フィナステリドよりも効果が強い薬って本当?デュタステリドについて詳しく説明します

デュタステリドは、AGA治療の中心的な薬剤です。
フィナステリドとの違いは?
ミノキシジルとの併用は可能?
どの薬が一番よいのか?
さまざまなお悩みや疑問があるかと思います。今回は、これらの疑問にお答えしながら、デュタステリドについて詳しく解説していきます。薬ですので当然副作用も。
即効性の薬というより、長期間使用して改善を目指す薬剤です。特徴を知り、根気強く治療を行っていきましょう。
- デュタステリドとは|強力な酵素抑制効果を持った薬
- Q:内服して1カ月経過しますが効果がみられません。
- Q:フィナステリドとデュタステリドを同時に内服すると効果が倍になりますか?
- Q:内服と筋トレに関係はありますか?
- Q:食べ物で5αリダクターゼを抑えるものはありますか。
- Q:頭皮が脂っぽいのですが薄毛に関係ありますか。
- Q:腕の毛が多いですが、頭部は薄毛です。関係ありますか?
- Q:前立腺肥大症でアボルブを処方されているのですが、同じものですか?
- Q:1日分飲み忘れたのですが、2日分まとめて内服したらいいですか?
- Q:ネットで安い商品がありましたが効果はありますか?
- Q:内服を開始したら脱毛が進んだのですが心配ないですか?
- Q:内服中は献血できますか?
- Q:内服中は健康診断に影響はありますか?
- Q:女性や子どもも内服できますか?
- まとめ
- 参考文献
デュタステリドとは|強力な酵素抑制効果を持った薬
男性型脱毛AGAの発症には、男性ホルモンが強くかかわっています。男性ホルモンであるテストステロンは、5α-リダクターゼという酵素の働きで、より強い活性をもつジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
この5α-リダクターゼには2種類あり、全身の皮膚と皮脂腺に存在するI型と、前立腺やヒゲ、前頭部に限定的に存在するII型が1) 。
II型5α-リダクターゼによりジヒドロテストステロンができると、髭では毛の成長期が延長し濃い毛が生えますが、前頭部や頭頂部では成長期が短縮し、毛が細く弱くなってしまいます。これがAGAの発症メカニズムです。

デュタステリドは、5α-リダクターゼI型、II型の両方を阻害することで、AGAでおこる毛周期の異常を改善させる効果があります2) 。
デュタステリド0.5mgを1日1回飲んだところ、6ヶ月後に観察部位の毛の太さと数(+89.6本)の改善がみられ、その効果はすでに治療効果が証明されているフィナステリド(+56.6本)よりも優れていたという大規模な研究結果も3)。
そのため、日本皮膚科学会のAGA治療のガイドライン2) では、デュタステリドはgrade A=「使うことを強く推奨する」という推奨度を得ています。
デュタステリドはザガーロ®、ジェネリック薬としてデュタステリド®が販売。
デュタステリドは、もともと前立腺肥大症の治療薬として使われていましたが、AGAの治療効果があることが認められて、2009年に韓国で承認されました。その後、2015年から日本でも承認され、2016年から治療薬の一つとして使えるようになった比較的新しい薬です。
デュタステリドは、5α-リダクターゼをI型、II型ともに抑制しますが、II型5α-リダクターゼを抑制するフィナステリドと比較すると、抑制作用はI型で100倍、II型で3倍という報告もあります4) 。
新薬であるため、デュタステリドとフィナステリドの使い分けには明確なガイドラインはありませんが、AGAの重症例や難治例でデュタステリドを選択するという方法も。ただし、デュタステリドを1年以上の長期に使うことの効果や、その安全性はまだ確立していません。
デュタステリドの服用方法|周産期の女性と子どもには触れさせてはいけません

デュタステリドの商品には、ザガーロ®、デュタステリド®がありますが、どちらも0.1mg、0.5mgの2つの量の製剤が。どちらの量から開始するかは医師の判断になり、用量が多くなるほど増毛・硬毛効果があります3) 。
ただし、量か増えるほど副作用のリスクは増加。メリットやデメリットを考えて、医師と相談して決めましょう。
デュタステリドは、1日1回の服薬でOKです。食事の影響はあまり受けないので、食前・食後どのタイミングで服薬しても問題ありません5) 。
デュタステリドは、肝臓のシトクロムP450 3A4(CYP3A4)という酵素で代謝され、同じ代謝経路で代謝される薬剤に、HIVやC型肝炎の治療薬であるリトナビルがあります。そのため、デュタステリドとリトナビルと併用すると薬剤の濃度が上昇する可能性が。
また、CYP3A4を阻害する作用のあるケトコナゾールなどの薬剤を併用すると、薬剤の代謝の阻害が起こる可能性があります。これらの薬剤と併用する場合には注意しましょう。
デュタステリドは男性ホルモンの値に影響するため、女性、特に妊婦と、小児は服薬できません。また、デュタステリドは経皮的にも吸収されてしまいます。
女性と小児は濡れたり破損したりした錠剤にも触らないように、注意が必要です。デュタステリドは肝臓で代謝されるため、もともと重度の肝機能障害ある方は服用できません。
- 1日1回の服用でOK
- HIV、C型肝炎等は併用に注意
- 女性・小児は触らない
- 肝機能障害のかたは禁忌
デュタステリドの副作用は、フィナステリドよりも強く出る

デュタステリドの副作用は、報告によって頻度に若干のばらつきがありますが、性欲の減退や低下が1.3〜8.3%、勃起不全が1〜11.7%、射精障害が0.1〜5%となっています1, 5)。フィナステリドでもみられる副作用ですが、その頻度はデュタステリドの方が高い傾向に。
その他の副作用としては、1%未満と頻度は低いものの、頭痛や抑うつ気分、乳頭痛、乳房のふくらみ、不快感、腹部の違和感がでることがあります。また、頻度は不明ですが、めまいや味覚障害、精巣の痛みや腫れ、体の脱毛症や多毛症などがでることも。
前立腺癌の腫瘍マーカーである血清前立腺特異抗原(PSA)の値にも影響を与えます。デュタステリドを投与していると、PSA値が本来の値から約50%減少するため、内服中のPSA値は2倍にして評価する必要があります。
病院などで前立腺癌のスクリーニングとしてPSAを測定する場合には、必ずデュタステリドを内服していることを申告しましょう。
デュタステリドは内服後1.5時間ほどで血中の薬剤濃度が最大になり、その後3〜4週間かけて半減します。比較的長期に薬剤が残るため、副作用がでてすぐ薬をやめても、薬の効果が遷延することが懸念事項です。
副作用について、内服を始める前によく説明を受けて納得して治療を始める必要があります。また、飲み始めてこのような副作用がでた際には、すぐに主治医に相談しましょう。
デュタステリドの費用相場は、月々8000〜10000円前後とやや高め
AGAに対してデュタステリドを使う場合は、保険適応外の自由診療になります。薬価基準に決まった価格の記載はありません。
クリニックによって薬代には若干のばらつきがありますが、ザガーロ®は1ヶ月分10,000円程度です。処方には医師の診察が必要で、薬代に診察料が追加されます。ジェネリック薬のデュタステリド®はもう少し価格が下がり8000円程度です。
デュタステリドは新しい薬でフィナステリドより若干効果が優れるということで、費用もフィナステリド1ヶ月分4000〜8000円程度と比較すると少し高くなります。
Q:内服して1カ月経過しますが効果がみられません。
デュタステリドは、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの値を下げて頭皮のヘアサイクルの異常を改善させるため、効果がでるのに時間がかかります。投与開始から3ヶ月程度で効果が出てくる場合もありますが、一般的には6ヶ月間は治療を継続して効果を判定する必要が5) 。
効果がでないからといって自己判断で薬をやめてしまうと、薬剤効果はゼロになりAGAは進行します。根気強く治療を継続しましょう。
Q:フィナステリドとデュタステリドを同時に内服すると効果が倍になりますか?
フィナステリドとデュタステリドは、どちらも5α-リダクターゼの抑制作用が。作用機序が同じ薬剤を服薬しても、効果は倍になるどころか、副作用がおこる可能性が高くなります。フィナステリドとデュタステリドの同時服薬は避けましょう。
デュタステリドと同時に使うのであれば、違うメカニズムでAGAにアプローチする、ミノキシジル外用薬がおすすめです。ミノキシジル外用もすでにAGAの効果が確かめられており、ガイドライン2) でも推奨されています。
Q:内服と筋トレに関係はありますか?

デュタステリドと筋トレに関連性はありません。服薬していても筋トレの継続は可能ですし、筋トレをしたからといってAGAが進行したり薬の副作用が出やすくなったりすることはありません。
Q:食べ物で5αリダクターゼを抑えるものはありますか。
イソフラボンは女性ホルモン類似の作用があり、5α-リダクターゼを阻害する作用を持っていますが6) 、AGAの治療効果があるかは、科学的に証明されていません。食事だけで、AGAを予防したり治療したりするのはまだ難しいでしょう。
ただ、食生活が乱れて必要な栄養素(タンパク質、亜鉛、鉄など)が不足することが脱毛の原因になることはあります。不足がないように、バランスのよい食事を心がけましょう。
Q:頭皮が脂っぽいのですが薄毛に関係ありますか。

皮脂腺にあるI型5α-リダクターゼにより、男性ホルモンからジヒドロテストステロンが産生されると、皮脂腺は活性化され皮脂の分泌が増えます。頭皮、特に前頭部ではII型5α-リダクターゼによりジヒドロテストステロンができるとAGAの原因に。
頭皮の脂っぽさと薄毛は同じジヒドロテストステロンの作用により起こります。脂っぽさを改善すれば、薄毛が改善するという直接的な関連はありませんが、頭皮環境を改善することで脱毛の予防効果があるかもしれません。定期的な洗髪とシャンプーの洗い残しをしないようによくすすぎ、頭皮を清潔に保ちましょう。
デュタステリドで頭皮の皮脂分泌が改善するかは科学的には確証はありませんが、薬理作用としては頭皮の脂っぽさが改善する可能性はあります。
Q:腕の毛が多いですが、頭部は薄毛です。関係ありますか?
体毛が濃くなるのは、遺伝と男性ホルモンなどの影響を受けます。男性ホルモンのテストステロンが腕や胸の皮膚にある1型5α-リダクターゼでジヒドロテストステロンに変換されると、毛は濃く太くなります。
頭皮では5α-リダクターゼの特にII型が多くありますが、頭皮でジヒドロテストステロンが作られると、逆に毛は細く弱々しくなり薄毛に。同じジヒドロテストステロンですが場所によって作用が逆であるために、腕の毛は濃いのに、頭部は薄毛になるという状態が起こってしまいます。
Q:前立腺肥大症でアボルブを処方されているのですが、同じものですか?
前立腺肥大症の治療薬アボルブ®も、成分はデュタステリドと同じものです。ただし、アボルブ®は前立腺肥大症の治療でしか使えません。前立腺肥大症の治療としてアボルブ®が処方された場合には保険適応になります。
Q:1日分飲み忘れたのですが、2日分まとめて内服したらいいですか?
ザガーロ®もデュタステリド®も、どちらも1日1回だけ飲む薬です。飲み忘れた場合は、その日の1日分だけを服薬し、翌日以降は同じくらいの時間に定期的に服薬しましょう。まとめ飲みで効果は上がりませんし、むしろ副作用を起こす可能性がありますので、やめましょう。
Q:ネットで安い商品がありましたが効果はありますか?

ザガーロ®、フィナステリド®はまだ新しい薬ではありますが、日本でAGA治療として効果があると確認され、承認された薬です。これらの薬剤は、皮膚科やAGA専門のクリニックなどで医師の診察と処方箋が必要。
ネットで売っている安い商品は、中身が医薬品と同じ成分のものか、また、効果が同じであるかは保証されていません。安全性などが保障されない安い薬を飲むことは、おすすめできません。
Q:内服を開始したら脱毛が進んだのですが心配ないですか?
デュタステリドはテストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制することで、毛周期に起こった異常を改善する効果があります。
短い成長期にあった細く弱い毛が、内服開始後の初期1〜2ヶ月にまず抜け始めるため、治療開始後にむしろ脱毛が目立つように感じることが。これを初期脱毛といいます。
抜けた毛はもともと弱々しい毛で、本来の毛ではありません。この初期脱毛を乗り切って治療を継続することで、正常な毛包から太く長い毛が徐々に生えてきます。
初期脱毛のせいで治療を中断してしまうと、初期脱毛だけ起こって、その後も脱毛が進行。3〜6ヶ月と少し時間はかかりますが、根気強く飲み続けて治療を行っていきましょう。
Q:内服中は献血できますか?
同じ成分の前立腺肥大症治療薬であるアボルブ®は、内服後6ヶ月は献血できません7) 。ザガーロ®、デュタステリド®も同じく、内服中は献血できません。薬を中止後、6ヶ月の期間が空いていれば献血は可能です。
Q:内服中は健康診断に影響はありますか?

デュタステリド内服中は、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAが約50%に減少します。病院でPSAを測定する際には、必ずデュタステリドを内服中と申告しましょう。またデュタステリドを開始後に肝機能障害などが新たに起こった場合には、薬の中止の検討が必要です。クリニックに相談しましょう。
Q:女性や子どもも内服できますか?
女性型脱毛症にはデュタステリドの効果を検証した研究がなく、明確な効果はありません。また、男の子を妊娠中の場合には、男性ホルモンに影響して胎児の生殖器の奇形を起こす可能性があります。
これらの理由から、デュタステリドは女性には投与は禁忌になります。子供にもデュタステリドの有効性と安全性を示す研究がないため、内服はできません。
デュタステリドは経皮的にも吸収されるため、女性(特に妊娠中)や子どもは濡れたり破損したりしている薬には触れず、万一触れてしまった場合には直ちに石鹸と水で洗い流しましょう。子供の手の届かないように薬を保管することも大切です。
まとめ
AGA治療の新しい薬剤、デュタステリドをご紹介しました。
デュタスリドはAGAの治療効果が実証された確かな薬です。即効性があるわけではありませんので、ある程度時間をかける必要があります。効果のある薬ですので根気強く治療を続けましょう。
参考文献
- 坪井良治. 男性型脱毛症治療の現状と今後の展望. 日薬理誌 133(2).78-81, 2009.
- 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版. 2017年.
- Gubelin HW, et al. A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 2014;70(3):489-498.e3. doi: 10.1016/j.jaad.2013.10.049. Epub 2014 Jan 9.
- 大山学. フィナステリド・デュタステリド. Derma 255(4):183-188, 2017.
- ザガーロカプセル0.1mg/0.5mg.
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/249900AM1023_1_06/ - 国立がん研究センター. がん対策研究所. 予防関連プロジェクト. https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/336.html
- 日本赤十字社. 採血基準・問診事項.
https://www.jrc.or.jp/mr/relate/guide/criteria/