あなたの薄毛(ハゲ)はどのタイプ? AGAの種類について知ろう

と自分で気が付いたり、何も感じていなかったが、
「最近、髪の生え際が薄くなった」
「最近つむじのところが薄くなってきてない?」
と周りの人から指摘された。このような経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
男性の薄毛はAGAという病気が原因であることが多いのですが、人によって薄毛が始まる部分が異なり、また、年代によっても薄毛の程度は異なります。
AGAにおいて、自分がどのようなタイプのAGAなのか、そして現在AGAの進行具合はどれくらいなのかを知っておくことは非常に大切です。
ご自身のAGAをきちんと把握しておくことで、適切なケアや治療につなげることができます。
ここでは、AGAのパターン別分類法や、代表的な治療薬について解説しましょう。
AGAとは
AGA(エージーエーと読み、英語のandrogenetic alopeciaの略です。)は、男性型脱毛症とも言われ、中高年になってからいきなり発症するのではなく、若いうちから発症し、徐々に進行する病気です。
具体的には30 歳前後から発症し、その後徐々に進行して AGAが目立ってきて40 歳以降に完成されるのが一般的。
AGAでは、男性ホルモンと遺伝が発症にかかわっています。
髪の毛は、男性ホルモンの影響を受けると、成長サイクルが短くなり、成長が止まってしまい、その結果、髪の毛が十分成長しないまま(太くなれないまま)抜け落ちてしまうのでえす。
髪の毛の男性ホルモンからの影響の受けやすさは人によって異なり、遺伝がかかわっています。
あなたのAGAどこまで進んでる?
AGAは発症後に徐々に進行していきます。ですから、自分は若いからまだ大丈夫と思って放置しておくと髪の毛が減り続けてしまうことに。
男性のAGAは、前頭部や頭頂部の髪の毛が軟らかくなって、細く短くなってしまうのですが、進行のパターンは人によって異なります。よく言われる薄毛のパターンとして、M字はげ、O字はげ、U字はげが。
また、クリニックなどの医療現場では、より細かく分けられた分類法が使われ、ハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれています1) 。この分類法は、ハミルトン、ノーウッド両医師の名前が由来となっており、欧米のAGAの特徴的な薄毛パターンを示したものです。
日本人(アジア人)のAGAの薄毛パターンは欧米と比べて頭頂部の薄毛が多く、ハミルトン・ノーウッド分類に加えて、頭頂部のパターンを追加した分類が用いられています2) 。このサイトでは、便宜上ハミルトン・ノーウッド分類として記載。
それでは、ハミルトン・ノーウッド分類や日常でよく使用されるM字型、O字型、U字型について解説していきましょう。
AGAによる薄毛は、ハミルトン・ノーウッド分類で多くの方の薄毛パターンを分類することが可能です。薄毛のパターンを知ることは、AGAの治療を決定する上で重要ですので、ぜひ参考にしてください。
ハミルトン・ノーウッド分類
ハミルトン・ノーウッド分類では、薄毛の進行パターンを9つにわけて分類します。
まずはイメージとして以下の図をご覧ください。

ハミルトン・ノーウッド分類は、ⅠからⅦ型+Ⅱ/Ⅲ vertex型の、合計9つのパターンに分けられます。それぞれについて解説していきましょう。
Ⅰ型

AGAのごく初期症状の段階です。髪の生え際が少し後退し始めますが、見た目にはあまり変化がなく、気が付かない人のほうが多い状態です。
Ⅱ型

Ⅰ型が進行して生え際の薄毛が目立ち始め、見た目に変化が現れ始める状態です。
Ⅱ型の中でも前頭部の薄毛が目立つ場合はⅡa型と呼ぶこともあります(図右)
Ⅱ vertex型

Ⅱ型の状態に加えて、頭頂部がO型に薄くなってきた状態です。Ⅱvertex型は日本人に多く、つむじ周りの薄毛が特に進行し、生え際も少しずつ後退していくというのが特徴です。
Ⅲ型

