皮膚の病気

イボの種類|背中・足・手の甲などにできる原因

青年扁平疣贅
藤井 麻美

『いぼ』は、皮膚から盛り上がった小さなできものを指す俗称です。ひとくちに『いぼ』といっても、実はさまざまな種類があります。もっともよくある『いぼ』は『ウイルス感染によるいぼ』で、医学的には『ウイルス性疣贅(ゆうぜい)』と呼ばれます。

ウイルス感染以外にも、年寄りいぼ(医学的には老人性疣贅あるいは脂漏性角化症)、首いぼ・腋いぼ(医学的には軟性線維腫あるいはアクロコルドン)などがあり、これらは主に紫外線や加齢が原因でできるいぼです。

ここでは、イボの種類、背中・足・手の甲などにできる原因を書いていきます。

イボの種類

ウイルス感染によって起こるいぼは、大きく分けてウイルス性疣贅(ゆうぜい)と伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)の2種類あります。伝染性軟属腫は水いぼとも呼ばれます。

ウイルス性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルス(Human Papilomavirus: HPV)というウイルスの感染によって発生。このHPVは、健康な皮膚には感染しないと考えられていますが、擦り傷や切り傷、湿疹、髭剃り、性交渉などに伴って生じる皮膚の小さな傷に入り込んで感染します。

外からの刺激にさらされ、小さな傷ができやすい手足や外陰部に、いぼができやすいのはこのためです。HPVに感染してすぐにいぼができるのはではなく、数週間、場合によっては数年かけていぼとして現れるとされています。

いぼはウイルス(HPV)の感染によって起こる皮膚や粘膜の病気であり、『うつる』可能性があります。通常、正常な皮膚や粘膜にウイルスが付着しても感染を起こしにくいと考えられていますが、皮膚や粘膜に小さい傷があるとウイルスが侵入し感染することも。

また、免疫力が落ちているような状態(抗がん剤治療中など)の時は、いぼができやすかったり、治りにくくなります。

免疫力が低下する病気(AIDSなど)にかかっている時や免疫を抑える治療をうけている時、アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下して時は特に注意が必要です。

HPVには様々なタイプ(遺伝子型)があり、現在までに150種類以上が同定されています。HPVの型により、感染しやすい部位や、できるいぼの種類が異なることがわかっており、HPVの中には子宮癌や皮膚癌の原因となることも。

皮膚型と粘膜型、良性型と悪性型というように分けることもあります。普通のいぼをつくるHPVは良性型です。

いぼのお話とは直接関係ないですが、子宮頸癌の発生にはHPV16感染が大きく関与することがわかっていて、HPV16をターゲットとしたHPVワクチンはすでに作られています。

最も有効な接種年齢は10~14歳と言われていますが、年齢にかかわらずHPVに感染する前や、感染しているHPVが一旦消失したあとの再感染を防ぐことは可能です(ただし、すでに感染しているHPVをワクチンで除去することはできません)。

日本ではHPVワクチンの接種は中学生の女子を対象に公費負担の制度がありますが、副作用が怖いという声が大きく、残念ながらあまり接種が進んでいないのが現状です。

私は勤務医時代、婦人科の患者さんの皮膚トラブルの診察にうかがうこともしばしばあり、まだ若い子宮頸癌の末期の患者さんの痛ましい姿を多くみてきました。ワクチンで子宮頸癌が予防できるなら、接種したほうがよいと私自身は考えています。

私は自費でしたが接種しました。自分の娘にも時期がきたらワクチンは接種させるつもりです。

少し話がそれてしまいましたが、いぼの話に戻ります。さきほど述べたように、HPVの型の違いによってさまざまないぼができますが、もっとも一般的なものが、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)と言われる子供の手足によくみられるいぼです。

顔にできる糸状疣贅(しじょうゆうぜい)や足裏にできる足底疣贅(そくていゆうぜい)も少し見た目は違いますが、いずれも尋常性疣贅の仲間で、尋常性疣贅以外には、顔にできる小型のいぼの扁平疣贅や外陰部にできる尖圭コンジローマなどがあります。

また、水いぼ(伝染性軟属腫:でんせいせいなんそくしゅ)もウイルス感染によって起こるいぼです。ですが、水いぼはHPVではなく伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルス)の感染によって起こります。

種類原因症状場所
尋常性疣贅HPV2/27/57直径数mmkから1cm程度、表面がザラザラした丘疹(きゅうしん)や結節手や足
ミルメシアHPV1中心噴火口状に陥凹すつドーム状結節幼小児の手のひら、足底
糸/点状疣贅HPV63外方向性に突出する結節、すぼめた指や糸状にみえる
色素性疣贅HPV65/4/60黒色調の色素沈着を伴ういぼ尋常性疣贅と同じ
青年性扁平疣贅HPV3/10/28数mm程度の扁平隆起する淡茶褐色の類円形の結節、多発することが多い手背、前額、頬、下腿など
尖圭コンジローマHPV6/11表面が細かい粒状になった白色の結節、カリフラワー状にみえることも陰部
伝染性軟属腫poxvirus数mm大の白色の結節、表面に光沢があり、拡大すると中央の陥凹(臍)がみえることもある小児の四肢や体幹にみられるが、顔や首、陰部などどこにできる
老人性疣贅紫外線、加齢表面がザラザラしたり、盛り上がったりする茶褐色の結節顔、頭、全身どこにでもできる(顔に多い)
アクロコルドン紫外線、加齢数mm程度、肌色から淡褐色の柔らかいポリープ状の有茎性結節首や腋
脂腺増殖症紫外線、加齢数mm程度の白色の中央が少し窪んだ結節

※上記表にあげたイボを下記に詳しく説明していきます。

尋常性疣贅

尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)はもっともよくみられるウイルス性疣贅で 、HPV2/27/57が検出されます。はじめは点状の丘疹ですが、次第に増大して2cmくらいの大きさの結節になり、表面はザラザラです。

単発あるいは多発します。手足によくみられ、爪のまわり(さかむけの傷のところによく感染します)では、いぼ同士が融合してモコモコした大きな結節になり難治です。

ミルメシア疣贅は子供の手のひら、足底にできるいぼで、HPV1型が検出されます。中央噴火口状に陥凹するため、外見上アリ塚のように見えることも。

顔にできる外方向性に増殖するいぼは、すぼめた指や糸状にみえることから指/糸状疣贅と言われ、HPV65などでできるいぼは、色素沈着を伴って黒く見えるので色素性疣贅と呼ばれます。

いずれもHPVの感染によって起こるため、擦り傷や切り傷、湿疹、髭剃りなどに伴って生じる皮膚の小さな傷に入り込んで感染。

外からの刺激にさらされ、小さな傷ができやすい手足に好発します。いぼ自体に痛みやかゆみはないことがほとんどですが、足底にできると歩くときに痛みが出ることが。

除去方法

尋常性疣贅の治療は、患部の進行具体や患者さんに希望にあわせて行います。

主な治療方法は、

物理的治療方法:メスやハサミで切除したり、液体窒素による凍結療法やレーザーで焼灼する方法です。

一番よく行われているのが液体窒素による治療で、液体窒素(-196℃)を綿球に含ませ、その綿球を患部に押し当て、組織に浸透されてウイルス感染細胞を凍結させます。

スプレー状にした液体窒素を患部に噴射する方法もありますが、どちらも少し痛みを伴い、また数日後に水ぶくれを形成することも。いぼの角質をやわらかくするためにサリチル酸ワセリンやオキサロール軟膏®といった塗り薬をあわせて使用することもあります。

