男性型脱毛症

女性の脱毛症「FAGA」とは?原因は女性特有のホルモンバランスの乱れ

女性の薄毛
藤井 麻美

薄毛とは男性がなりやすい疾患ですが、女性なら薄毛にならないというわけではありません。

女性の薄毛の原因は、加齢、更年期、出産、ライフスタイル、ストレスなどさまざまな要因があり、疾患の種類もいろいろあります。

一般的な脱毛はAGAと言われ、最近はテレビでも耳にすることが多いでしょう。しかしこのAGAは、Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」の意味で、男性ホルモンの影響が主な原因ですので女性の薄毛の理由とは異なります。

結論としては女性の脱毛症も女性ホルモンが影響しています

本文ではより詳しく

  • 女性の薄毛にはどのような症状があるのか?
  • 薄毛の原因

について紹介します。

理由がわかれば安心できることもあると思いますので、薄毛に悩んでいる女性はぜひ最後までご覧ください

FAGA(FPHL)

女性の薄毛の理由として最も多いのがこのFAGAです。AGAが男性の脱毛症状であるのに対し、FAGAは女性の脱毛症状を指します

元々はAGAとFAGAは同じものだと考えられていましたが、症状の理解が深まるにつれ、症状や原因が異なることがわかり通常のAGAに女性を示す「Female」をつけFAGAと区別するように。

最近では「FPHL(Female Pattern Hair Loss)」と呼ばれることもあります。

FAGAとAGAの1番の違いは、初期症状の脱毛部位です。AGAは生え際や頭頂部から薄毛が進行するのに対し、FAGAは全体のボリューム感が少なくなっていくのが特徴

FAGAを発症するのは主に更年期にあたる40~50代ですが、人によっては20代から発症する可能性があり、症状レベルにも個人差があります。

実はFAGAの原因はまだはっきりとは特定されていません。しかし、髪の発毛に関しては女性ホルモンが関係しているため、女性ホルモンの低下によって引き起こされる疾患だといわれています。

閉経のタイミングによる脱毛

女性ホルモンの変化

女性ホルモンが減るライフイベントの一つに閉経があります。

このタイミングで女性の毛量が減り、毛髪も細くなりハリがなくなるため全体的なボリューム感が少なくなり、地肌が見えるようになってしまうことも。

牽引性脱毛症

ポニーテール 髪型

牽引性脱毛症とは、髪が引っ張られたり頭皮が圧迫されることにより、頭皮や毛根にダメージが蓄積し髪の毛が抜けてしまう疾患です。

通常の脱毛(FAGA)はホルモンの影響による内的要因で起こる脱毛症状ですが、牽引性脱毛症というのは引っ張られたり圧迫されるといった外的要因で髪が抜けるというのが特徴。

そのため意識的に頭皮の負担を減らすことができれば症状を軽減・改善させることも可能です。

牽引性脱毛症の特徴は、引っ張りや圧迫などの外部からの影響によって影響を受けた部分のみ脱毛が進みます。よくあるのは生え際や剃り込み部分。

ポニーテールや編み込みなどの強い力で髪の毛が引っ張られる状態が続く髪型を続け、ダメージが蓄積し発症してしまうケースです。

そのほかにもエクステやヘアアイロンによって、頭皮にダメージが加えられることもも牽引性脱毛症を引き起こすの原因となります。

産後脱毛症

産後脱毛症とは、その言葉の通り出産後に多くの女性に起こる脱毛症状のこと。

脱毛症と言いますが、特別なことではなく産後は大半の方が髪の毛が抜けやすくなるのです。

しかし、産後脱毛症は男性のAGAと異なり一時的な脱毛症状であることが多く、早い方で2ヶ月ほど大半の方が1年以内に症状が落ち着いていきます

これは毛量が元に戻るという過程だと考えてください。

もともと女性ホルモンには発毛効果があるため、女性ホルモンの多い女性は薄毛になりにくいです。しかし、妊娠中は女性ホルモンが通常の100倍近くに増えるため、さらに髪の毛が抜けにくなり毛量が増加。

