金属製品や化粧品、植物等による接触性皮膚炎(かぶれ)の正体
かぶれは、医学的には接触皮膚炎といいます。原因物質に『接触』することによって生じる皮膚炎のことです。接触部位に一致してかゆみを伴う皮膚の炎症が起こります。
代表的な原因物質には金属製品(ネックレスなど)、化粧品、植物などがありますが、その他のざまざまなものも原因に。接触皮膚炎の症状、原因の特定方法、治療などについて順に説明していきます。
かぶれ(接触皮膚炎)とは
接触皮膚炎は、原因物質に『接触』することによって生じる皮膚炎です。そのため、原因物質が触れた部分に症状が現れることが特徴。
接触皮膚炎は日常的に、あるいは職業性(美容師さんの毛染め液など)に皮膚に接触するすべての物質が原因となる可能性があります。そのため、皮膚炎の出ている部位や症状、経過(いつから症状が出たなど)、接触した物についての問診が非常に重要です。
患者さん自身は原因物質に気がついていないことも多く、皮膚科医は接触皮膚炎を疑う患者さんに対してさまざまな質問をします。
具体的には
- 発症部位
- 自覚症状
- 悪くなった、あるいはよくなった時期
- 場所(自宅か職場か)
- 発汗や日光との関連性
- 職業歴
- 趣味
- 化粧
- 家族歴
などを問診で聞かれることが多いです。
また、現在使用している製品だけでなく、過去に使用していたものが原因となることもあるため、何か思い当たるものがある場合は、皮膚科医に伝えてください。
接触皮膚炎の症状
接触皮膚炎では、かゆみ(主にアレルギー性)、ひりひり感(主に刺激性)を伴う皮膚炎が接触部位に一致してみられます。
急性の場合は、紅斑(こうはん:赤み)、丘疹(きゅうしん:ぶつぶつ)、水疱(すいほう:みずぶくれ)などの症状が起こりますが、長期的に症状を繰り返している場合は皮膚の苔癬化(たいせんか:皮膚が部分的に分厚くなること)を起こすことも。
接触皮膚炎では接触した部位に症状が出るのが基本ですが、一回かぶれを起こした後(接触感作成立)に同じ原因物質に繰り返し皮膚に接触すると、強いかゆみを伴う皮膚炎が接触範囲を超えて全身に出現することがあり、これを接触皮膚炎症候群といいます。
また、接触感作成立後に、同じ原因物質が皮膚以外のルート、経口(けいこう:口から摂取)、吸入(きゅうにゅう:鼻などから吸い込む)、注射などで体に取り込まれることによっても全身に皮膚炎を引き起こすことが。こちらは全身性接触皮膚炎と呼ばれます。
全身性接触皮膚炎は、金属の接触皮膚炎で起こることが多く、金属が原因の場合は全身性金属アレルギーと呼ばれることも。
金属のニッケルのアレルギーを持つ人が、チョコレートやナッツなど微量のニッケルを含む食品を摂取して全身に皮膚炎を起こすことは、皮膚科医の間ではよく知られています。
このように、接触範囲を超えて皮膚炎が現れるものをアレルギー性接触皮膚炎症候群(allergic contact dermatitis syndrome; ACDS)とまとめて呼ぶことも。どちらもアレルゲン(原因物質)が全身に作用する点で病態は同じです。
<接触範超えて囲を皮膚炎が現れるもの>
名称 | 原因 |
接触皮膚炎症候群 | 一度かぶれを起こした後に、同じ原因物質が繰り返し皮膚に接触 |
全身性接触皮膚炎 | 一度かぶれを起こした後に、同じ原因物質が経口、吸入、注射などで体に取り込まれる |
接触皮膚炎を疑うような皮膚炎はないけれども、チョコレートを食べたりするとなんだか体にぶつぶつが出るという人は、一度金属アレルギーの検査をするとよいかもしれません。
接触皮膚炎の原因物質
あらゆる物質が接触皮膚炎を起こしますが、原因となりやすい代表的なものについて説明しましょう。
接触皮膚炎を起こす植物として、一番有名なウルシにはウルシオールという成分が含まれており、ウルシオールが接触皮膚炎の原因物質だとわかっています。
また、マンゴーはウルシ科の植物であり、マンゴーにもウルシオールが含まれているため、接触皮膚炎を起こすことが多いです。日本の食卓でよく見かける果物となり、接触皮膚炎を起こす人も。
また、ギンナンを素手で触るとかぶれることも昔からよく知られています。
金属製品でよくみられるのはメガネ、ピアス、ネックレスなどの装飾品です。メガネは樹脂成分でも接触皮膚炎を起こすことがあるので、金属が直接皮膚に接触しないタイプのものでも注意が必要。
日本では保険診療上、歯科金属(歯の詰め物)に金を使用することが認められており、口腔内に金を保有している人が多いです。ですが、金も後述するニッケルと並び、金属パッチテストでの陽性率が高い物質。
ただし、ニッケルとは異なり、パッチテストで陽性となっても、イコール接触皮膚炎の原因、とはならず、歯科金属(金が含まれるもの)の抜去は慎重に検討すべきとされています。
ニッケルは金属製品のメッキに頻用されており、接触皮膚炎の原因として頻度が高いです。ベルトのバックルやビューラー、美顔ローラーなどでの接触皮膚炎が報告されています。
日用品では、ゴム手袋、コンドームなどのゴム製品や、洗剤、シャンプー・リンスなどの洗浄剤、灯油、毛染めなどが原因。
医薬品では皮膚に直接塗る外用剤での接触皮膚炎が多いです。特に、NSAIDs外用剤は接触皮膚炎を起こしやすいことが分かっており、皮膚科以外の医師が安易に『ステロイドでないから安心』と、皮膚炎に対して処方し接触皮膚炎を起こす例がよく見られます。
特に小児でよく見られるのは由々しき問題です。皮膚科専門医でNSAIDs軟膏を好んで処方する人はほとんどいないと思います。
抗菌薬も抗真菌薬も同様に接触皮膚炎を起こしやすいため、皮膚炎を起こしたらただちに使用を中止し、皮膚科を受診するようにしてください。
機械工や自動車修理工などの職業の人は、機械油での接触皮膚炎がよくみられます。医療従事者ではゴム製品(手袋)の接触皮膚炎が多いですが、手術などで長時間手袋を使用する外科医の割合が多い印象です。
職業性の接触皮膚炎は、他にも美容師さんや調理師さんなどでよくみられます。
原因物質 | 具体例 |
植物 | ウルシ(ウルシオール)、サクラソウ、イチョウ、キク、ユリ |
食物 | マンゴー(ウルシオール)、ギンナン、シイタケ |
金属(製品) | メガネ、ピアス、ネックレス、歯科金属 |
金属(成分) | ニッケル、クロム、コバルト、水銀、金 |
日用品・化粧品 | ゴム製品、洗剤、シャンプー・リンス、灯油、染髪剤(パラジフェニルジアミン)、化粧品に含まれる香料・保存料 |
医薬品 | 外用薬(NSAIDs、抗菌薬、抗真菌薬、ステロイド)、消毒液、点眼液 |
職業性曝露物質 | 機械油、ゴム製品、樹脂(レジン)、各種金属 |
接触皮膚炎の原因検索 パッチテストについて
問診などから接触皮膚炎の原因が明らかであり、患者さんの生活環境から排除可能な場合もあります。
ただ、実際は顔や手、くちびるなど1日のうちでさまざまな製品に触れる部位の病変は、接触皮膚炎を疑うことができても、問診だけでその原因物質を確定するのは難しいことが多いです。その場合は、パッチテストが有効なことも。
パッチテストは貼付試験とも言い、原因と疑われる物質を皮膚に貼り付けて反応をみる検査です。
問診などから疑われる物質に対して行うほか、パッチテストパネル®という代表的なアレルゲン22種とコントロール2種(比較対照用、陽性と陰性のセット)がシールになったものも一緒に貼付するのがよいとされています。
問診ではわからなかった原因が判明することがあるほか、製品を使ったパッチテストの場合、濃度が不十分などの理由でパッチテストが偽陰性(実際は接触皮膚炎の原因であるのに、テストでは陰性となってしまうこと)となることも。
それを補うといった目的があり、また、金属の接触皮膚炎には金属のパッチテスト専用のキットも発売されています。
アレルギーにはⅠ型からⅣ型までありますが、そのうちⅠ型は即時型アレルギーといって、IgEというたんぱく質を介したアレルギーです。原因物質を摂取した直後~30分以内に強い反応がみられます。
ワクチン接種時などのアナフィラキシーもⅠ型アレルギーです。一方、Ⅳ型アレルギーは遅延型アレルギーとも言い、原因物質を摂取してから少し時間が経ってから症状が。
Ⅳ型アレルギーは、侵入してきたアレルギーの原因物質を記憶し、反応しやすくなったリンパ球(感作T細胞といいます)と原因物質が反応することによって起こります。パッチテストはⅣ型アレルギーに対するアレルギー検査です。
原因物質を背中や腕などの皮膚に直接貼り付けて、そのまま2日間過ごします。その際、入浴やシャワーはできません。48時間後に再度医療機関を受診し、貼り付けた原因物質を外し、観察します。
