皮膚の病気

そばかすの原因とシミとの違い・セルフケア・除去方法を紹介

赤毛の白人のそばかす
藤井 麻美

「顔にぽつぽつあるそばかす、嫌だなあ。まだシミって年でもないし・・・」

真っ白なシミひとつない肌を好む私たち日本人には、あまり人気のないそばかすですが、海外ではチャームポイントのひとつとして受け入れられています。わざとメイクでそばかすを描くことも。

でも、そもそも私たち日本人にはそばかすって本当に身近なものなのでしょうか。あまりよく知られていないそばかすについて、詳しく解説していきます。

シミ・そばかすの違い

そばかすは医学的には雀卵斑(じゃくらんはん)といい、小学生頃からあらわれる、顔の中心部や、腕、体に出る、2~3mm大の比較的大きさのそろった点状の色素斑です。夏になると悪くなり、色白の人に多く、体質の関与が大きいとされています。

結論から言うと、日本人にはそばかすの人はほとんどいません。そばかすだと思っている色素斑はシミ、あるいはアザが大多数です。

もしあなたに、これから説明するようなそばかす(雀卵斑)の症状があれば、色素性乾皮症などの遺伝性疾患の可能性が高いため、皮膚科専門医のいる医療機関を受診してください。

雀卵斑について、皮膚科学の世界で最も権威のある教科書、Rook’s Textbook of Dermatologyには、

  • 2~4㎜の淡褐色斑で赤毛の白人に多く、発症は5歳ごろから思春期まで
  • 色素斑は顔面、上背部、前腕伸側、手背に好発
  • 夏季には大きさや数が増加し、色調が濃くなるが、冬季になるとその数や色調も激減する

と記載。

エマワトソンのそばかす
エマ・ワトソン

日本でそばかす(雀卵斑)を主訴に来院する患者さんで、腕やからだにも同様の小型の色素斑がたくさんあり、さらにその色素斑は冬季にほとんど消えてしまうという方は、ほとんどいないことが疫学調査でも明らかにされています。

もし、腕やからだなどにも色素斑が多発する場合は、日本では汎発性(はんぱつせい)黒子症候群や色素性乾皮症(軽症群)などを考えなければいけません。

少しマニアックな話になりますが、日本人と同じ黄色人種の中国では、色素性乾皮症などの基礎疾患がなく、雀卵斑が多発する家系が存在することがわかっています。家族内発症があり、染色体4q32-q34に異常があると同定されているものの、日本での報告例はありません。

世間一般には後天的にできた色素斑の、大型のものはシミ、小型のものはそばかす、と呼ばれているようです。顔だけにパラパラ出る小型の色素斑で、冬になっても薄くならないのであれば、それはそばかす(雀卵斑)ではありません。

日本で自分はそばかす(雀卵斑)だと言ってクリニックなどを来院する人は、小型の老人性色素斑の多発であることがほとんどです。それをそばかす様老人性色素斑と呼び、そばかすとは区別しています。

他にはほくろ(色素性母斑)や後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)というあざの一種であることも多いです。

まとめると、日本でそばかす(雀卵斑)と思われている色素斑は主に3種類

  1. 小型の老人性色素斑(そばかす様老人性色素斑)←シミ
  2. 小型の色素性母斑が多発←ほくろ
  3. 後天性真皮メラノサイトーシス←アザ

です。

そばかすができる原因

そばかす(雀卵斑)ができる原因やメカニズムについて説明します。

雀卵斑(じゃくらんはん)はメラニン色素産生に関与するMC1R遺伝子の機能異常によるものです。メラニン色素は赤色のフェオメラニンと黒色のユーメラニンの2種類。

私たちの皮膚や髪に存在するメラニン色素は、この二つのメラニンの複合体であり、その比率によって皮膚や毛髪の色に違いが出ます。白人の金髪や赤毛の人にはフェオメラニンが多く、日本人のような黒い髪の人はユーメラニンが多いです。

日本人の中でも肌が白く、赤みがかった茶色い毛色の人と、浅黒い肌で真っ黒な毛色の人がいます。これはフェオメラニンとユーメラニンのバランスが、同じ人種であっても個人差が大きいからです。

そして先ほど触れたMC1R遺伝子に異常があると、赤色のフェオメラニンの産生が増加。黒色のユーメラニンは紫外線から皮膚の細胞を保護する作用をもっていますが、フェオメラニンは紫外線を浴びると、活性酸素を生成し、皮膚の細胞に障害を与えます。

MC1R遺伝子に異常がある人は、紫外線から細胞を守る黒色ユーメラニンではなく、赤色のフェオメラニンを産生しやすく、紫外線によるダメージを受けやすい状態です。そのため、紫外線を浴びると通常の人より頑張ってメラニン色素を産生。

メラノサイトが活性化されやすく、その結果として短期間(老人性色素斑などの通常のいわゆるシミと比較して)で色素斑を作り、雀卵斑の原因に。また、MC1R遺伝子異常は、悪性黒色腫やそれ以外の皮膚がんの遺伝的危険因子であることもわかっています。