生え際の薄毛がさらに進行してM字になっている状態です。また、この段階では全体の髪のボリュームも減少しています。
Ⅲ型の中でも前頭部の薄毛が特に進行し、M字になっている状態をⅢa型と呼ぶことも(図右)
Ⅲ vertex型

Ⅲ型の状態に加え、頭頂部がO型に薄くなって、頭皮が透けて目立ち始める状態です。
Ⅳ型

Ⅲ型からさらに薄毛が進行し、前頭部の生え際が後退するだけでなく、頭頂部がO型に薄くなっている状態です。
Ⅳ型の中でも前頭部の薄毛が特に進行し、M字の中心部も薄くなっている状態をⅣa型と呼ぶこともあります(図右)
Ⅴ型

Ⅳ型がさらに進行し、前頭部の後退がより進み、前頭部と頭頂部の薄毛の部分がつながりそうな段階で頭皮も露出し始めてきます。この段階ではもはやM字ではないほど薄毛が。
生え際から頭頂部にかけて進行し、微妙につながっているような状態です。Ⅴ型の中でも前頭部の薄毛が特に進行し、頭頂部まで薄毛が進んでいる状態をⅤa型と呼ぶこともあります(図右)
Ⅵ型

Ⅴ型からより薄毛が進行し、頭頂部の後退部が後頭部にまで達している段階です。生え際から頭頂部にかけてかなり薄毛が進行し、頭皮が透けてみえている状態。
Ⅶ型

VI型が更に進行。側頭部の薄毛も進み、後頭部も頭頂部に近い部分は発毛がない状態です。
Ⅵ型が進行して側頭部の薄毛も進んでしまい、頭頂部全体に発毛がなく、後頭部の一部のみ発毛があり、AGAとして一番進行した状態。
最近少し薄毛が気になってきたなと思った方や周りから薄毛を指摘された方はこの分類と、自身の頭髪を当てはめてみて、自分がAGAかどうか、どの分類にあるのかを判断してみるといいでしょう。
ここまでハミルトン・ノーウッド分類について説明しました。この分類法は医療機関で用いられる分類ですが、昔からいわれているM字はげ、O字はげ、U字はげのように、もう少し簡単な分類の仕方も。
ここで少しM字型、O字型、U字型についても解説していきます。
M字型

ハミルトン・ノーウッド分類ではⅠ型~Ⅴ型で認めます。
額の生え際が次第に後退し、頭を上から見ると髪の毛がアルファベットのMにみえることから名づけられました。
鏡で見やすい部分ですから、自身で気が付きやすいタイプといえます。いわゆるAGA初期のⅠ~Ⅱ型の症状です。
O字型

ハミルトン・ノーウッド分類ではⅡ、Ⅲ型 vertex、Ⅳ型以降で認めます。
M字型と異なり、額の生え際からではなく頭頂部が薄くなり始め、頭を上から見たときにアルファベットのOにみえるのでO字型と呼ばれます。
頭頂部の薄毛なので鏡では見えず、自分ではなかなか気が付かないことが多いので、家族など他人に指摘されて気付くことが多いタイプです。
日本人のAGAはハミルトン・ノーウッド分類でⅡvertex型が多いので、O字型が多いともいえます。
U字型

ハミルトン・ノーウッド分類ではⅣa型~Ⅶ型で認めます。
M字型がさらに進行した状態で、額全体の薄毛が進行し、生え際が後退。頭頂部の薄毛も認め、O字型も併発することが多いです。
AGAは進行性の脱毛症ですから、放っておくと生え際はどんどん後退します。生え際と頭頂部がつながるU字はげに発展する可能性も極めて高いです。
AGAが気になり出したら、治療開始時期と心得よ