判定は48時間後だけでなく72時間後、1週間後にも。貼り付けた部位に赤みなどの反応が出るかをチェックします。貼り付けた物質が汗などで流れてしまうことがあるため、汗をかきやすい夏には不向きです。
パッチテストを受けるなら、秋~冬にしましょう。また、決められた日時に医療機関を受診する必要があるため、スケジュールには余裕をもって受診してください。
ただし、金属などの接触皮膚炎は金属が汗と反応することによって生じることが多く、汗をかく夏に多くみられます。
部位によって原因がわかることも(代表的なアレルゲンについて)
接触皮膚炎では原因物質の種類によって、皮膚炎の分布に特徴があります。原因物質として発症頻度の高いものを部位別にまとめました。
部位 | 主な原因 |
頭 | シャンプー、染毛剤、育毛薬、帽子、ヘアピン |
顔 | 化粧品、医薬品、香水、メガネ、植物、日焼け止めクリーム |
頸部 | ネックレス、化粧品、香水、医薬品、衣服 |
体幹、上肢、下肢 | 衣服、洗剤、金属、医薬品 |
手足 | ゴム、皮革製品、植物、医薬品、洗剤、化粧品、金属 |
陰部 | 衣服、洗剤、コンドーム、避妊用薬品 |
接触皮膚炎の2つのタイプ
接触皮膚炎は大きく刺激性とアレルギー性に分類されます。
ごく簡単にまとめると刺激性皮膚炎では、毒性の強い原因物質に触れてすぐに症状が出るので、患者さん自身も『○○にかぶれた』とはっきりわかることが多いです。
一方、アレルギー性接触皮膚炎では初めて原因物質に触れたときは症状が出ず、アレルギー反応を起こすのは2回目以降であり、患者さんが原因に気づきにくいこともあります。
刺激性接触皮膚炎
私たちの皮膚は、外界からのさまざまな刺激から人体を守るバリアの役割があり、皮膚のバリア機能の許容範囲を超える強い刺激にさらされた時に起こる皮膚炎を、『刺激性接触皮膚炎』といいます。
原因物質そのものの毒性、刺激によって起こるため、アレルギーに関係なく、誰にでも起こりえます。毒性が著しく高い物質の場合は、化学熱傷(灯油皮膚炎など)となることも。
原因物質に触れて数分程度で症状が出ることが多く、原因物質の特定はそれほど難しくないことがほとんどです。まずは、原因物質を除去し、皮膚炎の程度に応じて外用剤、場合によっては内服薬を使用して治療していきます。
刺激性接触皮膚炎は外的要因のみで起こるようにもみえますが、実際は皮膚のバリア機能低下などの内的要因も関与。近年では頻回の手洗いなどによる皮膚バリア機能低下を背景に毒性のそれほど高くない物質に対して起こる接触皮膚炎が増加。
昨今、アルコール消毒で手が荒れる人という方が多くみられますが、ほとんどの場合はこのバリア機能低下プラス刺激性接触皮膚炎によるものと考えられます。
外用剤やハンドケアで手の皮膚炎をよくすることで、消毒液を使用してもかぶれなくなる方も多い一方、そのままにしておくとどんどん悪化する場合も。皮膚炎がある場合は放置せず、皮膚科を受診しましょう。
アレルギー性接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎は刺激性接触皮膚炎とは異なり、原因物質に対してアレルギーのある人にのみに発症します。原因物質(抗原:こうげん)にかぶれることを感作(かんさ)と言い、感作が成立した人にのみ起こる皮膚炎です。
抗原の種類や量にもよりますが、感作が成立するまでには2週間ほどかかると言われています。中にはもう少し時間がたってからアレルギーを起こしてくる人も(半年くらいかかる人もいるようです)。
感作が成立するまでは皮膚炎を起こさず、2回目以降に原因物質に触れることで皮膚炎があらわれます。原因物質に触れてから、数日間~1日程度で皮膚炎がみられますが、稀に数日たってから皮膚炎が出ることもあり、原因物質の特定が難しいことも。
光接触皮膚炎
皮膚炎が起こるのに、光を必要とするタイプのかぶれを「光接触皮膚炎」といいます。光接触皮膚炎では、原因物質が肌に触れただけでは症状が起こりませんが、その部分に光や紫外線が当たるとかぶれや炎症が。
光が当たった部分のみに症状が発現し、紫外線の多い5月~8月に多くみられます。通常の接触皮膚炎よりも症状が強く出ることもあり、皮膚が赤くなるだけでなく、発疹やかゆみ、水ぶくれなどひどい火傷のような症状が出ることが。
光接触皮膚炎にも2つのタイプがあり、それぞれ光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎とよばれます。接触皮膚炎を起こすメカニズムは刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎と同様ですが、光(おもに紫外線)に当たらなければ症状が出ないことが大きな違いです。
光接触皮膚炎でよく知られているのが、湿布薬として使用される『モーラステープ®(主成分:ケトプロフェン)』による光アレルギー性接触皮膚炎です。これは、モーラステープ®を貼った部位に紫外線を浴びることで発症。
湿布を貼っている間だけでなく、剥がしてからも皮膚にその成分が残るため、皮膚炎を起こしたときには湿布を貼っていないことも多く、患者さん自身は急にかぶれたとびっくりして皮膚科を受診されます。
このモーラステープ®による光接触皮膚炎では、症状が強いことが多く、湿布を貼っていた部位にくっきり強い紅斑(こうはん:赤み)や水疱がでて、全身性の接触皮膚炎症候群を引き起こすことも。
手や足首など、外に出ている部位によくみられ、治療を受けて皮膚炎が治った後でも紫外線に当たることで症状が再燃することがあり、厄介です。
この場合は、しばらく(半年程度)皮膚炎になった部位を手袋やサポーターなどで覆い、紫外線に当たらないようにしなければなりません。
この光接触皮膚炎の患者さんが多数報告されたため、現在はモーラステープ®の添付文書には、使用中や使用後は直射日光を避けることが追加されています(ゴルフや海水浴のときは、特に注意)。
その後、モーラステープ®だけでなく、他の湿布薬でも同様の光接触皮膚炎を起こすことがだんだんとわかってきました。モーラステープ®以外の湿布剤であっても、使用中は直射日光を避けるほうがよいかもしれません。
接触皮膚炎の治療
接触皮膚炎の原因がはっきりしていて症状が軽い場合は、原因物質を皮膚に触れないようにして、ワセリンや市販薬(OTC薬)を使用するだけで改善することが。
市販薬(OTC薬)を選ぶ際のポイントについてお話します。ドラッグストアなどでは、つい効能の多いものを選びがちですが効能が多いということは、それだけ多種類の薬剤が混合されているということ。
皮膚炎を起こしてバリア機能が低下している状態のときは、余計な成分に新たにかぶれてしまう、ということもあるので注意してください。
患者さんが、『これを使っていましたが、よくなりません。』と持参された商品の多くは、シンプルなものではなく多種・多様な効能をうたい、その分だけ薬剤がいろいろ配合されています。
中にはかゆみを抑える目的で局所麻酔薬が使用されているものもあり、皮膚科医としては、『う~ん・・・』と首をひねりたくなることもしばしばです。余談ですが、アメリカで買ったのど飴に局所麻酔薬が入っていて、びっくりしました。
局所麻酔薬は、日本では劇薬に指定されており、皮膚より粘膜のほうが吸収がよいので、より慎重に使用しなければなりません。ちなみに、そののど飴はものすごくよく効ききました。
すぐに痛みが消えましたが、しばらくすると元通りに・・(当然ですが)。日本のように喉が痛いから、と気軽に病院にかかることができないお国柄を反映しているのでしょう。
かぶれを起こした際にお勧めする市販薬(OTC薬)はベビーワセリン®(ワセリン)、リンデロン®Vs軟膏とフルコート®f軟膏です。
ベビーワセリンは、もともとはあかちゃん用に作られていて、安全性が高く、広く流通しており、ドラッグストアやベビー用品店で気軽に購入可能。
リンデロン®Vs軟膏とフルコート®f軟膏はステロイドの外用剤ですが、不要なものがあまり入っておらず、軽度のかぶれにはよいと考えます。ただし、ステロイドの外用剤であり、使い方を間違えると副作用のリスクが。
きちんと薬剤師から使用方法の指導を受け、決められた通りに使用してください。リンデロン®Vs軟膏とフルコート®f軟膏は、日本ではstrong classに分類され、ステロイド外用剤の中では中くらいの強さです。
ただし、小児に使用するには強すぎる場合もあるので注意しましょう。また、皮膚炎があるとクリームは刺激感があることも多いので必ず軟膏(ワセリン基剤)のものを選ぶようにしてください。
原因がはっきりしていても、かゆみや赤みが強い場合はやはり最初から皮膚科専門医を受診することをお勧めします。