そばかすの治療方法

そばかす(雀卵斑)は、遺伝子異常によるものであり、完治させる方法は残念ながらありません。

そして、雀卵斑(じゃくらんはん)の最大の増悪因子は紫外線曝露(ばくろ)であり、最良の治療は「日に焼かないこと」です。

雀卵斑の場合は、紫外線をブロックしながら良い状態を維持し、濃くなったものはレーザー治療で薄くする、というのが治療になります。

ですが、日本人にはそばかす(雀卵斑)の人はほとんどおらず、日本でそばかすと思われている色素斑は主にこの3種類です。

  • 小型の老人性色素斑(そばかす様老人性色素斑)←シミ
  • 小型の色素性母斑が多発←ほくろ
  • 後天性真皮メラノサイトーシス←アザ

この3つについてはそれぞれ治療方法が異なるので、個別に解説していきます。

そばかす様老人性色素斑の治療

老人性色素斑は顔、手背、前腕など日光にさらされる部位に好発します。加齢とともに高い頻度でみられるため、老化の一種と考えられていますが、早い人だと思春期頃から、顔にパラパラと小型の色素斑がみられるように。

これをそばかす様老人性色素斑といいます。慢性の紫外線曝露がその原因として重要であり、自然に消退することはありません。

老化と慢性の紫外線曝露により皮膚の細胞(ケラチノサイト)へのダメージが蓄積し、異常なケラチノサイトが作られるようになり、メラノサイトへの刺激が亢進(こうしん)しメラニン産生が増加している状態。

治療は病的なケラチノサイトを破壊することが基本となり、もっとも有効なのがQスイッチレーザー照射です。レーザー照射は効果が高いものの、照射した部位の皮膚が一度剥がれてかさぶたになるため、ダウンタイムが発生。

レーザー照射によるダウンタイムを避けたい場合は、一回あたりの有効性は少し下がりますが、IPLという光治療器やロングパルスレーザー(Qスイッチより出力が弱い)も効果があります。

これらの治療はすべて自費診療になるため、クリニックにより値段がまちまちで、レーザーの1ショット(大体数㎜大)あたり500円程度にしているところが多いようです。

そばかす様色素斑はそれぞれの色素斑が小さいので、1ショットで済みますが、数が多いのでたくさんレーザーをあてる必要があります。1回のレーザー照射で色素斑が消失することがほとんどです。

IPL は顔全体にあてて一回あたり2~3万円程度が相場(もちろん機種にもよります。一般的に光治療器は機種が豊富です)。こちらは数回はやらないと効果が実感できないことが多いようです。

小型の色素性母斑が多発する場合の治療

ほくろは顔や首にできることが圧倒的に多く、腕や体がそれに続きます。

ほくろは医学的には色素性母斑(ぼはん)あるいは母斑細胞性母斑といい、母斑細胞という細胞が増殖する良性腫瘍です。母斑細胞はメラノサイトに似た機能をもち、メラニン色素を産生するため、ほくろには色があらわれます。

小型の平たいものが顔に多発することもあり、その場合をそばかすと誤解されている方も多いようです。そばかすではなくほくろだった場合の治療は、母斑細胞をQスイッチレーザー照射で消滅、CO2レーザーで焼灼、あるいは外科手術で切除することが中心となります。

小型で、数が多い場合はレーザー照射かCO2レーザーが選択されることが多いです。Qスイッチレーザーは色素性母斑を1回では取れないので、何度もレーザーを当てる必要があります。

一方、CO2レーザーの治療は1回で完了。小型の病変であれば、焼灼後の瘢痕(はんこん)も目立たないことがほとんどです。

後天性真皮メラノサイトーシスの治療

後天性真皮メラノサイトーシスは、13歳以上(多くは20歳以上)で出てくる、頬や下眼瞼(がんけん)、鼻根部や鼻翼、こめかみ、おでこに灰色~灰褐色の色素斑が多発。パラパラとした小型の病変からなる場合は、そばかすと誤解されることが多いようです。

従来は両側性太田母斑と呼ばれていましたが、太田母斑より発症年齢が高く、両側性のものが多いことなどから、後天性真皮メラノサイトーシスと分けて呼ぶようになってきています。

紫外線が発症には関与しないこと、真皮内にメラノサイトが増加していることは太田母斑と同じです。そのため、治療方法も太田母斑と同じく、真皮まで到達するQスイッチレーザーまたはピコ秒レーザーが有効。

治療は一回で済むことが多いですが、真皮内のメラニン量が多い場合は、複数回の照射が必要になることもあります。

自分でできるそばかす対策

日本でそばかすと誤解されているこの3つのうち、

  1. 小型の老人性色素斑(そばかす様老人性色素斑)←シミ
  2. 小型の色素性母斑が多発←ほくろ
  3. 後天性真皮メラノサイトーシス←アザ

①は紫外線対策などが有効です。これから主に①のセルフケアについて説明します。

②と③は自宅でできる最大の対策は最後のメイクの工夫になります。

紫外線対策をする

紫外線対策はすべてのシミの対策の基本です。紫外線は、特に春から夏にかけて強くなりますが、冬でも紫外線は降り注いています。日焼け止めクリームは一年中塗るようにしましょう。

