男性型脱毛症

AGAや薄毛になるメカニズムと治療方法を徹底解明|治療費は高額?

AGA 頭頂部
藤井 麻美

最近、テレビCMでもよく耳にするAGA(エージーエー)という言葉。「何となく薄毛のことを言っているのかな」、という認識の方が多いと思います。

確かに大まかには男性の薄毛のことを指していますが、しっかりとAGAを理解している方はほとんどいらっしゃいません。

というわけで今回は

  • AGAは具体的にどのような症状なのか?
  • 薄毛になるメカニズム
  • クリニックに行けば治るのか?

をしっかり説明していこうと思います。

少しだけ堅苦しい説明もあるかもしれませんが、とても大切なことなので、薄毛で悩んでいる人は最後まで読んでください。

AGA(エージーエー)とは?

AGAとは、Androgenetic Alopecia(アンドロジェネティック・アロペシア)の略で、和名では、「男性型脱毛症(だんせいがただつもうしょう)」。

ちなみに女性の場合はAGAにFemaleをつけた「FAGA(Female Androgenetic Alopecia)」と呼ばれることがありますが、基本的にはAGAとは症状や原因が異なります。

医学的には、男性に限った薄毛をAGAと呼ぶのです。

AGAの主な症状

AGAの具体的な症状は、

  1. 前頭部と頭頂部の髪の毛が産毛になる
  2. 額の生え際が後退して頭頂部の髪の毛が薄くなってしまう

というものです。

薄毛って何となくの高齢の人がなっているイメージがありませんか?

実は20代も10人に1人がAGAなんです。

日本人男性の発症頻度は全年齢平均で約 30%と報告されている

20 代で約 10%,30 代で 20%,40 代で 30%,50代以降で 40 数%と年齢とともに高くなる。

日本皮膚科学会ガイドラインhttps://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

AGAは思春期以降に発症するため、若くして発症する方も決して少なくありません。若いから大丈夫という考えは持たないでください。

AGAの詳しい分類(ハミルトン・ノーウッド分類)

薄毛の進行段階はハミルトン・ノーウッド分類という薄毛を計9つのパターンに分類したものが有名です。

AGAのハミルトンノーウッド分類
Ⅰ型AGAの初期段階。生え際が少し後退し始めた状態
自覚することが難しく、他人にも気づかれにくい
Ⅱ型Ⅰ型が進行している状態
生え際がM字になり始めている
II Vertex型頭頂部がO型の薄毛になり始めている状態
III型II型が進行している状態
生え際が深く(おでこが広く)なり、髪の毛のボリュームが少なくなっている
Ⅲ Vertex型III型に加えて頭頂部がO型の薄毛になり始めている状態
Ⅳ型 V型 頭頂部がIII型よりも進行し、生え際が頭頂部近くまで後退している状態
O字型の薄毛が大きくなっている
Ⅵ型生え際が大きく後退し、頭頂部の薄毛と繋がった状態
側頭部と後頭部にのみ髪の毛が残っている
Ⅶ型Ⅵ型がさらに進行した状態
後頭部の髪の毛も薄くなっており、スキンヘッドに近い

AGAは生え際(M字・U字)か頭頂部(O字)から進行していきますが、症状が進むと、同じ状態に。

特に注意なのが、Ⅰ型とⅡ型。おでこの進行は気が付きにくいので、気になったら自分で判断せずに早めにクリニックへ行き、診断してもらうことをおすすめします。

なぜAGAは発症するの?薄毛の原因

さて症状はわかりましたが、なぜAGAは発症するのでしょうか?

