毎日の習慣からフケを防ぐための頭皮の正しいケアとは
頭皮の正しいケアって知っていますか?シャンプーなどは毎日行うものですが、どの方法が正しいのか、どこに注意すればよいのか答えるのは難しいかもしれませんね。
頭皮のトラブルは、皮膚の状態だけではなく、夏場の蒸れる時期や冬場の乾燥時期などの環境にも大きく左右されます。フケやベタつきは見た目にも分かりますし、お悩みの方も多いかもしれません。
頭皮ケアといっても、顔や体と違ってクリームなども塗りにくいため、ケアも難しいと感じるかもしれませんね。
シャンプーの成分も自分に合っているものを選ぶのは一苦労です。頭皮の感染とフケが関連していることもあり、その場合には病院で治療をすることで、フケが改善します。
今回はフケなどの頭皮トラブルを防ぐための正しいケアについてお話します。
フケってそもそもなに?
フケは、剥がれ落ちた皮膚の一部です。人間の皮膚の最も外側にある表皮は、4層構造になっています1) 。一番奥にある1層の基底層、5〜10層の有棘層、2〜3層の顆粒層、約10層の角層で構成。
基底層で皮膚の細胞が分裂して作られて細胞が成熟していくと層を上がっていき、最終的に最も表面にある角層になります。
この表皮の細胞の成熟をターンオーバーといい、だいたい28〜45日です。角層の細胞は膜のようになっており、皮膚の水分を保持して乾燥を防いだり、外的な刺激から皮膚を守る役割があります。最終的には角質は剥がれ落ちて、体ではアカ、頭皮ではフケに。
ターンオーバーは正常な皮膚代謝ですので、フケ自体は誰にでもあるものなのですが、フケが見た目に目立ったり異常に多かったりする場合には、フケ症という病気になります。
フケは多くの原因が重なり合ってできる多因子性の病気。頭皮の皮脂分泌や個体差などの内的な原因だけではなく、乾燥・紫外線などの外的な刺激も原因になります2) 。これらがいくつか重なってフケ症が起こっているのです。
個体差というのは、個人の皮膚の敏感度や水分保持能力などによります。例えば、もともと乾燥肌やアトピー性皮膚炎がの体質の方などは、フケが出やすい素因に。
また、マラセチア菌というカビの増殖も関連。マラセチア菌は、通常は頭皮にいても問題を起こさない常在菌ですが、皮脂の分泌が異常になると増殖し、皮膚炎を起こし、結果的にフケがたくさん出てきてしまいます。
フケは見た目で2種類に分けることができ、乾燥が原因の「乾性フケ」とベタベタ湿った「湿性フケ」があります。どのような違いがあるのか解説していきましょう。
乾性フケ:白いカサカサしたフケ
乾いた白っぽくカサカサしたフケは、乾性フケの特徴です。乾燥しているので、頭皮から剥がれて服などにくっつきやすいフケです。頭皮の乾燥が原因で、シャンプーのやりすぎによる皮脂不足や冬場の乾燥も原因に。
また、アトピー性皮膚炎や高齢などで皮脂欠乏症による乾燥肌がある場合にも、乾性フケができやすくなります。
皮脂欠乏症は高齢者に多く、女性より男性の方が少し早い年代から皮脂が減少する傾向がありますが3) 、乾燥肌や乾燥を助長させる行為(過度なシャワーやドライヤーの当てすぎなど)がある場合には、どのような方でもフケの原因に。
脂性フケ:黄色のベタベタしたフケ
ベタベタした黄色っぽいフケは、脂性フケの特徴です。脂性フケは、主に脂漏性皮膚炎による症状です。頭皮の過剰な皮脂や、シャンプーのすすぎ不足などが原因になります。
頭皮の皮脂分泌は、男性ホルモンによる調節を受けていますが、男性ホルモンであるアンドロゲンが過剰に分泌されると皮脂分泌が過多に。
皮脂中のトリグリセリドという成分は、分解されると皮膚を直接刺激して皮膚炎を起こします。また、過剰な皮脂は常在菌であるマラセチア菌のエサになり、マラセチア菌が増えて皮膚炎が起こり、フケの原因に。
男性ホルモンが影響しているため、男性の方が起こりやすいといえますが、女性でも女性ホルモンのプロゲステロンは皮脂分泌を過剰にする作用があり、脂性フケは起こります。
フケが増える原因は、日常の何気ない習慣に隠れているかもしれません
乾性フケも脂性フケも、基本的には頭皮の環境が悪化すると起こります。その原因をみていきましょう。
過剰なシャンプー
シャンプーには、水やお湯だけでは流れにくい皮脂などの油汚れを落ちやすくするための洗浄成分、界面活性剤が含まれています4) 。界面活性剤には種類があり、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系、天然成分系などに分類されますが、一般的にはアニオン系が最も洗浄力が強いです。
シャンプーを使うことで頭皮の余分な皮脂を洗い流してくれますが、過剰にシャンプーを使って洗髪をしすぎると、必要な頭皮の皮脂まで洗い流されてしまいます。本来皮脂は頭皮の保湿やバリア機能として分泌されているため、それがなくなると主に乾性フケが。
乾燥肌なのに洗浄力の強いシャンプーを使うことや、何度もシャンプーをすることは避けましょう。頭皮の乾燥が強い場合などにはアニオン系のシャンプーは不向きです。その他洗浄力は低いものの肌への刺激が少ない成分を選びましょう。
シャンプーのすすぎ残し
シャンプーの洗浄成分や添加物は、基本的には洗い流すことを前提として作られているので、すすぎ残しで成分が頭皮に残った場合、接触性皮膚炎との原因になります。接触性皮膚炎はいわゆる“かぶれ”で、外からの刺激による皮膚炎です。
皮膚炎が起こると皮膚のターンオーバーが異常になり、フケができやすくなります。また、残ったシャンプー成分がフケや皮脂と混ざるとベタベタした脂性フケになることも。シャンプーはよく洗い流しましょう。
シャンプー以外にも、スタイリング剤などでも接触性皮膚炎を起こしたり、フケの原因になったりすることがあります。使用を控えるか、使う場合には成分が残らないように洗い流すようにしましょう。
熱すぎるお湯
洗髪の時、42℃以上の熱すぎるお湯を使うと皮膚のかゆみが誘発されてしまいますので、フケの原因になることがあります5) 。
ドライヤーのあて過ぎ
ドライヤーで乾かしすぎたり、頭皮が高温になりすぎたりすると頭皮の乾燥やかゆみの原因になりフケができやすくなってしまいます。当てすぎには注意しましょう。
過度の紫外線
過度の紫外線照射は頭皮のバリア機能を障害し、フケの原因になることがあります。紫外線の強い時には帽子を被るなど、紫外線の直接照射を避けるように工夫しましょう。
過剰なシャンプーやシャンプーのすすぎ残し、熱いお湯やドライヤーのあて過ぎ、過度な紫外線はいずれも外的な原因です。続いて、内因子的な原因には以下のものがあります。
ストレス
ストレスで男性ホルモンや黄体ホルモン(女性ホルモン)が過剰に分泌されると、皮脂分泌も過剰になり、皮膚炎やフケの原因になります。
生活習慣の乱れ
運動不足や睡眠不足、偏った食事などの生活習慣の乱れでホルモンバランスが崩れてフケの原因に。食生活で脂肪や高GI食(食後に血糖値が上がる食事で、主に炭水化物)の取りすぎも、皮脂分泌を促進しフケの原因となります。
フケの対策で今日からできること
フケは皮膚のターンオーバーの異常で起こっているので一朝一夕では改善しませんが、予防は可能です。フケを防ぐために今日からできるポイントをご紹介しましょう。
シャンプーやドライヤー習慣を見直す
シャンプーは洗浄力が高すぎないないものを選びましょう。シャンプーの洗浄成分として、界面活性剤や添加物が含まれおり、その成分で洗浄力が決まります。
ただ、界面活性剤を避けるあまり頭皮の状態に合わない弱すぎるシャンプーを使ったり、シャンプーを使わなかったりする場合は頭皮の皮脂や汚れが洗い流せず、逆に脂性フケの原因に。
シャンプーはよく泡立てて頭皮への刺激が強すぎないように洗いましょう。シャンプーの成分が残らないように十分にすすぐことが大切。お湯の温度も大切で、36〜40℃くらいが頭皮のバリア機能を守るために適温です4) 。
乾性フケがメインの場合や、1日複数回洗髪をしなくてはいけない場合には、適温のお湯だけですすぐなど工夫するとよいでしょう。
ただし、マラセチア菌が増えた脂漏性皮膚炎がフケの原因になっている場合には、ジンクピリチオンという成分を含むシャンプーや抗真菌薬を含んだシャンプー(コラージュフルフル®、オクト®など)が効果的です2) 。
薬局などで購入できますので、脂性フケが主で脂漏性皮膚炎が疑われる場合には、試してみてください。
規則正しい生活を送る
ストレスや生活習慣の乱れは、皮脂分泌を過剰に起こす原因になります。ストレスを避け、溜まったストレスはうまく発散させる方法を知りましょう。ストレス発散のための手段は人それぞれですが、十分な睡眠や運動や趣味、旅行などの気分転換などが挙げられます6) 。
バランスの取れた健康的な食事も大切です。ビタミンB2やビタミンB6が欠乏すると皮脂分泌が多くなる脂漏性皮膚炎の原因に7) 。ビタミンB2は、魚介類、レバー、納豆、うなぎ、ビタミンB6はかつお、まぐろ、イワシ、レバーなどに豊富に含まれています。欠乏しないように、バランスよく食べましょう。
頭皮ケアを行う
頭皮が乾燥している場合には、ローションなどで保湿すると乾性フケが改善することもあります。アトピー性皮膚炎などがあり頭皮の病変がある場合には、ステロイド剤も軟膏ではなくローションが塗りやすいのでおすすめです。
脂漏性皮膚炎によるフケの場合、サリチル酸(カロヤン®など)を塗ると皮膚炎の改善効果があります。
