男性型脱毛症

ヘアサイクルについて徹底解説 AGAを基礎の基礎から理解しよう

ヘアサイクル
藤井 麻美

第一印象を決める大事な要素である髪。健康的な髪の毛をいつまでも持続させたい、という気持ちは、老若男女問わずみなさんお持ちでしょう。

歳を重ねていくと、老化現象のひとつとして毛量が減り、細い髪へ変化してしまう傾向があります。しかし、かなり早い段階の20~30代で、脱毛に悩まれる男性は多いのではないでしょうか。

最近、街中で「AGA(男性型脱毛症)」というワードを目にする機会が増えてきていると思います。どのようなメカニズムで起こるのか、そしてどのような治療法があるのか、気にはなっているものの、敷居が高く、病院に足を運ぶのに勇気がいる男性は多いのではないでしょうか。

今回は、AGA(男性型脱毛症)について、まずは基礎知識を得たいとお思いの薄毛に悩む男性に向けてご説明したいと思います。髪について知り、自分の悩みを解決するにはどうしたらいいのか、正しい知識を身につけていきましょう。

ヘアサイクルとは、髪の生え変わりのこと

ヘアサイクル イラスト

ヘアサイクルとは、「髪の毛が生え、伸びて太くなり、抜けおちるまでのサイクル」のことです。人間の髪には寿命があり、このヘアサイクルを繰り返すことで、髪は生え変わっていきます1)

ヘアサイクルには「成長期」➡「退行期」➡「休止期」という3つの段階が。

まず、毛球という髪を作りだす根のようなところを基に毛が生え、この毛が、髪として太く長く伸び続ける時期を「成長期」といい、一般的にこの期間は「2~6年」。この期間に毛球がどんどん大きくなることで、より太く長い髪をつくることができます。

その後、毛球は退縮し、髪が細く短くなってくる期間が「退行期」です。この期間は2~3週間程度と言われています。

そして、最終的に、毛球が消失して、髪が抜けおち毛の成長がストップする期間が「休止期」です。休止期は約3~4ヶ月。その後は、また次の「成長期」が始まり、人生でこのサイクルを何度も何度も繰り返します1), 2)

人間の髪の毛は約10万本といわれており、通常は毎日50~100本程度の髪が抜けますが、抜けるのと同数の毛髪が生まれることで、毛量は維持1), 2)

話は少し変わりますが、ここ数年、街中やTVで「AGA」という言葉を見る機会が増えてきました。

AGAとは「Androgenetic Alopecia」の略称で、日本では「男性型脱毛症」と呼ばれています。思春期以降の成人男性に多くみられ、額の生え際や頭頂部の髪が薄くなる特徴を有する脱毛症のことです。

AGAは、このヘアサイクルが乱れることが原因で発症するといわれています2), 3)

  • 「成長期」➡「退行期」➡「休止期」というヘアサイクルがある
  • 一般的なヘアサイクルは2~6年
  • AGAはヘアサイクルの乱れが原因

ヘアサイクルが乱れたら、成長期が短くなりAGAに

AGA ヘアサイクル

ヘアサイクルが乱れると、髪が太く長くなる前に抜け落ち、脱毛症となってしまいます1), 2)
前述したAGAも、このヘアサイクルが乱れることが原因で脱毛が。具体的には、ヘアサイクルのうちの成長期が、本来の期間の「2~6年」より短くなり、「数か月~1年」に短縮しているとことがわかっています。

これによって、毛球が大きくならず、休止期に移行する毛が多くなり、短い毛が生えてはすぐに抜け落ちるという状態になります2), 3)

日本人男性の AGAの場合は、早い人で20代前半から脱毛が始まり、20代後半から30代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳以降に完成。日本でAGAと診断される方の割合は、20代で10%、30代で20%、40代で30%と、年齢とともに高くなります3)

