白髪が多いとAGA(薄毛)にならないって本当?医学的に関係性を解説
「白髪が多いと薄毛にはならない」
この噂を信じている方は多く、クリニックでもよく聞かれる質問の1つです。
確かに若白髪で悩んだら、せめて薄毛にならないで欲しいですよね。果たしてこの噂は本当なのでしょうか。
実は白髪が生えるメカニズムというのはいまだに解明されていない部分があり、薄毛と比べると謎が多いのです。
そのため完全に関係ないとも言い切れないのですが、実際クリニックに来るお客様の中には白髪が多くても薄毛で悩んでいる方がいらっしゃいます。
今回はこの「白髪」と「薄毛」についての関係性とそれぞれの発症のメカニズムをわかりやすく説明してみましょう。
- 白髪だけど今後薄毛の可能性があるか気になっている方
- 白髪が生えるメカニズムを知りたい方
は、是非最後までお読みください。
人種によって髪の色が異なる理由
白髪の説明をする前に、理解しておかないといけないことが1つあります。
「なぜ人によって髪の毛(地毛)の色が異なるのか?」ということです。
日本人は若干の差はあれ髪の毛は黒いですよね。
しかし、世界を見れば茶色や金色(ブロンド)の髪の毛の方が多くいます。これらの人種による髪の毛の色の違いは、メラニンによるものです。
アジアと欧米のメラニンの種類と髪の毛の色は以下の通り。
人種 | メラニンの種類(色味) | メラニンの量 | 髪の毛の色 |
アジア人 | ユーメラニン(黒褐色系) | 多い | 黒 |
欧米人 | フェオメラニン(黄赤色系) | 少ない | 茶・金 |
このようにメラニンの種類と量によって、生まれつきの髪の毛の色が決まってきます。
髪の毛が白髪になるメカニズム
先ほど人種によってメラニンが異なるため髪の毛の色が異なると説明しましたが、歳をとって変化する色味は白だけですよね?
なぜ異なるメラニンを持っていても、歳をとると同じ白い髪になるのでしょうか。
実は髪の毛はもともと色がないのです。色がない髪にメラニン細胞から生成されるメラニンによって着色され、黒い髪の毛が生えてきます。
ですので、メラニン細胞から生成されるメラニンが少なくなれば髪には色がつかないため、どんな人種でも髪が白くなるのです。
白髪が増える(メラニンが減る)理由
「白髪が増えるのはメラニンが減るから」ということは分かっているのですが、実はなぜメラニンが減るのか?ということは不明な部分がおおいのです。
ただ、有力な原因としては加齢・遺伝によるものが最も多く、その次にストレス・乱れた食生活・生活習慣が関係していると言われています。
特に遺伝と加齢はどうしようもないので、白髪予防のためにはストレスを溜めない健康的な生活を送ることが大切です。
若白髪になる理由
若いうちに白髪が生えてしまう「若白髪」はどういった理由なのでしょう?
残念ながら若白髪に関してはほとんど遺伝だと考えられています。メラニンを作り出せない体質が遺伝した場合は、小中学生でも白髪が多くなることが。
自分で対策できる方法としては生活習慣の改善などがありますが、一般的な生活をしている学生でありながら白髪が多い場合は白髪染めで対処することをおすすめします。
学校によっては髪の毛を染めることを禁止している場合もありますが、多くの学校は「黒く染めるのであればいい」というルールがあるので止められることは少ないでしょう。
薄毛(AGA)になるメカニズム
結論を言いますと、白髪と薄毛に医学的な関係性はありません。
薄毛になるメカニズムに、メラニンは全く関係ありません。薄毛が進行する理由は、発毛の減少と抜け毛の増加によるものです。
髪に限らず毛には毛周期と呼ばれるサイクルがあります。
- 生えて伸びる期間を「成長期」
- 抜ける期間を「退行期」
- 休む期間を「休止期」
といいます。
髪の毛は通常、2年〜6年伸び続け、2~3週間かけて抜け、3ヶ月休むというサイクルを繰り返すのです。
しかし、AGAになりこのサイクルが乱れると、髪の毛は生え始めて数ヶ月〜1年で退行期に移行し、髪の毛の生えるペースと抜けるペースのバランスが崩れ薄毛が進行します。
AGAが発症する理由
AGAの主な要因はホルモンとその受容体によるものです。
具体的には、DHT(ジヒドロテストステロン)を、男性ホルモンの受容体である「アンドロゲンレセプター」が受け取ることによりAGAが発症。
そのほかにも、ストレス・乱れた食生活・タバコ・お酒・運動不足・頭皮トラブル・毛母細胞不活性といったさまざまな要因が挙げられます。
まとめ
結論としては、白髪が多いと薄毛にはならないといった事実は確認されていません。
むしろ白髪が増える原因には「加齢・遺伝・ストレス・乱れた食生活・生活習慣」があり、これらの一部はAGAを発症する原因と共通しています。
ですので当然、強いストレスが続けば白髪になり、さらにAGAも発症する可能性はあります。
ストレスが被毛成長に及ぼす影響についてモルモットを用いて検討を行った.その結果,ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に,毛長,毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった.加えて,ストレスを受けた動物の成長毛は筋状の模様が形成され,被毛の質的な変化も引き起こすことが確認された.また,被毛成長と関連があるといわれている
引用 ストレスが被毛成長に及ぼす影響について:https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680715935872
「自分は白髪が多いから」「若白髪だから」といった理由で油断せず、薄毛が気になった場合は、クリニックに行って治療を受けてください。
参考文献
1) 毛のメラニン科学と白髪化:https://www.jstage.jst.go.jp/article/koshohin/42/1/42_420101/_article/-char/ja
2) 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf