男性型脱毛症

ストレスは本当に薄毛の原因?実は医学的にかなり難しい話なんです

強いストレス
藤井 麻美

「最近抜け毛がすごいんだけど、これってストレスのせい?」
「ストレスがすごくてこのままだと薄毛になりそう。」

こんな悩みを疑問・悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

一般的に、ストレスは薄毛抜け毛の原因として考えられ、ドラマや漫画でもストレスによる脱毛はよく見られる表現です。

ですが、本当にストレスと発毛・脱毛には関係性があるのでしょうか?

結論を言うと、薄毛とストレスには医学的な根拠はありません
では薄毛に全く影響がないか?というとそうとも言い切れない難しい問題なんです。

今回は

  • ストレスによる脱毛の影響はどの程度あるのか
  • ストレスが引き起こす脱毛症状のメカニズム
  • 脱毛症状を抑える対策方法

を説明させていただきます。

ストレスと抜け毛には医学的根拠はない?

実は学術的にストレスと脱毛には直接的な影響があるということは、認められていません。

ただし、全く影響が無いと言うことも認められておらず、ストレスが体に及ぼす悪影響の一つとして毛髪(もしくは体毛)に影響を及ぼすことがあると考えられています。

現状は不明瞭な状況というのが正しいです。

ストレスと抜け毛に関する研究結果

ストレスと発毛・脱毛に関してはなさまざまな実験が行われています。

例えば、2001年にはマウスを使った研究では

ストレスは生体に様々な影響を及ぼすことが知られている.毛髪についても,ストレスで脱毛などの影響を受けることが経験的に知られているが,学術的な研究報告はほとんど見受けられない.そこで,ストレスが被毛成長に及ぼす影響についてモルモットを用いて検討を行った.その結果,ストレスは肉眼的に被毛成長を低下させると共に,毛長,毛径の有意な低下を引き起こすことが明らかになった。

ストレスが被毛成長に及ぼす影響についてhttps://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680715935872

また、2021年には以下のような報告もされています。

コルチコステロン(慢性ストレス時に放出されるマウスのホルモン)濃度が上昇すると、毛包は長期間にわたって休止期にとどまり、再生できないことが明らかになった。逆に、コルチコステロンが枯渇すると、毛包幹細胞が活性化され、新たな発毛が起こる。

natureasiaストレスが発毛に影響を及ぼす仕組み:https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13645

つまり、ストレスでマウスやモルモットは発毛にマイナスな影響が出ることはほぼ間違いないなさそうです。

しかしこれらの実験はあくまでマウスやモルモットによるものであって、それが人間に当てはまるかは明確になっていません。多数の人間にストレスを与え続けるのは実験というのはなかなか難しいですもんね。

ただし、脱毛の症状が免疫機能の異常を発生させる「自己免疫疾患」である説は有力です。

この自己免疫疾患は疲労や感染症・肉体精神的ストレスによるものだと考えられているため、やはり過度なストレスは発毛にマイナスの影響を及ぼす可能性は高いと思われます。

ストレスでどのように抜け毛が増えるか

ストレスでは髪の毛が抜ける理由は解明されていないと言いましたが、ストレスで直接髪の毛が抜けるわけではなく、ストレスが異常を引き起こすことで、結果的に抜け毛が発症すると考えられています。

交感神経による血流の乱れ

ストレスを感じると体が抵抗して交感神経を活発に。そして、交感神経が活発になると心配が早く動き体温が上がるなど、わかりやすい反応が体にでます。

「ストレスで動悸がする」「ストレスが心臓に悪い」などの表現は正しいということですね。

こうして、ストレスが続くと血管を収縮させ、血流の流れが悪くなり、血流が悪くなると、非常に細かい血管である毛細血管の隅々まで血液が行き届かなくなります。

毛髪は毛細血管から毛母細胞が栄養を受け取ることにより細胞分裂を繰り返し発毛が行われます。当然血流が滞れば毛母細胞は栄養不足により活動が減少。

結果として抜けやすい弱い髪の毛しか生えなかったり、新しい髪の毛が生えないと言ったヘアサイクルの乱れを起こします。

また交感神経が刺激され続けると睡眠が浅くなり、髪成長に必要な成長ホルモンが分泌されなくなり、その結果髪の毛の成長が阻害され、脱毛症状を引き起こすと考えられているのです。

自己免疫疾患による免疫異常

また、ストレスは「自己免疫疾患」を誘因することもあります。

「自己免疫疾患」とは、本来外部からの異物・ウイルスを攻撃して体調を守ってくれる免疫機能に異常をきたし、体の正常な部位を異物として排除しようとしてしまう病気のことです。

この自己免疫疾患で毛髪にダメージを受けると、髪の毛が抜けたり、新しい髪がなかなか生えてこないということも起こります。

円形脱毛症

円形脱毛症はストレスで発症する最もよくある脱毛症状です。

ストレスで髪の毛が抜け局所的に髪が抜けるという描写は漫画でもよく見ますし、現実でもその症状で悩んでいる方を時々お見かけします。

脱毛の大きさは10円玉台のものから、全頭型という頭髪がほとんど抜け落ちてしまうこと症状になることも。場合によっては眉毛やまつ毛まで脱毛が及ぶこともあります。

円形脱毛症はT細胞という免疫細胞が毛根を異物と認識して攻撃してしまうため毛髪が抜ける病気ですが、なぜT細胞が毛根を異物として認識するかは解明されていません。

本当に抜け毛が増えているかどうかを確認

「なんとなく抜け毛が増えたような気がする。でも抜け毛が増えているかどうかよくわからない」という方も多いと思います。

人の毛髪は10万本あり、毎日100本抜け、新しく100本生えてきているので、少しぐらい抜け毛が増えても生活の中で把握しづらく、見た目に影響が出てくるのは少し時間がかかります。

枕元の抜け毛を確認

枕元の抜け毛

そこでおすすめななのが、朝起きた時に枕に抜け毛が何本ついているかという判断方法です。

寝てる間枕と頭皮の摩擦がかかりますが、抜け毛の適正本数は20本程度と言われています。これが毎日抜け毛が30本をこえる場合は注意が必要です。

そのほかにも、シャンプーで抜ける髪の毛を調べたり、手で生え際が後退していないかを確認する方法がありますが、薄毛の進行を調べるものであって、現在の抜け毛の本数を調べるのは難しいと思います。

まずは毎日使っている枕についている抜け毛の本数を数えて確認してみてください。

ストレス抜け毛を防ぐ方法

これはもう書く必要もないかもしれませんが、ストレスを減らす。これに尽きます。とはいえ、そんな簡単にストレスを減らせたら苦労しませんよね。

まずは心のストレスと体のストレスを分けて考えてみると、ストレスの解消方法のきっかけを作りやすいかなと思います。

おすすめのストレス解消方法をいくつか紹介しましょう。

人里離れて自然に触れる

キャンプ

ストレスの多くは人間関係から起こります。

たまには人里離れて自然を感じてはいかがでしょうか

コロナ禍で人里離れて自然と触れ合うキャンプが流行っていますが、いきなりキャンプは大変なので山登りぐらいから始めてみるのがおすすめです。

山に登って食べるカップラーメンが一番美味しいという人もいるぐらい、山を登った時の開放感がすごくストレスも吹き飛びます。

新しい趣味・コミュニティーを作る

新しい趣味を持つと良いことは2つあります。

1.熱中できる
趣味に打ち込めば、ストレスの原因を忘れる時間ができます。ストレスの元を解決しているわけではありませんが、ストレスのことばかり考えていると自律神経の乱れに。

少し息抜きした方が、問題の解決策も見つかるかもしれません。

2.新しい人間関係が生まれる

大人になってからは、なかなか新しい人間関係を広げるのが難しいんですよね。ですが趣味を通じてなら社会人サークルに入ったり、オンラインゲームで仲良くなったりと新しい人間関係ができやすいです。

自分のことをよく知らない人の方が、仕事の愚痴などは言いやすいかもしれません。思わぬ才能を発見する可能性も?

軽い運動をする

軽い運動は幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌を促進。

セロトニンはストレスの疲れが軽減し、鬱のリスクを減らしてくれます。ハードな運動でなくても、軽いジョギングやジムで汗をかいたり、新しいことを始める時間がなければ1駅多く歩くだけでも大丈夫。

運動は激しすぎないものを選び、習慣化ことが最良です。

たくさん寝る

睡眠

寝るといろいろなストレスが解決できるので、たくさん寝ましょう。

睡眠というのは浅い眠りと深い眠りを繰り返すのですが、良い睡眠というのはこの朝い眠りと深い眠りを4~5回繰り返すのが1番理想的と言われています。

1サイクル90分ですから理想は7時間半。ただ、布団に入っていきなり寝られる人は少ないと思いますので、実質的には8時間ぐらいを睡眠に充てる計算になります。

なかなか8時間の睡眠時間を確保するのは難しいかもしれませんが、最低でも4サイクルの6時間+睡眠導入の6.5時間ぐらいは寝ていただきたいところです。

また、寝る前のスマホ(ブルーライト)は厳禁。睡眠の30分前にはスマホの使用をやめてからお布団に入ると寝やすくなります。

サウナに行く

サウナ

ストレスが溜まっているならサクッとサウナもおすすめです。サウナに行くと、コルチゾールが分泌が増加することが確認されています。

コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれることもあるホルモンで、いかにも悪いイメージがある人もいらっしゃるかもしれません。

実はコルチゾールはストレスを感じたときに分泌されるだけで、その効果は身体の機能を保つために必要なホルモンです。

このコルチゾールが肉体的(サウナ)のストレスを軽減してくれる時に、精神的なストレスも軽減してくれる効果があります。

サウナーの中でよく言われている「ととのう」というものは、副交感神経をととのえる効果があるため、ストレスを感じたらサウナに行くというのはおすすめです。

ただし長時間無理をして入るサウナは体に悪いので控えてください。

抜け毛はストレスとは関係ない可能性も

既にストレスの影響で抜け毛が増えてきたという自覚・不安がある方は、その抜け毛はもしかすると「ストレス以外の影響」かもしれません。

本記事の中でも紹介しましたが、AGAは遺伝的な要因が大きくストレスが改善しても脱毛症状が改善しない可能性も。

もしストレスが悩みではなく、”ストレスによる脱毛症状”が気になっているのであれば、ストレスを減らす努力をする一方でクリニックで頭皮を診断してもらうことをお勧めします。

まとめ

ストレスと抜け毛に直接的な因果関係はありませんが、少なからず影響すると考えられています。

でも私はよく言っているのですが、頭髪に悪い生活習慣は大抵の場合頭髪以外にも悪いです。

そして、ストレスがあってもなくても、抜け毛が気になる方はお近くのクリニックに行って診察を受けてみてください。

ストレスが体に悪いのは間違いないので、ストレスが溜まっていると感じたら、頭髪関係なくストレスの素を解消、もしくはストレスを発散して楽しく過ごしましょう。

参考文献

1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AA_GL2017.pdf

2) natureasiaストレスが発毛に影響を及ぼす仕組み:
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13645

3)ストレスが被毛成長に及ぼす影響について:
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680715935872

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