  • AGAでは成長期が短くなる
  • 日本人のAGAは20代で10%、30代で20%、40代で30%

ヘアサイクルが乱れる原因は悪い男性ホルモン

AGA 後頭部

ヘアサイクルが乱れる原因は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンの存在にあります。

男性ホルモンのテストステロンが体内で作られ、血流に乗って頭皮(とくに頭頂部や前頭部)に運ばれると、酵素の作用で、より強い男性ホルモン作用を持つジヒドロテストステロンに変化。これが毛球に作用することで、髪の成長期が短縮させてしまい脱毛症を起こしてしまいます2), 3)

AGAも、このジヒドロテストステロンが原因で発症する、ということが明らか。そのため、男性ホルモンの分泌が増えてくる思春期以降の成人男性がAGAの好発年齢です。

他にも、遺伝が原因ともいわれており、疾患の関連遺伝子の存在もすでに解明されており2), 3) 、また、睡眠不足、偏食、喫煙がAGAを悪化させるといわれています4)

  • AGAの原因は、ジヒドロテストステロンと遺伝
  • 成人男性がAGAの好発年齢

ヘアサイクルに対するセルフケアは、良い生活習慣

食事 健康

睡眠不足と偏食の改善、喫煙を控える、というセルフケアを行うことで、AGAの増悪を防ぐことができると考えられています4)

❶睡眠不足の改善

1日に7-8時間以上の睡眠をとりましょう。

❷偏食の改善

髪の主成分はタンパク質ですので、十分摂取することで太く健康的な髪の毛の成長へと繋げます。
また、髪の生成に体内で必要な亜鉛やビタミンB1/B2も併せて摂取しましょう。

  • 『タンパク質の多い食べ物』 ➡肉、魚、卵、大豆製品、乳製品5)
  • 『亜鉛の多い食べ物』     ➡レバー、卵、大豆製品、アーモンドやカシューナッツ5)
  • 『ビタミンB1の多い食べ物』➡豚肉、たらこ、海藻、枝豆5)
  • 『ビタミンB2の多い食べ物』➡レバー、卵、大豆製品、乳製品5)
❸喫煙を控える

喫煙をすると血流が悪くなり、摂取した栄養が髪に届かないので禁煙に努めましょう。

AGAの治療法は大まかにまとめると4つ

脱毛は命にかかわる病気ではありませんが、外見上に与える印象は大きいため、治療薬の開発が進んでいます。効果があるといわれているものには、以下のようなものが3)

  1. 内服薬
  2. 外用薬
  3. レーザー照射
  4. 植毛術

詳細な説明は今後の記事に詳しくまとめますが、徐々にAGAについての知識を深めていければと思います。

まとめ

人間の髪には、生えては抜け、また生えるという、ヘアサイクルというものが存在します。このヘアサイクルが乱れることにより、脱毛症が起こると言われているのです。

最近よく耳にするAGA(男性型脱毛症)も、ヘアサイクルの乱れが要因になって発症することが明らかになっており、特にヘアサイクルの「成長期」が短縮することで、髪の抜け落ちる頻度が多くなります。

ヘアサイクルが乱れる原因は、ジヒドロテストステロンの存在や遺伝、生活習慣の乱れなどです。

AGAは病気ではありませんが、人の印象に大きく影響を与えるので、気にされる方にとっては大きな問題。AGAの悪化を防ぐためには、生活習慣を改善し、治療薬を長期的に使用することで、ある程度の改善が見込めます。

AGA治療は自由診療です。もしご興味があれば、十分カウンセリングを受けたうえで治療開始を推奨します。

参考文献

  1. 板見智. ヘアサイクル 毛包の発生より理解する. Bella Pelle 3(2):92-95, 2018.
  2. 乾重樹. 毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA). 日本香粧品学会誌 42(2):93-97, 2018. doi: 10.11469/koshohin.42.93
  3. 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
  4. 植木理恵. 髪の健康を考える 美しい髪で過ごすには. 順天堂醫事雑誌 59(4):327-330, 2013. doi: 10.14789/jmj.59.327
  5. 食品成分データベース 文部科学省.
    https://fooddb.mext.go.jp
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