ところがこの女性ホルモンは、出産が終わるとこの女性ホルモンは通常時の量に戻ってしまいます。

通常に戻ると言っても100倍になった女性ホルモンが1倍になるわけですから、99%激減するわけです。

この急激に女性ホルモンが減少するタイミングで抜け毛が増えるのがこの産後脱毛症

理由が、女性ホルモンの増加で増えた髪の毛が抜けるだけなので、異常だと思うほど髪の毛が抜けない限りあまり過敏にならなくて大丈夫です。

ただし、高齢出産の女性の場合は加齢による発毛力の低下で元の状態に戻りづらいこともあります。

円形脱毛症

円形脱毛症は髪の毛がある中に境界がはっきりとした脱毛班(部分的な脱毛)が、急にできるという特徴があります。

AGA初期のつむじ
AGAはグラデーションのように進行
女性の脱毛
円形脱毛症は範囲がくっきりしている

硬貨ほどのサイズの脱毛班ができることが多いため、10円ハゲと言われることもありますが、円形脱毛症には様々な種類があり、サイズや脱毛の形はさまざまです。

円形脱毛症は「自己免疫疾患」によって発症する疾患です。

本来、免疫は体の外から入ってきたウイルスや病原菌を攻撃するものです、しかし「自己免疫疾患」になると本来必要な細胞や元からある体の一部を攻撃してしまうようになります。

そのため毛根を異物として認識し、排除しようと攻撃してしまうため、急激に髪の毛が抜け落ち脱毛班ができるのです。

しかしながら、自己免疫疾患によって髪の毛が抜けることは解明しているのですが、なぜ自己免疫疾患が起こるかは完全には解明されていません。

遺伝・ストレス・アトピー素因が原因とされていますが、理由も前兆もなく気がついたら脱毛班ができていること多いです。また、性別年齢を問わず発症のリスクがあります。

脂漏性脱毛症(ベタベタなフケによる脱毛)

フケによる脱毛は脂っぽいベタベタタイプのフケと乾燥タイプのフケによるものがあり、脂漏性脱毛症は脂っぽいフケにより引き起こる脱毛症です。

まず、過剰に皮脂を分泌し炎症を起こしている状態のことを「脂漏性皮膚炎」と言います。これにより毛穴にいる常在菌(マラセチア菌)が繁殖し、頭皮環境が悪化。その結果薄毛が進行してしまうことを「脂漏性脱毛症」と言います。

脂でベタベタするため、シャンプーをしっかり行おうと思う方もいますが、シャンプーをしすぎて頭皮が乾燥してしまうと、さらに皮脂を出そうとして症状が悪化することがありますので、過剰に油を取りすぎるのも逆効果です。

シャンプーは丁寧に行い、それでも脂っぽいフケが出る場合は食事による脂質の過剰摂取が原因の可能性があります。頭のベタつきが気になる場合は、シャンプーの見直しと同時に油物を減らす食生活を心がけてみましょう。

ひこう性脱毛症(乾燥したフケによる脱毛)

フケ

ひこう性脱毛症は乾燥タイプのフケによる脱毛症。

乾燥した細かいフケが毛穴を塞ぎ、先ほどと同様に常在菌(マセラチア菌)が繁殖し、脱毛につながる疾患です。

脂漏性脱毛と違うのはフケが乾燥した細かいものであることですが、この脱毛は、過度のシャンプーによる皮脂のとり過ぎが原因とされています。

洗浄力がつよすぎるシャンプーによって必要な皮脂まで洗い流して頭皮が乾燥してしまっていると考えられますので、洗浄力の低い低刺激のシャンプーやフケ・かゆみを抑えるシャンプーを利用してみてください。