先ほどAGAの分類法として、進行度別に分類されたハミルトン・ノーウッド分類を紹介しました。
では、AGAはハミルトン・ノーウッド分類でどの段階から治療したほうがいいのでしょうか?
よくいわれるエピソードとして以下のものがあります。
30代前半で薄毛を指摘された方が、「薄いといったってつむじの部分が少し目立つくらいだけだし。まだ若いし、はげっていうほどでもないからもう少し年をとってから治療を考えれば」と治療を先延ばしにする。
40-50代の方で、「もうだいぶ頭が薄くなってきたな。生え際もつむじも地肌が目立ってきているし。治療してもどうせ意味ないからもうこのままでいいか」と治療を諦める。
AGAの治療時期について結論から先にお伝えすると、
「気になりだした時が治療を開始する時期である」、と強くお伝えしたいです。
AGAの治療は、中高年になってからでも薄毛の進行を止めることができ、効果も実感できます。
AGAは若いうちから発症し、徐々に進行するのが特徴です。一般的に30 歳前後から発症し、40 歳以降に薄毛が明らかに目立ってきます。ですから、比較的若い年代の方が初期段階で早く治療すれば、薄毛の進行を食い止めることができ、薄毛が目立たないまま過ごすことが。
一方、中高年の方においても、AGA治療で薄毛の進行を食い止めることができます。若い方と比較すると薄毛が進んだ状態での治療になりますから、毛がフサフサになるまで改善ことは比較的難しいといえますが、進行を食い止めてこれ以上の薄毛の進行を遅らせて現状維持することは可能。
効果的なAGAの治療法(飲み薬編)

AGAはどの年代で治療を始めても効果を実感できるとお話しました。では次に、AGAの治療について見ていきましょう。
AGAの治療は、内服薬や塗り薬、レーザー治療、毛髪再生医療など、インターネットでたくさんの治療法があげられています。
日本皮膚科学会が2017年に発表した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」は、AGA治療法を推奨度別に分類しています。
治療法 | 推奨度 |
---|---|
フィナステリド内服 | A (男性型脱毛症), D (女性型脱毛症) |
デュタステリド内服 | A (男性型脱毛症), D (女性型脱毛症) |
ミノキシジル外用 | A |
植毛術 | 自家植毛:B (男性)、C1 (女性)人工毛植毛は男女ともD |
LEDおよび低出力レーザー照射 | B |
アデノシン外用 | B (男性型脱毛症)C1 (女性型脱毛症) |
カルプロニウム塩化物外用 | C1 |
t- フラバノン外用 | C1 |
サイトプリンおよびペンタデカン外用 | C1 |
かつらの着用 | C1 |
ピマトロストおよびラタノプロスト外用 | C2 |
成長因子導入および細胞移植療法 | C2 |
ミノキシジル内服 | D |
※推奨度とは
A: 行うよう強くすすめる。
B: 行うようすすめる。
C1: 行ってもよい。
C2: 行わないほうがよい。
D: 行うべきではない。
各治療法の詳細は別記事で解説しますが、ポイントのみ紹介していきます。
2017年の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」で、行うよう強くすすめる治療法として、「フィナステリド内服」、「デュタステリド内服」、「ミノキシジル外用」があげられています。
女性においてはフィナステリドとデュタステリド内服は推奨されず、ミノキシジルも男性とは濃度が異なることに注意が必要です。
近年、AGAに対する治療はさまざまなものが開発されてきています。現時点でガイドラインでは強く推奨されていない治療法も、将来有効な選択肢となる可能性が。AGA治療の最新情報は、医療機関で尋ねてみるといいでしょう。
5αリダクターゼとは?
AGAの代表的な内服薬は、フィナステリドとデュタステリドです。いずれも、5αリダクターゼ阻害薬と呼ばれるお薬で、5αリダクターゼの働きをブロックすることで効果を発揮します。
まず、5αリダクターゼと髪の毛との関係について見ていきましょう。
5αリダクターゼは、男性ホルモンであるテストステロンに作用して、テストステロンをより強力なジヒドロテストステロン(DHT)へ変換。ジヒドロテストステロンは、TGF-βなどの脱毛因子を産生し、その結果、毛が抜けます。

5αリダクターゼ自体がAGAの直接的な原因ではありませんが、5αリダクターゼの活動度(活性度)が高いと、脱毛がより促進されることになります。
5αリダクターゼの種類
5αリダクターゼには、Ⅰ型とⅡ型の2種類が存在し、それぞれ以下の違いがあります。
- Ⅰ型5αリダクターゼ
-
全身の毛の細胞(毛包細胞)や皮脂腺に存在。
- Ⅱ型5αリダクターゼ
-
前頭部・頭頂部・脇・髭・陰部・前立腺などに存在。
AGAの進行に主にかかわるのは、Ⅱ型5αリダクターゼ。
AGAの薄毛部位が前頭部や頭頂部に多いのはⅡ型5αリダクターゼが前頭部や頭頂部に多く存在しているからです。

5αリダクターゼを抑制する飲み薬
5αリダクターゼが、薄毛に影響を与え、脱毛が進むとわかると、諸悪の根源を取り除きたくなりますよね?
推奨薬で効果があるとされているものが、5αリダクターゼ阻害薬であり、フィナステリドとデュタステリドの2種類になります。
さっそく、どのようなお薬か見ていきましょう。
フィナステリド
男性型脱毛症の内服薬として、既に10年以上の実績のある薬です。2017年の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでもフィナステリドの推奨度はA(行うよう強く勧める)と高い評価があります。
フィナステリドはⅡ型5αリダクターゼの働きをブロックすることにより、テストステロン→ジヒドロテストステロンの変換を抑制し、脱毛を遅らせます。

フィナステリドの内服方法
添付文書では、成人男性で通常フィナステリドとして0.2mgを1日1回内服。必要に応じて適宜増量し、1日1mgを上限とするとあります。
実際の臨床の場では、国際的にもスタンダードな量である1mgを1日1回内服することが多いです。しかし、後述する副作用を強く心配される患者さんには0.2mgを1日1回内服から始めることもあります。
<フィナステリドの効果について><
日本で最初に販売されたフィナステリドである、プロペシアのデータを紹介します(オルガノン株式会社HPより抜粋)。
20歳以上50歳以下の男性においてハミルトン・ノーウッド分類でⅡvertex型、Ⅲvertex型、Ⅳ型、Ⅴ型に分類される中等度までの男性型脱毛症を対象として、フィナステリド1mgを1日1回内服した効果の検証です。
結果は以下の通りでした。
改善効果:1年間投与により58%、2年間で68%、3年間で78%
現状維持:1年間投与により40%、2年間で31%、3年間で20%
→改善効果と維持効果を合わせると、プロペシア1mgは98%以上の方に効果があるという結果でした。
効果発現までの期間は、毛の生えるサイクルを考えても即効性はありません。概ね内服してから3か月頃より抜け毛が少なくなってきたと感じる方が多いです。
フィナステリドの添付文書では、6カ月で効果がなければ使用を中止すると書かれていますが、実際は内服6か月から1年後で効果を実感する方も多くいらっしゃるので、すぐに効果がでないとあきらめるよりは、しばらく内服を続けていったほうがいいと思います。
内服を続けている間は、頭髪の現状維持効果が保たれていることが多いですが、加齢により少しずつ頭髪が減ることも(これは自然なことです)。また、フィナステリドの内服を中止すると再度脱毛は進行するため、内服は継続していく必要があります。
<フィナステリドの副作用について>
フィナステリドの副作用には、以下のものが挙げられています。
- 性欲減退 (0.7%)
- 勃起不全 (1.1%)
- 肝機能障害 (頻度不明)
医療機関でAGAの相談に来る患者さんにも、フィナステリドの副作用である性欲減退や勃起不全を気にされる人が結構います。しかし、実際に内服治療している方でこれらの副作用を認める方はほとんどいらっしゃいません。
また、実際に症状を認める方でも「薬を飲んでいて本当に大丈夫かな」という強い不安からくる心因性の勃起不全の方が多い印象です。
肝機能障害に関しては、観察を十分に行います。肝臓の数値(AST, ALT, γ-GTPなど)の異常や、体がだるくなることが認められた場合は、投与を中止するなどの処置が必要になりますので医療機関へ相談してください。
<フィナステリドの注意点について>
フィナステリドは安全に使用できるお薬ではありますが、いくつか注意点があります。
デメリットについてもしっかりと確認してください。
- 前立腺がんの検査で測定するPSAの数値が通常よりも低くなります(約半分)。
前立腺がんの検診を受ける場合は、事前にフィナステリドを内服していることを伝えてください
- 妊娠可能年齢の女性には使用しないでください。
妊娠中や授乳中の女性がフィナステリドを内服すると赤ちゃんの生殖器の発育に悪影響を及ぼすおそれがあるからです。
また、内服していなくても薬剤に触れて成分を吸収してしまっても、赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあります。妊婦さんはお薬に触らないように注意してください。
- 内服中は献血できません。
献血する場合は休薬して1か月たってから可能となります。
- 抑うつ傾向になる可能性がある ジ
ヒドロテストステロンは、やる気を起こす作用もあり、理論上フィナステリドでジヒドロテストステロンが減ると抑うつ傾向になる可能性があります。しかし、実際の頻度はまれです。
デュタステリド
デュタステリドは、フィナステリドと同様に5αリダクターゼを阻害して脱毛に効果のあるお薬です。元々前立腺肥大症に対する治療薬として使用されていましたが、2016年から男性型脱毛症の内服薬としても利用できるようになりました。
フィナステリドと同じくデュタステリドは、2017年の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでの推奨度はA(行うよう強く勧める)です。
デュタステリドは、フィナステリドがⅡ型5αリダクターゼの働きをブロックするのに対してⅠ型5αリダクターゼも阻害する効果が。作用機序としてはフィナステリドと同じでテストステロン→ジヒドロテストステロンの変換を抑制し、脱毛を遅らせます。

<デュタステリドの内服方法>
成人男性に通常、デュタステリドとして0.1mgを1日1回内服します。必要に応じて0.5mgを1日1回内服すると添付文書にはありますが、実際の臨床の場では0.5mgを1日1回内服することが多いです。
<デュタステリドの効果について>
日本で最初に販売されたデュタステリドである、ザガーロのデータをもとに紹介します(添付文書より一部抜粋)。
日本人200人を含めた917人を対象とした国際臨床試験でデュタステリド1日0.5mg日とフィナステリド1日1mgを比較し、6か月間観察した研究があります。
研究結果では、直径60μm以上の硬毛の数は両者とも差はありませんでした。毛髪数や毛の太さに関してはデュタステリドのほうが優れた効果があるとされています。
この結果だけみるとデュタステリドがフィナステリドより効果が優れていると思いがちですが、あくまでも6か月間のみの結果であり、長期的な視点でのデュタステリドの優位性はまだはっきりしていません。
効果発現までの期間は、フィナステリドと同様に即効性はなく、概ね内服してから3-6か月頃より効果を実感される方が多いです。ただ、デュタステリドはフィナステリドと比較して、効果発現が少し早いというデータもあります。理由についてははっきりしていません。
デュタステリドはフィナステリドと比べて体内にとどまる時間が長いため、お薬の効果が長く続いているということかもしれません。
<デュタステリドの副作用について>
デュタステリドの副作用は、フィナステリドと同様です。
- 性欲減退 (8.3%)
- 勃起不全 (10.8%)
- 肝機能障害
添付文書のデータでは、フィナステリドと比較して性欲減退や勃起不全の頻度が多めです。しかし、日本人に限定すると5%前後だったというデータも。
心因性の方も含まれている可能性もありますが、それを考慮してもフィナステリドよりやや多い傾向となっています。
<デュタステリドの注意点について>
デュタステリドはフィナステリド同様、安全に使用できるお薬ですが、いくつか注意点があります。フィナステリドとほぼ同じですが、一部異なるので注意してください。
- 前立腺がんの検査で測定するPSAの数値が通常よりも低くなります(約半分)。
前立腺がんの検診を受ける場合は、事前にデュタステリドを内服していることを伝えてください。
- 妊娠可能年齢の女性には使用しないでください。
妊娠中や授乳中の女性デュタステリドを内服すると赤ちゃんの生殖器の発育に悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、内服していなくても薬剤に触れて成分を吸収してしまっても赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあるので、妊婦さんは触らないように注意してください。
- 内服中は献血できません。
献血する場合は休薬して6か月たってから可能です。
※フィナステリドは1か月の休薬なので期間が異なります。
- 抑うつ傾向になる可能性がある
実際の頻度はまれです。
- 併用するのに注意するお薬がある。
デュタステリドはCYP3A4という酵素で代謝され分解されます。そのため、CYP3A4を阻害する働きのあるものは一緒に飲むと血中濃度が上がってしまう可能性が。例えば、カビに感染したときに使用するフルコナゾールや抗生剤のクラリスンなどが挙げられます。
デュタステリドを内服中に他のお薬を飲むときは医師にデュタステリドを内服中と伝えてください。
ここまで、フィナステリドとデュタステリドについて解説しました。似た部分も多いお薬ですが、一部異なる点もあり、少しわかりにくかった所もあったかと思います。

最後に、フィナステリドとデュタステリドを簡単にまとめた表をのせます。
緑の太字部分が、違いの見られるところです。
フィナステリド | デュタステリド | |
---|---|---|
効能又は効果 | 男性における男性型脱毛症 | 男性における男性型脱毛症の進行遅延 |
作用機序 | Ⅱ型5αリダクターゼを阻害 | Ⅰ、Ⅱ型5αリダクターゼを阻害 |
内服のタイミング | 1日1回内服。食事の影響がないため、いつ服用しても問題はない。 | 1日1回内服。食事の影響がないため、いつ服用しても問題はない。 |
1日の内服量 | 0.2~1mg | 0.1~0.5mg |
副作用 | 性欲減退、勃起不全、肝機能障害、抑うつ傾向など。 | 性欲減退、勃起不全、肝機能障害、抑うつ傾向など。デュタステリドにおいて性欲減退、勃起不全がやや多い。 |
ほかの薬の影響 | 影響なし | CYP3A4を阻害する薬に注意 |
献血 | 内服中は不可。休薬1か月後より可能。 | 内服中は不可。休薬後6か月後より可能 |
注意点(してはいけないこと) | 小児や女性への投与はしない。妊婦に対して薬剤を触れないようにする。 | 小児や女性への投与はしない。妊婦に対して薬剤を触れないようにする。デュタステリドに関しては重篤な肝機能障害がある場合は投与不可。 |
自分は薄毛の家系だから髪の毛が薄くなる前にフィナステリドやデュタステリドを飲んだほうがいいの?

結論:ハゲが始まってからで大丈夫です。
AGAは男性ホルモンと遺伝が発症に関わっていると最初にお話ししました。そのため、人によっては自分は薄毛家系で絶対自分も薄毛になるから、髪の毛が薄くない今のうちに内服薬をはじめようと思われる方もいるかと思います。
AGAは進行性だから発症する前に飲んでおくのは一見理にかなっているように思いますが、薄毛がない状態で、内服を開始する必要はありません。薄毛の初期段階で治療を開始すれば薄毛は速やかに改善します。
予防的にAGA治療する必要はありませんが、薄毛は早期発見、早期治療するほど効果が高いのも事実です。
今回紹介したハミルトン・ノーウッド分類を参考に、薄毛がないか定期的に確認し、薄毛を感じたらすぐに医療機関を受診するとするのがいいでしょう。
フィナステリドやデュタステリドは、いつまで飲んだほうがいいの?
結論:薄毛が気にならない年齢になるまで
フィナステリドやデュタステリドは、脱毛を促す因子を活性化するジヒドロテストステロンを抑えることで薄毛の進行を食い止めます。内服をやめてしまうとジヒドロテストステロンを抑えることができず、再び薄毛が進行してしまうため、フィナステリドやデュタステリドは内服を続ける必要が。
ではいつまで飲み続けたらいいのかと言いますと、答えはご自身がAGAを気にならなくなるまでということになります。
AGAでなくても人は年を重ねていくと薄毛になり、髪の毛が減ることは普通です。たしかに、20-30歳代の若い頃だと周りで薄毛の方は少ないので自分が薄毛だと気になってしまいます。
しかし、60歳代付近になってくると周りのにも薄毛の人が多く(おそらく半数以上)。そのため、自分が薄毛だとしても周りとのギャップがあまりなくなってきます。
ですから、AGA治療のやめどきは、自分が薄毛でも気にしなくなった年代ということになるでしょうか。
フィナステリドやデュタステリド内服に年齢制限はないので、50-60歳代になってもまだまだ薄毛にはなりたくないという場合は治療を継続しても構いません。
お金の面で心配だから海外の薬を個人輸入したいが大丈夫?

結論:絶対におすすめできません。
現在、フィナステリドやデュタステリドは、AGAに対する有効性はしっかり確認できていますが、保険診療適応外のお薬です。健康保険による補助がありません。治療を継続していくとなると費用の面が気になりますよね。また、定期的な通院も必要となってきます。
「クリニックで処方してもらうとお金が高いな」、「定期的に病院へ通うのは恥ずかしいし、めんどくさいな」と思い、インターネットの通販サイトで購入できれば楽なのにと考える方もいるでしょう。
しかし、フィナステリドやデュタステリドは医薬品のため通販サイトからは購入できず、日本では処方箋を発行してから購入する必要が。
近年、個人輸入や業者を通じて海外の医薬品を購入する方がいらっしゃいます。
結論から申し上げると、海外からの医薬品を個人輸入するのは危険ですので控えてください。
その理由は2つあります。
1つ目はフィナステリドやデュタステリドは内服の注意点や副作用についてです。
医師の診察なしにお薬だけ自己流で内服していると、内服方法を間違えたり、副作用があっても自己判断で経過をみてしまうなど思わぬ健康被害にあってしまうことがあります。
2つ目は医薬品自体の安全性に対する懸念です。
日本国内では正規に流通している医薬品は、医薬品医療機器等法という法律に基づいて品質、有効性及び安全性の確認がなされています。
しかし、海外の医薬品にはそのような保証はありません(あったとしても日本の法律とは異なります)。
これまでに、有効成分が少ない(入っていない)、逆に有効成分が多すぎる、日本で認可されていない成分が入っている、中身が全く別のものであるなどの問題点があり、厚生労働省でも個人輸入に対して注意喚起がされています4) 。
また、個人輸入で購入した医薬品によって重篤な副作用が起こっても、自己責任となってしまい、医薬品副作用被害救済制度を利用することができません。
費用や通院の便が大変という気持ちはわかりますが、個人輸入による医薬品購入はリスクが高いと言えます。フィナステリドやデュタステリドは必ず医療機関で処方してもらうようにしましょう。
まとめ
今回、AGAのパターン別分類法や、代表的な治療薬であるフィナステリドやデュタステリドについてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。
AGAは、気がついた時点で早めの治療を行うことで薄毛を予防でき、また、仮に薄毛が進行した状態であっても、さらなる薄毛の進行を食い止めることができます。
フィナステリドやデュタステリドはいくつか気を付ける点があることは事実ですが、適切に内服すれば比較的安全な薬です。
AGAの治療薬の副作用を過剰に恐れることなく、より早期に治療へつなげていただければ、と思います。
AGAの治療は、新しい治療薬などもどんどん開発され、現在用いられているフィナステリドやデュタステリドも今より新しいデータがでてくるので、AGAの治療についてわからないことや不安なことがあれば医療機関へぜひ相談してみてください。
参考文献
- Gupta M, et al. Classifications of Patterned Hair Loss: A Review. J Cutan Aesthet Surg. 9:3-12, 2016
- Takashima I, et al. Alopecia Androgenetica — Its Incidence in Japanese and Associated Conditions. In: Orfanos C.E., Montagna W., Stüttgen G. (eds) Hair Research, Berlin: Springer Heidelberg, 1981; 287-293.
- 日本皮膚科学会. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf (2022年2月13日アクセス).
- 厚生労働省HP. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html(2022年2月14日アクセス)