男性型脱毛症

マカとAGAは本当に関連しているのか?

マカ サプリ
藤井 麻美

マカってきいたことありますか?

男性のサプリメントのランキングで上位を占めるのが、「マカ」含有のサプリメントです。キャッチコピーは、「男」らしさ」や「滋養強壮」「活力アップ」などで、男性におすすめのサプリメントとして紹介される機会が多い成分。

マカが男性らしさをサポートするという謳い文句から、AGAと関係しているのではないかと心配する声があります。本当に関連しているのでしょうか?男性らしさとAGA治療の併用は難しいのでしょうか?

今回はそれらの疑問にお答えしつつ、マカの効果とAGAとの関連性について詳しく解説していきましょう。

マカについて

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マカ(ma’ka)は、南アメリカにあるアンデス山脈の高地で栽培される多年草のLepidiumu meyeniiを原料とした、約2,600年の歴史のある伝統的な食品漢方薬です1) 。ブロッコリーやキャベツなどと同じアブラナ科に属しています。

マカは、ペルー・アンセス山脈の標高4,000m以上の厳しい寒さや日照、強風に耐えられる数少ない食用植物です。健康増進、精力増強、生殖能力を高める効果があるとして、食品や補助食として利用されてきました。栄養価や効能から、「ペルーの高麗人参」とも呼ばれています。

マカの主な食用成分は根っこの部分で、見た目は大根やカブに似ていて、マカは粉末、錠剤、カプセル、酒、エキスなどのさまざまな形状の商品が販売。

過去20年ほどのメディアやインターネットを通じたプロモーションによって、男性らしさ、滋養強壮、性欲向上、女性では妊活や更年期障害への効果が期待されており、ドラッグストアなどでも簡単に手に入るサプリメントとして非常に人気が。

マカは赤、黄、黒などの色の違いにより健康効果が異なり、例えば赤いマカは前立腺肥大症や骨粗鬆症の改善効果、黒いマカは精子形成、記憶、疲労に効果があるといわれています2)

マカにはさまざまな効果がありますが、多くはマウスなどの動物実験が元になっており、人を対象にした研究は限定的で、医学的な根拠がまだ確立していません。

マカに含まれている成分と効果

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マカなどの薬用植物の薬効成分は、主にアルカロイド、テルペノイド、フェノール、ステロイド、フラボノイドと呼ばれる植物の2次代謝産物です3)

2次代謝産物は、糖質や蛋白質、脂質などの通常の生物を構成している主な成分と違い、低濃度ではあるもののさまざまな効果があるとされています。

例えば、環境ストレスや病害、競合などから植物が生き残るための防御機構として働く成分が2次代謝産物で、その薬用植物の特徴です。

マカの成分は、1次代謝産物として炭水化物、蛋白質、繊維、脂質、アミノ酸、鉄、カルシウム、銅などのミネラル、リノール酸、パルミチン酸、オレイン酸といった脂肪酸、ビタミンB群が。栄養が豊富でアンデス地域の主食の一つや保存食として活用されています。

2次代謝産物のフェノール類はカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、アルカロイド、マカリジン、マカエン、マカマイド、マカアルカロイドといった特有の成分を含み、その他、ステロール、グルコシノレートという辛味成分なども。

この多くの2次代謝産物が、マカの特徴的な効果を発揮する成分というわけです。マカのフェノール類は抗酸化、抗放射線、抗炎症、抗老化、美白の効果、アルカロイドは抗炎症、抗酸化、抗カビ効果など、多数の効果が動物実験や細胞レベルの実験で証明。

実際に人間を対象にした研究は限られていますが、マカを服薬して一部の性ホルモン(17ヒドロキシプロゲステロン)が上昇したり、性欲の改善を認めたり、更年期症状の一部の症状が改善したとりという研究はあります。

また、精子の運動率の改善が期待できるという研究もあり、男性不妊の治療にも活用できそうです5)

ただし、どの成分が直接効果を示すかどうかの詳細なメカニズムは不明な点が多く、まだまだ研究段階といえます。

なぜマカとAGAは関連すると誤解されるのか

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マカの効果で人のテストステロンが直接増えたという研究はありません。しかし、マウスなどの動物実験レベルでは、テストステロンが増加したという研究があります。

歴史的に性欲増進などの効果が期待されてきたことと、動物実験でテストステロンが増えたという結果から、「マカを飲むとテストステロンが増える」という噂ができてしまったのでしょう。

AGAは、男性ホルモンのテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に酵素で変換されることで活性化し、毛の成長期を短縮させAGAの薄毛や抜け毛を引き起こすと考えられています。

マカとAGAの共通点はテストステロンですが、テストステロンの血中濃度が増えたとしてもジヒドロテストステロン(DHT)が増えるという証拠はありません。そもそも、マカでテストステロンは増えるという証拠もありません。マカがAGAの原因になることはありませんので、ご安心ください。

マカ以外でも、テストステロンを増加させるものに筋肉トレーニングがありますが、筋肉トレーニングとAGAの関連もありません。男性らしさを保つことと、AGAの治療は両立可能です。

マカの摂取方法と効果があらわれるまで

マカは、通常1.5〜5g程度が摂取の目安といわれています。食事でも取り入れる場合には、サプリメントなどによる追加分の摂取は控えて、過剰にならないように注意が必要です。

他の薬剤との併用で、副作用や相互作用が出る場合もありますので、薬を服薬中の場合でマカを飲みたい方は主治医の先生にご相談ください。

過去の研究では、マカの効果判定は服薬開始から12〜28週間としているものが一般的です。マカの効果はだいたい12週くらいで効果が出てくると考えられますが、明確な指標はありません。なお、長期間の使用の安全性に確立されたものはなく、体調を見ながら継続するのがよいでしょう。

マカの気になる副作用

通常の食用や、規定されているサプリメントの量であれば、重大な副作用は少ないとされています4) 。肥満患者にマカを服薬した患者でのみ、肝障害の指標になるASTの上昇と拡張期血圧の上昇が認められたという報告が。

妊婦や授乳中、小児では安全性を証明できる研究がなく、副作用がでる可能性もあるため、服薬は控えた方がよいでしょう。その他、マカ加工食品による薬剤性肺炎、血中の鉛濃度の上昇を認めたという報告はありますが、非常にまれといえます。

万が一、マカや、マカの加工食品にアレルギーがある場合、摂取は禁忌になります。控えましょう。

マカと似た効能の成分

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アルギニンも、マカと同じく性欲増進を期待されるサプリとして人気があります。

アルギニンは、アミノ酸の一種で、体内で合成される非必須アミノ酸です。代謝産物である一酸化窒素を介して、成長ホルモンの分泌促進や免疫機能の向上、脂肪代謝の促進など、生体内でさまざまな機能に関与。

アルギニンを1日5g摂取したところ、勃起不全の症状が改善したという研究結果から、男性の性欲増進などのサプリメントとして活用されています6)

亜鉛も、アルギニン、マカと同じく男性に人気のサプリメントです。亜鉛は健康と栄養維持に重要な必須微量元素で、多くの酵素に含まれて遺伝子の発現や蛋白質の合成など、細胞の成長に中心的な役割を果たしています。

ただし、ヒトを対象にした研究では、性機能の改善や不妊治療の効果を部分的に認めた程度で、明らかに改善したという結果は残念ながらありません。

過剰摂取による貧血、消化器症状、腎機能障害、神経障害などが問題になることがあるため、サプリメントを摂取する際は注意が必要です4)

シトルリンも、男性サプリメントの上位を占める人気の成分。シトルリンは遊離アミノ酸の一種で、スイカから見つかって命名されたアミノ酸です。

生体内ではアルギニンから生成され、アルギニンと同じく、代謝産物である一酸化窒素を介して血管拡張などの効果が期待されると考えられています。

血管拡張の効果から、「血流をよくする」、「疲労回復によい」などと期待されていますが、残念ながら医学的に確かな研究や報告は現時点では不十分です。

食品に含まれているため安全な成分と考えられますが、過剰摂取や妊婦・授乳中はサプリメントの摂取をひかえましょう4)

まとめ

今回は、マカの効果とAGAとの関係について解説しました。

まだまだ研究段階ではありますが、スーパーフードとして名高いマカ。気になる方は、マカの用量用法などを守って生活に取り入れてみるのもよいかもしれませんね。

参考文献

  1. Maca.Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury [Internet]. Bethesda (MD): National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases; 2012–.2019 Apr 10. PMID: 31643869
  2. Beharry S, et al. Is the hype around the reproductive health claims of maca (Lepidium meyenii Walp.) justified? Ethnopharmacol.2018;211:126-170.
  3. 治京玉記. マカ(Lepidiumu meyenii WALP)の成分分析法について. 薬膳科学研究所研究紀要第6号.
  4. 国立研究会開発法人. 「健康食品」の安全性・有効性情報. https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail60.html
  5. 日本内分泌学会. 日本メンズヘルス医学会. 男性の性腺機能低下症ガイドライン2022. https://www.mens-health.jp/wp-content/uploads/2021/10/c95fe605f4e4127722b302a0213fc301.pdf
  6. Chen J, et al. Effect ofadministration of high-dose nitric oxide donor L-arginine in men with organic erectile dysfunction: results of a double-blind, randomized, placebo-controlled study. BJU Int. 1999;83(3):269-73.  doi: 10.1046/j.1464-410x.1999.00906.x.
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