部分的に毛髪が抜ける「牽引性脱毛症」その意外な原因と簡単すぎる対策
「まだ若いのに、生え際が気になる、、、」こんな方はもしかすると牽引性脱毛症かもしれません。
一般的に薄毛は男性がなりやすい疾患ですが、女性がなりやすい薄毛というものもあります。その1つが今回紹介する「牽引性脱毛症」。
牽引性脱毛症は髪型にこだわる方がなりやすく、通常の薄毛と異なりホルモンによる脱毛ではないので若い方・女性でも起こりやすいのが特徴です。
この牽引性脱毛症は医療機関に行かなくても、ご自身で症状を改善できる疾患です。この記事で牽引性脱毛症の原因・治療方法を説明しますので、最後までご覧いただき、ぜひ参考にしてみてください。
牽引性脱毛症とは
牽引性脱毛症とは、髪が引っ張られたり、頭皮が圧迫され血流が悪くなることにより髪の毛の成長が妨げられ、頭皮・毛根にダメージが蓄積し髪の毛が抜けていく症状のことを指します。
通常の脱毛(AGA)というのはホルモンの影響や頭皮の異常による、内的要因からくる疾患です。しかし牽引性脱毛症というのは引っ張られたり圧迫されるといった外的要因からくる疾患。
そのため意識的に頭皮の負担を減らすことができれば症状を軽減・改善させることも可能です。
具体的な症状
牽引性脱毛症は、通常の脱毛症(AGA)とは異なるためご自身で判断することもしやすい疾患です。
見た目の特徴
牽引性脱毛症の特徴は、引っ張りや圧迫などの外部からの影響によって影響を受けた部分のみ脱毛が進むため部分的な脱毛が進みます。よくあるのは生え際や剃り込み部分などです。
牽引性脱毛症か見分ける方法
通常髪の毛は[生えて]→[伸びて]→[抜けて]→[休む]というサイクルを繰り返しています。
このサイクルのことを毛周期もしくはヘアサイクルなどと呼びますが、牽引性脱毛症はこのサイクルによる自然な脱毛ではなく、張力によって髪の毛が抜けるため抜け毛に特徴がす。
髪の毛の先端に白いものがついている
髪の毛を抜いたときに健康な髪には毛包という、白いものがついてくることがあります。コレは毛根を包んでいる皮膚組織で、毛根を生成したり保護して髪の毛が抜けないようにする大切なもの。
牽引性脱毛症は髪の毛が無理矢理抜けるため、この毛包がついていることがあります。
毛球が変形している
髪が引っ張られることで毛球が変化している可能性もあります。毛球が潰れて伸びている場合は牽引性脱毛かもしれません。
牽引性脱毛症の原因
具体的にどういったことで牽引性脱毛症が引き起こされるのでしょうか。
髪の毛に負担のかかる髪型
よくあるのはポニーテールなど、強い力で髪の毛が引っ張られる状態が続く髪型によって牽引性脱毛症になることがあります。これは髪の毛が引っ張られ続けるため頭皮の一部分にダメージが蓄積し髪の毛が抜けやすくなるためです。
男性でも髪の毛の長い方は後ろで結ぶ方がいらっしゃいますが、男性ホルモンの影響もありますので男性は、より気をつける必要があります。
エクステの利用
女性が様々な髪型を楽しむ際に髪の毛に直接つけるエクステ。
自毛に編み込む方法や超音波・ボンドによる接着など様々な方法がありますがいずれの方法も髪の重量以上の負荷がかかり続けるため牽引性脱毛症を引き起こすことが。
個人差はありますが、エクステの量や期間が多いほど牽引性脱毛症を引き起こす可能性が高くなります。
ヘアアイロンの利用
ヘアアレンジをする際によく使うのがヘアアイロン。髪の毛を巻いたり、逆にストレートにするために利用したりしますよね。
このときにテンションをかける(髪を伸ばす)ために強く引っ張ると頭皮への負担が増えて脱毛の原因となります。
サイズの小さい帽子などの利用
牽引性脱毛症はその言葉から牽引(引っ張る)ことが原因のように感じますが、圧迫によっても引き起こることがあります。そのためサイズの小さい帽子など、頭皮が圧迫されることも発症の原因に。
ただし、夏の帽子に関しては頭皮から紫外線を守る効果があるため、炎天下で長時間過ごす際などはサイズの合った帽子を被った方が良いと考えられています。
自宅でできる牽引性脱毛症の改善方法
牽引性脱毛症は、症状がひどくなければクリニックに行かなくても自分で症状を改善することができます。
ヘアスタイルを変える・やめる
牽引性脱毛症の改善に最も需要なのがヘアスタイルの見直し。前述したように、牽引性脱毛症は日々のヘアスタイルに大きく影響を受ける疾患です。
髪の毛にテンション(引っ張られる力)がかかり続けるヘアスタイルであれば、ヘアスタイルを見直し、できるだけ自然でテンションのかからないヘアスタイルに変更しましょう。
例えば、髪型をずっと同じ分け目にしている場合はヘアアイロンによって分け目の部分に負担がかかっているかもしれません。
思い切って新しい髪型に挑戦しみるのがおすすめですが、髪型を変えるのが嫌な方はお風呂の後の乾かし方で違った分け目をつけるなど、負担のかからない方法を試してみてください。
ヘアアイロンも牽引選脱毛症の原因になりえるため、脱毛症状が気になる方はセットも含め髪にテンションがかからないヘアスタイルを選びましょう。
軽い頭皮マッサージを行う
ダメージを受けた頭皮を休憩させるために、簡単な頭皮マッサージをするのもおすすめです。頭皮マッサージは、シャンプーの最中、ドライヤーで髪の毛を乾かした後、寝る前など頭皮の汚れが落ち、清潔なタイミングで行ってください。
適当にマッサージを行ってもあまり意味がありません。記事の後半で自宅でできる簡単なマッサージを紹介しておりますので、ぜひ行ってみてください。
医療機関で行う牽引性脱毛症の治療方法
続いては、牽引性脱毛症が深刻・不安でしっかりと医療機関で治療したい方に、医療機関でどのような治療方法を行うかをご紹介します。
自毛植毛
自毛植毛とは、自分の毛を毛根ごと採取し、髪の毛の薄い部分に移植し植え付ける手術(人工植毛というのもあります)。
手順は
- 薄毛になりにくい部分から毛根を採取
- 植え付けのために株分け(狭い範囲から取って広い範囲に植え付けるため)
- 薄くなった部分に穴を開ける
- 株分けした頭皮を植え込み定着を待つ
という流れです。
植え込んだ自毛は一度抜け落ちますが、数ヶ月ほどで新しい髪が生えて来ます。
植毛した部分の毛根は植毛前の部位の性質を持ちますので、生え際や頭頂部の薄くなりやすい部位に、後頭部や側頭部の薄毛になりにくいという性質を持たすことができます。
移植した部分で髪の毛の成長サイクルを繰り返すことから継続したメンテナンスが不要という特徴があります。
メソセラピー治療
メソセラピー治療とは、薬剤を頭皮に注入する治療法です。
AGAはホルモンの影響による要因ですので飲み薬による治療も可能ですが、牽引性脱毛症の場合は外的要因による脱毛ですので飲み薬による治療はほとんど意味がありません。
そのため、牽引性脱毛症では頭皮に直接アプローチできるメソセラピー治療を行うことがあります。
メソセラピーでは注射器のほかに、針付きローラー・炭酸ガス・レーザー照射などさまざまな注入方法が。注入する薬剤成分や注入方法は医療機関によって異なります。
推奨できない間違った治療方法
薄毛になってきたなと思った時に安易に走りがちなのが、育毛剤による治療です。しかし、牽引性脱毛症はそもそも物理的なダメージによるものですので、育毛剤による治療は効果的ではありません。
発毛効果があるので意味がないとも言い切れませんが、牽引性脱毛症では外的要因を取り除くことを第一に考えないと脱毛症状を軽減することは難しいでしょう。
自宅でできる頭皮マッサージの紹介
まず、生え際の中央に指を当てて、頭皮をずらすように上下に5回ほど動かします。徐々に横に広げていき、こめかみまで移動してきたらその後はぐりぐりと小さく指を回しながらマッサージを。
そのまま側頭部(耳の上あたり)まで、ぐりぐりと回しながら少しずつ上に移動していきましょう。
頭頂部あたりでは両手の指を使って、頭皮を左右からつむじに寄せるようにマッサージしてください。
最後は後頭部。指を首から押しながらつむじに向かって動かします。頭皮マッサージはやりすぎても良くないので、1日3〜5分で十分です。
頭皮マッサージの注意点
実はやりすぎも良くない頭皮マッサージ。以下の点に気をつけて行ってください。
爪で頭皮を傷つけない
頭皮に異常を感じると痒みも生じるケースが多いですが、痒いからといってマッサージ中に爪をたてて行うのは絶対にやめてください。
頭皮マッサージは必ず指の腹を使ってマッサージを。爪が長い方は事前に爪を切りましょう。
マッサージは1日5分以下(3分ほどでOK)
頭皮マッサージは行えば行うほど良いというものではありません。頭皮にダメージがあるわけですから、長時間の頭皮マッサージはむしろマイナスです。
マッサージの時間は1日3分で十分。一回1~2分でマッサージできますので、お風呂上がりに1回・寝る前に1回と、短い時間で分けて行っても大丈夫です。
頭皮は綺麗な状態で行う
発毛において、毛穴の汚れは非常に重要な要因です。汚れた頭皮や手で行うのはあまり効果的とは言えません。
手は手を洗うことによって綺麗にできますが、頭皮を綺麗にできるのは1日の中でもシャンプーのタイミングぐらいしかないので、やはりお風呂の後から就寝前までのタイミングでマッサージを行うと良いでしょう。
牽引性脱毛症は子供でもかかる病気
牽引性脱毛症は、ホルモンの影響ではないため子供でも発症する可能性がある疾患。なぜ若いのに髪の毛が抜けるか不安になってしまうかもしれませんが、意識すれば改善できる病気です。
バレーやダンスの習い事などをしている方は髪の毛を縛ったり固定したりしがちですでの、脱毛症状が気になった場合は髪をおろして、頭皮を休ませてあげてください。
まとめ
牽引性脱毛症は髪の毛が引っ張られるなど外的要因に起因する疾患ですので、牽引性脱毛症にならないためには髪型を変えることが簡単で効果的です。
ずっと髪の毛を引っ張り続けて頭皮に負担をかけないように
- 髪をおろす日を作る
- 分け目を変える
などがおすすめ。牽引性脱毛症の治療と考えず、髪型の変化を楽しみながら頭皮に負担のないヘアスタイルを試してみてください。
ただし、高齢になるとさまざまな理由から薄毛になりやすいため、今回紹介した理由以外からも薄毛が進行しがちです。
牽引による理由のみで脱毛が進んでいるかはわかりません。今回紹介した方法で、薄毛が改善しない場合は医療機関で診察を受けることをおすすめします。
参考文献
1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf