男性型脱毛症

フィナステリドの効果、副作用、費用を解説|飲めば薄毛って治る?

錠剤薬
藤井 麻美

薄毛治療はまず飲み薬による治療から始まるのが一般的です。

薄毛治療で使われる薬は主に「ミノキシジル」「フィナステリド」「デュタステリド」の3種類。

今回はその中から「フィナステリド」について詳しく説明していきます。

この記事を読めば薬の成分・効果・副作用が分かりますので、薄毛治療に興味がある方は参考にしていただければ幸いです。

フィナステリドとは

フィナステリドとは、もともと前立腺肥大というの治療に使われていた「プロスカー」という薬に含まれていた成分のことです。

プロスカーを利用している方の中で発毛効果が現れた方が出てきたため、AGA(男性型脱毛症)の治療薬とし開発が進み1997年に「プロペシア」として発売が開始。

その後特許期間が切れたことをきっかけに2015年にジェネリック医薬品「フィナステリド錠」として販売されました。

ジェネリック医薬品とは

新薬がでるとその数年から十数年の期間は、他社は同様の成分の薬を販売できません。

しかし、この特許期間が終了した後は新薬と同等の成分・効果を持つ薬を販売することができるように。後から作られる薬には数百〜数千億の開発費用がかかっていないため販売価格も抑えて作ることができます。

ジェネリック医薬品の価格は先発医薬品の7割程度になりますので、長期治療が必要な方にはありがたいですよね。

すぐジェネリックが出た方が患者のため?

ジェネリック医薬品は安く購入することができるため「ジェネリックの方が良い」「特許期間は短くすべき」と思われがちですが、この特許期間が少ない場合どうなるでしょう。

新薬の研究・開発には数百〜数千億円の費用がかかるとされています。

特許期間が短ければ、無駄なリスクを追って新薬を開発するよりも他社が出した薬を真似した方が開発費用を抑えることができるため、どこの会社も新薬作りを行わなくなるでしょう。

一見すると早くジェネリックが出た方が患者のために思えますが、病気を克服する新しい薬が出ないことの方が人類の損失なのです。

そのため独占販売期間を設けて利益を出すことによって、さまざまな会社が新薬の開発に挑戦できる仕組みを作っています。

フィナステリドを使用した治療の推奨度

フィナステリドの推奨度を日本皮膚科学会ガイドラインにて確認すると、

AGA治療 ガイドライン
引用:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

フィナステリドの治療の推奨度は最も高いA[行うよう強く勧める]となっており、AGAになった時にまず行うべき治療とされています。

フィナステリドの効果

フィナステリドは抜け毛を予防することによって薄毛を改善する薬です。

AGAの発症原因とフィナステリドのアプローチ

フィナステリドがどのように薄毛を改善するかという説明をする前に簡単にAGAの発症原因を説明しましょう。

AGAは体内で生成されるジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンによって引き起こされます。

ジヒドロテストステロンはテストステロンと呼ばれる男性ホルモンと還元酵素5αリダクターゼが結びつくことによって発生。

ジヒドロテストステロンが発生すると髪の毛の成長が抑制され、髪の毛が伸び切る前に抜けてしまうため髪の毛が抜けるスピードが加速し、結果薄毛が進行します。

ヘアサイクルとAGAの関係
AGAになった場合のヘアサイクル

そのためジヒドロテストステロンを防ぐことがAGAの症状を抑えることになるというわけです。

フィナステリドは還元酵素5αリダクターゼを妨げることでジヒドロテストステロンの生成を抑制し、髪の毛の成長を正常なサイクルに戻し薄毛を改善します。

効果が出るまでの期間

フィナステリドが効くまでの時間には個人差がありますが早ければ2~3ヶ月、平均で半年ほどで効果が現れます。

乱れたヘアサイクルを戻し、強い髪の毛を1から生やすための切り替わりには時間がかかりますので根気よく治療を続けましょう。

その他の治療薬との違い

薄毛治療で使われる薬はフィナステリドの他に「ミノキシジル」「デュタステリド」の2つ、これらの薬との違いを説明します。

ミノキシジルとの違い

ミノキシジルは髪の毛を休止状態から成長期への移行を早め、成長期を延ばす効果があります。

「他の薬とどう違うの?」と思いますよね。
簡単にいうと、フィナステリドとが抜け毛を防ぐ守りの薬だとすると、ミノキシジルは髪の毛を生やす攻めの薬というイメージです。

AGAが軽度の場合はまずフィナステリドを使用しますが、ミノキシジルとフィナステリドを併用し治療します。

デュタステリドとの違い

AGAの原因となる5αリダクターゼには実はⅠ型とⅡ型が存在します。

フィナステリドはⅡ型のみを阻害する一方で、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方を阻害。そのためフィナステリドとデュタステリドは同じようなアプローチで薄毛を改善しますが、効果はデュタステリドの方が高いです。