化学的治療法:化学物質によってウイルス感染細胞を破壊する方法です。グルタルアルデヒドという薬品を使用しますが、保険適応外で取り扱っていない医療機関も。

薬物療法:ヨクイニン内服は保険適応です。速効性はありませんが、昔からヨクイニンはいぼ全般に効果があるとされています。

いぼの治療には残念ながら特効薬や特効的な治療はありません。多くの場合1回の治療で完治させることが難しく、何回か繰り返し治療を受けることが必要です。

予防方法

いぼは公共の場などで足ふきマットなどを介してうるつことが多いようです。日常生活でどんなに気をつけていても、いぼに全くかからないようにするのは難しいですが、HPVは正常の健常な皮膚に感染することはありません。

髭剃りあとや指のさかむけ手足の小さな傷など、障害された皮膚に感染することがわかっています。

いぼにかかりにくくするためには、外傷を受けることが多い手足や肘や膝、手荒れや髭剃りなどの肌荒れを放置せず、きちんとスキンケアを行い『いぼのできにくい皮膚』の環境作りをすることが大切です。 

また、日常生活で支障がないからといぼを放置し、身近な人に感染させたり重症化してから医療機関を受診する患者さんも少なくありません。小さいものであってもきちんと医療機関を受診し、治療を受けることが、身近な人にとって一番の予防法になると理解しましょう。

青年扁平疣贅

青年扁平疣贅(ゆうぜい)は名前のとおり青少年、とくに女性にできやすいいぼで、HPV3/10/28が検出されます。手背や顔(ひたいやほほ)に、数mm大程度のなだらかに盛り上がった肌色から淡褐色の類円形のいぼとして発生。

引っ掻いた傷の上に線状にいぼが並ぶことも。通常は無症状ですが、急に赤みやかゆみといった炎症反応を起こして自然に消失することもあります(一種の腫瘍免疫反応と考えられています)が、一般的には難治で治療に数年かかることも。

除去方法

治療方法は尋常性疣贅のところで述べたものと同じになります。液体窒素による治療が一般的ですが、多発したり再発することが多いため、ヨクイニンの内服を併用して行う方が治療効果が高いです。

予防方法

予防方法についても尋常性疣贅と同じになります。顔にたくさんできる人は、顔を触る癖があるのかもしれません。顔を触る癖がある人は注意しましょう。

尖圭コンジローマ

性感染症(おもに性行為を介してうつる)の側面が強いいぼです。HPV6/11/2などが検出され、陰茎の亀頭のまわりや陰唇部、肛門周囲といった外陰部に乳頭状(にゅうとうじょう)からカリフラワー状の表面がつぶつぶした白っぽい丘疹が多発します。

除去方法

治療方法は尋常性疣贅と同様に液体窒素による凍結療法が中心になりますが、尖圭コンジローマにはイミキモド(販売名:べセルナ)という外用薬が保険適用です。

イミキモドは主にインターフェロン(INF)-αの産生促進を介してウイルス増殖の抑制し、細胞性免疫応答を賦活化させてウイルス感染細胞を障害すると考えられています。イミキモドクリームは1日1回(1日おきに週3回)就寝前外用し、朝洗い流すことが大切です。

塗ったところが赤く皮むけしたりするので、必ず医師の監督のもとで使用してください。

予防方法

子宮頸癌ワクチンの中でも4価以上のワクチンは尖圭コンジローマの原因となるHPV6と11もターゲットとなっており、予防効果があります。すでに尖圭コンジローマを発症している場合は残念ながら効果はありません。

また、性行為によってパートナーにうつしてしまう病気なので、パートナーも一緒に治療を受けることが大切です。予防にはコンドームの使用が大切ですが、コンドームでカバーできない部位に病変がある場合は、感染を予防することは難しいとされています。

伝染性軟属腫

伝染性軟属腫は水いぼとも呼ばれ、幼小児の四や体幹にできるいぼです。HPVではなく伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルス)の感染によって起こります

水いぼはみずみずしい光沢のある数㎜程度の白色丘疹として現れ、大きいものになると中央が少し窪んでいることも。

伝染性軟属腫ウイルスは毛に感染すると言われており、尋常性疣贅が手のひらや足の裏にできることが多い一方で、水いぼは毛のない手のひらや足の裏にできることはほとんどありません。