市販薬を使用してもすみやかに(1週間以内)に改善しないときや、思い当たる原因がはっきりしないけれど皮膚炎を繰り返す場合、お子さんの場合もやはり皮膚科専門医を受診しましょう。
接触皮膚炎の治療で最も大切なことは、原因をはっきりさせ、それを除外することです。そのために、皮膚科医はさまざまな質問をします。患者さん自身も質問されることによって、『そういえば・・・』と意外な接触皮膚炎の原因に気づくことも。
皮膚炎自体はステロイド外用剤による治療が中心です。紅斑(こうはん:赤み)の強さをみて、皮膚科医が適切な強さのステロイド外用剤を選択し、使用方法についてアドバイスします。
皮膚炎を繰り返すような場合は特にですが、ステロイド外用剤のやめどきの見極めも大切です。不完全な治療によって再燃を繰り返しているうちに、皮膚の硬化(苔癬化:たいせんか)や色素沈着を起こすこともあるので、必ず皮膚科医に相談しましょう。
かゆみなどの症状が強い場合は、皮膚を掻くことによって皮膚炎を悪化させることもあるため、抗アレルギー薬の内服を併用することも。
接触範囲を超えて皮膚炎が現れる、アレルギー性接触皮膚炎症候群(allergic contact dermatitis syndrome; ACDS)となってしまった場合は、症状を抑えるために短期間ステロイドの内服薬を使用することもあります。
家庭でできる対策
接触皮膚炎の、家庭でできる対策について説明します。
- 原因物質に触れない
接触皮膚炎では、原因をはっきりさせ、それに触れないようにするのが最も大切です。もし、原因がはっきりしない場合でも、かぶれの可能性があるものは避けるようにしましょう。
生活上、職業上、どうしても避けられない場合は、手袋などで皮膚を守るようにしましょう。 - 皮膚を清潔に保つ
わかりやすい例として、シャンプーなどのすすぎ残しが接触皮膚炎を起こすことがあげられます。皮膚に付着したものが皮膚炎を起こすのが接触皮膚炎です。常に皮膚を清潔に保つことが、接触皮膚炎を防ぐコツ。
薬品などがかかったような場合は、すぐに大量の水で洗い流すように。また、金属アレルギーは汗をかくことでかゆみを誘発するので、汗をかいたときはこまめにふき取るか、シャワーやお風呂に入るようにしましょう。
また、洗ったあとは保湿剤などで皮膚のケアをすることも忘れないようにしてください。 - 肌に合わないものは使用しない
洋服やアクセサリー、洗剤やシャンプー、化粧品などは素材や成分に注意し、自分に合ったものを使うように。SNSなどでお勧めされているものでも、合わないものを我慢して使い続けるのはやめましょう。
接触皮膚炎の予防には、皮膚のバリア機能を健全に保っておくことが大切です(特にアレルギー性接触皮膚炎)。乾燥などで皮膚のバリア機能が低下していると、接触皮膚炎を起こしやすくなります。
私は手湿疹の患者さんには、皮膚炎を抑える外用剤と保湿剤をセットでお渡しし、手洗いのたびに保湿クリームを塗るようにお願いしています(主婦の方や、調理の仕事をする方、美容師さんは、なかなか仕事中は保湿クリームを塗れないことが多いのですが)。
まとめ
接触皮膚炎は皮膚科を受診する患者さんの中でも頻度の高い疾患です。その原因物質を避けることができれば、根治できる疾患ですが、原因がはっきりしないことや特定が難しい場合は適切な対策が取れず、難治となることも。
接触皮膚炎の診断には、パッチテストが有効でも、手間も時間もかかり、患者さんにとって社会的な負担が大きいと思われるかもしれません。
また、パッチテストを実施し、判定し、結果を考察し、患者さんへの生活指導をしっかり行うには皮膚科医の技量も大切です。
なかなか治らない皮膚炎に悩む方は、一度皮膚科専門医の診察を受けてください。クリニックでは原因検索が難しいと判断された場合でも、大学病院などの専門医療機関に紹介してもらえます。
参考文献
マルホ皮膚科セミナー2010年11月18日
第 109 回日本皮膚科学会総会⑦ 教育講演 17「接触皮膚炎の基礎と臨床」より 「金属による接触皮膚炎と全身型金属アレルギーについて」
兵庫県立加古川医療センター 皮膚科部長 足立 厚子先生http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-101118.pdf
接触皮膚炎診療ガイドライン2020 日本皮膚科学会