皮膚の病気

乾癬を治すためにその原因について知ろう

乾癬
藤井 麻美

乾癬とはどんな病気か知っていますか?

皮膚に発疹が出てきて、乾癬と診断されると、「今後発疹が広がってきたらどうしよう」「治るのかな」「人にうつるんじゃないか」など、不安なこともたくさんあると思います。

乾癬は免疫系の異常を背景として、表皮の細胞が異常に増殖する病気ですが、きちんと治療を受けることで、症状をある程度コントロールすることができるのです。

病気の原因を理解することは、治療とも密接に結びついています。乾癬とはどんな病気なのか、原因について具体的にみていきましょう

乾癬の原因はわかっていないが、一定のメカニズムが

乾癬の根本的な原因については、今日に至るまでよくわかっていません。しかし、さまざまな研究の結果、乾癬は遺伝的な影響と環境による影響を背景に、皮膚が刺激を受けることで発症すると考えられています。

乾癬
引用元:明日の乾癬

遺伝的な影響とは、もともと乾癬になりやすい体質のことであり、環境による影響とは、外傷、ストレス、食物など、外から受ける影響のことです1)

皮膚が刺激を受けることで、皮膚に含まれる免疫系の細胞が異常に活性化し、炎症性サイトカインとよばれる物質を分泌することがわかっています2)。炎症性サイトカインは表皮の角化細胞を刺激して、増殖スピードを加速。

健常な成人では、表皮の細胞ができてから垢(あか)として剥がれ落ちるまでの時間は45日程度とされていますが、乾癬の患者さんでは角化細胞が刺激された結果、4-7日と著しく短くなっています。

表皮の角化細胞が異常に早いスピードで増殖すると、未熟な状態のまま皮膚の表面まで押し出されてしまいます。そうすると垢としてうまく剥がれることができずに、厚くおり重なるのです。

その結果、銀白色のフケのようなものが付着し、赤く盛り上がった発疹として見えることに。

遺伝的な影響

乾癬の発症には体質、遺伝が関係しており、その全容は解明されていませんが、乾癬の発症に関係するいくつかの遺伝子が指摘されています。

例えば、自分の細胞を攻撃しないよう、自分の細胞のマーカーとなるHLAという遺伝子です。HLAには非常に多数のタイプがありますが、特定のタイプ(例えば、HLA-Cw6やHLA-B13)と乾癬の発症には関連が2)

実際、欧米では家族に乾癬の人がいる患者さんが全体の20-40%を占めると言われています。1)しかし、日本では家族に乾癬の患者がいる患者さんは5%程度で、欧米に比べて遺伝的影響が小さいです3)

環境的な影響

乾癬の発症には生活環境から受けるさまざまな要因が影響するといわれています。

皮膚への刺激

外傷、摩擦は乾癬の発症と関係が。乾癬の患者さんでは、発疹がない皮膚をこすると乾癬の発疹が出現してくることが知られており、ケブネル現象といいます。

食生活

厳密な食事制限は必要ありませんが、カロリーの高い食事や、脂肪の多い食事は乾癬の発症と関係するとされています1)。また、メタボリックシンドローム、肥満も乾癬の発生と関係2)

精神的なストレス

仕事が忙しいなど、精神的なストレスは乾癬を悪化させることも。乾癬の発疹が広がること自体もストレスになり、さらに乾癬を悪化させるという悪循環に陥ってしまう患者さんもいます。

感染症

特に、滴状乾癬という型では、レンサ球菌にかかった後に乾癬になる患者さんが多いことで知られています2)。滴状乾癬以外の型の乾癬でも、かぜなどの感染症を契機に悪化する患者さんも。

薬剤

乾癬とは別の病気の治療で投与された薬が、乾癬の発症に関係することも。例えば、心不全の薬であるβ遮断薬というグループの薬や、高血圧の薬であるカルシウム拮抗薬というグループの薬との関係が指摘されています。

日光

乾癬の症状は、夏に改善し、冬に悪化することが多いことで知られています。適度な日光浴は、乾癬の症状の改善に効果が。

しかし、過度な日光浴は皮膚への刺激となり、かえって症状を悪化させることもあるので、主治医と相談しながら自分にとってちょうど良い長さに留めましょう。

免疫の異常

乾癬の症状は、皮膚に含まれる樹状細胞と呼ばれる種類の免疫細胞が異常に活性化し、炎症性サイトカインを分泌することで起きるといわれています。

炎症性サイトカインには多くの種類がありますが、乾癬にかかわるものは、TNF-α、IL-12、IL-17、IL-23です。

乾癬遺伝子
引用元:明日の乾癬

近年、これらの炎症性サイトカインの作用を抑えることで、乾癬の症状を改善させる新薬が多数開発されており、乾癬の治療は格段に進歩しています。

どんな時に乾癬は悪化するの?

今まで見てきた通り、乾癬はもともとの体質とさまざまな環境要因が複雑に組み合わさって発症すると考えられています。

それゆえに、乾癬が悪化する原因もさまざまですが、特に、掻く・擦れるなどの皮膚への物理的な刺激や、ストレスは悪化する原因となりやすい要素です1)

まとめ

乾癬の原因について、解説しました。

乾癬は皮膚の炎症によって、皮膚の細胞が異常に増殖してしまう病気です。乾癬の発症や悪化には、体質だけではなく生活習慣も大きく関係しています。

過度に心配しすぎる必要はありませんが、ぜひ、乾癬の原因について理解して、乾癬を悪化させにくい生活習慣を身につけてもらえるとうれしいです。

参考文献

1) 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 乾癬より

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa14/index.html

2) 病気がみえる vol.14 皮膚科 メディックメディア. P143-149

3) Kawada A, et al.: A survey of psoriasis patients in Japan from 1982 to 2001. J Dermatol Sci 31(1):59-64, 2003. doi: 10.1016/s0923-1811(02)00142-1.

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