女性の薄毛に対する治療方法

さまざまな薄毛の理由がありますが、

自宅でできるものには

  • 生活習慣の見直し
  • 洗髪(シャンプー)の見直し

医療機関で行う治療には

  • 頭皮環境の改善
  • 発毛を促す内服薬と外用薬を使う

などが。

もちろん医療機関によってその他さまざまな治療方法もありますが、共通医学的に根拠があり共通して行われるものは上記の治療方法です。

生活習慣の見直し

睡眠や食事など生活習慣は、頭皮環境に大きな影響があります。

例えば、揚げ物をたくさん食べる方は皮脂の分泌が多くなり頭皮がベタベタすることもあり、睡眠が少ない方は成長ホルモンが足りず毛髪の成長がしっかりと促されません

コンビニのお弁当やジャンクフードばかりの方は、しっかりとタンパク質・ビタミンが多く含まれた食事を摂り、油物を減らしましょう

タバコに関しては、ニコチンに血管を収縮させる作用があるため、頭皮の毛細血管から毛母細胞が栄養を送ることができなくなり、結果として抜け毛が増えてしまいます。

また、喫煙は老化を促進する活性酸素が増加(ほかにもさまざまな害悪が)。タバコは本当に百害あって一利なしです。

薄毛の治療関係なくタバコをやめてほしいと思っていますが、少なくとも薄毛が気になるなら、禁煙すべきだと考えます。

これを言うと「タバコをやめることのストレスが〜」という方もいらっしゃいますが「どうしてもタバコを吸わないとおかしくなってしまう」と言う方は、薄毛を受け入れる覚悟でタバコを吸ってください。

頭皮環境の改善(クリニックで治療)

AGAクリニックでの診察

頭皮の炎症や常在菌(マセラチア菌)が繁殖を抑える際には、抗真菌薬やステロイドが含まれた薬を頭皮に塗布します。

また皮脂の分泌を抑えるため、ビタミンをを処方し、炎症がひどい場合は抗ヒスタミン薬の飲み薬を処方することも。

かゆみがひどい場合は、抗ヒスタミン薬の飲み薬を処方しておさえます。

外用薬(クリニックで治療)

ミノキシジルはAGAで使われることがおおい薬ですが、脱毛症診療ガイドラインにてFAGAにも有効であると認められています。ミノキシジルには内服薬もありますが、外服薬の場合頭皮に直接塗布。

副作用には「初期脱毛」という、新しい髪の毛に生え変わるための脱毛があります。初期脱毛が来ると髪の毛が逆に減ってしまうという不安がありますが、大体1ヶ月ほどで落ち着く方が多いです。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、ミノキシジル外用薬での薄毛治療の効果は最高ランクAとされているため、多くの方に効果が期待できます。

内服薬(クリニックで治療)

内服薬には「パントガール」「ミノキシジル」などを処方します。

パントガール
パントガールとはFAGA治療のために効果が認められた薬です。ケラチン・アミノ酸・ビタミンB群などがパランスよく含まれており、髪の毛だけでなく爪や皮膚などにも良い栄養素が含まれています。

臨床試験では3ヶ月の服用で70%の方が抜け毛減少の結果が確認。また、パントガールには大きな副作用の報告はなく、安心して利用することが可能です。

ただし、妊娠中授乳中は服用できないケースがあり、医師の判断によって処方されます。

ミノキシジル
ミノキシジルはAGAでも利用され、薄毛治療に効果の高い治療薬といえますが、副作用に「初期脱毛」のほか「多毛症」「心血管疾患」のリスクもあります。

初期脱毛は先ほどお伝えしたように、飲み初めで生え変わりの髪の毛が抜けてしまう症状。

多毛症は、髪以外の体毛も増えて濃くなってしまう症状のことです。女性は男性以上に体毛が気になりますので、嫌だと感じる女性が多いかもしれません。

心血管疾患とは急性心筋梗塞・狭心症・急性心不全・不整脈など心臓または血管に生じる病気を指します。

可能性としてそこまで大きくはありませんが、取り返しのつかない事態になることもありますので、医師の判断に従いご利用ください。

女性が服用できない薄毛治療薬

AGAの治療によく使われる薬にフィナステリドやデュタステリドといった成分のものが。しかしこれらは女性が使用した場合リスクが高く、女性の服用が禁止されています。

しかもこれらの薬は経皮吸収の恐れもあるため、服用だけでなく薬剤に触れることも禁止されているほどです。

まとめ

今回、女性の薄毛の症状をまとめました。女性の薄毛にはさまざまな原因がありますので、原因を理解し適切な治療・処置を行うことが大切です。

女性特有の女性ホルモンバランスの変化によるものに関しては、シャンプーや生活改善でセルフケアで改善できませんので、気になる場合はクリニックでご相談いただくのが良いでしょう。

参考文献

1) 日本皮膚科学会ガイドライン
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

2) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf

3) 臨床発毛医学の現状と展望 2018
http://waarm.or.jp/wp-content/uploads/2020/01/f24624d1105ea9c5391f31c2faa46f9a.pdf

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