しかし副作用が起こる確率もデュタステリドが高いため、どちらを利用するかはクリニックで判断してもらいましょう。

フィナステリドの副作用について

フィナステリドは安全性の高い薬と言われていますが、副作用が全くないわけではありません。

性機能不全

フィナステリドを服用すると性欲減退や勃起機能不全といった性機能不全が起こることがあります。ただし確率は非常に小さく1%以下ですので、男性であれば子作り期間中にも服用は可能です。

肝機能障害

フィナステリドの服用では、稀に肝機能障害を起こすことが確認されてています。

これは薬が分解される際に肝臓に負担がかかるためと考えられており、確率としては1%より遥かに少ない確率ではありますが、医療機関にて相談をしてから治療を始めるようにしてください。

性機能減退や肝機能障害についての具体的な人数や観察期間方法については以下をご確認ください。

性機能障害については相対危険度が 1.39(95% CI,0.99~1.95)とフィナステリド投与群がプラセボ群より上昇する傾向があるとしている29).

重要な副作用として,頻度は明らかではないが,まれに肝機能障害があらわれることがある.

日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

また、フィナステリドは皮膚からも吸収されるため、女性がうっかり薬に触れることのないよう保管や取り扱いに注意が必要です。

いつまで飲み続ければ良い?

フィナステリドによる薄毛(ヘアサイクル)を改善できるのはあくまで服用中のみ、遺伝子情報や体質を根本から変えるものではありません。

そのためフィナステリドの治療を開始し、その効果を実感できた場合でもフィナステリドの服用は継続する必要があります。

満足する効果が現れた場合、服用の量を調整するなどしても良いかもしれませんが、服用は続けるべきでしょう。

治療にかかる費用

AGA治療自体が自由診療なので、クリニックによって価格に開きがありますが、フィナステリドの1ヶ月あたりの費用相場は3,000〜8,000円です。

前述したように、ミノキシジルや他の治療を併用する場合はもう少しお金がかかりますが、フィナステリドのみの治療を続ける場合は比較的リーズナブルな価格で治療を行うことができます。

安く薬が手に入る個人輸入サイトのリスク

薬を安く購入しようとネットで調べていると個人輸入サイトというのを見つけることがあります。

これはインターネットを利用して取り寄せたり、自分で持ち帰るという方法で海外から医薬品を輸入し販売しているサイトのことです。

「安く購入ができる」「クリニックに出かけることなく(バレることなく)薬を手に入れることができる」というメリットもありますが、

  • 安全の保証がない
  • 偽造品の可能性がある
  • 健康被害が起こった場合に保証がない

というリスクがあります。

国内で厚生労働省が認可し、医療機関が使用している医薬品であれば、重大な健康被害が生じてもその救済措置を図る公的制度がありますが個人輸入医薬品にはそのような制度はありません。

重大な被害を被る可能性があり、誰も保証してくれない個人輸入サイトはあまり利用すべきでないでしょう。

よくある質問

Q
フィナステリドに初期脱毛はある?
A
フィナステリドには初期脱毛が起こることはほとんどありません。

AGA治療を始めると髪の毛が生え変わるために、既に生えている毛が抜け落ちる「初期脱毛」という現象(副作用)が起こることがあります。

しかしこの現象は発毛を促す「ミノキシジル」で起こる現象であり、フィナステリドで確認されることはほとんどありません。

それでもネットで「フィナステリドで抜け毛が増えた」という感想をよく目にします。

それは「ミノキシジルとフィナステリドは併用して服用することが多いため、副作用を混同している」または「AGA治療を初めてもすぐには髪の毛が生えてこないので抜け毛により敏感になっている」と考えられるでしょう。

Q
女性の薄毛にも効果はある?
A
女性の薄毛治療には効果がなく、使用しません。

フィナステリドは、AGA(男性型脱毛症)に効果がありますが、FAGA(女性型脱毛症)はその原因が異なるため薄毛の改善に効果はありません。

Q
フィナステリドを飲むと体毛も濃くなる?
A
ほとんどの場合体毛の濃さは変わりません。

フィナステリドはヘアサイクルを正常にし、抜け毛を予防することによって髪の毛のボリュームを改善する薬です。

発毛を促すわけではないので体毛が濃くなることはほとんどありません。ミノキシジルには発毛効果があるため、毛深くなることがあります。

Q
子作り中に服用しても平気?
A
男性は問題ありませんが、女性は服用を禁じられています。

MSD株式会社の調査によると、6週間フィナステリドを継続し摂取した場合でもフィナステリドが精液に溶け出したのは0.00076%と影響を与える量ではないため子作り期間中の男性でも摂取に問題ありません。

ただし、妊婦または妊娠している可能性のある女性と授乳中の女性への投与は、男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼす恐れがあるため禁止されています。

とはいえ、男性も1%程度の確率で性欲減退・勃起不全などが起こる可能性がありますので、そちらの観点から子作りをスムーズに行えなくなる可能性はあることはあります。

まとめ

フィナステリドは世界でもAGA治療として使われるメジャーな治療薬です。一定の効果が見込め副作用も少ないため、AGAの治療には積極的な利用が推奨されています。

服用には医師の診察が必要となりますので、まずはお近くのクリニックで相談を受けてみてください。

参考文献

1) 日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

2) 厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

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