. 2018 Aug;57(8):1007-1014. doi: 10.1111/ijd.14064. Epub 2018 Jun 5.  

6) Two A, et al. Discoid Lupus and Human Immunodeficiency Virus: A Retrospective Chart Review to Determine the Prevalence and Progression of Co-occurrence of these Conditions at a Single Academic Center. Indian J Dermatol. 2017 Mar-Apr;62(2):226. doi: 10.4103/0019-5154.201750.  

7) Chong BF, et al. Determining risk factors for developing systemic lupus erythematosus in patients with discoid lupus erythematosus. Br J Dermatol. 2012 Jan;166(1):29-35. doi: 10.1111/j.1365-2133.2011.10610.x.Epub 2011 Dec 5. 

8) Zaalberg A, t al. Chronic Inflammation Promotes Skin Carcinogenesis in Cancer-Prone Discoid Lupus Erythematosus. J Invest Dermatol. 2019 Jan;139(1):62-70. doi: 10.1016/j.jid.2018.06.185. Epub 2018 Jul 17.  

9) Flynn A, et al. The use of SLICC and ACR criteria to correctly label patients with cutaneous lupus and systemic lupus erythematosus. Clin Rheumatol. 2018 Mar;37(3):817-818. doi: 10.1007/s10067-018-3999-0. Epub 2018 Feb 1. 

10) Xie HH, et al. Elevated Serum Interleukin-34 Level in Patients with Systemic Lupus Erythematosus Is Associated with Disease Activity. Sci Rep. 2018 Feb 22;8(1):3462. doi: 10.1038/s41598-018-21859-z. 

11) Callen JP. Discoid lupus erythematosus–variants and clinical associations. Clin Dermatol. 1985 Jul-Sep;3(3):49-57. doi: 10.1016/0738-081x(85)90077-x. 

12) Muangchan C, et al. Treatment Algorithms in Systemic Lupus Erythematosus. Arthritis Care Res (Hoboken). 2015 Sep;67(9):1237-1245. doi: 10.1002/acr.22589. 

13) Powers DB. Systemic lupus erythematosus and discoid lupus erythematosus. Oral Maxillofac Surg Clin North Am. 2008 Nov;20(4):651-62.doi: 10.1016/j.coms.2008.07.001. 

14) Francès C, et al. Dermatologic manifestations in lupus erythematosus. Rev Med Interne. 2008 Sep;29(9):701-9. doi: 10.1016/j.revmed.2008.04.021. Epub 2008 Jun 17. 

15) Jessop S, et al. Drugs for discoid lupus erythematosus. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Oct 7;(4):CD002954.doi: 10.1002/14651858.CD002954.pub2. 

16) Tzellos TG, et al. Topical tacrolimus and pimecrolimus in the treatment of cutaneous lupus erythematosus: an evidence-based evaluation. Eur J Clin Pharmacol. 2008 Apr;64(4):337-41. doi: 10.1007/s00228-007-0421-2.Epub 2007 Dec 20. 

17) Seiger E, et al. Cutaneous lupus treated with topical tretinoin: a case report. Cutis. 1991 May;47(5):351-5. 

18) Kuhn A, et al. Cutaneous lupus erythematosus: update of therapeutic options part II. J Am Acad Dermatol. 2011 Dec;65(6):e195-213. doi: 10.1016/j.jaad.2010.06.017.Epub 2010 Aug 30.

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