日焼け止め

日焼け止めクリームの表示にあるSPFはUVBをブロックする指標、PAはUVAをブロックする指標です。海やレジャーに行くときはSPF50、PA+++の最強のものを使用し、できれば2~3時間置きに塗り直しましょう。

ただし、SPFが高い、強力な日焼け止クリームは、それ自体が皮膚の負担になることもあるので、日常生活では、SPF30程度のもので十分です。ただし、紫外線対策は日焼け止めクリームを塗ればおしまい、というわけではありません。

春先からは日傘、帽子、長袖・長ズボン、手袋、サングラスなどを使用し、皮膚に達する紫外線を物理的にもブロックするようにこころがけましょう。また、正しいスキンケアも重要です。

顔やからだを洗う時にゴシゴシこするのは厳禁。泡でやさしく洗って皮膚の清潔を保ち、洗った後は保湿を行ってください。皮膚が乾燥しているとバリア機能が低下し、紫外線の影響を受けやすくなったり、皮膚炎を起こしやすくなります。

食生活の見直しや生活習慣の改善を

食生活の見直しや皮膚によい栄養分を含むビタミン類の摂取も有効で、メラニン色素の生成を抑えるビタミンCや、血流を改善したり抗酸化作用のあるビタミンEは、特におすすめです。

<シミ予防におすすめのビタミン>

ビタミンC・・・イチゴ、アセロラ、かんきつ類、キウイフルーツ、ブロッコリーなど

ビタミンE・・・ナッツ類、アボガド、鮭、うなぎなど

栄養バランスのいい食事

たばこやストレスもシミには大敵です。活性酸素を増やし、メラニン色素過剰産生を招くことがわかっています。また、ストレスによりホルモンバランスが崩れやすくなり、肝斑の悪化につながることも。

睡眠中に分泌される成長ホルモンによって皮膚のターンオーバーが促進されるため、睡眠をしっかりとることも大切です。

ハイドロキノンやトレチノイン

ハイドロキノンはメラニン生成の経路をブロックすること、トレチノインは表皮のターンオーバーを早くすることによって表皮内のメラニン排出を促します。ごく薄い色素斑なら、この外用剤だけでかなり改善することも。

ただし、人によって刺激性あるいはアレルギー性の接触皮膚炎を起こすことがあるので、注意が必要です。

上手なメイクアップ 

レーザー治療が有効であることは間違いない事実ですが、自費診療の美容クリニックに行って、レーザー治療や光治療を受けるのは、まだまだハードルが高いと感じる人も多いでしょう。

紫外線対策や、スキンケアを行いつつ、コンシーラーなどの化粧品で上手にシミを隠すのも日常生活では、有効な対策です。最近は厚塗り感は出ず、きれいにシミをカバーしてくれる高機能の化粧品が多く販売されています。

クリニック専売品になりますが、コンシーラーの中にハイドロキノンが成分として含まれており、メイクをしながら、シミも薄くする、という一挙両得の商品も。化粧品をうまく使えば、手軽にシミのない肌が完成します。

セルニューHQコンシーラー
セルニューHQコンシーラー

まとめ

厳密な意味のそばかす (雀卵斑) は日本人にはほとんどいないとされていますが、原因やメカニズム、 さらにはそばかすと誤解されやすい、そばかす様老人性色素斑やほくろ、後天性真皮メラノサイトーシスについても紹介し対策法について説明してきました。

紫外線対策やスキンケアは地道な努力の積み重ねで、努力はあなたを裏切りません。きっとよい結果につながると信じて、コツコツがんばりましょう。

ただし、もしあなたにこれまでにあげたような雀卵斑の特徴に合致する色素斑がある場合は、色素性乾皮症などの全身疾患の部分症状の可能性があるので、医療機関を受診してください。

参考文献

1) Robles-Espinoza, C., Roberts, N., Chen, S. et al. Germline MCR1status influences somatic mutation burden in melanoma. Nat Commun 7, 12064 (2016). doi: 10.1038/ncomms12064

2) García-Borrón, J. C., Abdel-Malek, Z. & Jiménez-Cervantes, C. MC1R, the cAMP pathway, and the response to solar UV: extending the horizon beyond pigmentation. Pigment Cell Melanoma Res. 27, 699–720 (2014). doi: 10.1111/pcmr.12257

3) Beaumont, K. A., Shekar, S. N., Cook, A. L., Duffy, D. L. & Sturm, R. A. Red hair is the null phenotype of MC1R. Hum. Mutat. 29, E88–E94 (2008). doi: 10.1002/humu.20788

4) Raimondi, S. et al. MC1R variants, melanoma and red hair color phenotype: a meta-analysis. Int. J. Cancer 122, 2753–2760 (2008). doi: 10.1002/ijc.23396

5) Swope, V. et al. Significance of the melanocortin 1 receptor in the DNA damage response of human melanocytes to ultraviolet radiation. Pigment Cell Melanoma Res. 27, 601–610 (2014). doi: 10.1111/pcmr.12252

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