アトピー性皮膚炎などの乾燥した湿疹病変に合併しやすく、プールでの感染も多いとされています。

少しかゆみを伴うことがあるため、引っ掻いて回りの皮膚にうつることも。成人でみられることは少ないですが、癌やAIDSなどで免疫が低下した人にみられることがあります。

除去方法

表面麻酔(ペンレステープ®)をして、トラコーマ摂子で直接いぼを摘除するのが一般的です。

半年くらいかけて自然消退することもあります。多発する場合はスキンケアだけで経過をみることもありますが、液体窒素による凍結療法を行うことも。ヨクイニン内服も保険適応です。

予防方法

予防方法は尋常性疣贅と同様、世間一般にありふれたウイルスであり完全に予防するのは難しいですが、乾燥してバリア機能が壊れた皮膚に感染しやすいことがわかっておりスキンケアが非常に重要となります。

できてしまった場合は、掻き壊すことで周囲の皮膚にどんどんうつっていく(自家摂取:じかせっしゅ)ので掻かないようにすることが大切です。

水いぼがある場合、プール遊びはどうしたらよいかとよく聞かれます。プールの水で感染することはありませんが、ビート板などの水泳用具を介してうつる可能性は否定できません。

接触感染するウイルスなので、裸でじゃれあうことによって感染するリスクがあります。これらのことを考えると、できるだけ治療をしてからプールに入る方がよいと言えるでしょう。

ただ、子供はプール遊びが好きで、友達とプールで遊ぶ楽しい経験は、精神的な成長にとって大切です。

一律に禁止するのではなく、他の子にうつらないようにラッシュガードを着用したり、水いぼの部位を撥水加工されたフィルムで覆うなどの配慮を行います。

プールの後はシャワーでよく洗い流すこと、乾燥肌の子供はその後に保湿クリームを塗るなどのスキンケアもあわせて行うとよいでしょう。

老人性疣贅、アクロコルドン、脂腺増殖症 

老人性疣贅は顔、手背、前腕など日光にさらされる部位に好発します。大小さまざまで形もバラバラの薄い茶褐色斑として現れ、ゆっくり大きくなり、表面が隆起。

加齢とともに高い頻度でみられるため、老化の一種と考えられています。慢性の紫外線曝露がその原因として重要であり、自然に消退することはありません。かゆみを伴うこともあります。

アクロコルドンは首や腋などに好発し、数mm程度の肌色~褐色の柔らかいポリープ状のいぼができ、それ自体に症状はありませんが、大きくなるとこすれて痛みが出ることがあります。老人性疣贅同様、ウイルス感染ではなく紫外線や加齢変化が原因。

脂腺増殖症は中高年の顔にみられる数mm大の扁平で光沢のある白色から黄色の扁平な結節です。加齢による皮脂腺の過形成が原因とされています。脂腺増殖症もウイルス感染との関連はありません。

除去方法

メスやハサミで切除したり、液体窒素による凍結療法やCO2レーザーなどで焼灼(保険適応外)します。塗り薬や飲み薬に有効なものはありません。

予防方法

老人性疣贅、アクロコルドン、脂腺増殖症はいずれも加齢変化に伴う良性腫瘍であり、完全に予防する方法は残念ながらありませんが、これらの皮膚の良性腫瘍はいずれも紫外線の影響を受けることがわかっており、紫外線予防は有効と考えられます。

まとめ

ひとくちにいぼと言ってもさまざまな種類、原因があることがわかりました。いぼとよく似た見た目の疣状癌(ゆうじょうがん)という悪性腫瘍もあります。

またウイルス感染で起こるいぼは、うつったり自分が人にうつしてしまう可能性があることをよく理解しましょう。

小さな病変であっても放置せず、きちんと医療機関を受診し、診断を受けて治療を行ってください。

いぼは治りにくく、再発することも多い病気ですが、必ず治ると信じて焦らず根気よく皮膚科医と二人三脚で治療していきましょう。

参考文献

1) 皮膚科学第10版、大塚藤男他 金芳堂

2) 日本皮膚科学会HP

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