AGAの進行を食い止める薬「デュタステリド」の副作用と効果を説明
薄毛治療を始めようと思った方がまず提案されるのが「ミノキシジル」「フィナステリド」「デュタステリド」を使った治療です。
聞いたことのない薬だとどんな副作用があるのか、体に影響はないのかが気になりますよね。
今回はこの3つの薬の中から「デュタステリド」について詳しく説明していきます。
この記事を読むことで、デュタステリドの効果・副作用が分かりますのでこれから薄毛治療を検討している方は最後まで読むことで不安を解消してください。
デュタステリドとは
デュタステリドはAGA(男性型脱毛症)を改善する服用薬で、元々は異なる目的の薬の副作用として発見された経緯があります。
その薬は「アボルブ」という前立腺肥大症治療薬。前立腺肥大症患者向けへの投薬の過程で、薄毛に対して改善の効果が確認できたので改めて研究が進み「ザガーロ」という名前で発売されることとなりました。
デュタステリドとは成分の名前を指しており、ザガーロはデュタステリド成分を使った薬の名称です。
デュタステリド使った治療の推奨度
デュタステリドの効果の前に、日本皮膚科学会ガイドラインで治療の推奨度を確認してみましょう。
デュタステリドの推奨度は最も高いA[行うよう強く勧める]。
ただし、女性の脱毛症に対しては推奨度が最も低いD[行うべきではない](無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)とあります。
デュタステリドの効果
デュタステリドは毛母細胞の活動を活性化しを抜け毛を減らすAGAの治療薬ですが、どのようにAGAを改善するのか具体的な作用を説明します
AGAに対するデュタステリドのアプローチ
AGAは、5αリダクターゼとテストステロンが結合して作られるジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンによって発症。
そしてAGAが発症すると、髪の毛が生えて成長して抜けるというヘアサイクルが乱れてしまいます。具体的には髪の毛の成長期間が短くなることにより、髪の毛が太く育たなくすぐに抜けてしまうため薄毛が進行。
デュタステリドはAGAの発症要因である5αリダクターゼを抑制することによって、AGAを改善することができます。
発毛というよりも、抜け毛を減らすというアプローチで薄毛を改善するので「守りの薬」と言われることも。
効果が出るまでの時間
デュタステリドによる治療では、治療の効果を感じるためには早ければ2~3ヶ月、一般的には6ヵ月間の継続が必要とされています。
早い方ですと3ヶ月ほどで変化を感じられる方もいらっしゃいますが、AGAの治療というのはヘアサイクルを正常に戻すものですので短期間での改善を期待せず6ヶ月は継続してみましょう。
6ヶ月経っても改善が見られない方は医師に相談し、他の治療を加えるなどしても良いかもしれません(ミノキシジルを併用する方は多いです)。
デュタステリドの成分が使われている薬
デュタステリドは成分の名前ですので、厳密にいうとデュタステリド成分の薬は「ザガーロ」以外にも「デュタステリド」という薬があります。
ザガーロ
ザガーロはグラクソ・スミスクライン社によって2015年に販売開始されました。
ザガーロには有効成分の差がある、0.1mg配合と0.5mg配合の2種類がありAGAの進行状態をみて選択します。しかし0.1mgと0.5mgではその副作用にほとんど差がないため効果が強く見込める0.5mgが使用されることがほとんどです。
デュタステリド
デュタステリドはザガーロの後にジェネリック医薬品として作られました。
治療に用いられるのはほとんどこちらのデュタステリド。ジェネリック医薬品のため安価に利用できるのが大きなメリットです。
成分としての違いはありませんので、使用者としては価格が安く購入できるデュタステリドの方が使用しやすいと言えるでしょう。
副作用
デュタステリドの主な副作用としては、性機能の減退があります。
ザガーロ(デュタステリドと同成分)の臨床試験データでは副作用は患者数557名に対して95名の発症率17.1%。
全体の内訳は
- 勃起不全4.3%(24/557例)
- リビドー減退3.9%(22/557例)
- 精液量減少1.3%(7/557例)
となっております。基本的には性機能が減退すると考えてください。
デュタステリドを服用しても子供(胎児)への影響はほとんどありません。しかし性機能が減退することが確認されていますので、妊娠活動を優先する場合は服用を控えた方がいいかもしれません。
頻度は不明ですがごく稀に重大な副作用として肝機能障害や黄疸があらわれることもあります。このような症状が出た場合はすぐにかかりつけの医師に相談してください。
その他の治療薬との違い
デュタステリド以外にも一般的なAGAの治療で使う薬には「ミノキシジル」と「フィナステリド」があります。
これらとデュタステリドでは効果にどのような違いがあるのかを説明いたします。
フィナステリド
フィナステリドは抜け毛を予防することによって薄毛を改善する服用薬。
デュタステリドとフィナステリドはどちらも5αリダクターゼを抑制し、AGAの症状を改善するという似た効果を持っています。異なるのはフィナステリドの方が効果も副作用も弱くなっているという点。
AGAを引き起こす5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型が存在しますが、フィナステリドはⅡ型のみを阻害しますが、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方を阻害します。
そのためデュタステリドの方がAGAの原因となるジヒドロテストステロンの発生を抑えることができますが、フィナステリドは(デュタステリドと比べると)効果が低いかわりに、副作用も少なくなっています。
どちらを使うかはAGAの進行具合をみて、医師に判断してもらうのが良いでしょう。
ミノキシジル
ミノキシジルはフィナステリドやデュタステリドとは異なり、髪の毛を生やす効果がある薬です。
「フィナステリドもデュタステリド髪の毛が増えるから一緒でしょ?」と思う方も多いかもしれません。
