男性型脱毛症

プロテイン摂取はAGAに効く?抜け毛を防ぐために効果的な蛋白質の摂り方を知ろう

藤井 麻美

皆さんはプロテインについてどのようなイメージを持っていますか?

プロテインは、日本語で「たんぱく質(蛋白質)」という意味で、人間の体を作るのに欠かせない栄養素の一つです。髪の毛や筋肉を作るだけでなく、ホルモンや免疫に関わる物質などの材料にも。

プロテインを利用することで、手軽に、そして効率良くたんぱく質を摂取することができます。そのため、筋力トレーニングやダイエットに用いられることが多く、普段からプロテインを摂取している方もいらっしゃるでしょう。

インターネットでプロテインを検索すると、プロテインと髪の毛の関係について述べているサイトをみかけることがあります。その一部には、「男性型脱毛症(AGA; androgenetic alopecia)の改善にも役立つ!」という内容のものも。

はたしてプロテインを摂取することで、本当にAGAに対して効果があるのでしょうか。なんとなく、栄養をとっておくと髪の毛にも良いのかな、という漠然としたイメージをもつ方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、プロテインが実際にAGAに効果があるのかというテーマについてお話していきます。また、プロテインの種類やプロテイン以外の髪の毛に関わる栄養素についてもまとめてみましょう。

※この記事を読んでいただくにあたり、便宜上、プロテイン=たんぱく質、として解釈いただくと理解しやすいかと思います。

プロテイン摂取は毛髪の健康維持に大切な栄養素です

●AGAはプロテインでは劇的な改善は見込めない

髪の毛とプロテインの関係について考えるときに、まず知りたいのが「プロテインはAGAに対して明確な効果があるのか」という疑問です。

なんとなく、プロテインを摂取していると髪の毛に栄養が行き渡って、AGAの薄毛が改善しそうなイメージがありますよね。

結論からお伝えすると、プロテインは、AGAに対して直接的な効果は認められません

AGAの患者さんが薄毛を改善しようとプロテインを摂取しても、劇的な改善は見込めません。

なぜプロテインがAGAに対して直接的な効果がないのでしょうか。その理由は、AGAの発症メカニズムに。

AGAは、若い頃(30歳前後)から発症し、40歳以降に薄毛が目立ってくるのが特徴ですが、その発症は男性ホルモンと遺伝がかかわっています。

男性ホルモンの影響を受けると、毛髪の成長サイクルが短くなって、成長が止まり、その結果、毛髪が十分成長しないまま(太くなれないまま)抜け落ちるのです。そして、遺伝は毛髪の男性ホルモンからの影響を受けやすさにかかわっています。

つまり、AGAの原因は男性ホルモンであり、髪の毛の栄養とは直接的な関係はありません

●たんぱく質は髪の毛が健康に生えるのに大切である

では、プロテインは髪の毛に全く関係のないものなのでしょうか?

この質問に答える前に、たんぱく質と髪の毛の関係について少し解説しましょう。

髪の毛には3つの組織があり、外側からそれぞれキューティクル、コルテックス、メデュラ。この中でコルテックスが髪の毛のほとんどを占めており、コルテックスが髪の状態に深く関わっていると言えます。

もう一つ大切なのは、髪の毛の主成分はケラチンと呼ばれるたんぱく質であるということです。髪の毛はたんぱく質から作られているとも言えるため、たんぱく質が不足していると髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えるといった問題が生じてきます。

髪 タンパク質

まとめると、髪の毛の主な成分はたんぱく質で、髪の毛の健康状態を保つのに必要な栄養素です。たんぱく質が不足すると髪の毛が細くなったり、抜け毛が増加します。そのため、適切なたんぱく質の補給は髪の毛にとって重要です。

数あるプロテインの中でも、特にソイプロテインが毛髪に影響がある?

プロテイン コップ

さて、プロテインはAGAを直接改善する効果はないものの、髪の毛の健康状態を保つのに必要な栄養素であるということがわかりました。

それならば、プロテインを飲んでみようかな、という方も多いと思います。一口にプロテインといってもさまざまな商品があります。

次に、プロテインにはどのような種類があるのか、それぞれのプロテインにはどのような特徴があるのかについて解説していきましょう。

プロテインは、原材料によって種類が分けられます。原材料の内容により、植物性と動物性プロテインの2つに分類。具体的なプロテインの種類には、ソイプロテイン、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン、エッグプロテインが挙げられます。

●ソイプロテイン

ソイプロテインのソイは、英語のsoy=日本語では大豆の意味。つまり、ソイプロテインの原材料は大豆です。大豆由来なので植物性たんぱく質のプロテインです。

ソイプロテインの特徴は、大豆由来の「大豆イソフラボン」が含まれていることです。大豆イソフラボンは、ポリフェノールの一種で、女性ホルモン(エストロゲン)と構造が似ているため、体内で女性ホルモンと同じ働きを1)

このため、多くの場合、健康維持や美容目的で飲まれています。

体内への吸収率が低く、ゆっくりと長い時間をかけて効果が。また、動物性のプロテインでは体臭が目立ってくることもありますが、植物由来のプロテインであるソイプロテインは、体臭を気にする必要がありません。

さらに、後に説明するホエイプロテインは下痢になる方もいますが、ソイプロテインは成分が異なるため下痢になりづらいということも特徴です。

デメリットは、ソイプロテインが水に溶けにくいため少し粉っぽい味になってしまうこと。また、大豆特有の風味があるため、苦手な人もいるかもしれません。

ソイプロテインは、他のプロテインよりも髪の毛にとってメリットが大きい部分がありますが、こちらは後ほど解説します。

●ホエイプロテイン

ホエイプロテインのホエイとは、乳製品からカゼインと呼ばれるたんぱく質を除いたものをいいます。ヨーグルトにできる上澄みの部分はホエイであり、これがホエイプロテインの原材料です。動物性たんぱく質のプロテインです。

ホエイプロテインの特徴は、アミノ酸(筋肉の主成分)が多く含まれていること。このため筋肉を修復する働きがあり、筋トレなどの運動する方に飲まれています。

ホエイプロテインは体内への吸収率が高く、効果がすぐに。また、吸収が早いので胃にもたれにくいです。ソイプロテインなどと比べて飲みやすいのも特徴です。

デメリットには、プロテインの中でやや費用がかかるという点と、乳製品で下痢をする人はホエイプロテインでも下痢をしやすいという点が挙げられます。

●カゼインプロテイン

カゼインプロテインは、ホエイプロテインと同じく乳製品由来のプロテインです。こちらはカゼイン蛋白を原材料とするプロテイン。

カゼインは、固形の乳製品であるチーズやヨーグルトに必要で、いわゆる乳固形分と呼ばれる成分の一つで、動物性たんぱく質のプロテインです。

ホエイプロテインが水に溶けやすく、体内への吸収が早いのに対し、カゼインプロテインは水に溶けにくく、固まりやすいという特徴があります。体内への吸収は比較的ゆっくりで、効果が持続しやすいプロテインです。

トレーニングの休息日や、寝る前の栄養補給に適しているプロテインといえます。

デメリットには、ホエイプロテインと同じく、乳製品で下痢をする人はカゼインプロテインでも下痢をしやすいという点です。

●エッグプロテイン

エッグプロテインは、たんぱく質が豊富に含まれている鶏卵の白身(卵白)を原材料として作られたプロテインです。動物性たんぱく質のプロテインです。

エッグプロテインの特徴は、他のプロテインと比較して脂質が少ないため、カロリーが低くなるという点。ダイエット中の方など、カロリーを抑えたい方に向いているプロテインです。

エッグプロテインは、吸収が早いので胃にもたれにくく、ホエイプロテインと同様に筋トレなどの運動をする方に飲まれています。

デメリットは、他のプロテインと比較して値段が高いことです。また、卵白アレルギーの方は摂取できませんので気をつけて下さい(卵アレルギーのほとんどが卵白アレルギーです)。

ソイプロテインホエイプロテインカゼインプロテインエッグプロテイン
種類植物性動物性動物性動物性
原材料大豆乳製品乳製品卵白
吸収速度ゆっくりはやいややゆっくりはやい
メリット・ジヒドロテストステロンを抑制
・体臭が気にならない
・下痢になりにくい
・筋肉を修復
・もたれにくい
・休息日や寝る前の栄養補給・カロリーが低い
デメリット水に溶けにくい・やや高価
・乳製品が苦手な場合下痢をしやすい
・乳製品が苦手な場合下痢をしやすい・高価
・卵アレルギーでは飲めない
プロテインのまとめ

ソイプロテインが有効である理由は、ジヒドロテストステロンの作用を抑制するから

大豆 手に持つ

前項でプロテインの種類について解説しましたが、この中でソイプロテインは髪の毛にとって良い働きがあると言われています。なぜプロテインの中でソイプロテインだけが、髪に良い働きがあるのでしょうか。

この理由は、ソイプロテインに含まれる「大豆イソフラボン」。先ほども少し触れましたが、大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と構造が似ており、女性ホルモンと同じ働きをすることが報告されています。

具体的な働きとして、大豆イソフラボンは男性ホルモンであるジヒドロテストステロンの働きを抑制するといわれています。

ここでジヒドロテストステロンという言葉が出てきたのですが、このホルモンとAGAの関係はどのようなものでしょうか。知っている方もいらっしゃるかと思いますが、一度再確認してみましょう。

ジヒドロテストステロンは、男性ホルモンのテストステロンと5αリダクターゼという酵素によって作られます。ジヒドロテストステロンは、テストステロンよりも強力な男性ホルモンです。

ジヒドロテストステロンは、TGF-βなどの脱毛因子を産生し、これによって脱毛が促進されてしまいます。

DHT イラスト

AGAの治療法の一つに、フィナステリドやデュタステリドと呼ばれる内服薬が。これらの薬は、5αリダクターゼの働きをブロックし、ジヒドロテストステロンを作るのを減らすことで脱毛を防ぐ作用があります。

大豆イソフラボンは、ジヒドロテストステロンの働きを抑えるので、脱毛の抑制に寄与すると言われているのです。大豆イソフラボンを含むサプリメントを12週間摂取した人たちは、サプリメントを摂取しない人たちと比較して抜け毛が減少したという報告もあります2)

しかし、大豆イソフラボンだけでAGAの改善を期待するのは難しいでしょう。あくまでも、抜け毛の進行をサポートする役割ということになるかと思います。

人それぞれ理想的なプロテインの量が異なるので、自分の場合を計算しましょう

髪の毛や体にとって大切な栄養素であるたんぱく質を効率良く摂取できるプロテインですが、どれくらい摂取するのが望ましいのでしょうか。

厚生労働省から年齢、性別ごとに1日に摂取すべき目標たんぱく質量というものが公表3) 。必要なたんぱく質の量は身体活動量によっても異なります。

●身体活動レベル

レベル1

生活の大部分が在で過ごし、静的な活動が中心である

レベル2

座位中心の仕事だが、職場内の移動や立位での作業や接客、通勤・買い物。家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合

レベル3

移動や立位の多い仕事の従事者。あるいはスポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている場合

性別男性女性
身体活動レベルIIIIII
1-2歳31-4829-45
3-5歳42-6539-60
6-7歳44-6849-7555-8541-6346-7052-80
8-9歳52-8060-9367-10347-6355-8562-95
10-11歳63-9872-11080-12360-9368-10576-118
12-14歳75-11585-13094-14568-10578-12086-133
15-17歳81-12591-140102-15867-10375-11583-128
18-29歳75-11586-13399-15357-8865-10075-115
30-49歳75-11588-13599-15357-8867-10376-118
50-64歳77-11091-130103-14858-8368-9879-113
65-74歳77-10390-120103-13858-7869-9379-105
75歳以上68-9079-10553-7062-83
年代別の身体活動レベルごとの1日に必要なたんぱく質の量(g/日)

おおむね1食分のプロテインに含まれるたんぱく質は、10g前後です。通常の食事で、上の表に示されたたんぱく質量に届かないという場合は、プロテインで補うといいでしょう。筋トレなど運動習慣のある人や、ダイエットしている方は、たんぱく質が不足している場合があるので注意が必要です。

プロテインを摂取するおすすめの時間帯は、朝食時・運動後・就寝前

ジム 運動

不足するたんぱく質を補うためにプロテインを飲む場合、どのタイミングで飲めばいいのでしょうか。せっかく飲むのであれば効果的な飲み方をしたいですよね。

一般的にプロテイン摂取が推奨されている時間帯は、朝食時、運動後、就寝前です。それぞれのタイミングでどのように効果があるのか解説していきます。

●朝食時

朝は、前日からの絶食時間も長く、体の水分や栄養が足りなくなっている状態で、たんぱく質も例外ではありません。また、夜中には成長ホルモンが分泌され、たんぱく質を利用して筋肉の修復を行っています。ですから、朝にたんぱく質を摂取することは非常に大切です。

食事で十分なたんぱく質が摂取できていればいいのですが、「時間がない」「朝は食欲がない」などの理由で食事をとらないこともあるかと思います。プロテインを用いてたんぱく質を摂取するのも一つの手です。

その際、糖質も一緒にとるように注意が必要。プロテインのみだと糖質が足りなくなり、集中力が低下したり、倦怠感を認めることもあります。また、糖質が不足し、エネルギーも不足すると、体はたんぱく質を利用してエネルギーを作ろうとしてしまい、たんぱく質不足になってしまうことも。

●運動後

プロテインを摂取するタイミングとして、運動後は最もイメージがわきやすいのではないでしょうか。筋トレの後にプロテインを摂取する。トレーニングしている人にとって習慣としている方もいるでしょう。なぜ運動後のプロテイン摂取が効果的かについて説明。

まず、筋トレを行うと筋肉の中の筋繊維が傷ついていきます。傷ついた筋繊維はたんぱく質によって修復されていきます。「筋繊維が傷つく→修復する」を繰り返すことで筋繊維が太くなっていき、筋肉量が増加。

このとき、たんぱく質が不足していると、せっかく筋トレを行っても傷ついた筋繊維が十分に修復せず、有効な筋肉量増加につながりません。そのため、運動後のプロテイン摂取により十分なたんぱく質を補うことが効果的なのです。

飲むタイミングは、運動後45分間以内が理想。なぜなら筋肉の修復は運動後45分間に盛んに行われるからです。

運動後に摂取するプロテインは、体への吸収速度の早いホエイプロテインがいいでしょう。

●就寝前

就寝前のプロテインを摂取が効果的といわれる理由に、成長ホルモンがあります。成長ホルモンは、寝ている時に脳から分泌され、体の調子を整えたり、たんぱく質を吸収し、筋肉を修復、増加する働きが。

つまり、成長ホルモンが分泌されているときにたんぱく質を補うと、タンパク質の吸収を高め、筋肉量を増やすのに効果的といえます。

寝る前にプロテインを摂取する場合は、遅くとも就寝する30分~1時間前がいいでしょう。寝る直前に飲むと胃に負担がかかってしまうからです。寝る前のプロテインは、体への吸収速度がゆっくりなカゼインプロテインやソイプロテインがいいでしょう。

毛髪の健康のために、たんぱく質だけではなくビタミン群と亜鉛も一緒に摂取しよう

ビタミン サプリ

髪の毛の健康状態を保つのに必要な栄養素は何もたんぱく質だけではありません。たんぱく質以外に摂取すべき栄養素は「ビタミンB群」、「ビタミンC」、「亜鉛」です。それぞれの役割についてお話します。

●ビタミンB 

ビタミンBの中で、ビタミンB2は糖質、たんぱく質、脂質の代謝、エネルギー産生に関わる酵素のサポート(補酵素)。また組織の発育促進に重要な役割を果たしたり、髪の毛や爪などの細胞の再生にもかかわっています。

ビタミンB6は、たんぱく質の元であるアミノ酸の代謝にかかわっており、また、亜鉛の働きを助け、ケラチンの合成に関与。

ビタミンBは、豚肉・赤身の魚・ささみ・バナナ・さつまいも・玄米などに多く含まれています。

●ビタミンC

たんぱく質の合成にビタミンCが必要です。また、亜鉛の吸収をサポートする働きが。

ビタミンCは、緑茶・ピーマン・いちご・レモン・じゃがいもなどに多く含まれています。

●亜鉛

髪の主成分は、ケラチンと呼ばれるたんぱく質です。亜鉛は、ケラチンを合成するのに必須の栄養素です4) 。しかし、近年亜鉛の摂取不足の人が増えてきていると指摘されており、注意が必要5)

亜鉛は、牡蠣・レバー・大豆・煮干し・カシューナッツ・油あげなどに多く含まれています。

健康な毛髪環境にするために、今回挙げた栄養素も含め、バランスのとれた食事をすることが理想です。ただ、忙しくて食事にそこまで気を使えない方などは、サプリメントなどで栄養素を補うといいでしょう。

Q:髪が細くて悩んでいますがプロテインで改善しますか?

髪の毛の主な成分は、ケラチンと呼ばれるたんぱく質です。髪の毛はコルテックス、メデュラ、キューティクルからなり、その中でコルテックスは髪の毛のほとんどを占めており、髪のコシにかかわっています。

髪 キューティクル

もしたんぱく質が不足していると、髪のコシがなくなり、髪が細くなることがあります。そのため、自身の食生活や運動習慣からみて、たんぱく質が不足していると感じたらプロテインなどでたんぱく質を補ってみるといいでしょう。

たんぱく質が足りないことが原因で髪が細くなっているのであれば、ある程度改善が見込めます。

Q:髪のツヤはプロテインで戻りますか?

髪 キューティクル

先ほどの質問の答えにも書きましたが、髪の毛の主な成分はケラチンと呼ばれるたんぱく質です。ケラチンは髪のツヤにもかかわっています。

たんぱく質が不足している状態であればプロテインを補うことで髪のツヤが戻る可能性も。ただ、プロテインだけで劇的に改善することは難しいと思います。

また、効果の実感に関しても、髪の毛が伸びる速度は1か月で1cm程度なので、短時間で大きく変化は感じにくいです。あせらずに適切な栄養素を補給していくのが良いでしょう。

ツヤだけでなく、髪の健康状態は、プロテインに加えて他の栄養素や睡眠、運動などの生活習慣と密接にかかわっています。プロテインを摂取しつつ、生活習慣も改善していくことが重要です。

Q:プロテインは飲めば飲むほどいいのですか?

髪の毛にとってたんぱく質は大切ですが、そうなると、「たんぱく質を多くとればとるほど髪の毛にとっていいのでは?」と考えてしまいがちです。

たんぱく質は少ないのも問題ですが、とりすぎも問題です。プロテインを飲み過ぎると腎臓に負担がかかってしまうおそれが。

たんぱく質は体内で分解される過程で、体に害のある物質を発生します。その物質は腎臓で処理され、尿として排出されるので通常問題になることはありません。

しかし、たんぱく質を過剰に摂取すると、腎臓で体に害のある物質を処理しきれなくなってしまいます。そうなると有害物質が血液の中に溜まってしまい、臓器に負担をかけてしまうおそれが。また、過剰なエネルギーは体脂肪の増加にもつながっていきます。

たんぱく質はたくさん摂取しても、その分全てが体の中に吸収されるわけではないので、とればとるほど効果的というわけではありません。

プロテインによるたんぱく質補給は適切な量を心がけるようにしましょう。

Q:プロテインを飲んで筋トレしていますが薄毛になりますか?

よく聞かれる質問の一つです。

おそらく筋トレによって男性ホルモンであるテストステロンが分泌され、抜け毛の増加につながるのではと考えている方もいらっしゃるかと思います。

結論から言いますと、筋トレが抜け毛を極端に増加させることはないでしょう。たしかに筋トレは男性ホルモンの分泌を増加させ、男性ホルモンとAGAは密接に関わっています。しかし、AGAのメカニズムを考えるとそれほど心配する必要はありません。

男性ホルモンであるテストステロンは、5αリダクターゼによって、より強力なジヒドロテストステロンへ変換されます。

このジヒドロテストステロンによって脱毛因子が産生され、AGAの脱毛が促進されます。5αリダクターゼ自体がAGAの直接的な原因ではありませんが、5αリダクターゼの活性が高いと脱毛がより促進されることに。

つまり、5αリダクターゼの活性度は個人差があり、活性が高い人はAGAを発症しやすいといえます。

ジヒドロテストステロン イラスト

ここで筋トレの話に戻りますが、筋トレを行うとテストステロンの分泌は上昇します。しかし、5αリダクターゼの活性が上昇するわけではありません。

脱毛の進行は、テストステロンとともに5αリダクターゼの活性が増加することで生じます。

そのため「筋トレ=脱毛が進行する」といった単純な図式には当てはまらないわけです。

最後に、トレーニングを行うと汗をかくと思いますが、頭髪環境は清潔に保つようにしてくださいね。

Q:フィナステリドやデュタステリドの内服とプロテインは同時に飲んでも平気ですか?

こちらもよく聞かれる質問の一つです。

フィナステリドやデュタステリドは、5αリダクターゼ阻害薬と呼ばれ、AGAの代表的な内服薬です。5αリダクターゼの働きをブロックすることで、AGAに対して効果を発揮します。

脱毛 イラスト

このように、フィナステリドやデュタステリドは、脱毛を促進する5αリダクターゼをブロックしますが、プロテインにはこのような働きがありません。髪の毛に良いとされるソイプロテインもジヒドロテストステロンの働きを抑えるという報告もありますが、あくまで抜け毛の進行をサポートする役割です。

つまり、プロテインはたんぱく質を補給することで、髪の毛の健康状態を保つのに有用という意味合いで、フィナステリドやデュタステリドとは全く別の役割であり、これらの薬を服用しながらプロテインを併用することは問題ありません。

まとめ

今回プロテインとAGAに関する話題をお伝えしました。

プロテインは、AGAそのものに対して直接的な効果はありませんが、髪の毛の健康状態を保つために必要な栄養素です。

今回の記事をきっかけに、ご自身の食生活、運動習慣といった生活習慣を見直し、たんぱく質が不足していると感じたらプロテインを摂取し、よりより頭髪環境を達成してください。

参考文献

  1. Tanaka M, et al. Isoflavone supplements stimulated the production of serum equol and decreased the serum dihydrotestosterone levels in healthy male volunteers. Prostate Cancer Prostatic Dis 12: 247-252, 2009. doi: 10.1038/pcan.2009.10. Epub 2009 Jul 14.
  2. Nakajima M et al. Hair Restoration Efficacy of Supplements Containing Banana Extract, Parthenolide Derived from Feverfew, and Soy Isoflavone in Healthy Japanese- A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Study -. 診療と新薬 53:1028-1036, 2016
  3. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf (2022年6月12日アクセス)
  4. 小西 和人. 頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療. WAARM Journal 1: 40–42,2018
  5. 一般社団法人 日本臨床栄養学会. 亜鉛欠乏症の診療指針2018. http://www.jscn.gr.jp/pdf/aen2018.pdf (2022年6月12日アクセス)
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