答えは、DHT(ジヒドロテストステロン)による毛周期の乱れが原因です。

AGA は遺伝的背景および男性ホルモンによって主に男性に生ずる.男性ホルモンは,筋肉や骨を発達させ,髭や体毛を濃くするが,
頭頂部や前頭部においては男性ホルモン感受性毛包が局在し,男性ホルモンの影響によって,直径 40μm 以下の軟毛(うぶ毛)化を呈する.特に testosterone(TES)の活性体であるdihydrotestosterone(DHT)が男性型脱毛症の発症に大きく関与している。

男性型脱毛症治療薬の研究動向 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_73/_pdf/-char/ja

生え際が後退する場合も頭頂部が薄くなる場合も、根本的には薄毛の要因はDHT(ジヒドロテストステロン)が原因です。

これらが出てくる条件は、ほとんどが遺伝によるものですが、何も対応できないわけではありません。

まつ毛・眉毛は短い

普通に考えたら、定期的に散髪しなければ髪の毛ぐらい長くなってもおかしくないですよね?

その答えは毛周期です。

例えば、犬や猫に対しての「夏毛に生え変わる時期だね」という言葉を聞いたことはないでしょうか?

犬や猫に限らず生き物には毛が一定の期間で抜けるようにできており、(生えて→伸びて→抜けて→休む)→(生えて→伸びて、というサイクルを繰り返しています。

毛周期とヘアサイクルの説明
  • 生えて伸びる期間を「成長期」
  • 抜ける期間を「退行期」
  • 休む期間を「休止期」

さらにいうと、人の部位によっても毛の生えるペースは異なります。

例えば、

  • 腕毛は3~4ヶ月生えて伸びた後、5~6ヵ月かけて抜け、8~10ヵ月休む
  • 眉毛は1~2ヶ月生えて伸びた後、2~3週間かけて抜け、3~4ヶ月休む
  • 髪の毛は2年〜6年伸び続け、2~3週間かけて抜け、3ヶ月休む

というサイクルです。

みてわかる通り、生え続ける期間が長いため髪の毛が最も長くなるわけですね
(実際には擦れるなど、外的要因によって抜けることもあるので他の要因も)。

この抜けるペースと生えるペースが一定であれば、髪の毛の数は変わらず薄毛は進行していきません。

しかし、AGAになりこのサイクルが乱れると、髪の毛は生え始めて数ヶ月〜1年で退行期に移行します。すると髪の毛の生えるペースと抜けるペースのバランスが崩れ薄毛が進行するというわけです。

そして、成長期が極端になり毛周期をハイスピードで繰り返し毛周期の上限に達してしまうと、その毛根からは二度と発毛しなくなります。

治療方法は3種類

「私の薄毛に効果のある薬はありますか?」と質問をいただくことがありますがAGAの分類によって治療方法が変わることはありません。

どの分類で薄毛が進行しても

  • 植毛
  • 注入薬
  • 投薬

という3つの方法を使って治療を行います。

植毛による治療

植毛とはAGAが進行している部位に、髪の毛(または代わりとなる物)を植え付ける治療方法です。

自身の頭皮組織を切り取り植え付けることを「自毛植毛」、人工の毛を植えることを「人工毛植毛」と言います。

ただし、日本皮膚学会のガイドラインを見ると

CQ4:植毛術は有用か ?
推奨度:自毛植毛術は B(男性型脱毛症)人工毛植毛術は D.

日本皮膚科学会ガイドラインhttps://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

とされており、日本では人工毛手術を行うクリニックは多くありません。

一方で自毛植毛は、自分自身の毛組織を使用するため拒絶反応が少なく、定着率は8割と高いため、定着した組織からは脱毛していない部位のように毛が成長するという特徴があります。

注入薬による治療

注入薬による治療とは、薄毛に有効な成分を直接頭皮に注入する方法。

服薬治療は飲み体内に取り込まれ血液に乗ってゆっくりと体全身に効果が出ます。

しかし、注入薬は頭皮に直接注入するため”体内に取り込まれ血液に乗って”という過程と、”全身に効果が出る”という無駄を省くことができるのです。

注入薬による治療は、クリニックで医師や看護師が行うため、毎日薬を飲まなくていいという点では、気軽に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、注入薬治療は投薬治療と比べて大きな費用がかかります。

まずは投薬治療を行い、その効果がなかった場合に投薬と併用して注入薬治療を行うことのが一般的です。

投薬による治療

最もポピュラーな治療法がこの投薬治療。投薬治療の中にも塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)があります。

外用薬

主に頭皮に塗るタイプの薬です。成分はミノキシジルという毛母細胞を活性化させるものが入っているものが多く、フィナステリドを含有している薬も。

ちなみに一般の育毛剤にもミノキシジルが含まれていることは多いですが、医療機関で処方されて物とは大きく含有量が異なります(医療機関の方が成分が多い)。

内服薬

投薬治療に用いる薬はいくつかの種類がありますが、大きく分けると

  • 抜け毛を減らして、髪の毛を増やす(守りの薬)
  • 生える毛を増やして、髪の毛を増やす(攻めの薬)

という2種類があります。

守りの薬「フィナステリド」「デュタステリド」

フィナステリドとデュタステリドは乱れた毛周期を正常に戻す効果のある薬です。

発毛効果はないため「守りの薬」言われますが、毛周期が正常になれば強い毛が生えてくるため実質的には発毛効果もあるとされています。

攻めの薬「ミノキシジル」

ミノキシジルは先ほどの守りの薬の反対で、発毛をさせるための薬。毛母細胞へ栄養を届きやすくし、発毛を促進。

ミノキシジルは外用薬でも使われるため、飲み薬と塗り薬で体の内と外から発毛効果を届けることによってより効果的に発毛を促します。

AGAの治療期間は?

この理由を少しだけ詳しく説明させてください。

AGAの治療自体は6ヶ月から12ヶ月で効果を感じる方がほとんどです。

しかし、毛周期の改善や発毛作用というのは投薬によるものです。投薬治療をやめてしまうと、毛周期がだめだった頃に戻り、高確率でAGAが再発します。

「では、死ぬまで薄毛治療を続けないといけないの?」、と思うかもしれません。

答えはYESでありますし、NOでもあります。これは「なぜ薄毛の治療をしているか?」というのが重要です。

多くの人が、「結婚するまでは魅力的な見た目を維持したい。」「薄毛で恥ずかしい気持ちになりたくない。」、という目的でAGA治療を始めます。

そのため、「50代になり、嫁に『もう勿体無いからやめれば?』と言われた(異性に対して魅力的な見た目を維持する必要がなくなった)からやめた。」

「リタイアしたので、薄毛治療をやめる。」、という方も。

逆に「元気なうちはAGAの治療を続ける。」という方もいらっしゃいます。

ご自身の人生設計や配偶者と話し合ってAGAの治療を続けてください。

ただし、注意しないといけないのは、AGAは毛周期が上限を迎え毛根が死滅してしまうと手遅れになってしまうということ。

毛根が死滅したら「いつまでAGA治療続ければいいの?」と悩むことすらできなくなります。

AGAが進行した人からすれば、治療方法を悩めること自体が贅沢なことに見えるはずです。

治療費用の相場は?

「一生続くのか、、、値段は高いのだろうな。」と心配になりますよね。

AGA治療の費用は、月額15,000〜30,000円程度です。内訳は薬代が5,000円~1,5000円、それに診察料・検査料が10,000円~15,000円ぐらい。

ただし、AGA治療は保険適応外ですので、クリニックや病院によって料金が異なります。

さらに、クリニックによっては初診料・再診療が無料だったり、毎回の検査が無料だったりと料金形態はさまざま。

気になる方はいくつかのホームページを事前に確認してみてください。その場でどのような治療をするかはクリニック次第です。

初診が無料だと安いクリニックということもありませんし、結局は信頼できるクリニックに行くのが一番だと思います。

まとめ

今回、かなり細かくAGAについての説明をさせていただきました。AGAのメカニズム・AGA治療の方法・その費用。


かなりAGAに詳しくなったのではないでしょうか?ただ、この知識があっても髪の毛は生えてきません。

AGAの治療はクリニックで行ってもらうしかないのです。薄毛が気になる方はお近くのクリニックでしっかりとした診察・処置を受けてください。

参考文献

1) 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

2) 男性型脱毛症治療薬の研究動向https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_73/_pdf/-char/ja

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