頭皮の状態は、髪の毛があって全体の観察が難しいことも。セルフケアでフケが改善しない場合には、一度皮膚科にご相談ください。皮膚炎の診断がつくと保険診療で治療が可能に。医薬品の塗り薬と市販のシャンプーなどを組み合わせて治療を行うこともできます。
紫外線も頭皮を刺激する因子ですので、帽子などでの紫外線対策を行いましょう。
乾性フケで保湿力の高いシャンプーに効果があるかは、科学的には根拠はありません。保湿成分が含まれていても、基本的にはシャンプー成分は十分にすすいで洗い流す必要があります。
シャンプーは自分の肌にあったもので、洗浄成分が強すぎないものを選びましょう。香りなどは好みでよいと思いますが、時々シャンプーの添加物でも刺激性皮膚炎を起こす場合がありますので、その場合には使用を中止しましょう。
頭皮マッサージも科学的根拠はありませんが、気持ちがよい程度のマッサージはストレス発散になるかと思います。皮膚炎がある時には、頭皮を触ったり擦ったりするのはよくないですが、頭皮の異常がない場合にはよいかもしれませんね。
治療しなければ治らないようなフケの原因となる病気がないか確認を
フケの原因が皮膚炎の場合には、病院で治療することができます。フケ以外にも頭皮にぶつぶつや赤み、かゆみがある場合には皮膚炎の合併を考えましょう。
シャンプーなどの成分でかぶれる接触性皮膚炎、乾燥や敏感肌のアトピー性皮膚炎の場合には、ステロイドの塗り薬で治療を行います。マラセチアが発症に関係する脂漏性皮膚炎もシャンプー以外でステロイド外用薬やケトコナゾールクリームで治療が可能です。
感染症が原因でフケが出る場合もあります。水虫を起こす白癬菌が頭に炎症を起こす頭部白癬でフケがでることがあり、フケ症の診断時には鏡検検査で白癬がいないかチェックすることも8) 。その他、子供に多く強いかゆみとフケを伴うアタマジラミ、ヒゼンダニの感染による疥癬もフケ症をおこす感染症です9) 。
頭皮に異常があると、フケ以外にも薄毛や脱毛の原因になることがあります。セルフケアだけで改善しない場合や悪化傾向にある場合、頭皮のかゆみや湿疹がある場合には皮膚科を受診しましょう。
まとめ
フケを防ぐための頭皮ケアについてポイントを解説しました。ヘアケアは毎日のことですので、続けられることから変えてみるのがよいでしょう。
フケがひどく、セルフケアでも改善しない場合などには皮膚科でご相談ください。
参考文献
- 新しい皮膚科学 第3版. 中山書店. 2018年.
- Turner GA, et al. Stratum corneum dysfunction in dandruff. Int J Cosmet Sci. 34(4):298-306,2012. doi: 10.1111/j.1468-2494.2012.00723.x.Epub 2012 May 17.
- Nazzaro-Porro M, et al. Effects of aging on fatty acids in skin surface lipids J Invest Dermatol, 73(1):112-117, 1979. doi: 10.1111/1523-1747.ep12532793.
- Paschal D’Souza, et al. Shampoo and Conditioners: What a Dermatologist Should Lnow? Indian J Dermatol. 60(3):248-54, 2015. doi: 10.4103/0019-5154.156355.
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021. 日本皮膚科学会. 2021年. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2021.pdf
- 厚生労働省. 休養・こころの健康. https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3.html
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- 皮膚真菌症診療ガイドライン. 日本皮膚科学会. 2019年. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/shinkin_GL2019.pdf
- NIID国立感染症研究所.https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/412-louse-intro.html.https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/380-itch-intro.html.