確かに薄毛を改善するのは同じですが「フィナステリドやデュタステリドは守りの薬」「ミノキシジルは攻めの薬」と表現されています。
というのも、フィナステリドやデュタステリドは抜け毛を減らして薄毛を改善しますが、ミノキシジルの髪の毛を生やして薄毛を改善するとはアプローチが異なるのです。
さらに、ミノキシジルは外用薬(塗り薬)として使いますので、フィナステリドとデュタステリドの服用薬(飲み薬)とは使い方が異なります。
薬の入手方法も、フィナステリドやデュタステリドは医師の診察が必要ですが、ミノキシジルは濃度5%以下のミノキシジルであれば医師の診察なしでドラックストアで購入することができるという違いが。
ミノキシジル・フィナステリド・デュタステリドの違いを表でまとめると以下の通りです。
ミノキシジル | ミノキシジル | ミノキシジル | |
---|---|---|---|
効果 | 発毛促進 | 5αリダクターゼⅡ型を抑制、AGAを改善(効果○) | 5αリダクターゼⅠ型・Ⅱ型を共に抑制、AGAを改善(効果◎) |
使用方法 | 外用薬(塗り薬) | 服用薬(飲み薬) | |
入手方法 | ドラックストアでも購入可能 | 医師の処方が必要 |
併用によってより効果的に
デュタステリドはミノキシジルと併用して使うことが可能。
守りの薬でヘアサイクルを平常に戻し、攻めの薬で発毛を促すことによって、それぞれを使用した時よりも高い効果が期待できます。
外用薬と服用薬ですので、片方の薬では効果が出にくい方にも体の内と外から異なるアプローチで薄毛の改善をできるのもメリットです。
服用方法
デュタステリドは1日1錠を飲むということ以外細かい服用ルールがありません。
食事の前後であっても関係なく服用でき、自分の生活リズムに合わせて服用できる可能な続けやすい薬です。
とはいえ、夜服用して起きて朝服用というような服用のタイミングが近くなるよりはある程度時間を固定することにより薬の効果を安定させることができますし、飲み忘れを防ぐという観点からも毎日決まったタイミングで服用した方が良いでしょう。
治療にかかる費用
AGA治療自体が自由診療なので費用はクリニックによってバラバラですが、大まかなデュタステリドの治療費用は月8,000円〜10,000円程度。
ただし、しっかりとAGAの治療を行う場合はデュタステリドに加えて、ミノキシジルによる治療を併用することが多く、そうなりますと15,000~25,000円ほどの治療費になることが。
この治療費を抑えるには、
- 市販のミノキシジルを利用する
- フィナステリドを利用する
という方法を選択することも可能です。
安く薬が手に入る個人輸入サイトとは
AGAの治療薬を探していると、ネットで「個人輸入サイト」を見つけることが。
個人輸入サイトでは薬が半額近い値段で販売されていますが、これはインターネットを利用して海外から取り寄せることによって低価格を実現しています。
このようなサイトでは安く購入ができるというメリットがありますが、それ以上に
- 安全の保証がない
- 偽造品の可能性がある
という大きなリスクがあります。
さらに国内で処方された薬であれば、服用により重大な健康被害が生じた場合には救済措置を図る公的制度がありますが、個人輸入の医薬品にはそのような措置がありません。
安く買えるというメリットは果たして安全の保証がないというリスクよりも大きいのか?と考えてみれば、利用すべきではないと考えます。
よくある質問
デュタステリドのよくある質問を紹介いたします。
AGA治療を行うと、髪の毛が一時的に抜ける「初期脱毛(休止期脱毛)」という症状が起こることがあります。
ネット上では「デュタステリドで初期脱毛が起こる」といった記事をよく目にしますが、デュタステリドではこの症状が起こることはありません。
女性の薄毛(FAGA)は男性型脱毛症とは原因が異なるため、デュタステリドが薄毛を改善することはありません。
効果がないのにもかかわらず、女性の場合は胎児に深刻な悪影響を与えるとされていますので服用を禁じられています。
さらにデュタステリドは皮膚からも成分が吸収されますので、旦那さんや彼氏さんが服用されている場合は薬に触れないように注意してください。
フィナステリドとデュタステリドはどちらも5α-リダクターゼを抑制し、AGA治療においては同じような効果があります。
しかしデュタステリドの方がフィナステリドよりも1.6倍強い効果を得ることができるため、高い効果を求める場合はデュタステリドを使用し、他の治療方法を併用したい場合はミノキシジルを使います。
薬を飲み忘れてしまった時に、効果がなくなるのを恐れて飲み忘れた日数分を服用しようとする方もいらっしゃいますがその必要はありません。
デュタステリドは薬が体内に含まれる量が半分に減る半減期が2週間と、かなり長いため1~2日程度の飲み忘れであればそこまで気にする必要はありません。
気がついたタイミングで薬を飲み、そこから再び毎日1日分の服用を続けてください。
デュタステリドによるAGAの改善は服用期間中のみですので、薄毛が改善され髪の毛のボリュームが戻ったとしても、服用をやめてしまうと再びAGAの進行が再開。
とはいえ、ボリュームに満足できた場合は今までの減った髪の毛を増やすのではなく、毛量を維持すれば良いので減薬を検討できます。
まとめ
デュタステリドは副作用が少なく、AGAの改善に効果のある治療薬です。
ただし飲めば必ず薄毛が解決するというわけではありません。薄毛にはさまざまな理由がありますので、デュタステリドが必ずしもあなたの薄毛を改善する最も良い治療方法かはわかりません。
AGAは早く治療を行えば改善できる可能性が高い疾患ですが、完全に毛根が死滅してしまうと治療の難易度は格段に上がってしまいます。
薄毛が気になった方はまずはお近くのクリニックへご相談ください。
参考文献
ザガーロ添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065940.pdf
日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
医薬品情報 : ザガーロ
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065940